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2019年08月24日
日韓関係 「中国と北朝鮮以外の全ての国が負ける形勢の戦い」
「中国と北朝鮮以外の全ての国が負ける形勢の戦い」
「最大の敗者は韓国」日韓軍事協定破棄に米紙
〜飯塚真紀子 在米ジャーナリスト 8/24(土) 11:37〜
「結局は、日本統治時代に日韓に生じた憎悪が問題」とニューヨーク・タイムズは指摘
文政権が日韓軍事情報協定（GSOMIA）を破棄し、アメリカでも波紋が広がって居る。アメリカには、戦後、北東アジアに於ける安全保障体制を構築して来たのはアメリカであると云う自負があるからだ。北東アジアの安全保障体制に於いては、アメリカが親なら日本と韓国はその子供、兄弟の様なものである。親としては、築き上げて来た家族の結束を感情的な兄弟喧嘩により壊されたく無いのだ。
日韓夫々が正しい状態に
自国の事しか考えて居らず〈兄弟喧嘩〉の介入には積極的で無いトランプ大統領だが、８月初め、日韓の対立を憂慮し、軍事協定の更新を支持する発言をして居た。
「両国が仲良く無い事を懸念して居るよ。彼等の仲が良く無かったら、我々は何をして居るんだって事に為る。彼等は仲良くし無くては為ら無い。仲良くする事は重要だ」
今回の軍事協定破棄を受け、米国防総省は日韓に迅速な対処を求めた。
「米国防総省は強い懸念と失望を表明します。相互防衛と安全保障の結び着きは、日韓が他の分野で摩擦があったとしても維持し無ければ為ら無いと強く信じて居ます」
ポンペオ国務長官は「韓国の決定には失望して居る」と韓国に対して強く苦言を放ったが、以下の様な希望を述べた事も注目すべきだ。
「２国夫々が、関係を正しい状態に戻し始める事を望んで居ます」
２国夫々がと云う事は、詰まり、日本もと云う事だ。正しい状態とは何なのか？米国は、日本による韓国の「ホワイト国」除外を懸念して居たが、ポンペオ氏としては、韓国が軍事協定破棄を取り消すだけでは無く、日本も韓国の「ホワイト国」除外を取り消して欲しいと考えて居るのかも知れ無い。
最大の敗者は韓国、最大の勝者は北朝鮮
アメリカの主要メディアも韓国の軍事協定破棄を批判して居るが、トランプ氏にも非難の矛先を向けて居る。トランプ氏はこれ迄積極的に日韓の争いに介入する姿勢を見せ無かったからだ。その為、今は、アメリカのリーダーシップが重要に為る時だと指摘する声もある。
ワシントン・ポスト「トランプ政権は、大喧嘩を収める為に、もっと早くもっと強気に、対処すべきだった」と批判し「最大の敗者は韓国で、最大の勝者は北朝鮮だ」と報じて居る。同紙は、数々の識者の発言も紹介して居る。
ハリー・カジアニス氏（センター・フォー・ナショナル・インタレスト、シニア・ディレクター）
「韓国が日本との情報協定を破棄した事にショックを受けては居ない。今はトランプ政権が争いの調停に介入する時だ。事態は悪化するだけだろう。両国を結束出来るのはアメリカのリーダーシップだけなのだ」
ロバート・ケリー氏（釜山国立大学政治学教授）
「これ（情報協定破棄）は間違った考えだ。しかし、多くの欧米のアナリスト達は〈韓国の左派が情報協定の前提、詰まり、日本がパートナーであり北朝鮮が敵であると云う前提を共有して居無い事〉を認識して居ないと思う。韓国の左派に取ってそれは逆なのだ。詰まり、日本が敵であり北朝鮮はパートナー。世界は今、韓国が、日本と北朝鮮を巡って大きく２極化して居る事を学んで居るのだ」
ミンタロウ・オバ氏（元米国務省コリアデスク高官）
「情報協定を更新し無かった事は、驚くべき程バカ気た決断だ。韓国は他のどの国よりも自国を傷着けることに為る。韓国政府は更新し無かった為に、ワシントンで非常に大きな対価を払う事に為るだろう。更新し無かった事は、米韓同盟の建設的アプローチに反して居る」
中国と北朝鮮以外の全ての国が負ける形勢
ニューヨーク・タイムズ
日韓の決裂は、日本が韓国を統治して居た時代に両国間に生じた憎悪に起因して居ると指摘。又、日韓の争いに介入し無かったトランプ氏は頼みに為ら無いが、日韓はアメリカの介入無くとも、憎悪が両国にダメージを与え、本当の敵達を利すると云う愚かさを理解すると観て居る。
「日韓の決裂は安全保障や重要な（半導体）素材や貿易管理ミス等とは全然関係が無い。結局、昔からある憎悪が問題なのだ」
「これは、中国と北朝鮮以外の全ての国が負ける形勢と為る戦いだ。トランプ政権は近い関係にあるアジアの同盟国（日韓のこと）が正気に戻る事を頼みにして居る筈だ」 「憎悪のルーツは、日本が韓国を植民地にして居た1910年〜1945年に遡(さかのぼ)る。具体的に言うと、それは性奴隷として韓国人を残虐に搾取した事や第２次大戦中の強制労働だ。アメリカ政府は、ズッと前に介入し争いを止めさせるべきだったが、トランプ政権はそれに全く無関心だった」
「世界の重要地域に有る重要な２つの同盟国の争いは、２つの同盟国やアメリカに取って悪しき事であり、又、争いを止め無くては為ら無いと云う事を理解する為に、トランプ氏を頼りにする事は出来無い。 しかし、日韓は、両国間に有る憎悪が、経済や安全保障にダメージを与え両国の本当の敵達を手助けする事に為るのは愚かな事だと理解するのに、アメリカの助けは要ら無い筈だ」
日韓は政治的打算をして居る
トランプ氏が日韓の紛争を収めるべく積極的に関与して居無い為、日韓が夫々政治的打算に基づいて行動して居ると指摘。
「協定が無ければ、アメリカは日韓の情報機関のミドルマンに為ら無ければ為りません。危機的事態に陥った場合、それは全然理想的では無い。
３カ国は、脅威に対してリアル・タイムにコミュニケートし連携する必要があります。３カ国が関与する場合、アメリカの政治的関与が非常に重要に為ります。トランプ氏は同盟を台無しにしても構わ無いと思って居るのかも知れませんが、その為、日韓は夫々政治的打算を行なって居る状況なのです」（シンクタンク“センター・フォー・アメリカン・プログレス〈国家安全保障部門部長〉ケリー・メグサメン氏）
責務はアメリカにある
アメリカの軍事専門紙「スターズ・アンド・ストライプス」
情報協定破棄により、アメリカを介して日韓の情報が行き来する様に為る為、重要な情報が伝えられ無く為る事を懸念。又、アメリカが両国の関係の立て直しに乗り出すか、今の様にハブのママで居続けるか、アメリカに責任が掛かって居ると指摘して居る。
「（情報協定破棄は）通訳を使う事に為る様なものです。この場合、通訳はアメリカに為ります。通訳を介せば、常に何かが伝えられ無く為るものです。だから、日韓の直接対話が重要だったのです」（韓国の退役中将、インブン・チャン氏）
「軍事協定を破棄したのは、韓国の指導者達が北東アジアの安全保障問題より国内の政治問題を優先させたからでしょう。軍事協定に署名後、表面的には進展を見せて来た日韓関係ですが、その立て直しにアメリカが乗り出すのか、或はハブのママで居続けるのか、今、責務はアメリカにあります」（元米国防総省高官マーラ・カーリン氏）
日韓軍事情報協定は、アメリカの尽力により日韓が署名したものだ。アメリカと云う親は、日韓と云う兄弟を仲直りさせる事が出来るのか？ 或は、兄弟喧嘩が今後激化しても、無関心を決め込み続けるのか。今後の動きが注視される処だ。
飯塚真紀子 在米ジャーナリスト
大分県生まれ。早稲田大学教育学部英語英文科卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会問題、トレンドなどをテーマに、様々な雑誌に寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲルなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』（講談社刊）、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』（草思社刊）、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』（講談社 ）がある。
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