2020年03月28日
とある科学の超電磁砲T 8話感想 能力に由来する食蜂の性格・関係性描写が見どころ
8話 超電磁砲(レールガン)×心理掌握(メンタルアウト)
※原作未読の方はコメントオフでの視聴をオススメします。
あらすじ
美琴は都市伝説サイトから食蜂の隠れ家を推察しそこへ向かうが、待ち構えていた食蜂と遭遇する。
食蜂に同行し、食蜂の行動はミサカ妹の保護、黒子らへの精神操作は危険から遠ざけるためと知る。
さらに警策らがミサカネットワークを狙う木原幻生の命令下で動いていることを伝えられる。
美琴は幻生を打倒するため食蜂と共闘、同時刻にそれぞれ別に幻生のいる会議場へと突入する。
感想
食蜂が敵のように描かれていたのがミスリードだったことが明らかになるエピソード。会話劇ながら食蜂の性格描写と美琴との関係性描写に見ごたえがあり、6話の湾内泡浮ペアVS馬場が動のベストエピソードだとしたら今回は静のベストエピソードだと個人的に思っている。「心配しないで。全部終わったら食蜂の首根っこ捕まえて戻ってくるから」
記憶を操られてるんですか?に対してこの返事はYesと言っているようなものである。黒子の反応がいちいち初々しくて可愛い。記憶、戻さないほうがいいのでは?でもあの変態ぶりも捨てがたいので悩ましいところである。
美琴を待ち構える食蜂。このへんのやりとりはかなり原作からセリフが追加・変更されている。今回はここ以外も微妙に変更されているセリフが多い。全編会話劇であるためか、文字で理解させる漫画と声で理解させるアニメの違いを意識した再構成になっているように思う。
リモコンでグリグリされるカイツさん。前作Sでは妹達を殺害する実験(レベル6シフト計画)を中間指揮する立場に見えたが単なる警備担当者(原作では「知的傭兵(アドバイザー)」)だったことがここで明かされる。アニメではカットされたがカイツは食蜂に信頼されるために「心を読んでもらったほうが手間が省ける」と自分への精神操作を容認・推奨する描写があり、そのうえで重用されているので少なくともイメージほどの悪党ではなさそう。食蜂の印象ミスリードのための要員と思われるが結果的になかなか絵になるコンビになっている。調査能力は非常に高く、逆探知を初春に気づかれなかったところからハッキング系能力も初春に近いレベルを備えている可能性がある。
食蜂の口から彼女の目的と、警策・幻生勢力の狙いが明らかになり、食蜂が敵対関係にないことがはっきりする。幻生の目的の詳細や食蜂の動機は不明だが、敵対相手が一つになったので物語としては収束に向かって分かりやすくなっている。
「協力?信頼?なんでそんな不確かなものを信じられるのかしら?」
それまでの甘ったるい声のトーンがこのあたりからぐっと低くなるところがいい。CV浅倉杏美さんの名演が光る。黒子たちやミサカ妹を幻生から守り、強力な派閥メンバーを擁しながら危険な計画には誰一人関わらせていない食蜂の性格を考慮すると、怪我をした婚后さんに対して「ガラクタと潰し合ってくれて助かった」と言い放つことが不自然なので、美琴の言葉が食蜂の逆鱗に触れていることが推察できる。美琴も怒っているので無理もない行動だが、婚后さんのことに対して責任を感じているところを美琴に正確に責められて強く反発したように見える。
「だからソイツを私にぶつけろっつってんのよ!!なんで…ッ」
佐藤利奈さんも劣らぬ熱演。「潰し合ってくれて〜」も相当な煽りだがレディオノイズ計画(美琴のクローンを作る計画)とレベル6シフト計画は美琴の心の傷と言えるので食蜂も容赦なく美琴の逆鱗に触れている。仮に美琴が逆上したら半殺しにされかねない状況なのだが、美琴がそういうタイプでないことを「信用」しているのか、そういう打算が頭から消えるほど美琴に腹が立ったのか……後者であれば美琴に劣らぬ激情が垣間見える。
そもそも婚后さんの怪我の「責任」はこの二人にはないと思うのだが、美琴が妹達の生まれに対して責任を感じているように、美琴も食蜂も「原因の一端」を責任ととらえてしまうタイプの性格に見える。直情的に胸ぐらを掴む美琴と静かに言葉で刺す食蜂、怒り方は真逆に描かれているが根底の性格は似ているようにも思える。
「何考えてんだかわからないアンタと組む気なんて、はなからないの」
普通の人間なら誰しも行う「言行から他人を信用するorしない」というプロセスを経れば、美琴は粗野なところもあるが好まれ信頼されやすい性格をしているだろう。しかし食蜂は信用判定を全て読心能力に頼ってきたので、それが効かないと美琴すら信用できないという、能力に由来する性格描写と関係性描写が大変興味深い。読心能力者がひねくれるのはよくある話だが、それでも食蜂は彼女なりの規範で総合的には善良な人物として成立しており、そして性格が物語にも影響を及ぼしている点が面白い。特殊な世界の特殊な法則で特殊な規範や物語が生成されるところが能力者ものやファンタジーものの妙味であり、それを堪能できるエピソードである。
「初春はこれくらいで折れるほどヤワではありませんわよ」
佐天さんと黒子がどちらも初春を尊重しながら違うスタンスで接していることがわかる、多様な友情の形が見られるよいシーン。まあ佐天さんの言うように精神操作されているのは全員だし、食蜂の目的からすると美琴が動き出した時点でどのみちルームメイトの黒子は精神操作対象→結局3人とも操作されるので視聴者目線では初春のミスには見えないのだが。それはそうと花なし初春の別人感がすごい。
ちなみにこのシーンは原作では美琴&食蜂が会場突入した後の描写なのでアニメは微妙に再構成してある。今回は本編が少しEDに食い込んでいて全体的にちょっと早口に感じたので尺の都合があったのかもしれない。
「あぁ〜そんなだから体型もお子様なんだぁー?」
「たっ体型は関係ないでしょおがッ!!」
一触即発のシリアスな口論をやった直後にこのしょーもないコミカルな口喧嘩である。原作では2話に分かれているがアニメで同じ話にまとめられたことで温度差がより激しくなって笑ってしまう。(ちなみに原作では運動音痴が運痴と略されていた。)食蜂の印象も前回までの「底知れない洗脳能力者」から「小学生並の運痴女子」へとギャップが激しい。このコントラストの強さが食蜂の魅力であり超電磁砲の演出力の妙と言える。
【木原幻生】登場。超電磁砲無印の幻想御手(レベルアッパー)事件の主犯ではないが黒幕的な存在である。Sにもちょろっと登場している。食蜂が敵でないなら別の敵を用意しなければいけないが、シリーズ最初期から登場していた巨悪であれば敵役として十分な説得力がある。食蜂の関与を把握しておりラスボスに相応しい強キャラ感を漂わせている。
さて、これまで各話感想で折りたたんで書いてきたネタバレ防止部分のほとんどは今回までの「食蜂を敵のように見せるミスリード」を保護するためのものなので、6話までの各話感想はネタバレ部分を展開していただいても大丈夫です。(7話の部分は大覇星祭編ラストまでお待ちください。)まだストーリー上のどんでん返しがないわけではないけど、ニコ動をコメントありで見てもまあまあ問題ないかもしれません。食蜂サイドが敵でないと判明したあとに見返すとなかなか面白いものがあると思います。カイツさんの「御坂美琴との思い出…とカ」とかね。
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