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2021年02月16日

「現代日本の開花」講演本文 4/18

夏目漱石「現代日本の開花」明治44,8月和歌山講演 VOL,4/18





丁度汽車がゴーッと駆けてくる、その運動の一瞬間、すなわち運動の性質の最も現れにくい刹那の光景を写真に撮って、これが汽車だ汽車だといって、あたかも汽車のすべてを一枚のうちに写しえたごとく吹聴すると一般的である。



なるほどどこから見ても、汽車に違いありますまい。



けれども汽車に見逃してはならない運動というものが、この写真のうちには出ていないのだから、実際の汽車とは到底比較のできないくらい懸絶しているといわなくてはなりますまい。



ご存知の琥珀というものがありましょう。



琥珀の中に時々蠅が入ったのがある。



透かして見ると蠅に違いありませんが、要するに動きの取れない蠅であります。



蠅でないとは言えぬでしょうが、生きた蠅とはいえますまい。



学者の下す定義には、この写真の汽車や琥珀の中の蠅に似て、鮮やかに見えるが死んでいると評しなければならないものがある。



それで注意を要するというのであります。



つまり変化をするものを捉えて、変化を許さぬがごとくピタリと定義を下す。



巡査というものは、白い服を着て、サーベルを下げているものだなどと天から極められた日には、巡査もやりきれないでしょう。



家へ帰って浴衣も着替えるわけにいかなくなる。



この暑いのに、剣ばかり下げていなければならないのは可哀そうだ。



騎兵とは馬に乗るものである。



これもご尤もに違いないが、いくら騎兵だって年が年中馬に乗り続けに乗っているわけにも行かないじゃありませんか。



少しは下りたいでさア。



こう例を挙げれば、際限がないから、いい加減に切り上げます。



実は開花の定義を下すお約束をしてしゃべっていたところが、いつの間にか開花はそっちのけになって、むつかしい定義論に迷い込んではなはだ恐縮です。



がこのくらい注意をした上で、さて開花とは何者だと纏(まと)めてみたら、幾分か学者の陥りやすい弊害を避け得られるし、またその便宜をも受けることが出来るだろうと思うのです。





引用書籍

夏目漱石「現代日本の開花」

講談社文庫刊


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