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2023年02月19日

第37訓 西郷隆盛の遺訓を現代に顧みて

明治維新の立役者の西郷隆盛の訓話をまとめた「南洲翁遺訓」を垣間見て、
現代の日本の政治や世相を自分ながら解説してみよと思います。
南洲翁遺訓は全部で41訓ありますが、今日は第37訓を垣間見てみます。


序文

真心や誠実は永遠

真心.PNG


原文

天下後世迄も、信仰悦服せらるるものは、只是一箇の真誠也。
古へより父の仇を討ちし人、其の麗ず挙て数へ難き中に、
独り曾我の兄弟のみ、今に至りて児童婦女子迄も、
知らざる者の有らざるは、衆に秀でて、誠の篤き故也。

誠ならずして、世に誉めらるるは、僥倖の誉也。

誠篤ければ、縦令当時知る人無くとも、
後世必ず知己有るもの也。



仮名入り

てんかこうせいまで    しんこうえっぷく             ただこれいっこ  しんせいなり
天下後世迄も、信仰悦服せらるるものは、只是一箇の真誠也。

いにし    ちち  かたき   う    ひと  そ    か   あげ   かぞ  がた なか
古へより父の仇を討ちし人、其の麗ず挙て数へ難き中に、
ひと  そが   きょうだい    いま   いた    じどうふじょしまで 
独り曾我の兄弟のみ、今に至りて児童婦女子迄も、
し もの あ  しゅう ひい まこと あつ ゆえなり
知らざる者の有らざるは、衆に秀でて、誠の篤き故也。

まこと          よ  ほめ           ぎょうこう ほまれなり
誠ならずして、世に誉めらるるは、僥倖の誉也。

まことあつ      たといとうじ  し    ひとな 
誠篤ければ、縦令当時知る人無くとも,
こうせいかなら ちき  あ      なり
後世必ず知己有るもの也。



私流訳

世の中で、未来永劫に信じ語り継がれたものは、ただひとつ人間の真心である。
昔から、父の仇討ちをした人は数えきれないほどたくさんいるが、
その中で、曾我の兄弟の仇討ちだけは、
今の世に至るまで女性や子供までも
知らない人のないくらい有名なのは、
多くの人にひときわ高くでており誠実で真心が深いからである。

誠実で真心がなくて、世の中に称賛されるのは
それは偶然の幸運に過ぎない。

誠実で真心が深ければ、たとえその当時は、誰も知る人がいなくても、
その後の世に必ず尊いことと称賛されるものである。




私流解釈

人の真心は、未来永劫に語り継がれ尊いものであり、
真心で誠実であることの大切を説いている遺訓であります。

この中で、仇討ちが例となっていますが、
鎌倉時代から江戸時代までは、仇討ちは公認のものでありました。
幕府や藩が及ばないものであれば、仇討ちの手続きをすれば公認になった時代であります。
武士の親などがだれかに殺されたら、その息子は、仇討ちをするような風潮があったようです。
何もしないとなるとその家臣に、仇討ちをしないのは武士ではないとまで言われた時代です。
そこが時代背景が、今とは異なるものですね。
明治になると仇討ちは禁止になり、その代わりに法律がその変わりになりました。
まだ、西郷の時代でそれが大切にされていました。
現在でも忠臣蔵が仇討ちとしては、有名ですが、私は、曾我兄弟の仇討ちはこの遺訓に触れるまではまったく知りませんでした。

私の母は、今は90歳ですが聞いてみると、母の子供の頃は、町内に演劇団が来て、この曾我兄弟の仇討ちの演目は普通にあり、当時の子供でも知っていた内容だったそうです。つまり、日本中でかなり有名なものだったみたいです。
今でも鹿児島では毎年、「曽我どんの傘焼き」は、鹿児島三大行事の一つに数えられており、昨年の7月に開催されていました。曾我兄弟が仇討ちをする時に暗闇を亡き父が使っていた和傘を燃やして松明代わりに使ったのが由来です。
さすが西郷さんの生まれ故郷です。今でも受け継がれているには素晴らしいです。

曾我兄弟の仇討ちは、父の仇討ちの物語で最後には、源頼朝まで出て来ますので結構面白いのですが、人間関係が難しいのでYouTuberの戦国BANASHIさんの動画をご覧ください、彼の語りも素晴らしいですし、解説もわかりやすく、面白いですよ。



戦国BANASHIさんの解説で、
「仇討ちの話は現在ではそれほど語り継がれなくなりましたが、
勧善懲悪ものに変わりました。
時代劇で言えば、水戸黄門や銭形平次や必殺仕事人であり、
鬼滅の刃もそれにあたるかもしれません。」
この解説は私も共感する次第であります。

日本人には悪を憎み、人の尊厳を犯すことを許さないDNAや心や精神があると思います。
それがあるからこそ、日本人の道徳・おもてなし・やさしさ・強さ・正義感があると感じる次第であります。

先人が残した真心を大切にし、自らも真心を持つよう精進する次第であります。






現代に顧みて

時代によって、語り継がれるものは変遷する。
仇討ちはそのひとつかもしれませんね。
戦後もしばらくは、歌舞伎・演劇などの演目になっていましたが、
現代では、そういったのは「忠臣蔵」ぐらいですね。
でも、平成から令和にかけてそういったものはほとんど目にしなくなりました。
ただ、忠臣蔵を題材にしたNHKの「忠臣蔵狂詩曲」、パロディもので「決算!忠臣蔵」などがあります。

私は、仇討ちの文化を継承しなければとまでは思いませんが、
日本には、鎌倉時代から昭和の初期までそういったものが大切に語り継がれていることが、重要と感じる次第であります。
親に対する畏敬の念、家督を大事する教え、自尊心を傷つけらてた時の反骨心
こういったものを大切にする日本の文化があったということと、
そのことに気づくことによって、現代の価値観や道徳を考えると、新たなこれからの日本人の価値観が創造できそうな感じがします。

仇討ちまでもして、親の尊厳を守る価値観は、到底今の世の中では通用しないかもしれませんが、
尊厳や威厳を大切にした武士の誠実さは見習うことはあると感じる次第であります。

最後まで読んで頂きましてまして、有難うございます。







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