こんばんは。土斑猫です。
遊戯王OCG二次創作「霊使い達の黄昏」31話掲載です。
時に、「ガスタ」の新カードで「ガスタの神裔 ピリカ」と言うのが出ております(今更ですが)
彼女、どういう立ち位置なんでしょう?
巷ではその風貌から、「リーズ」と「カムイ」の子供という説が有力な様ですが、あまりにも歳が離れ過ぎててしっくりこない。
いやまぁ、世の中には10歳差だの20歳差の御夫婦もいらっしゃる訳ですから、ありっちゃ、ありなんですが・・・。
んで、もう一つの説がカムイの許嫁だという説。
これなら、見た目の年齢的にもしっくりきます。
でもこの場合、「神裔」と言う二つ名やあえてリーズと似た特徴をつけた理由が分からない。
ううむ・・・。
個人的には、後者の説を押したいんですよね。
そうすれば、この小説でも使えるし・・・。
って言うか、可愛いから使いたい!!
けど、正確な立ち位置が分からん事にはどうにも・・・。
こりゃ、コ○ミが正式な設定を発表するまで待たなきゃならんか・・・?
しかし、それだといつのこったか分からんし・・・。
は!!そうだ!!ここはいっそ関係を捏造する方向で・・・。
どうせ二次創作だし、パラレル設定だし・・・(悪い笑い)
力づくで押しちまえば・・・。
などと思いつつ、Wikiを確認してみると・・・
リーズとカムイの子孫って確定しとるやないかーい!!!
つ・・・詰んだorz
流石に今の話では使いようがない・・・。
しかしまさか、コ○ミの開発陣が「オネショタ」属性を持っていたとは・・・(←ヲイ
む・・・無念。
ま、まあ、かの事変の後の世界は平和になっている様で、それはそれで良かったです・・・。
・・・チクショウ・・・。
―24―
・・・それは、有意なのだろうか。
それとも、無意と言うべきなのだろうか。
まるで、濁った羊水の中でまどろむ様に。
白骨(しらぼね)の揺り篭に揺られる様に。
彼の自我は曖昧だった。
明確な思考も。
自己認識すらも。
全ては白痴。
全ては忘我。
黒く澱んだ、白紙の様な意識。
そこに嘔吐する様に注ぎ込まれるのは、絶える事無き衝動。
麻薬の様な悦楽。
劇薬の様な狂気。
微かに残る意識を蝕みながら、それは言う。
壊せ。
壊せ。
全ての、モノを。
殺せ。
殺せ。
あらゆる、イノチを。
憎め。
憎め。
世に在する、万物を。
憎め?
憎む?
そう。
自分は、憎んでいるのだ。
何故かは、分からない。
思い、出せない。
けれど、自分は憎んでいる。
今、赤く染まる目の前の光景を。
今、足元で蠢く卑小なる者達を。
それだけは、確かな事。
想いは目的となり。
目的は衝動と化す。
それに促されるまま、壊した。
砕いた。
引き裂いた。
けれど、溺れる乾きは止まらない。
壊す。
壊す。
壊す。
癒えない。
癒されない。
だから壊す。
壊し続ける。
そんな時、彼の前に現れた一つの存在。
それまで足元で蠢いていた者達よりも、なお小さな存在。
飛ぶモノを駆って、肉薄してきたもの。
それを見止めた時、ひびけた心臓が強く打った。
赤い視界の中で、なお赤く浮かび上がるその姿。
顔。
瞬間、脳裏を突き刺す映像。
紅い空。
クルクルと回る蒼い髪。
打ち下ろされる爪。
飛び散る飛沫。
朱く染まる視界。
伸ばす手。
届かない。
届かない。
届かない。
堕ちてゆく。
堕ちてゆく。
堕ちてゆく。
上から伸びる手。
たなびく蒼を掴む。
引きちぎる。
見上げたもの。
歪に歪む笑顔。
顔。
顔。
顔。
それが、目の前の顔と重なる。
コレだ。
コレだ。
コレだ。
のたうつ狂気が、喜びに跳ねる。
この痛みを癒すもの。
この乾きを癒すもの。
喜びのままに、凶禍が渦巻く。
迸る熱。
叩き落とす。
無様にもがきまわるソレ。
乾きヒビけた心。
歓喜に軋む。
後は、壊すだけ。
それで、癒される。
全てが、癒される。
多少の邪魔も入ったが、それはもう排除した。
だからもう、壊すだけ。
狂喜のままに、手を伸ばす。
もう、少し。
そう、少し。
だけど。
だけど。
その時。
水が、流れた。
流れる水が、手の先からソレを奪い取った。
怒りは、沸かなかった。
その代わり、世界が止まった。
蒼い。
どこまでも。
どこまでも。
どこまでも蒼く、澄んだ流れ。
腐敗した心を、清い流れが優しく撫でた。
「ギゴ!!あんた一体何やってんのよ!?」
目の前で佇む巨獣に向かって、エリアは叫ぶ。
その声に、ギガ・ガガギゴの巨体が揺らぐ。
「言ったじゃない!!ついてきてくれるって!!」
叫ぶ。
「約束したじゃない!!ずっと一緒にいようって!!」
叫ぶ。
「なのに、あんた何やってんのよ!?」
喉が裂けんばかりに、叫ぶ。
ギ・・・ゴァ・・・ア・・・
戸惑う様に呻く、ギガ・ガガギゴ。
「戻って!!」
届いている。
確実に。
確信したエリアが、さらに声を張り上げる。
「戻ってきて!!ギゴ!!」
言葉とともに、差し伸べられる手。
ギィ・・ァアアアアアアアァアッ!!!
鋼の巨獣は頭を抱え、苦しげに悲鳴を上げた。
ギャリィイイイインッ
鉈の様に振り下ろされた節足が、白銀の氷壁に弾き返される。
「んっきぃいいいっ!!壊レナイィイイイ!!」
痺れる脚先をプルプルと震わせながら、イビリチュア・マインドオーガスは苛立たしげに喚く。
彼女は先刻から氷壁の中にいるアウス達を狙って攻撃を仕掛けていたが、アクアマリナの硬い防御をどうしても破れずにいた。
「ア゛ァアアアアアッ!!苛ツク苛ツク苛ツクゥウウウッ!!」
「「やれやれ・・・。品のない事だ。」」
氷壁の向こうで叫び散らす魔獣を見ながら、アクアマリナは溜息をつく。
しかし、ジリ貧なのは彼もまた同じだった。
彼―ジェムナイト・アクアマリナは防御に特化した戦士である。
一旦守りに入れば、その鉄壁とも言える防御を破れる者はそうはいない。
しかし、それはあくまで守りにおいての事。
攻撃面においては、素体を同じくするエクシーズ体の『ダイガスタ・エメラル』に劣る。
彼の攻撃では、目の前のマインドオーガスを倒す事は出来ない。
戦いにおいて、敵の数を減らせないと言う事は、紛う事無き弱点である。
まして、今の彼には守りを解けない理由もあった。
紺碧の目が、チラリと後ろを見る。
そこには膝をつき、苦しげに息を吐く少女―アウスの姿。
杖でかろうじて身体を支えているものの、滝の様に滴る汗と虚ろな眼差しがその疲労が並大抵のものではない事を物語っている。
魔法、特に高位のものの使用は術者の魔力と精神力、そして体力を大幅に削る。
それを成した彼女の身体は、限界に近い疲弊に悲鳴を上げていた。
まして、今は禁呪・『王宮の勅命(エンペラーズ・トレアニー)』の影響下。回復魔法はおろか、それに類する魔法アイテムすら効力を発揮出来ない。
『お嬢、お嬢、大丈夫でっか!?しっかりしてぇな!!』
彼女の使い魔がその周りを飛び回り、懸命に励ますものの、そんな事で事態が好転する筈もない。
「・・・君・・・」
苦しい息の間から、彼女が声を放つ。
「・・・ボクは・・いい・・・。それより、も・・彼女、達・・・を・・・」
その言葉の意味は、即座に知れた。
今、彼らの周りでは二人と二匹の仲間が危機に陥っていた。
上を仰ぎ見る。
傷ついた身を押し、空の敵へ向かった風の少女とその使い魔達。
彼女達の姿は、もう見えない。
空に浮かんだ儀水鏡から溢れ出す魚妖の群れに呑み込まれ、その無事を確認する術すらない。
視線を地に戻す。
その先にいるのは、鋼の巨獣と一人向かい合う水の少女。
必死に巨獣に呼びかけるその姿は、無防備以外の何物でもない。
もし、巨獣かマインドオーガスのどちらかが攻撃に転じれば、その結果は目に見えている。
否、彼女達だけではない。
崩れた民家の向こうで気絶している、スフィアード。
忘我の様子で佇むカムイ。
今だ、先のダメージが抜けきらないカーム。
守るべき者達は、あまりにも多かった。
「「むぅ・・・。」」
歯噛みするアクアマリナの背に、また声がかけられる。
「・・・頼む・・・。どうか、皆を・・・。ボクにはまだ、手があるから・・・」
見え見えのウソだった。
魔法使いが『王宮の勅命(エンペラーズ・トレアニー)』の影響下で、しかもその衰弱しきった有様で、どうやって身を守ると言うのか。
彼が他の者の元に向かうために、この氷壁を解けば、彼女はマインドオーガスによって即座に八つ裂きにされてしまうだろう。
そんな事が、許される筈はなかった。
多を守るために、個を捨てる事が出来ない自分。
それを誇るべきなのか、忌むべきなのか、今の彼には分からなかった。
と、不意に魔獣の脚が氷壁を叩く音が止んだ。
視線を上げたアクアマリナの顔が歪む。
マインドオーガスが、”彼女”を見ていた。
鋼の巨獣に呼びかける少女。
その姿を、二つの双眼と四つの魚眼が、しかと映していた。
最初は、いつまで経っても事を成さない”飼い犬”を殴りつけるつもりだった。
けれど、“彼”の方を向いた瞬間、その前に立つ少女の姿が目に入った。
先刻、つまらない手を使って自分の脚の一本を切り飛ばした女だった。
そうだ。まだ、アイツが居たのだ。
アウスやアクアマリナに対する鬱憤が、全て彼女に向かう。
矛先を変えようとしたその時、妙な様子に気がついた。
少女は、彼女の”飼い犬”に向かって何やら必死に呼びかけていた。
その表情を見て、ピンと来る。
それは、自分も良く知るもの。
そう。
それは。
その顔は。
恋人に。
想う相手に、心をさらける女の顔。
それを見止めた瞬間、ある思考が頭を巡る。
”アレ”の出処。
魔法使いの女。
対峙する、二人の様子。
数個のファクターが導き出す、一つの結論。
それに達した時、マインドオーガスはその可憐な顔に歪んだ笑みを浮かべた。
「ギゴ!!お願い、戻って来て!!」
言いながら、前へと踏み出すエリア。
ゴゥルルルルル・・・
対するギガ・ガガギゴは、低く唸りながら怯える様に後ずさる。
それに追いすがる様に、さらに前に出る。
「逃げないで!!」
叫ぶ声が、鋼に侵された心臓へと突き刺さる。
「あたしを見て!!ギゴ!!」
また一歩、エリアが”彼”に近づこうとしたその時―
ズガァンッ
「何ヤッテンノォ?アンタ。」
二人の間を隔てる様に、節くれた脚が地面に突き刺さった。
「!!」
ハッと振り仰ぐエリア。
向けた視線の先には、歪んだ笑みを浮かべて自分を見下ろすマインドオーガスの姿。
「「いかん!!」」
マインドオーガスがエリアに近づく様を見たアクアマリナが、思わず飛び出そうとする。
しかし―
「ほぉ?その壁を解くか。」
不意に上から降ってきた声に、足が止まる。
見上げれば、上空に浮いた杖の上からリチュア・ヴァニティが酷薄な顔でこちらを見下ろしていた。
「それは朗報だな。その壁がなくなれば、そこの娘もキラー達の餌にしてやろう。そう・・・」
言いながら、ヴァニティは目の前で蠢くキラーの群れを指指す。
「この、娘の様にな・・・。」
白い顔に浮かぶ、亀裂の様な笑み。
その言葉に応じる様に、氷壁の天井には空の晩餐から溢れた無数のキラー達が、カチカチと歯を鳴らしながら取り付いていた。
「「・・・・・・!!」」
アクアマリナはその瞳を歪め、沈黙する。
せめても、アウスを守る事。
今彼に出来る事は、他に何もなかった。
「サテ、アンタ。あたしノ『ぎてぃ』二何ノ用?」
カシャカシャと節足を鳴らしながら、マインドオーガスがエリアとギガ・ガガギゴの間に入り込む。
その威容に青ざめながらも、エリアは気丈に”彼女”を睨み返す。
「エリアル・・・。アンタだったのね・・・。」
「は?」
自分に向けられる言葉と視線に、”彼女”はしばしポカンとして眼下の少女を見つめる。
やがて、その目が何かに気づいた様に軽く見開くと、次の瞬間一気に破顔する。
「アラァ、ヤッダァ〜!!”えりあ”ジャン!!ナッツカシィ〜〜!!」
キャラキャラと、酷く愉快そうに言葉を紡ぐ。
「ソウ言エバ、あんたモ一族ヲ飛ビ出シテタンダッケ。退屈ダッタモンネェ。アソコ。」
ケタケタと笑うマインドオーガス。
そんな”彼女”に向かって、エリアは黙って険しい顔を向ける。
「デ、ドウ?ソノ後ハ?随分ト貧相ナ格好シテナサルケド?」
からかう様な調子で言いながら、マインドオーガスはググッとその顔をエリアに近づける。
「マア、あんたハあたしミタイ二明確ナ目標ガアッタ訳ジャナイシネェ。野垂レ死二シナカッタダケデモ、儲ケモノカシラ?」
嘲る様にエリアを見つめる、暗蒼色の瞳。
しかし、それをエリアは真正面から見返す。
「アラ、怖イオ顔。ヒョットシテ、怒ッテルゥ?」
「・・・怒ってるわ。」
エリアの口が、ボソリと呟く。
「アレマ。デモ、本当ノ事ダシネェ〜。」
「・・・違う。」
「ウン?」
「違うつってんのよ!!」
ビュッ
瞬間、エリアが手にした杖でマインドオーガスの顔を突く。
「!!」
ジャッ
咄嗟に顔を逸らすマインドオーガス。
その頬を杖がかすめ、赤い跡を残す。
「・・・・・・。」
昏い怒りに彩られる、蒼い双眼。
しかし、そこから発せられる殺気にも、エリアは怯まない。
「そんな、くだらない事で怒ってんじゃないわ!!」
「・・・何・・・?」
「アンタなんかに用はないのよ!!邪魔!!さっさとどきなさい!!」
物凄い剣幕で、怒鳴る。
その様を見つめる、マインドオーガスの目。
それが、キュウと細まる。
「アア、ソウ言エバあんた、妙二『ギティ』二絡ンデルワヨネェ・・・。」
「『ギティ』・・・?何よ、それ?」
「『ギティ』ハ『ギティ』ヨ。あたしノ、”ぺっと”。」
そう言って、後ろで頭を抱えて呻いているギガ・ガガギゴを示す。
それを聞いた途端、エリアの顔がその険しさを増した。
「何寝惚けた事言ってんのよ!?その子は『ギゴ』!!あたしのギゴよ!!」
「ヘェ?あんたノ?」
「そうよ!!あたしの!!他の誰のでもない!!誰にも渡さない!!あたしの、あたしだけのギゴ!!」
肺の中の空気を全て叫びに変え、エリアはゼイゼイと荒い息をつく。
その様を、黙って見ていたマインドオーガス。
しかし次の瞬間、その顔がピシリとひび割れる。
「・・・あは、あはははは・・・」
「!?」
割れた亀裂は見る見る広がる。
広がった割れ目は歪んだ笑みとなり、その可憐な顔に張り付いた。
「あは、あはは、あはははははははははは!!」
濁った嬌声を響かせながら、マインドオーガスがその細い身体を逸らす。
艶かしい肢体を覆った鱗が、黄昏の日を受けてキラキラと光った。
「何よ!?何が可笑しいの!?」
「あはははは、ダッテ、『あたしノぎご』ダッテサァ!!コンナとかげ相手二、何むき二ナッテンダカ!!受ケルー!!」
「・・・・・・!!」
さらに険しさを増す、エリアの顔。
けれど、”彼女”は意にも介さずに笑い続ける。
「ソウカソウカ。ぎてぃガ言ッテタ”えりあ”ッテ、あんたノ事カ。納得納得。」
クワンクワンと、破鐘の様に響く笑い声。
それを黙らせようよ、エリアがもう一度口を開いたその時、
グイッ
マインドオーガスが、逸らしていた身を急に起こした。
同じ高さでつながる、二人の視線。
「!!」
咄嗟に飛びずさろうとするエリア
しかし、その前に”彼女”が囁く。
「あんた・・・」
その言葉を、言う。
口を三日月の形に歪ませながら。
「アノ子二、惚レテルンデショウ?」
「―――っ!!」
思わず固まる、身体。
その様を見たマインドオーガスは、大口を開けてまたケラケラと笑う。
「涙グマシイワネェ。オ互イ二求メ合ッテタ訳カ。えりある、妬ケチャウ!!」
目尻の涙を拭きながら、揶揄する様にウンウンと頷く。
「―――っ!!うるさい!!」
怒鳴りながら、杖を横殴りに振るうエリア。
それをヒョイと避けながら、マインドオーガスはなおも笑う。
「オオ、怖イ。」
「余計な事くっちゃべってないで、さっさとそこをどきなさい!!でないと、アンタから片付けるわよ!!」
「あはは、怒ラナイデヨ。ソンナ二ぎてぃノ事ガ恋シイナラ、ソノ想イ、叶エテア・ゲ・ル。」
「・・・え?」
ポカンとするエリアを、不気味な程に優しげな眼差しが見下ろす。
「”コレ”ノ、オ礼二ネ・・・。」
スルリと上がる、一本の脚。
途中で断ち切られたそれは、生々しく脈打つ断面からドクドクとどす黒い体液が流れ出している。
それが、先刻エリアがつけた頬の傷をズルリと撫でる。
頬に付いた黒い模様をペロリと舐めて、マインドオーガスはニヤリと微笑む。
それは、先までのものとは違う、怖気を誘う様な笑み。
邪悪と言う言葉をそのまま貼り付けた様なそれに、エリアの背筋を冷たい感触が這い登る。
「何、言って・・・」
エリアの言葉が紡ぎ終わる前に、マインドオーガスの身体が動いた。
そして―
ドズゥッ
ギィガァアアアアアッ!!
「―――っ!!」
唐突に響く、鈍い音。
地を裂く様な絶叫。
エリアが、声にならない悲鳴を上げる。
後方で頭を抱え、苦しんでいたギガ・ガガギゴ。
その米神に、鋭く伸びたマインドオーガスの脚が突き立てられていた。
「バ・・・何すんのよー!!」
思わず駆け寄ろうとするエリア。
しかし、それは蠢く他の脚に阻まれる。
「く・・・!!」
「イイカラ、大人シク見テナサイナ。」
そう言うマインドオーガスの身体が、昏い光を放ち始める。
昏い、昏い。深海に沈みゆく様な、深く蒼い輝き。
それは突き立てられた脚を伝い、ギガ・ガガギゴの身体へと流れ込んで行く。
グゥガァアアアアアッ!!
苦悶の声を上げる、ギガ・ガガギゴ。
その様を見たエリアの顔から、血の気が下がる。
「アンタ、魔力を無理矢理・・・!?」
マインドオーガスは答える代わりに、歪んだ笑みで肯定する。
「やめて!!そんな過剰に魔力を供給したりしたら・・・!!」
バチィッ
その言葉が終わらないうちに、ギガ・ガガギゴの身体に異変が起きる。
バチバチッバチッ
鋼に覆われた身体に光が走り、ドクンと大きく波打つ。
全身にビキビキと血管が浮き上がり、筋肉が肥大する様に盛り上がる。
白金しらがねの鎧が赤く灼熱し、盛り上がる身体に押されて悲鳴を上げる。
ガァアアアアアアアアアッ
苦悶の叫びが狂気の咆哮へと変わり、大地と大気を震わせた。
ズルリ
その米神から、突き刺さっていた脚が引き抜かれる。
赤いものがネチョリと糸を引き、地面に滴る。
「あはは、具合ハドウ?ぎてぃ・・・イエ、『ごぎが・ががぎご』!!」
ゴォオオオオオオオ・・・
かけられる問いに答える様に、『ゴギガ・ガガギゴ』は雄叫びを上げる。
それを見て、マインドオーガスは楽しげに、本当に楽しげに笑い声を上げる。
ガハァア・・・
半開きになった口。
その牙の間から漏れる、熱い呼気と唾液。
紅く濁った双眼。
それがギョロリと動いて、エリアを映す。
そこにはもう、彼女に対する想いはない。
先刻まで、確かにあった筈のそれがない。
あるのは狂気。
そして、凶気。
そこにはもう、『ギゴ』であった彼はいない。
『ギティ』であった者さえいない。
在るのはただただ、破壊の衝動のみで動く”怪物”だけ。
「ギゴ・・・」
そんな”彼”を、エリアは呆然と。
ただ呆然と、見つめる。
「ドウ?気二入ッテモラエタカシラ?」
マインドオーガスが、その顔を邪やましく歪めながら言う。
「惚レタ男二”食ベテ”貰エルナンテ、女冥利二尽キルデショウ?」
そして、”彼女”はまたケタケタと笑う。
それも聞こえているのかいないのか、エリアはただ立ち尽くすだけ。
グゥフルルルル・・・
そんな彼女に向かって、ゴギガ・ガガギゴはその巨腕を伸ばす。
エリアは動かない。
動けない。
そして、その華奢な身体を、赤熱する鋼爪がゆっくりと握り締めた。
ケタケタ ケタケタ
黄昏の満ちる空に、魔女の笑いだけが響いて溶けた。
続く
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私の見立てでは、アウスがもう一つ策を授けているに違いない。そしてウィンは下から現われる!つまり詳しく説明す《このコメントにエラーが発生しました》。
ただ、やはり問題はエリアとギゴか。二人の間にはいくらでもフラグがあるが、この極限状態でどうアプローチするかは難しいところだ。うーむエンディングが見えない・・・・・・
姉弟はしばらく動けそうもないな。ガネットはやくすろ。ひーたんかわいい。