2017年07月30日
RiSE 囚われ少女の魔法譚 感想
■RiSE 囚われ少女の魔法譚
プレイバージョン:version 1.5
作者:蒼木ことりさん
http://ktnh5108.pw/rise/
時間を忘れて――というのはよく使われる比喩ですが、そうではなく。
私はこの作品の残り時間が見えるのを、寂しく思いながら楽しませて頂きました。
好きな映画の残り時間がなんとなく判ってしまうときのような、あの感覚です。
(映画をコミックに読み替えても同じ、ですね)
そして作品を終えてカーテンの外を見たら、作品の1シーンと同じ空模様になっていました。
そんな感化された気分を少し抑えながら、書いた感想です。
意見や視点の違いも、楽しんで読み進めて頂けたら嬉しいです。
■ロールプレイングノベルのこだわり
あらすじ(ゲーム同梱の「げーむについて.txt」より抜粋)
まっくろ鳥の森の奥。
世界一の大富豪・ゴルドール邸の屋敷地下に囚われている謎の少女。
魔法が失われた世界で、人を癒す能力を持つ彼女の正体は果たして何者か。
自称冒険士の少年が、その謎を解くため旅に出る。
「もしシンデレラ自身が魔法を使えたら?」という空想から生まれた、
幸せを見つけるロールプレイングノベル。
◇◇
あらすじにある通り、本作は童話「シンデレラ」をモチーフにしたロールプレイングノベル。
ノベルパートでプレイヤーを引き込み、RPGゲームパートでノベルパートの間を結ぶように話が展開されています。
図にするとこんな感じです。
[ノベルパート]-[ゲームパート]-[ノベルパート]…
こだわりを感じたのは『ノベルとゲームの境目があるのだけれど、見えないように作られている』というところです。
例えば主人公のジャックの序盤ノベルパートの印象を挙げると
・物語を導く行動や、引っ張る台詞が多い
・七つ道具を使った引き出し(スキル)を持っている
これがゲームパートでは
・敏捷性が高く先行して行動しやすい
・敵のスキル/技をハントして自分のスキルとして使う
とこのように先の印象を引き継いだ見せ場が設けられています。
切れ間を感じさせないように組み込まれているのですね。
これは意識した丁寧さだと思います。
ヒロイン)リセが加入しても、キャラクターの性格設定上、剣を振るい戦うという概念がないため、最初は戦うことができません。
ゲーム性と設定を一致させるこだわりが、ここにも感じられます。
オルソもマメな性格=正確性を要求する弓、搦め手系の特技を使う……と、他のキャラ同様に設定と性能が一致。
ここまでこだわり、伝えたいものは「ロールプレイングノベル」。
つまりノベルパートのためのゲームなのだと感じました。
付け替えの利かないキャラクターの個性で物語を進める感覚。
これは手持ちのカードで切り拓く人の生き方みたいですね。
■ゲームパートに感じる名作RPGのリスペクト
本作をプレイしていると、時々90年代のRPG「FF5」「FF6」をプレイしていた感覚が思い出されます。
例えば4人目の仲間が加わり(序盤プレイ中の方のネタバレになるので、名前は伏せます)、飛空艇を自由に操作できるようになると、行動範囲と同じようにバトルバランスのとり方もプレイヤーに大きく委ねられるようになります。
この感覚はFF5の石板集め、FF6の世界崩壊後のプレイ感と似ていて、どこからどの順序で進めていこうかみたいな悩みに襲われます。
敵のランクが2つ違いで即死させられる目にあったりとか、程よいレベリングの場所を探す楽しみがあったりとか。
自分だけのレベリングポイントを見つけたとき、自分でも忘れていた遊び方を思い出しました。
具体的にはこのポイント。
森でエンカウントが高いうえに、ちょっと高いレベル帯で行くと、ボタン押したままノーダメージ、20秒程度で一戦を終えられ、実入りも効率が良いのですね。
理想はヒーリングゼリー3体の同時出現をn秒で倒す、とか。
バトルリザルトのメッセージに、バトルタイムが表示される理由はこの辺りかもしれません。
レベリングをしているうちに目で数字(経験値、G)を無意識に掴む感覚がじわっときて、ああ今効率の良いポイントにいる!とか考えるのが嬉しくなりました。
◇◇
他にも『双蓮の指輪(二回攻撃)』を手に入れてからは各段に攻略の幅が広がるのですが、入手タイミングとそれまでの難度はFF6のソウルオブサマサを手に入れたときと同じ感覚。
刺さるところが人によって違いつつも、似たような感覚に捉われた方はいらっしゃると思います。
ボスの弱点づけにもFF5リスペクトを感じたりしました。
FF5は全てのボスに低レベルクリア可能な弱点が設定されていて、それは属性だったり行動ルーチンだったり初見でやられて覚えるタイプの何かだったりします。
(だから全滅リトライ機能があるのか、と今更思ったり)
ボスの製法をイメージできるようになってからは、ちょっと考えを先読みして初見で倒せることもあったりして、そこがハマるとやっぱり楽しいです。
駆け引きの読みあいに勝った感覚にも近いし、クイズを解いた感覚にも近い。
だから「Choice×Crisis」のような発想が持てたのですね、とここでも腑に落ちたり。
このダンジョンもキャラクターの成長を肌で感じられる仕組みが、細かに仕込まれています。
比喩ではなく本当に頭脳戦です。
バトル前のひと準備、バトルの駆け引き、どちらも達成したとき、作者さんが意図したレベルでここをクリアできると思います。
その状態はTrueEndの条件を満たしつつ、かつラスボスが適正レベルより少し上。
ゲーム上の強さ的にも、サブストーリーを終えた気持ち的にも、物語に余裕をもって向き合うことができます。
■最後はノベルパートの良さに落ち着く
タイトルの通りです。
ただ、細かに書くことはこれからプレイする方の楽しみを奪うに等しいので、書ける内容は限られます。
例えるなら章が部屋だとしたら、物語全体は家。
家から部屋を描くのではなく、部屋からカメラをズームアウトして家を捉え、最後にズームインで人の表情を映すような、そんなイメージです。
私はハッピーエンドが好きでTrue Endだけを目指したプレイをして、気持ちのいい終わりを迎えました。
そこに至るまでは程よい起伏と、心地良い緩急で描かれていて、そして冒頭に書いた感覚に陥っています。
やっぱり細かくは書けないので、ぜひプレイして確かめてみてください。
この曖昧さの罪滅ぼしとして、私が好きなシーンを1つSS付きでご紹介。
物語序盤〜中盤のこのシーンはグッときました。
エンディングを迎えてもなお、どれか1つ選ぶとしたら私はこの場面。
ご覧になった方も、自分だけのお気に入りの名場面を探してみてください。
きっと見つかるはずです。
RiSE 囚われ少女の魔法譚
作者:蒼木ことりさん
http://ktnh5108.pw/rise/
作者さんへ
心に残る作品をありがとうございました。
■おまけ1
ヴァルプルギス、素敵なネーミングセンスです。
※「ワルプルギスの夜」という魔女をモチーフにしたお祭りがありまして、由来も面白いので気になる方はwikipediaで検索なさってください
■おまけ2
私がこの作品をクリアしたのは2017/7/29、何かの日でした。
作者さんはフリークなので、きっと楽しまれていることと思います。
ささやかな悪戯心と感謝を込めて。
プレイバージョン:version 1.5
作者:蒼木ことりさん
http://ktnh5108.pw/rise/
時間を忘れて――というのはよく使われる比喩ですが、そうではなく。
私はこの作品の残り時間が見えるのを、寂しく思いながら楽しませて頂きました。
好きな映画の残り時間がなんとなく判ってしまうときのような、あの感覚です。
(映画をコミックに読み替えても同じ、ですね)
そして作品を終えてカーテンの外を見たら、作品の1シーンと同じ空模様になっていました。
そんな感化された気分を少し抑えながら、書いた感想です。
意見や視点の違いも、楽しんで読み進めて頂けたら嬉しいです。
■ロールプレイングノベルのこだわり
あらすじ(ゲーム同梱の「げーむについて.txt」より抜粋)
まっくろ鳥の森の奥。
世界一の大富豪・ゴルドール邸の屋敷地下に囚われている謎の少女。
魔法が失われた世界で、人を癒す能力を持つ彼女の正体は果たして何者か。
自称冒険士の少年が、その謎を解くため旅に出る。
「もしシンデレラ自身が魔法を使えたら?」という空想から生まれた、
幸せを見つけるロールプレイングノベル。
◇◇
あらすじにある通り、本作は童話「シンデレラ」をモチーフにしたロールプレイングノベル。
ノベルパートでプレイヤーを引き込み、RPGゲームパートでノベルパートの間を結ぶように話が展開されています。
図にするとこんな感じです。
[ノベルパート]-[ゲームパート]-[ノベルパート]…
こだわりを感じたのは『ノベルとゲームの境目があるのだけれど、見えないように作られている』というところです。
例えば主人公のジャックの序盤ノベルパートの印象を挙げると
・物語を導く行動や、引っ張る台詞が多い
・七つ道具を使った引き出し(スキル)を持っている
これがゲームパートでは
・敏捷性が高く先行して行動しやすい
・敵のスキル/技をハントして自分のスキルとして使う
とこのように先の印象を引き継いだ見せ場が設けられています。
切れ間を感じさせないように組み込まれているのですね。
これは意識した丁寧さだと思います。
ヒロイン)リセが加入しても、キャラクターの性格設定上、剣を振るい戦うという概念がないため、最初は戦うことができません。
ゲーム性と設定を一致させるこだわりが、ここにも感じられます。
オルソもマメな性格=正確性を要求する弓、搦め手系の特技を使う……と、他のキャラ同様に設定と性能が一致。
ここまでこだわり、伝えたいものは「ロールプレイングノベル」。
つまりノベルパートのためのゲームなのだと感じました。
付け替えの利かないキャラクターの個性で物語を進める感覚。
これは手持ちのカードで切り拓く人の生き方みたいですね。
■ゲームパートに感じる名作RPGのリスペクト
本作をプレイしていると、時々90年代のRPG「FF5」「FF6」をプレイしていた感覚が思い出されます。
例えば4人目の仲間が加わり(序盤プレイ中の方のネタバレになるので、名前は伏せます)、飛空艇を自由に操作できるようになると、行動範囲と同じようにバトルバランスのとり方もプレイヤーに大きく委ねられるようになります。
この感覚はFF5の石板集め、FF6の世界崩壊後のプレイ感と似ていて、どこからどの順序で進めていこうかみたいな悩みに襲われます。
敵のランクが2つ違いで即死させられる目にあったりとか、程よいレベリングの場所を探す楽しみがあったりとか。
自分だけのレベリングポイントを見つけたとき、自分でも忘れていた遊び方を思い出しました。
具体的にはこのポイント。
森でエンカウントが高いうえに、ちょっと高いレベル帯で行くと、ボタン押したままノーダメージ、20秒程度で一戦を終えられ、実入りも効率が良いのですね。
理想はヒーリングゼリー3体の同時出現をn秒で倒す、とか。
バトルリザルトのメッセージに、バトルタイムが表示される理由はこの辺りかもしれません。
レベリングをしているうちに目で数字(経験値、G)を無意識に掴む感覚がじわっときて、ああ今効率の良いポイントにいる!とか考えるのが嬉しくなりました。
◇◇
他にも『双蓮の指輪(二回攻撃)』を手に入れてからは各段に攻略の幅が広がるのですが、入手タイミングとそれまでの難度はFF6のソウルオブサマサを手に入れたときと同じ感覚。
刺さるところが人によって違いつつも、似たような感覚に捉われた方はいらっしゃると思います。
ボスの弱点づけにもFF5リスペクトを感じたりしました。
FF5は全てのボスに低レベルクリア可能な弱点が設定されていて、それは属性だったり行動ルーチンだったり初見でやられて覚えるタイプの何かだったりします。
(だから全滅リトライ機能があるのか、と今更思ったり)
ボスの製法をイメージできるようになってからは、ちょっと考えを先読みして初見で倒せることもあったりして、そこがハマるとやっぱり楽しいです。
駆け引きの読みあいに勝った感覚にも近いし、クイズを解いた感覚にも近い。
だから「Choice×Crisis」のような発想が持てたのですね、とここでも腑に落ちたり。
このダンジョンもキャラクターの成長を肌で感じられる仕組みが、細かに仕込まれています。
比喩ではなく本当に頭脳戦です。
バトル前のひと準備、バトルの駆け引き、どちらも達成したとき、作者さんが意図したレベルでここをクリアできると思います。
その状態はTrueEndの条件を満たしつつ、かつラスボスが適正レベルより少し上。
ゲーム上の強さ的にも、サブストーリーを終えた気持ち的にも、物語に余裕をもって向き合うことができます。
■最後はノベルパートの良さに落ち着く
タイトルの通りです。
ただ、細かに書くことはこれからプレイする方の楽しみを奪うに等しいので、書ける内容は限られます。
例えるなら章が部屋だとしたら、物語全体は家。
家から部屋を描くのではなく、部屋からカメラをズームアウトして家を捉え、最後にズームインで人の表情を映すような、そんなイメージです。
私はハッピーエンドが好きでTrue Endだけを目指したプレイをして、気持ちのいい終わりを迎えました。
そこに至るまでは程よい起伏と、心地良い緩急で描かれていて、そして冒頭に書いた感覚に陥っています。
やっぱり細かくは書けないので、ぜひプレイして確かめてみてください。
この曖昧さの罪滅ぼしとして、私が好きなシーンを1つSS付きでご紹介。
物語序盤〜中盤のこのシーンはグッときました。
エンディングを迎えてもなお、どれか1つ選ぶとしたら私はこの場面。
ご覧になった方も、自分だけのお気に入りの名場面を探してみてください。
きっと見つかるはずです。
RiSE 囚われ少女の魔法譚
作者:蒼木ことりさん
http://ktnh5108.pw/rise/
作者さんへ
心に残る作品をありがとうございました。
■おまけ1
ヴァルプルギス、素敵なネーミングセンスです。
※「ワルプルギスの夜」という魔女をモチーフにしたお祭りがありまして、由来も面白いので気になる方はwikipediaで検索なさってください
■おまけ2
私がこの作品をクリアしたのは2017/7/29、何かの日でした。
作者さんはフリークなので、きっと楽しまれていることと思います。
ささやかな悪戯心と感謝を込めて。
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