2018年02月07日
AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜 紹介/感想
◆AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜 紹介/感想
ラノゲツクールMVのサンプルゲームの1作「AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜」の紹介と感想を綴ります。
[作者紹介]
terunonさん
WEBサイト:
https://tri-nitroterunon37.wixsite.com/terunon
Twitterアカウント:
https://twitter.com/trinitroterunon
[遊び方]
本作はパソコン(ダウンロード版)でプレイすることができます。
次のサイトからダウンロード版のリンクに進んでください。
ラノゲツクールMV サンプルゲーム
https://tkool.jp/lngmv/sample/index.html
解凍するとWindows版の場合、Game.exeがありますので実行してください。
・F4キーでいつでもフルスクリーン/ウィンドウモードの切り替え
・セーブは自動で1番に記録(手動セーブのタイミングもあります)
・ヘッドホン推奨(理由は後述)
[実況動画]KyoHeyさん
■AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜とは
作者terunonさんがゲーム制作を始めて2年。AAを冠するタイトルもこれで4作目。
ゲーム制作エンジンは2017年12月発売されたラノゲツクールMV。
アビッサルアンカーはそのサンプルゲーム5作のうちの1作です。
ゲーム本編の説明に入る前にツールの紹介を少々。
ラノゲツクールMVはビジュアルノベル制作に特化したソフトです。
イラスト、音楽、文章の三要素の表現に長けていて、シーンやコマンドをブロック単位で扱う操作感はWindowsムービーメーカーに似ています。
プリセットで背景素材、キャラクター素材が豊富に収録されていて、Windows、Mac、Linux、ブラウザ、アプリ出力にも対応しているのも嬉しいところ。
今後オープン予定とされているツクール系のアセットストアやRPGツクールMVとの連携機能など、今後が楽しみなソフトです。
と、作品に話を戻します。
本作は作者さんがシナリオに向き合い、ゲーム性を追求した成果があらわれた極上のサスペンス作品です。
私から見た魅力を並べてみました。
・ヒントが散りばめられたノベルパートを読み、釈明バトルのゲームパートに挑むという連続した緊張体験(これがサスペンスたる所以で、困ったことにこれが楽しいのです)
・少年誌相当のホラー描写と勢いのあるストーリー展開
・ゲーム体験を素晴らしいものに変える「間」「音」「映像」表現
・論理的に構築されつつも、コミックリリーフ※も織り交ぜた「読み手を楽しませる文体」
※コミックリリーフ…深刻な物語の中に、緊張を和らげるために現れる、滑稽な登場人物、場面、掛け合いのこと(Wikipediaより)
・クライマックスで怒涛のように訪れるエンタメ的快感
・(知っている方は)他作品との繋がりを想像するファンサービス的要素
■舞台はセンター街の橋向い「二番街」、「雨降り橋」
主人公は雨降り橋高校に通う2年生のクロカワチハル。
同じ高校に通う親友のナツキは3年生。
その関係が失われるところから物語が始まります。
同作者さんの他作品をプレイしたことのある方は、橋の向こうが想像できるのではないでしょうか。
余談ですが、高校生を主人公にすると悩むのが家族の存在をどう描くか(扱うか)。
未成年者が困ったときに頼るのは親や身近な大人だったりするわけで、私の作品では学生同士で旅に出すことで物理的に隔離していました。
アビッサルアンカーでは、独立心を動機にした一人暮らし設定を組み合わせて、これを達成しています。
「ゲームだから何でもいいじゃん」というのはあるのですけれど、作者的にはこだわりたいポイントだったりするのです。
そんな配慮があるのかないのかはさておき、高校生の一人暮らしという、やや非日常な設定におかれた少し暗めな女子高生チハル。
プレイヤーは第三者の視点で彼女の動きを追いかけます。
■緊張のサスペンス体験と交互に訪れるコミックリリーフのワザ
サスペンスアドベンチャーと公式紹介文で銘打たれた本作。
サスペンスの名の通り、ゲーム中は緊張の連続です。
Anker Your Hopeという文言、タイトルにもかけたこの言葉選びのセンスいいです(追記:と思ったら、このAnkerは語句的にはタイトルと別の意味とのこと。ミス読みでした。。)
冒頭からの鮮烈な描写に加えて、プレイヤーの恐怖を煽るかのような画面演出にSE音。
かと思えば突然訪れるケバブの暴力。
何を言っているか分からないと思いますが、要は緊張と笑いが巧みに配置されていて、緊張とほぐれた瞬間が程よく入れ替わるということなのです。
ホラー映画を観終えたときのどっと疲れた感や安心感に覚えがある方はいると思います。
あの感覚を短くした感じ……というと伝わりますでしょうか。
何行もの言葉よりも、一枚のスクリーンショットを見ればわかると思います。
こういうことです。
これがギャグの三文字で終わらず、サイドストーリーにも伏線にもなっているものだからシナリオ道とは奥が深いものだとつくづく思います。
笑いのセンスは天然(天性)でしょうけれど、使いどころは計算されています。
うっかり騙されないようにしてください。
■プレイ開始数分の先入観に対する裏切り
先入観をもってプレイした方や先読みをしようとする方ほど、良い期待の裏切られ方をすると思います。
そしてそれは本作の遊び方の一つだと私は思います。
特にゲーム作者やミステリー小説/映画好きの方に多い傾向だと思うのですが、この色付き文章はどうせXXXなのだろうと予想すればするほど、ハマります。
このあたりを行数かけて説明しようとすると、開始直後のネタバレ禁止に抵触するので書けませんが……楽しみの一つに据えてとっておいてください。
■ゲーム体験を素晴らしいものに変える「間」「音」「映像」表現
8bit風音源の使い方、コミックリリーフを強調するオノマトペ(擬声語)表現、緩急つけたSE音、これらがゲーム体験を底上げしています。
環境が許す限り、(音量は上げ過ぎなくてもいいので)ヘッドホン推奨です。
音表現に対するこだわりはゲーム制作者としてのキャリアだけではなく、音楽が好きな方特有の基礎だったりボカロPとしての作者さんのキャリアだったりするのだと思います。
そうでなければ説明がつかないくらい、本作の音表現は素晴らしいです。
さらにここからはチラシの裏です。
音楽は趣味好みが基準の世界であることを承知で言いますが…本作の選曲チョイスのどれもがいいです。最高です。
日常シーン、穏やかなシーン、マップ移動、釈明バトル、使われているBGMどれも私は初耳で聞き惚れました。
8bitの持つワビサビ、レトロ感がもたらすモノはあるのですが、良いのはそこではなく、メロディーライン。
本作の音に、ぜひ耳を澄ませてみてください。
センスが合うと思った方は、ボカロPとしての作品もオススメです。
http://www.nicovideo.jp/mylist/34292800
■オススメの楽しみ方
作品ボリュームは「全部」でおよそ4時間。
できるだけ「記憶が鮮明なうち」に一気に遊んでみてください。
お休みがカレンダー通りの方は、土曜日や日曜日を本作の楽しみに充ててみてください。
隠された遊び心に気付いた数だけ、本作のゲーム体験が楽しいものに変わるはずです。
文章、フォント、色彩、ゲーム内用語、名前、プレイヤーの先入観全てがギミックであり……想像の広げどころです。
■最後に
2018年2月現在、ラノゲツクールMVの知名度はまだまだ伸びしろがあり、多くの方に知ってほしいと思っています。それは同じラノゲツクールMVにサンプルゲームを提供させて頂いた作者としての願望でもあるし、アビッサルアンカーに大きく心を揺さぶられた一人の願いです。。
初回プレイ時のどうしようもなく引き付けられた時間、クリア後にやってきた心の充足感は量の大小や順位付けではあらわせない、本作ならではのものでした。
それはこの先どんなに素晴らしい映像表現、音楽に触れてもアビッサルアンカーと同じものはないと断言できるくらいオリジナルな体験であり、創作の理想形の一つなのでしょう。
こんな言葉を他作者に綴らせるくらい魅力に溢れた作品です。
公式によると、ラノゲツクールMVのサンプルゲームはブラウザ版の公開予定とのこと。
この記事が素晴らしい作品を知るきっかけになれたのなら、いち作者、いちファンとして幸いです。
ラノゲツクールMV サンプルゲーム
https://tkool.jp/lngmv/sample/index.html
作者さんは実況を歓迎する方なので、ご興味のある方はぜひ。
御本人、とても喜ぶと思います。
■おまけ1
ゲーム開始直後、名前を入力することができますが、ここに遊び心が仕込まれています。
・過去作品のキャラクター名
・ツクールwebフォーラムのとある企画のキャラクター名
・作者の名前
この辺りを入力すると……。
■おまけ2
同作者さんの他作品との繋がりだったり、某Nintendoタイトルだったり、時事ネタだったりとネタが豊富に取り揃えられています。また更にごく限定的ですが、親交のある他作品がボカした表現で作中に登場します。
そんな遊び心の欠片を探してみるのも、また一興です。
ラノゲツクールMVのサンプルゲームの1作「AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜」の紹介と感想を綴ります。
[作者紹介]
terunonさん
WEBサイト:
https://tri-nitroterunon37.wixsite.com/terunon
Twitterアカウント:
https://twitter.com/trinitroterunon
[遊び方]
本作はパソコン(ダウンロード版)でプレイすることができます。
次のサイトからダウンロード版のリンクに進んでください。
ラノゲツクールMV サンプルゲーム
https://tkool.jp/lngmv/sample/index.html
解凍するとWindows版の場合、Game.exeがありますので実行してください。
・F4キーでいつでもフルスクリーン/ウィンドウモードの切り替え
・セーブは自動で1番に記録(手動セーブのタイミングもあります)
・ヘッドホン推奨(理由は後述)
[実況動画]KyoHeyさん
■AA:アビッサルアンカー 〜無実釈明x記憶探索ADV〜とは
作者terunonさんがゲーム制作を始めて2年。AAを冠するタイトルもこれで4作目。
ゲーム制作エンジンは2017年12月発売されたラノゲツクールMV。
アビッサルアンカーはそのサンプルゲーム5作のうちの1作です。
ゲーム本編の説明に入る前にツールの紹介を少々。
ラノゲツクールMVはビジュアルノベル制作に特化したソフトです。
イラスト、音楽、文章の三要素の表現に長けていて、シーンやコマンドをブロック単位で扱う操作感はWindowsムービーメーカーに似ています。
プリセットで背景素材、キャラクター素材が豊富に収録されていて、Windows、Mac、Linux、ブラウザ、アプリ出力にも対応しているのも嬉しいところ。
今後オープン予定とされているツクール系のアセットストアやRPGツクールMVとの連携機能など、今後が楽しみなソフトです。
と、作品に話を戻します。
本作は作者さんがシナリオに向き合い、ゲーム性を追求した成果があらわれた極上のサスペンス作品です。
私から見た魅力を並べてみました。
・ヒントが散りばめられたノベルパートを読み、釈明バトルのゲームパートに挑むという連続した緊張体験(これがサスペンスたる所以で、困ったことにこれが楽しいのです)
・少年誌相当のホラー描写と勢いのあるストーリー展開
・ゲーム体験を素晴らしいものに変える「間」「音」「映像」表現
・論理的に構築されつつも、コミックリリーフ※も織り交ぜた「読み手を楽しませる文体」
※コミックリリーフ…深刻な物語の中に、緊張を和らげるために現れる、滑稽な登場人物、場面、掛け合いのこと(Wikipediaより)
・クライマックスで怒涛のように訪れるエンタメ的快感
・(知っている方は)他作品との繋がりを想像するファンサービス的要素
■舞台はセンター街の橋向い「二番街」、「雨降り橋」
主人公は雨降り橋高校に通う2年生のクロカワチハル。
同じ高校に通う親友のナツキは3年生。
その関係が失われるところから物語が始まります。
同作者さんの他作品をプレイしたことのある方は、橋の向こうが想像できるのではないでしょうか。
余談ですが、高校生を主人公にすると悩むのが家族の存在をどう描くか(扱うか)。
未成年者が困ったときに頼るのは親や身近な大人だったりするわけで、私の作品では学生同士で旅に出すことで物理的に隔離していました。
アビッサルアンカーでは、独立心を動機にした一人暮らし設定を組み合わせて、これを達成しています。
「ゲームだから何でもいいじゃん」というのはあるのですけれど、作者的にはこだわりたいポイントだったりするのです。
そんな配慮があるのかないのかはさておき、高校生の一人暮らしという、やや非日常な設定におかれた少し暗めな女子高生チハル。
プレイヤーは第三者の視点で彼女の動きを追いかけます。
■緊張のサスペンス体験と交互に訪れるコミックリリーフのワザ
サスペンスアドベンチャーと公式紹介文で銘打たれた本作。
サスペンスの名の通り、ゲーム中は緊張の連続です。
Anker Your Hopeという文言、タイトルにもかけたこの言葉選びのセンスいいです(追記:と思ったら、このAnkerは語句的にはタイトルと別の意味とのこと。ミス読みでした。。)
冒頭からの鮮烈な描写に加えて、プレイヤーの恐怖を煽るかのような画面演出にSE音。
かと思えば突然訪れるケバブの暴力。
何を言っているか分からないと思いますが、要は緊張と笑いが巧みに配置されていて、緊張とほぐれた瞬間が程よく入れ替わるということなのです。
ホラー映画を観終えたときのどっと疲れた感や安心感に覚えがある方はいると思います。
あの感覚を短くした感じ……というと伝わりますでしょうか。
何行もの言葉よりも、一枚のスクリーンショットを見ればわかると思います。
こういうことです。
これがギャグの三文字で終わらず、サイドストーリーにも伏線にもなっているものだからシナリオ道とは奥が深いものだとつくづく思います。
笑いのセンスは天然(天性)でしょうけれど、使いどころは計算されています。
うっかり騙されないようにしてください。
■プレイ開始数分の先入観に対する裏切り
先入観をもってプレイした方や先読みをしようとする方ほど、良い期待の裏切られ方をすると思います。
そしてそれは本作の遊び方の一つだと私は思います。
特にゲーム作者やミステリー小説/映画好きの方に多い傾向だと思うのですが、この色付き文章はどうせXXXなのだろうと予想すればするほど、ハマります。
このあたりを行数かけて説明しようとすると、開始直後のネタバレ禁止に抵触するので書けませんが……楽しみの一つに据えてとっておいてください。
■ゲーム体験を素晴らしいものに変える「間」「音」「映像」表現
8bit風音源の使い方、コミックリリーフを強調するオノマトペ(擬声語)表現、緩急つけたSE音、これらがゲーム体験を底上げしています。
環境が許す限り、(音量は上げ過ぎなくてもいいので)ヘッドホン推奨です。
音表現に対するこだわりはゲーム制作者としてのキャリアだけではなく、音楽が好きな方特有の基礎だったりボカロPとしての作者さんのキャリアだったりするのだと思います。
そうでなければ説明がつかないくらい、本作の音表現は素晴らしいです。
さらにここからはチラシの裏です。
音楽は趣味好みが基準の世界であることを承知で言いますが…本作の選曲チョイスのどれもがいいです。最高です。
日常シーン、穏やかなシーン、マップ移動、釈明バトル、使われているBGMどれも私は初耳で聞き惚れました。
8bitの持つワビサビ、レトロ感がもたらすモノはあるのですが、良いのはそこではなく、メロディーライン。
本作の音に、ぜひ耳を澄ませてみてください。
センスが合うと思った方は、ボカロPとしての作品もオススメです。
http://www.nicovideo.jp/mylist/34292800
■オススメの楽しみ方
作品ボリュームは「全部」でおよそ4時間。
できるだけ「記憶が鮮明なうち」に一気に遊んでみてください。
お休みがカレンダー通りの方は、土曜日や日曜日を本作の楽しみに充ててみてください。
隠された遊び心に気付いた数だけ、本作のゲーム体験が楽しいものに変わるはずです。
文章、フォント、色彩、ゲーム内用語、名前、プレイヤーの先入観全てがギミックであり……想像の広げどころです。
■最後に
2018年2月現在、ラノゲツクールMVの知名度はまだまだ伸びしろがあり、多くの方に知ってほしいと思っています。それは同じラノゲツクールMVにサンプルゲームを提供させて頂いた作者としての願望でもあるし、アビッサルアンカーに大きく心を揺さぶられた一人の願いです。。
初回プレイ時のどうしようもなく引き付けられた時間、クリア後にやってきた心の充足感は量の大小や順位付けではあらわせない、本作ならではのものでした。
それはこの先どんなに素晴らしい映像表現、音楽に触れてもアビッサルアンカーと同じものはないと断言できるくらいオリジナルな体験であり、創作の理想形の一つなのでしょう。
こんな言葉を他作者に綴らせるくらい魅力に溢れた作品です。
公式によると、ラノゲツクールMVのサンプルゲームはブラウザ版の公開予定とのこと。
この記事が素晴らしい作品を知るきっかけになれたのなら、いち作者、いちファンとして幸いです。
ラノゲツクールMV サンプルゲーム
https://tkool.jp/lngmv/sample/index.html
作者さんは実況を歓迎する方なので、ご興味のある方はぜひ。
御本人、とても喜ぶと思います。
■おまけ1
ゲーム開始直後、名前を入力することができますが、ここに遊び心が仕込まれています。
・過去作品のキャラクター名
・ツクールwebフォーラムのとある企画のキャラクター名
・作者の名前
この辺りを入力すると……。
■おまけ2
同作者さんの他作品との繋がりだったり、某Nintendoタイトルだったり、時事ネタだったりとネタが豊富に取り揃えられています。また更にごく限定的ですが、親交のある他作品がボカした表現で作中に登場します。
そんな遊び心の欠片を探してみるのも、また一興です。
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