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サンキュー、ボビー

 これは面白いです。そして目のつけどころに感心してしまう、とても良くできた1枚です。
 曲目を見て、あまり期待していなかったので、楽しさが倍増して、嬉しくてたまりません。
 カナダのSGTMという怪しいレーベルから、CD-Rでの発売ですが、ぜひ一度試聴されることをお勧めします。


Thank You Bobby /VA

1. Lay Up In Bed And Read / Del Cunningham
2. It's Just A Matter Of Time / Merle Spears
3. If You Love Me / Willie Mays
4. Just Look At You Fool / Lavelle White
5. Devil Of A Girl / Gee Gee Shinn
6. Suffer / Tyrone Davis
7. Screamin' Please / Buddy Ace
8. You Gonna Miss Me / Ernie Johnson
9. You're Only A Woman / Jessie Anderson
10. Gee Gee Baby (It's Nice To Hold You Again) / Lenny Johnson
11. My Mother / Buddy Guy
12. This Time I'm Gone For Good / Mighty Sam
13. I'm Not Ashamed / Margo White
14. Honey Child / Johnny Williams
15. Love Came To Me / Ervin Little
16. Your Not Worth The Tears / Fred Lowery
17. Love Is A Cold Shot / Ray Agee
18. Are You Going My WaAY / Littl Bob And The Lollipops
19. Blues Get Off My Shoulder / Bobby Parker
20. Come A Little Closer / Billy Keene
21. Hard Times / Mighty Joe Young

 はっきりいって、予想を裏切って期待以上のものを提供してくれる、素晴らしい内容のコンピレーションになっています。

 これは、ボビー・ブランドのスタイルで歌われた曲をコンパイルしたもので、コンセプト自体はさほど驚くものではないですが、このクオリティの高さは大きな驚きです。

 まず、曲目をご覧ください。
 無名人のオン・パレードに、ため息をつかれる方も多いと思います。
私もそうでした。

 そして、「えっ」と驚く大物の名前が散見されることに、逆に不審を感じることでしょう。
 私は、タイロン・デイヴィスや、バディ・ガイ、マイティ・サムなどの名前を見て、思わず「なんだこれは、違うだろう」と内心つぶやきました。
 声になって出たかも知れません。

 この3人に関しては、説明不要の有名人です。
 ブランドのフォロワーなどであるはずがない、と強く言いたくなりました。
 そして、ビリー・キーン、彼は、私の知る限りでは、サム・クック・スタイルのシンガーです。
 さらに、マイティ・ジョー・ヤングは、私の認識では、スクイーズ系のギターリストで、B.B.キングのフォロワーです。

 なんとも、納得がいかないというのが、聴く前に私が思ったことでした。
 さらに、ここに収録されていないアーティストについても、不審はつのります。

 ボビー・ブランドのフォロワーというと、私が頭にすぐ浮かぶのは3人です。
 ジーター・デイヴィス、アール・ゲインズ、そしてバディ・エイスです。
 このうち、バディ・エイスのみ、かろうじて収録されていますが、他の2名を外すのは考えられないチョイスだろうと思いました。

 さらに言えば、大きな成功を収めて別格になりましたが、Z.Z.ヒルは、完全にブランドのコピーからスタートした人です。
 こういった、定評の高い人を外して、予想外の大物と、多数の無名人で構成した、このアルバムはなんなのか…。

 もうぐだぐた考えるより、聴くほかないです。
 そして、聴き始めた私の脳裏をよぎったのは、冒頭の言葉でした。
「面白い! そしてよく出来ている」

 整理しましょう。
 これは、ボビー・ブランドのフォロワーや、ブランドに影響を受けたシンガーのコンピではありません。
 そういったシンガーを含んではいますが、コンセプトは「デューク時代のブランドのスタイルで歌われた曲を集める」というものになっています。
 ここが、同じようで一味違うところです。

 曲そのものについては、特に調べていないので、確かなことは言えませんが、ブランドの曲のカバーは、あまり入っていません。
 マイティ・サムのThis Time I'm Gone For Good、マーゴ・ホワイトという女性シンガーのI'm Not Ashamedは、ブランドの有名曲のカバーです。

 個々の曲について、コメントできませんが、タイロン・デイヴィスは、彼のイメージにある軽快でダンサブルな感じではなく、あくまでヘビーに、あるいはダークに迫る曲になっています。
 バディ・ガイも、やはりヘビーで塩辛いボーカルを聴かせてくれます。
マイティ・サムは、有名曲のカバーなので、この中では一番わかりやすいです。

 そして、初めて聴く人ですが、私のオススメは、マール・スピアーズのIt's Just A Matter Of Timeです。
 ブルック・ベントンの大有名曲と同名で、なおかつ、同じように「サムデイ…」のフレーズで始まるこの曲には、注目せずにはいられません。
 まさにブランド・スタイルによる重厚な歌唱に仕上がっていて、目が覚める思いがしました。

 このアルバムを通して聴いて、強く感じたのは、50年代後半から、70年代初めまでの、ボビー・ブランドの影響力の凄まじさです。
 ゴスペル・ブルースと呼ばれる「あの感じ」を出そうとして、精一杯頑張っている、シンガー達の、恐らくは散逸するしかなかったアイテムが、見事にまとめられています。

 このコンピレーションは、ブランドの歌唱スタイルと、デュークのサウンド、とりわけ60年代半ばのデューク・サウンドの再現を目指した、素晴らしい楽曲たちを集めた、近年最高クラスのコンピだと感じました。


なんと、YouTubeにアップされていました。
マール・スピアーズのIt's Just A Matter Of Timeです。



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