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2020年06月05日

とある科学の超電磁砲T 15話感想 歌と声で情感を揺さぶる食蜂と警策のエピローグ

第15話「やくそく」


※原作未読の方はコメントオフでの視聴をオススメします。
あらすじ
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能力開発中の過去、警策はドリーと友人になり、彼女の身体に埋め込まれた機器を目撃する。
治療の名目を不審に思った警策は、ドリーがクローン体で実験に消費されていることを突き止める。
警策は捕らえられるが、抜け出して統括理事長の暗殺を狙うようになり、最終的に幻生に協力する。
そして現在、食蜂は幻生の記憶から警策の正体と記憶を共有したもうひとりのドリーの存在を知る。
食蜂は警策に協力を要請し、二人はとある研究施設でもうひとりのドリーと「再会」する。
感想
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警策の正体が完全に明らかに。アニメではドリーの持つ液体が色で液体金属とわかりやすく、かつ原作にある「みーちゃん=食蜂」かのようなミスリードもされていないので10話の時点で正体に気づいた人も多いかもしれない。

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「チリョーがうまくいったらたくさんのいもーとができるって」
特に名言されないがこの「たくさんの妹」がミサカ妹たちのことである。10話で研究者が発言していた「上から押し付けられた人形遊び(=レディオノイズ計画)」の一部がこの研究所に命じられていたことがわかる。

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ドリーは警策に嫌われたと勘違いしていたので警策はドリーの機器を目撃してから再び会うことなく捕らえられことになる。すぐ翌日くらいに直談判に行ったと推測でき、警策の必死さがわかる。それにしてもモブ研究者が相変わらず邪悪でいっそ清々しい。

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「実験動物にだってお前達に突き立てる牙があることを教えてやる」
急に芝居がかった物言いになることに多少の違和感を覚えるのだが、警策の心が完全にテロリストのものに変容したことを示す演出として機能しているようにも思う。置いただけの食料が描写されるのはアニオリだがいい補完。ここも言及されないので一応解説しておくと、研究所がもぬけの殻になった原因は10話で描写されたように食蜂が掌握したからである。しかし食蜂が警策の存在を知らなかったということは研究者全員の頭を隅々まで読んだわけではなかったようだ。まあ人間の脳の容量は1000TBあるらしいので無理もない話か。食蜂が重要なものを問うた結果、研究者たちの認識において警策を捕らえたことはまったく重要でなかったのでは、といろいろ推察するのが面白い部分でもある。

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「燻り 憎悪の煙を吐く燠火のような目だ」
そうかな……そうかも……。9話の感想でも書いたけどアニメの絵柄が可愛いのであまり闇を感じる目に見えない。警策の目はこうして二度も言及される個性をもつのだからそこは原作に合わせてほしかったところである。そういえばSでも布束さんの目がギョロ目からジト目に変わってましたね。

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「翻って極大の憎悪は揺るぎなく美しい。復讐のためなら自分の命など一顧だにしない」
目的が一致していることを理由にお互い一切の信用もなく、テロリストである警策とほぼ対等の協力関係を結ぶ幻生の度量のようなものが見えるシーン。美琴と黒子や婚后さん間にある信頼関係と比較して、オルタナティブな美しさを感じる関係性なので個人的には非常に好きなシーンである。さらに能力で心理を掌握していないと美琴とすら連携できなかった食蜂とも対比的に描かれている。

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もうひとりのドリーの存在を警策に明かす食蜂。ここも一応解説するとミサカ妹たち「妹達」の持つミサカネットワークと同質・前身のものがドリー姉妹にも組み込まれており、厳密・倫理的には別人だが実質的にはほぼ同一人物の妹が存在しているということである。警策は「妹達」を捜索していたのでネットワークの概念については当然知っており、理解も容易であることが推測できる。

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「操作力……必要かしらぁ?」「必要……ないわ」
別のアニメの感想でも書いたばかりだが、物語はキャラクターの変化をもって成立するとされる。食蜂の最大の変化はここである。先述したように食蜂は心を読まないと正義感の強い美琴とすら連携できなかったのが、ここでは先程まで敵対していた警策の心を読むことなく協力を要請している。ドリーの存在をかすがいとして目的が完全に同ベクトルになったからだが、結果としてラスボス・幻生と同様の行動をとったところが非常に印象深い。大覇星祭編の面白さは主に展開のツイストの激しさ、伏線回収の巧みさ、超電磁砲のストーリーの集大成感などにあるが、食蜂を軸とした心理描写も重厚で深いものがあってお見事である。頭に「白井さんに悪いから……」と付けるのが食蜂の「高潔」な性格を表現していて好きなポイント。実際自首させるつもりがあるのかはわからないが。

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尺に余裕があるのでアニオリシーン。ちょっと照れてる黒子がかわいい。食蜂が記憶改ざんで後始末したことについての言及シーンだが、また「トイレに行きたくて食蜂派閥を威嚇するシーン」がリピートされてて笑ってしまう。やめてあげて。

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もうひとりのドリーと「再会」する警策。感動的なシーンだがいやまあ言うて僕原作で展開知ってますからね。そうそう泣いたりしませんけどね。などと思っていたらやたら情感を刺激する挿入歌が流れてきて涙腺が決壊した。さらに警策CV富田美憂さんとドリーのCV小原好美さんの熱演が追い打ちをかけてくる。やめろっ……!こんなん泣くに決まってるだろっ……!!メディアミックスこわい。警策がドリーの鼻をつまんだり、ドリーがお腹の機械(この「妹」はデータ採集に使われてないので埋め込まれていない)を気にしたりするところはアニオリだが非常によい原作補完となっている。

挿入歌を歌うのはsajou no hana。「とある科学の一方通行」のEDを歌うアーティストだがダークな世界観を表現したあっちとはかなり曲調が違っていて驚いた。超電磁砲Tの後期EDも担当するようなので大変楽しみである。


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「ふたりとすごしたじかんだけが わたしたちのおもいでだから」
OPのfinal Phaseの歌詞「共に過ごす時間だけが思い出の全てだったと」がドリーと食蜂(と警策)の関係性を表現したものと分かるシーン。アニメ初見の方はぜひこのストーリーを踏まえてからあらためてOPを聞いてみてほしい。美琴とミサカ妹たちの関係を表現したものとも受け取れるので、美琴&食蜂がダブル主人公の章のOPとしてふさわしい楽曲である。

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「心地いい嘘に夢中になってゴメンなさい」
食蜂CVの浅倉杏美さんも負けず劣らずの名演。なんと表現すべきか難しいがここの謝罪の弁はあまり口語的でないため、アニメという漫画とテンポの違うメディアで表現される場合、ともすれば白々しくなりかねないのだが、浅倉さんのメリハリをもたせた心に迫るトーンのおかげで不自然なく受け止められるようになっている。効果的な挿入歌といい、メディアの差を意識し見事に乗り越え、さらに昇華させた印象を受けるエピソードである。

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「実験の正体もわかってドリーはきっと死なずに済んだのよぉ……」
前述したように食蜂は掌握した研究者たちの脳内全てを読みきらなかったと思われる。掌握した時期にもよるが、隅々まで読み切って警策の存在を知っていたら確かにドリーは助かったかもしれない。とはいえこれは食蜂の行動次第でなんとかなったかもという原因の一端でしかないのだが、食蜂はこれを自分の責任ととらえているようだ。3度ほど書いてきたが美琴も「妹達」の境遇を自分の責任ととらえている節があるので、美琴と食蜂は陽と陰、脳筋と運痴、スレンダーとグラマー、孤高と連帯、などなど多くの要素で正反対なキャラ造形がなされているが、やはり根底の性格が似ていると確信できるシーンである。

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それにしても食蜂と警策、ドリーがいなければ絶対友人にはならないタイプに思える。性格が悪……もとい癖のある両人に人生を左右するレベルで強く好かれるドリー恐るべしである。純粋無垢という属性にこそ天然の人心掌握力があるのかもしれない。

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「ミサカは不思議なデジャヴに感傷に浸ります」
以前に「この作品はセンチメンタリズムより能力が優越する」と書いたがそれは「問題解決手段に感傷が用いられない」という意味であり、こういう〆の部分ではわりと感傷的な表現がなされるように思う。ドリーネットワークとミサカネットワークは同じものなので互いの内容を受信することがあるのかもしれないが。海辺の3人の姿が幼いのでドリーがずっと夢に見ていた内容なのだろう。いずれこれが実現することを願う気分になれるストーリーである。世相が大変な中、原作屈指のエピソードである大覇星祭編を見事なクオリティで制作し走りきってくれた全てのスタッフに深く感謝したい。ありがとうございます……!!

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新章突入の次回は7/24から。この2ヶ月間は大覇星祭編の余韻として受け止めたい。新キャラの少年のCVは既に発表されているがどのような演技になるか今から楽しみ。




posted by ぺーた at 19:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ
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