スポンサードリンク 「現代日本の開花」講演本文 15/18: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年02月16日

「現代日本の開花」講演本文 15/18

夏目漱石「現代日本の開花」明治44, 8月和歌山講演 VOL,15/18





かく推論の結果、心理学者の解剖を拡張して、集合の意識やまた長時間の意識の上に応用して考えてみますと、人間活力の発展の経路たる開花というものの動くラインもまた波動を描いて、弧線をいくつもいくつも繋ぎ合わせて、進んでいくと云わなければなりません。



無論、描かれる波の数は無限無数で、その一波一波の長短も高低も千差万別で有りましょうが、やはり甲の波が乙の波を呼び出し、乙の波がまた丙の波を誘い出して順次に推移しなければならない。



一言にしていえば、開花の推移はどうしても内発的でなければ嘘だと申し上げたいのであります。



ちょっとした話が、私は今ここで演説をしている。



するとそれをお聞きになる貴方方の方からいえば、始めの十分間くらいは、私が何を主眼にいうか能(よ)くわからない、二十分位になって、ようやく筋道が付いて、三十分目くらいには、ようやく脂がのって、少しはちょっと面白くなり、四十分目にはまたぼんやりし出し、五十分目には退屈を催し、一時間目には欠伸(あくび)が出る。



とそう私の想像通り行くか行かないか分かりませんが、もしそうだと言うならば、私が無理にここで二時間も三時間もしゃべっては、あなた方の心理作用に反して、我を張ると同じことで、決して成功は出来ない。



なぜかと云えば、この講演がその場合あなた方の自然に逆らった外発的のものになるからであります。



いくら咽喉をしぼり、声を嗄(か)らして怒鳴ってみたって、あなた方はもう私の講演の要求の度を経過したのだから、不可(いけ)ません。



あなた方は、講演よりも茶菓子が食いたくなったり、酒が飲みたくなったり、氷水が欲しくなったりする。



その方が内発的だから、自然の推移で無理のない所なのである。



これだけ説明して置いて、現代日本の開花に後戻りをしたら大抵大丈夫でしょう。



日本の開花は自然の波動を描いて甲の波が乙の波を生み、乙の波が丙の波を押し出すように、内発的に進んでいるかと云うのが、当面の問題なのですが、残念ながらそう行っていないので困るのです。



行っていないというのは、さきほども申した通り、活力節約活力消耗二代方面において、ちょうど複雑の程度二十を有しておった所へ、俄然(がぜん)外部の圧迫で三十代まで飛びつかなければならなくなったのですから、あたかも天狗にさらわれた男のように、無我夢中で飛びついて行くのです。



その経路は殆ど自覚していないくらいのものです。



元々開花が甲の波から乙の波に移るのは、、既に甲は飽いていたたまれないから内部欲求の必要上ずるりと新しい一波を開展するので、甲の波の好所も悪所も酸いも甘いも嘗(な)め尽くした上に、ようやく一生面を開いたと言って宜(よろ)しい。



従って、従来経験し尽くした甲の波には衣を脱いだ蛇と同様、未練もなければ残り惜しい心持もしない。



のみならず、新たに移った乙の波に揉まれながら、毫(ごう=少し)も借り着をして世間体を繕っているという感が起こらない。





引用書籍

夏目漱石「現代日本の開花」

講談社学術文庫刊行


この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10543146
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。