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2018年06月01日

病院にて2018/6/1

「足は椅子に縛り付けられ、手は後ろ手に手錠。身動きの取れない状態だ。
ここに閉じ込められて1日。食事は2回与えられた。口におにぎりを放り込まれるのだ。

5分前に覆面をしたそいつがやって来ておにぎりを突っ込まれたばかりだ。
次はおそらく6時間後くらいか。

薄暗い部屋だが、地下ではない。すりガラスの窓からは明かりが入っている。縛られていなければその窓を割って逃げられるだろう。

食事のタイミングを待っていた。
僕のいでたちは拉致された時と同じ、シャツにネクタイ、ズボン。なぜかベルトは抜かれた。

普段からネクタイがブラブラするのが嫌いだ。かといってネクタイピンはおじさんっぽい。
今日のネクタイは細め。特にブラブラする。
そのためにネクタイの裏とシャツをクリップで止めていたのだ。

硬い身体を折り曲げ、口でネクタイを引っ張り上げる。うまくシャツを止めているクリップがネクタイに付くように。
よし、ネクタイの真ん中にクリップが付いている。口を上手く使ってネクタイをたくしあげる。

クリップは口の中だ。これで手の後ろの手錠を開けて脱出だ。口のクリップを腹回りのシャツのダブついた所に慎重に落とす。硬い肩回りを動かし、シャツをたぐり寄せる。クリップを落とさないよう。

上手くいった。クリップは手の中だ。
クリップを伸ばそう、そして少し曲げてギザギザをつけないと。

クリップを手のひらから指先に送る。
あれ、指先のクリップはどこだ?確かに掴んでいる感覚はあるが。
なんとかクリップを伸ばした感覚。

クリップを爪でギザギザをつけないと。
ダメだ、硬くて力が入らない。これは諦めた。

手錠の鍵の構造は簡単だ。子供の頃によく遊んで鍵を開けたことがある。今、手を拘束している手錠も本格的な手錠ではない。

よし、鍵穴に・・・・・あれ、鍵穴に入れられない。何度かクリップを手に突き刺す。
10分位奮闘して鍵穴に入ったようだ。
引っかかる部分を探してクリップを回す。
あれ・・・・・指が鍵穴を回しているのかどうかが感覚ない。持っているはずのクリップも持っているかどうか感覚がない。

鍵穴の硬い部分に触れた気がした。
よし、力を入れて・・・・・あれ、知らぬ間にクリップを落としていた。
そうだ、僕は脛髄を損傷して手の感覚が鈍いのだ。手錠を解錠するのは無理なのだ。」

こんなことを今日思った。

目で見ながらは小さな穴に何かを入れるとかは出来る。でも視認できない所へ細かいことはできない。

例えばポケットに入った小銭の種類が触って認識できないとか。

今日、スナップで襟を止めるシャツ。ボタンダウンのスナップ版だ。
クールビズだ。ネクタイは必要ないので、いつもは止めてから着る。
今日は忘れた。着てから止めようとしたら止まらない。ボタンに比べてスナップの穴は小さなポイントだ。
結局鏡を見ながらスナップを止めた。

こんなことは小さな不自由だ。
でも、冒頭に書いたようなことが起きれば脱出できないんだなぁと思うと悲しい。
まあ、起きないだろうが。

病院に着いて一時間、あとどれくらい待つのだろう。
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posted by shigenon at 09:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 頚髄損傷
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shigenon
2014年クリスマスイブのプレゼントは最悪でした。 「頸髄損傷」というケガなのか病気なのか・・その症状との戦いの記録と現在の日々をアップします。 (2018年4月追加) 不全の頸髄損傷は「健常な人」に見えます。“ふつうに見える”様に努力をしています。が、反面、「もう良くなったんだ」と思われがち。 骨折とは違い、中枢神経の損傷は完全回復はしないという現実。 「健常に見える」「もっと良くなるよう努力する」「もう治っているんでしょ」の狭間で何とか毎日を過ごしています。
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