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2013年01月11日

十三月の翼・30(天使のしっぽ・二次創作作品)







 はい、今年一番の2001年・2003年製作アニメ、「天使のしっぽ」の二次創作です。
 今年も一年よろしくお願いいたします。
 例によってヤンデレ、厨二病、メアリー・スー注意。



イラスト提供=M/Y/D/S動物のイラスト集。転載不可。

おとぎストーリー天使のしっぽ 3 (ノーラコミックス)

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                     ―戦禍―


 「ア・・・アユミさん・・・」
 「そ・・・そんな・・・」
 地に倒れ、ピクリとも動かないアユミに、皆の顔が青ざめる。
 「さて、これで守護天使(あんた達)は切り札を使えない訳だけど・・・」
 そんな皆を前に、その顔に酷薄な笑みを浮かべて、トウハはゆっくりと歩を進めてくる。
 「どうする?もし、大人しくご主人様渡してくれるなら、もうあんた達には手は出さない。だけど・・・」
 左手を顔の前にかざし、猛禽のそれの様に指を動かす。
 パキペキと鳴る音が、静寂の中に不気味に響いた。
 「あくまでも邪魔するっていうのなら、容赦はしない・・・。」
 「・・・・・・!!」
 皆の顔に、はっきりと浮かぶ恐怖の色。
 その様を嘲る様にほくそ笑みながら、トウハは値踏みする様に皆を見渡す。
 「亀姉さまがイっちゃったから、次に事の決定権があるのは・・・ああ、お笑い兎ね。」
 言いながら、身動きも出来ないミカの前に立つと、トウハは朱い瞳でその顔を見上げる。
 「さ、どうする?ご主人様を渡して、皆の無事を守るか?それとも無駄な抵抗して、皆仲良くあんな風になるか?」
 言葉と共に、後ろに倒れているアユミを親指で指差す。
 「さぁ?」
 トウハは微笑む。
 綺麗に。
 とても綺麗に。
 薄い唇の隙間からのぞく鋭い牙が、月光を反して妖しく光った。
 そんなトウハの顔を、悔しげに睨み付けていたミカだが、やがて悔しげに顔を伏せるとこう言った。
 「・・・分かったわ・・・」
 「ミカさん!?」
 「何言って・・・!?」
 皆が驚きの声を上げた瞬間―
 ドロンッ
 ミカの足元から、突然上がる煙。
 「!?」
 それが一瞬、トウハの視界を奪う。
 そして―
 「なんて事・・・」
 煙の中から、ニュウッと出てくる虎徹(ちなみに竹刀にバージョンアップ。当たると痛い。良い子じゃなくても真似厳禁)の刀身。
 「言う訳ないでしょーが!!」
 そんな声とともに、それがトウハの脳天めがけて振り下ろされる。
 しかし、
 ガシィッ
 それよりも早く掲げられた黒刃が、その刀身を阻む。
 「ンギッ!?」
 会心(?)の一撃を防がれたミカ(例によって新〇組の格好)が、歯噛みする。
 「・・・なかなか面白い真似してくれるじゃない。このお笑い兎・・・!!」
 口に入った埃をペッペッと吐き出しながら、ミカを睨みつけるトウハ。
 「ンギギ・・・誰がお笑い兎よ!?このコスプレ小悪魔・・・!!」
 「コスプレはどっちよ!?このデカ乳色魔!!」
 「んな・・・このミカの美しい胸をつかまえてよくも・・・この洗濯まな板!!」
 「二言目には胸胸って・・・!!これだから哺乳類は・・・!!そんなもん、とどのつまり脂肪の塊じゃない!!」
 「はん!!ないもの妬みは見苦しいわよ!!・・・まぁ、所詮は昆虫・・・!!ミカの境地には、たとえ千年経っても行き着けないでしょうけどね!?」
 「・・・たかだか、2億年ちょっとしか歴史のない種が偉そうに・・・!!こちとら4億年の歴史があるの!!格が違うのよ!!格が!!」
 「ちゃっかり議題すり替えてんじゃないわよ!!このコスプレ小悪魔!!」
 「やかましい!!お笑い兎!!」
 ギリギリと(別の意味で)鍔迫り合う二人。
 気のせいか、二人の身体から黒い何かが立ち昇って見える。
 「な・・・なんらか、ふたりともこわいんらぉ・・・」
 「何か、ミカお姉ちゃんも色々思う所があったみたいですからねぇ・・・。」
 状況も忘れて、二人のせめぎ合いに見入る皆。
 そんな一同に向かって、ミカが怒鳴る。
 「ちょっとアンタ達!!何のんびり見学してんのよ!?今のうちにやれる事あるでしょーが!!ご主人様を遠くに連れてくとか!!」
 その声に、ハッと我に帰る皆。
 「そ、そうだよ!!ミカさんを援護しなくちゃ!!」
 「ご主人様を、安全な所に・・・!!」
 アタフタと動き始める皆を横目に、ホッと息をつくと、ミカは再びその視線を目の前のトウハに戻す。
 「・・・と言う訳で、もうちょっと付き合ってもらうわよ・・・!!」
 そう言って、虎徹(竹製)を握る手に力を込める。
 しかし、細腕にかかる負荷などまるで関係ないと言った態で、トウハはほくそ笑む。
 「ふうん。腐っても3級守護天使。考えてない様で考えてるんだねぇ。もっとも・・・」
 言葉とともに、その左手がスルリと上がる。細い指が虎徹(竹製以下略)に絡まりそして―
 バキャンッ
 握り潰した。
 「んな!?」
 「浅知恵だけどね!!」
 言葉と共に、強烈な前蹴りがミカの身体に叩き込まれる。
 「んきゃーっ!!」
 絶叫と共に、盛大に吹っ飛ぶミカ。
 そのまま、自販機脇の空き缶入れに突っ込む。
 「き、きゃぁあああっ!?」
 「ミ、ミカさーん!!」
 皆の悲鳴の中、崩れ落ちる空き缶に埋まるミカ。
 「こ・・・この・・・馬鹿力・・・!!」
 空き缶の山から辛うじて顔を出したミカが、恨めしげにトウハを睨む。
 「馬鹿はアンタでしょ。」
 そう言って、トウハは足元に転がってきた空き缶を蹴り上げる。
 ポ〜ンと飛んだ空き缶は、ミカの頭にカポンと当たって地に落ちた。
 「む・・・無念・・・」
 力尽きた様に、ガックリと地に伏すミカ。
 「さあ、次はだぁれ?」
 動かなくなったミカを一瞥すると、トウハは残りの面子に向き直る。
 「そ・・・そんな・・・」
 「ミカお姉ちゃんまで・・・」
 明らかに皆が浮き足立つ中、意識を失った悟郎を支えていたランが声を上げた。
 「モモちゃん!!ナナちゃん!!ルルちゃん!!」
 「は、はい!!」
 「な、何!?ラン姉ちゃん!?」
 「なんなんらぉー?」
 ランの呼び声に、慌てて集まってくる三人。
 その三人に向かって、ランは真剣な表情で言う。
 「三人とも、ご主人様をお連れして逃げて!!」
 「え!?」
 「ランねえたん、なにいってるらおー!?」
 「モモも、皆と一緒に戦います!!」
 「分かってるわ。だから、あなた達に頼むの・・・。」
 驚く三人に言い聞かせる様に、ランは言う。
 「悪魔(あの娘)は強いわ。ラン達だけじゃあ、ご主人様をお護り出来ないかもしれない・・・」
 「ラン姉ちゃん・・・。」
 「そんな・・・」
 戸惑う三人の目を、ランが見つめる。
 真剣な。
 これ以上ないほど、真剣な眼差しで。
 「だから、あなた達がご主人様を安全な場所へお連れして。ご主人様を、お護りして。」
 「ランねえたんたちは、どうするらぉ?」
 「ラン達は、何とかして悪魔(あの娘)を食い止めるから。その間に・・・ね?」
 「でも、それじゃあランお姉ちゃん達が・・・」
 「モモちゃん!!」
 なおも言い募ろうとするモモを、ランの声が制する。
 それは、いつもの彼女なら出そう筈もない、厳しい声音。
 モモは、驚いた様に声を詰まらせる。
 「ラン達は何?モモちゃん達は、何?」
 静かに、問いかける声。 
 「守護天使・・・」
 「らぉ・・・。」 
 その答えに、ゆっくりと頷くラン。
 「なら、そのお役目は何?何のために、ラン達は転生したの?」
 再び、かけられる問い。
 それに、モモは己の葛藤を押し殺す様に答える。
 「ご主人様を・・・お護りするためです・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 それに続く様に、ナナとルルも頷く。
 その様に、ようやくいつもの笑みを浮かべながら、ランは言う。
 「そう。それが、ラン達の存在意義。なら、違う事なく、そのお役目に殉じましょう。」
 「・・・・・・。」
 「大丈夫。うちに帰ったら、ご飯にしましょう。ご主人様といっしょに・・・」
 それは、大人が子供に言い聞かせるための言葉ではない。
 対等の、自分と同じ場に立つ者と契る、誓いの言葉。
 そして、その想いは確かに通じる。
 同じ志を抱く、彼女達へと。
 「・・・分かりました!!」
 「ナナ達、行くよ!!」
 「ごしゅじんたま、おまもりするらぉー!!」
 三人の言葉に、確かな心強さを感じながら、ランは右手を差し出す。
 その手に、三人の小さな手が力強く重なった。


 「金魚姉様、話、終わったー?」
 離れた場所で事の成り行きを見ていたトウハが、ラン達に向かってそう声をかけた。
 その声に応じる様に、ルル達に視線を合わせてしゃがんでいたランが立ち上がる。
 「チビッコ達と何話してたの?逃げる算段とか?なら良い判断だね。何度も言ってるけどさ、わたしはご主人様が欲しいだけだから。ご主人様置いてってくれるなら、別に追いかけたりしないよ?」
 そう言ってケタケタと笑うトウハを、ランはキッと見返す。
 「なら、こっちも何度も言ってる筈です・・・!!」
 途端、光を放つランの身体。
 その姿が青いメイド服へと変わり、淡い燐光を散らしながら純白の翼が広がる。
 「ご主人様は・・・渡しません!!」
 深い夜闇の中、眩く輝きながら、ランは凛と言い放った。


 「皆!!アタシ達も変わろう!!」
 「分かりました!!」
 「合点なの!!」
 ツバサの号令に合わせる様に、皆の身体も光を放つ。
 一瞬の瞬きの後、そこには守護天使本来の姿となった皆が並び立っていた。
 それを見たトウハは、呆れた様に溜息をつく。
 「おやまあ、皆さんきっちり決めちゃって。まだやる気なの?」
 「当たり前だろ!!」
 「ラン達は、守護天使です!!」
 「ご主人様は・・・」
 「「「「「「この身に代えてもお護りします!!」」」」」」
 一斉に唱和される、その誓い。
 守護天使が守護天使たる、真の意義。
 その言葉は光となり、恐怖に犯されつつあった彼女らの心に、確かな力を与えた。
 (皆・・・)
 それをその身に感じながら、アカネは今更の様に思い至る。
 そう。自分は何を勘違いしていたのだろう。
 トウハ(彼女)と会う度、トウハ(彼女)の力を見せ付けられる度、自分は例え様もない無力感と孤独感に苛まれていた。
 何も出来ない自分。
 何も知らない皆。
 それは、己に対する自虐となり。
 または、皆に対する不信となり。
 ただひたすらに、自分を追い詰めていた。
 けど、今はどうだろう。
 皆と共にいるだけで、こんなにも力が沸いて来る。
 皆の声を聞くだけで、こんなにも勇気が沸いて来る。
 そう。
 一人で駄目ならば、皆の力を束ねればいい。
 一人で及ばないならば、皆の想いを合わせればいい。
 それこそが、守護天使(自分達)の力。
 悪魔(あの娘)が決して持ち得ない、絆という名の力。
 だからこそ、自分は一人ではないのだから。
 だからこそ、自分達は十二人なのだから。
 湧き出る力を胸に抱き、アカネはしっかりと前を見据えた。


 「タマミちゃん。」
 「はい!!」
 ランの呼びかけに、タマミが応える。
 「ラン達で悪魔(あの娘)を牽制します。その間に、アユミさんとミカさんをお願い!!」
 「頼むよ!!タマミ!!」
 「お願いなのー!!」
 「は、はい!!分かりました!!」
 ツバサとクルミの言葉に、真剣な顔でそう言うと、タマミはトウハの向こうで倒れている二人を見据える。
 「二人とも、決して深入りはしないで。真正面からの勝負になったら、勝ち目はないわ。」
 「分かってるって!!」
 「委細承知なのー!!」
 「それと―」
 ランの瞳が、ちらりとアカネとミドリを見る。
 「「――!?」」
 ニッコリと頷くラン。
 そして―
 「じゃ、行くよ!!」
 「やったるでー、なの!!」
 互いに頷き合うと、ラン達はトウハに向かって突っ込んでいく。
 「何々、今度はアンタ達!?うざったいなぁ、もう!!」
 纏わり付く蚊でも払う様に、トウハは腕を振る。
 「おっと!!」
 それを、紙一重でかわすツバサ。
 「あ、この!?」
 それを追う様に、トウハは前蹴りを見舞う。
 しかし、ツバサはそれも紙一重でかわす。
 かすった前髪が、パッと散る。
 「へへん!!こちとら、鳥類だよ!!動体視力なら、負けるもんか!!」
 その額に冷たい汗を浮かべながら、それでもツバサは笑って見せる。
 「・・・ウザイ!!」
 トウハがイラついた様に、右手の剣を振り上げたその瞬間―
 ハッ
 例えようもない怖気が、その背を走る。
 思わず振り返ると、そこには大口を開けたクルミの姿が―
 「お砂糖頭さん、覚悟なのー!!」
 「んなぁ!?」
 慌てて身を引くトウハ。
 一瞬前までその頭があった空間を、クルミの口がバクリとくわえ込む。
 「むー、逃げちゃダメなのー!!」
 「逃げずにいられるかーっつか、まだそう来るかこの欠食絹毛鼠!!」
 「ツバサちゃん、そこ!!」
 「了解!!」
 クルミに気をとられたトウハ。そこに、ランの声を受けたツバサが気合と共に肘をぶつける。
 「きゃっ!!」
 咄嗟に防御するものの、その衝撃に耐えられずトウハは体勢を崩す。
 「タマミちゃん、今よ!!」
 「はい!!」
 ランの指示を受けたタマミが、せめぎ合う四人の脇を駆け抜けてミカとアユミの元へと向かう。

 そして、ランに悟郎を託されたモモ達は―
 「んしょ、んしょ・・・」
 「二人とも、頑張って・・・!!」
 「ごしゅじんたまおもいらぉー。・・・ちょっとふとったぉ?」
 昏睡した悟郎を引きずりながら、必死に公園の出口を目指していた。

 一方、タマミは地に伏すアユミの元へとたどり着いていた。
 「アユミお姉ちゃん、アユミお姉ちゃん、しっかりしてください!!」
 必死に呼びかけるものの、アユミは身動ぎ一つしない。
 白く細い喉についた、赤い爪跡が不安を誘う。
 「まさか・・・」
 最悪の予想が脳裏を過ぎり、タマミは顔を青ざめさせながらアユミの左胸に耳を寄せる。
 服の布地を通して感じる、肌の温もり。
 そして、
 トクン・・・
 トクン・・・
 その奥に感じる鼓動。
 それは弱々しくもなければ、乱れもない。
 規則正しく、確かなリズムを刻んでいる。
 それを確かめたタマミは、ホゥ・・・と息をつく。
 気は失っているものの、致命傷は負っていないらしい。
 「ああ、良かった・・・。」
 ひとりごちながら、もう一度安堵の溜息をつく。
 と、その目に入るのは、大量の空き缶に埋まる、もう一人の姉の姿。
 「ああ、忘れてた!!」
 タマミは抱き起こしていたアユミを静かに寝かせると、空き缶の山へと走る。
 「ミカお姉ちゃん!!大丈夫ですか!?」
 声をかけながら空き缶の山を掘り返すと、その中からミカの身体を引っ張り出す。
 「ハ・・・ハァハァ・・・ミ・・・ミカお姉ちゃん、しっかり・・・!!」
 息を切らしながらミカの上半身を抱き起こすと、そのほっぺたをペチペチと打つ。 
 しかし、こちらも完全にのびているらしく、一向に目を覚まさない。。
 「ああ、もうどうしよう・・・。」
 泣きたい気持ちで途方に暮れていると、
 「う・・・うぅ〜ん・・・」
 そんな声を漏らして、ミカが身じろぎをした。
 「!!、ミカお姉ちゃん、気がついたですか!!」
 思わずミカの襟を掴むと、ブンブンと揺さぶる。
 「ミカお姉ちゃん、ミカお姉ちゃんってば!!」
 すると、
 「うぅ〜ん。ムニャムニャ。ご主人様ぁ、ダメよぉ。こんな所でぇ(はあと)」
 ミカの口から漏れる、そんな声。
 「・・・・・・。」
 固まるタマミ。 
 しばしの沈黙。
 そして、
 パッ
 掴んでいた、襟を放す。
 落ちるミカの頭。
 ゴインッ 
 派手な音を立てて、後頭部が地面と接吻する。
 「キュウ・・・」
 そんな声を漏らして、再び昏倒するミカ。
 「・・・もう少し、ほっとくです・・・。」
 額に軽く#マークなど浮かべながら、そう呟くタマミだった。


 その頃、トウハと対峙していたラン達は―
 「この、三人そろってチョコマカと・・・!!」
 トウハが苛立ち紛れに爪を振るうが、ツバサはバックステップで距離をとり、その射程内から逃れる。
 「ツバサちゃん、大丈夫!?」
 そのツバサに寄り添いながら、ランが尋ねる。
 「なーに。まだまだ大丈夫・・・って言いたい所だけどちょっとキツイかな・・・?」
 そう言うツバサの額には、幾つもの汗の粒が浮いている。
 トウハの、その見た目にそぐわない攻撃の重さは、それをスレスレでかわすツバサの神経と体力を確かに削り取っていた。
 「悪魔(あの娘)、全然息を切らさない。持久戦になると、ちょっとキツイかも・・・。」
 それを聞いたランが、「そう言えば・・・」と言葉を紡ぐ。
 「確か、アユミさんが昆虫のスタミナは無尽蔵だって言っていたわ・・・。」
 それを聞いて、些かゲンナリした表情をするツバサ。
 「・・・それじゃ、どの道長く付き合うのは得策じゃないか・・・。少しくらい、削れると思ったんだけどなぁ・・・。」
 ブツブツ言いながら しかしその目の光は衰えない。
 それを受けて、ランが言う。
 「ええ・・・。でも・・・」
 「うん。“攻め所”は見えたよ!!」
 そう言って、二人は同時にトウハを見据える。
 「なら、次で仕掛けましょう!!」
 「了解!!」
 その声と共に、ツバサは再びトウハに向かって突っ込んでいく。
 「いい加減、しつこい!!」
 対するトウハはそう怒鳴ると、迫るツバサを迎え撃つ―と思いきや、素早くその身をかわすと彼女を無視して突進する。
 その先にいるのは、後方に控えるラン。
 「「!!」」
 「いつまでも、お遊びに付き合ってる暇ないの!!」
 クワッと開いた手。鋭い爪がランの姿を映し、不気味に光る。
 「アンタが”頭”!!潰させてもらう!!」
 しかし―
 「”頭”?いいえ!!」
 迫る爪を前に、青ざめながらもランは微笑む。
 「ランは・・・」
 「囮、だよ(なの)!!」
 瞬間、いつの間にかトウハの後ろに回ったクルミが、その頭にかぶりつく。
 「んきゃっ!?」
 思わず悲鳴を上げ、たたらを踏むトウハ。
 そこに、
 バチィッ
 間髪を入れず襲う、鈍い衝撃。
 「貴女の弱点は・・・」
 「小ささ故の、ウェイトの軽さ!!」
 一瞬の隙に足元に潜り込んだツバサが、強烈な足払いをかけていた。
 「――っ!?」
 完全にランに意識を集中していたトウハ。
 軽い身体は不意の攻撃に耐え切れず、その身を傾がせる。
 そして―
 「アカネちゃん!!ミドリちゃん!!」
 二人に向かって飛ぶ、ランの声。
 「――!!」
 ハッとするアカネの手を、柔らかい感触が包み込む。
 横を見れば、彼女の手を握ったミドリが穏やかな笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
 「アカネさん、お久しぶりれすね。」
 「・・・ああ、そうだな。」
 どこか嬉しそうなその言葉に、アカネも笑顔で返す。
 そして―
 「「変化!!」」
 二人の声とともに、ボワンと上がる煙。
 その中から現れるのは、翼を模した飾りが付いた一台の大砲。
 その砲口が、体勢を崩したトウハへと向き―
 ドゴンッ
 轟音と共に飛び出す砲弾。
 ラン達が離れる中、それはトウハに向かって真っ直ぐに飛ぶ。
 次の瞬間―
 「!!」
 ドゴーン
 狙い過たず、着弾する砲弾。
 トウハの身体が、木の葉の様に宙に舞った。


                                    
                                    続く

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