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2021年02月16日

「現代日本の開花」講演本文 9/18

夏目漱石「現代日本の開花」明治44,8月和歌山講演 VOL,9/18







私は昨晩和歌の浦に泊まりましたが、和歌の浦に行ってみると、さがり松だの権現様だの紀三井寺だのいろいろのものがありますが、その中に東洋第一海抜二百尺と書いたエレベーターが宿の裏から小高い石山の頂へ絶えず見物を上げたり下げたりしているのを見ました。



実は私も動物園の熊のように、あの鉄の格子の檻の中に入って、山の上へ上げられた一人であります。



があれは生活上別段必要のある場所にあるわけでもなければ、またそれほど大切な器械でもない、まあ物好きである。



ただ上がったり下ったりするだけである。



疑いもなく道楽審の発現で、好奇心兼広告欲も手伝っているかもしれないが、まあ活計向とは関係の少ないものです。



これは一例ですが、開花が進むにつれて、こういう贅沢なものの数が殖えて来るのは、だれでも認識しないわけにはいかないでしょう。



如之(しかのみならず)この贅沢が日に増し細かくなる。



大きなものの中に、輪がいくつもできて、漏斗(じょうご)みたようにだんだん深くなる。



と同時に、今まで気の付かなかった方面へ、だんだん発展して範囲が年々広くなる。



要するにただいま申し上げた二つの入り乱れた経路、すなわち出来るだけ労力を節約したいという願望から出てくる種々の発明とか、器械力とかいう方面と、出来るだけ気ままに精力を費やしたいという娯楽の方面、これが経となり緯となり千変万化錯綜して、現今のように混乱した開花という不可思議な現象が出来るのであります。



そこでそういうものを開花とすると、ここに一種妙なパラドックスとでもいいましょうか、ちょっと聞くと可笑(おか)しいが、実は誰しも認めねばならない現象が起こります。





元来、なぜ人間が開花の流れに沿うて、以上二種の活力を発現しつつ、今日に及んだかといえば、生まれながらそういう傾向を持っていると答えるより外に仕方がない。



これを逆に申せば、吾人(ごじん)の今日あるは全くこの本来の傾向あるがためにほかならんのであります。



なお進んで言うと、元のままで懐手をしていては、生存上どうしてもやり切れぬから、それからそれへと順々に押され押されてかく発展を遂げたと言わなければならないのです。



してみれば、古来何千年の労力と、歳月を挙げて、ようやくの事現代の位置まで進んできたのであるからして、いやしくもこの二種類の活力が、上代から今に至る長い時間に工夫し得た結果として、昔よりも生活が楽になっていなければならないはずであります。





夏目漱石「現代日本の開花」

明治44年、和歌山での講演記録文

講談社学術文庫刊行






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