夜中でも照明が消えることのないコンビニエンス・ストア。電気代を節約できる要素でありながら、暗くすると陰気な印象を与えてしまうので、お店にとっては痛しかゆしだ。
そんな悩みを解消すべく、コンビニの照明はどこまで減らすことができるのか?をマジメに研究したデータがある。ところどころ蛍光灯を抜く「間引き」が定番だが、25%ほどが限界で、それ以上抜くと「暗い感」が強まり悪印象を与えてしまう。ところが冷蔵庫の照明をうまく利用すると、好印象のまま省エネができるのだ。
■コンビニは明るさが命
大手コンビニの名前は営業時刻を意味し、日本に登場した当時はその名の通り「朝7時からよる11時まで」しか営業していなかった。ところが現在は24時間・365日営業がコンビニの宿命となり、早朝でも深夜でも照明が消えることはない。遅い帰宅の際は、明るさが心強い存在にも思えるが、客数を考えるとムダに明るい店も多い。
それもそのはずで、多くの客を呼び込むためには店頭やショーウィンドウを明るくするのがセオリーなのと同時に、JISで知られる日本工業規格でも店内の明るさの基準が定められているからだ。
照度とは、照明器具が放つ明るさではなく、実際に届く光の量を意味し、lx(ルクス)の単位で表される。JIS Z9110-1979の照度基準を抜粋すると、
・住宅・手芸や裁縫(さいほう) … 1,000〜1,500lx
・住宅・読書 … 500〜750lx
・住宅・トイレ … 50〜100lx
・商店・陳列の最重点 … 2,000lx
・商店・レジ … 500〜750lx
・商店・一般陳列品 … 300〜500lx
とされ、「基準」とはいえレジは読書ができるほどの明るさ、一押し商品などの「陳列の最重点」は住宅の基準を超えた明るさとなる。コンビニなどの「商店」はムダに明るいと思うのは間違えで、むしろ当然の照度なのだ。
■冷蔵庫は優秀な照明器具?
コンビニの照明はどこまで暗くできるのか? もっとも重要な客の印象をもとに、平均照度と「明るさ感」を比較すると、
・25%減 … 900lx / 90%以上
・50%減 … 800lx / 80〜90%
と、25%減ならあまり気にならない範囲、半減となる50%でもレジや一般陳列の基準を上回ることがわかった。
前言撤回。多くの店舗は本当に「ムダに明るい」のだ…。
このデータは、もっともカンタンな節電方法である「間引き」、つまり機械的に何割かの蛍光灯を「抜く」方法なので、日中ならショーウィンドウ近くは明るいままだが、店の奥は暗い感が高まり、集客面では効果的とは呼べない。そこで利用されるのが「冷蔵庫」で、この照明が届く範囲の天井照明を積極的に間引くことで、印象を悪くしないまま節電できることがわかったのだ。
根本的に解決するなら、
・照明器具をすべてLED化する
・「日光」を上手に利用する
で「そんなの当たり前!」といわれそうだが、蛍光灯は100Vを超える高電圧が使われ、単純にコンセントにつながっているわけではないこと、日光を積極的に利用するなら天窓/採光(さいこう)窓など構造を変えないといけないことから、言葉でいうほどたやすいものではない。ねじこむタイプの「電球」タイプなら交換は用意だが、筒状/円形の蛍光灯をLED化するには、高価な専用タイプを利用するか、器具ごと交換が必要なのだ。
すぐにできる範囲で、天井照明の「間引き」はもっとも合理的な手段ではあるが、あるべきものがない状態には「チープ」感が否めない。その条件下で、背の高い冷蔵庫の照明をうまく利用する方法こそ合理的と呼ぶべきだろう。
コンビニに限らず、バイト先の省エネを「卒論」のネタにしてみるのも一興だろう。
・JIS規格によって基準となる照度があるので、ムダに明るいコンビニも存在する
・レジの基準は、手芸や裁縫ができるよりも明るい
・「冷蔵庫」の照明を利用すると、「暗い」と感じさせずに節電できる