2020年05月23日
とある科学の超電磁砲T 14話感想 美琴軸の関係性を堪能できる第一のエピローグ
第14話「竜王の顎(ドラゴンストライク)」
※原作未読の方はコメントオフでの視聴をオススメします。
あらすじ
当麻は能力無効化の右手で暴走美琴の攻撃を止めようとするが、衝撃で右手が弾け飛ぶ。
しかし肩口から複数の竜が出現、暴走美琴の能力を食べつくし、美琴は正気に戻る。
美琴は食蜂によって記憶を戻された黒子らや婚后たちと、大覇星祭の残り期間を過ごす。
感想
冒頭でアニオリシーンが2つ。大覇星祭編〆の部分を2話かけてやっているので尺に余裕を感じる。
「足りない部分は根性でカバーしてやるしかねえ!だろ?」
軍覇からすると右手以外は一般人でしかない当麻を向かわせるのはかなり抵抗があるだろうが、そのワードを出されると納得するしかないというものである。それどころか体を張って露払いをやってくれる好漢ぶり。軍覇の描写は多いわけではないが十分な好印象を残すものになっている。当麻と軍覇のタッグは今回限りで終わらずまた見てみたいところ。
「待って!これは能力じゃないの!!」
当麻の突撃を必死に制止する美琴の叫びが心に迫る。CV佐藤利奈さんの渾身の熱演が光る。
弾け飛んだ当麻の右腕の肩口から出現し、美琴の能力を喰らい尽くす複数の竜。タイトルにもある「竜王の顎(ドラゴンストライク)」という現象だが、ここからかなり話が進んでいる禁書のほうでもまだ詳細が明らかになっていないそうなので、例によって超電磁砲のみの視聴者は深く考えないようにしよう。竜のデザインは漫画家の木谷椎先生によるもので大変カッコいい。アニメにおいてこの複雑なデザインを動かすのは大変だったことだろう。放送に間は空いてもクオリティは落とさない判断をしてくれたことがありがたい。しかし随分とカラフルなドラゴンたちである。地水火風のような属性を表現しているのだろうか?
大覇星祭編の上条さんのドラゴンのデザインを担当した木谷椎さん @ishiyaki765 より、エンドカードめいたスペシャルイラストが本当にたった今唐突に送られてきたのでご覧ください(動揺)#超電磁砲 pic.twitter.com/Fbq95P4CxG
— 荻野(フリーランスのマンガ編集者) (@gouranga_) May 15, 2020
「仮に成功しても、お前が望む世界にはならないと思うんだ」
上条さんによるソフトなお説教……というか諭しを受ける美琴。美琴が望んで暴走したわけではないので違和感を受ける人もいるだろうが、学園都市への悪感情を警策らに利用されてしまったのは事実である。つまり当麻がここで諭せるということは、戦いの中で、何らかの力でこの美琴の心情に触れたということになる。これは下手な恋愛よりもよほど心の交わりを果たしたと言えるのではないだろうか。もう結婚したらいいんじゃないかな。当ブログは上琴(上条×美琴)を応援しています。
「なんだあの金属?最初からあったか?」
これこそが4話で佐天さんが探していた「不在金属(シャドウメタル)」と思われる。この後学園都市に回収されたのだろうか?佐天さんが話題に出した都市伝説はまあお約束上100%存在すると思われるので気になる方は禁書範囲も含めて調べてみると楽しいかもしれない。
婚后さんの見舞いにくる美琴。何度か書いてきたが美琴は原因の一端を責任と思ってしまう自責的なところがあり、婚后さんの怪我を見るのはかなりつらいことだろう。美琴の「もっと酷い目に遭ってたかも」を安易に否定せず、「そうなっても悔いはない」と答えるところに婚后さんらしさを感じる。
「『桃李成蹊』という言葉をご存知ですか?」
原作では婚后さんは小さい頃、桃李成蹊の格言を父(4話に1カット登場)から聞かされたときに「自分を立派に見せれば他人は敬服してついてくる」と微妙に勘違いしたために友達を作れなかったというエピソードがあり、それを受けたセリフとなっているのだが、残念ながらアニメでは描写されなかった。まあここで急に婚后さんの過去話になっても不自然なのでやむなしか。5話で発揮された婚后さんの性格「自身を客観的に疑うことができる」はこの桃李成蹊のエピソードに根差しているように思える。つまり、「自身が今立派に見えるかどうか」を客観的に見る癖がついているのではないだろうか。
婚后さんのセリフ「立派な人間かは周りが決めること」は傲慢で他責的な人間には棘として刺さるが、美琴のような自責的な人間には優しいフォローとして機能するように思う。しかし婚后さんはフォローのつもりで言ったわけではなく、「桃李成蹊」を旨とする本心と経験からそういうポリシーを持っていることが推察できるので、美琴と婚后さんはお互いを補い合える、初春佐天ほどに相性がいい友人と言えるのではないだろうか。
「嬉しい気持ちが止まらないのです」
は〜〜〜〜婚后さんかわいい。婚后家の使用人になってお仕えしたい人生だった。もっと原作でも出番が増えて欲しいものである。
「わたくしはそれでずっと空回りしていましたから」「わたくし、常盤台の一員で本当によかったです」
原作ではそれぞれ「それでずっと独りでしたから」と「常盤台に転入してきて〜」となっている。アニメでは転入時期が春先で湾内泡浮ペアや美琴と友人関係を築いてそれなりに経つので、辻褄が合うようにそつなく改変されている。
記憶が元に戻った黒子たち。食蜂が記憶を戻したシーンをあえて描かないことで「元に戻った」感が出ているように思う。
「屋台の食べ物に当たってお腹壊したって…」
「一日中お手洗いに籠もって外に出られなかったんですよね?」
女子中学生に対する仕打ちとしてはわりとガチめの嫌がらせである。美琴×婚后さんの尊い友情からの落差が激しい。アニメでは念入りに「食蜂派閥を威嚇した」シーンがコールバックされていてもはや笑うしかない。これは美琴→食蜂の感情も嫌悪以上憎悪未満の域に足を踏み入れたと言っても過言ではないかもしれない。
残りの大覇星祭のシーン。佐天さんの「バットの扱いならお手のものよ!」は無印後半のアニオリで佐天さんがバットでキャパシティダウンをぶち壊したことをネタにした、逆輸入と言えるシーンである。ここがさらに6年越しにアニメ化されるのはなかなか感慨深い。美琴が率先して「風神雷神コンビ」を名乗るところも地味だが印象的。黒子には悪いがもっと婚后さんとイチャイチャしてほしい。
初春佐天の策略によって当麻とフォークダンスを踊ることになる美琴。若干ネタバレになるがこの時点では当麻への想いを自覚していないはずなので、自分自身より先に友人らに気づかれる面白い状況になってしまっている。うろたえまくる美琴が大変かわいい。
ちなみに美琴たちのふたつ後ろにいるペアは、無印のグラビトン事件で登場した男性風紀委員と助けられた女の子であり、仲が進展したようでたびたび原作の隅っこに登場している。原作の小ネタをばっちり拾ってくる姿勢が大変信頼できるアニメである。
「でも、この街に来たからみんなと会えたし、その出会いが私の宝物になってて…」
ちょくちょく外国へと飛ぶ禁書と比較して超電磁砲の舞台は必ず学園都市内におさまっており、その分テーマも学園都市の功罪にズームアップされた狭くも濃いものになっている。大覇星祭編の美琴視点において功は美琴の友人関係、罪は学園都市への悪感情に象徴され、これはそれらを締めくくるセリフである。原作では雷神美琴戦の後に警策の過去エピソードが挟まれるのだが、アニメではそれを次週に回してまるまる美琴のエピローグとして構成し、統一性があり感情移入しやすくした印象を受ける。今回の脚本はシリーズ構成も務めるヤスカワショウゴさんによるもので、アニメと漫画のスパンの違いを意識した見事な再構成がなされたように思う。
さて次週こそ大覇星祭のラストである。
追記:情報が間違っていたのでお詫びして訂正します。16話は7/24放送予定とのこと。
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