この場合、必ずしも記憶ははっきりしたものでなくともよい。
大事な事は、それがもう存在しないにも関わらず、その存在しないものが、微かに、朧気に、今ここにおいて透かし見る事ができる、と言う事だ。
母親の姿はここには「ない」のに、子供を通して、今ここに「ある」かの様に思えてくる。
過ぎ去って既に「ない」ものが、今「ある」ものの中に浮かび上がってくる、と言う様な現実感覚が日本文化の重要な特質だと言ってよいだろう。
この事は又、言い換えれば、我々日本人は、現在この場に現実に存在するものの内に、過ぎ去って消えてしまったものを見ようとする、と言ってもよい。
ぞの時、我々は過ぎ去ったものを愛おしみ、移り行く時を感じる。
京大名誉教授 佐伯 啓思
愛媛新聞 現論から
日本は益々「面影」を失いつつあるらしい。
「地方を守る」と言う政治家の言葉も空しく響くらしい。
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