2020年05月10日
とある科学の超電磁砲T 13話感想 どんでん返しで同時決着する黒子&食蜂の戦い
13話 「SYSTEM(神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くもの)」
※原作未読の方はコメントオフでの視聴をオススメします。
あらすじ
下水道に潜む警策は大会カメラを利用し地上の黒子を撃退、暴走美琴の攻撃を誘導する。
しかし黒子は初春による映像トリックで無事であり、下水道の警策を追い詰めて撃破する。
同刻、幻生はエクステリアのリミッター解除コードを入力するがその場に倒れる。
食蜂が予め自身を洗脳し、リミッター解除と自壊のコードを逆に認識させていたためだった。
幻生のウィルスの影響が切れた美琴は自我を取り戻すが力を抑制できず、当麻と対峙する。
感想
三重ラスボス戦のうち二つが決着を見るエピソード。両者ともどんでん返しの展開なのであらすじが難しかった。雷神美琴戦の描写は少なめなのでタイトルはちょっと合ってないような気もする。冒頭約3分半は黒子によるこれまであらすじ紹介。全て過去映像であり喋っているのも黒子一人なので、社会情勢によりこうせざるを得なかったのだろうかと邪推してしまう。作画はともかく収録現場はどうしても「三密」を形成してしまうので今後も深刻な問題ではないだろうか。まあそれはさておき、記憶操作状態の黒子がナレーションしているので視点がなかなか新鮮。CV新井里美さんの演技もメリハリがあって聴き応えがある。
「佐天さんにしてはいいアイデアです!!」「ええ……」
今週唯一のギャグシーン。このあたりからところどころ黒春が出てきて笑う。とは言うが佐天さんは今期の描写を見る限り発想が突飛もとい柔軟なので、アイデアマンとしてはけっこう優秀なのでは。警策のハッキングに初春が気づいたのもここなので、情報を処理する能力に長けた初春と発想に長けた佐天さんは能力的にもお互いを補い合ういいコンビに思える。
「私の正確な位置を掴んでいない以上、目視できる安全なスペースに飛びたくなるものでしょう?」
ここのセリフは原作だと「壁の中に転移する危険が多少なりとある視認できない場所より〜」なので明確に改変されている。
「邪魔しなけりゃ殺すことまではしなかったんだけど」
黒子を殺めたことに動揺する警策。初の殺人だったことは想像に難くない。……その割には美鈴(7話)や佐天さん(9話)はカジュアルに殺そうとしてたような気もするが、まあ未遂で終わったので、結果が伴って初めて沸き上がってくる感情もあるだろう。誰も聞いていないところで必死に言い訳するような声色が印象深い。幻生や馬場のようなタイプと比較してただの外道ではないことが推察できる。
どんどん人外化する美琴。頭の部分に宇宙が広がっていてもはや立体ですらないように見える。原作によればこれでフェイズ「5.3」らしいのでレベル6がどういう状態・概念なのか想像もつかない。
「……見つけましたわよ」
このあたりは警策視点で描かれているので執拗に追い詰めてくる黒子にはある種の恐怖を感じる。6話の馬場に対する美琴と同じで敵味方の視点が逆転したターミネーター的な演出となっている。低く重い黒子の声と疾走感のあるBGMがたまらない。「はじけとべッ!」と叫んだ瞬間は完全な暗がりにいた警策が黒子の存在を察知するとライトのあるところに「引き戻された」のが彼女の顛末を象徴する演出に思える。
「中継カメラの数は数万台!その中から私の支配下にあるものを特定してコントロールを奪ったっていうの?!」
初春が15分でやってくれました。すごい。ハッキングに関しては自分に知識がないので「まあ初春ならできるんだろうな」くらいに思うが、映像トリックのほうは短時間で黒子の映像を用意し(包帯を巻いてないので過去のものと思われる)、さらに動くカメラから見て立体的に不自然がないようにはめ込んだことになる。……いや無理じゃない??現実世界の常識に照らせばありえないスピードと技術だが、まあ科学万能の学園都市なのでそういう映像加工ツールも発達しているのだろう。
「それができる最高のパートナーがいますのよ」
前回の「嫁入り前の〜」は美琴の記憶があったら言わなさそうなセリフだが、こちらは美琴の記憶があっても言いそうなセリフ。原作の時点では気が付かなかったのだが、黒子はここでマイクに指を当てていて初春への称賛を本人に聞かれないようにしている。黒子は美琴に対するストレートな
テレポーターがテレポートしないことで裏をかく作戦がばっちりハマって黒子の勝利。特に言及されないのだが、そもそもVS人形で初春が映像トリックを仕掛けるには、テレポート直後を狙う警策の作戦を完璧に読んでいないと無理なので、警策の作戦はVS人形の時点で丸裸だったことになる。トリックを知った時点でじっくり考えれば分かることだが動揺する精神状態ではとても不可能だろう。決着のシーンはスピーディーとスローを使い分けた緩急ある躍動とテレポートの動的な栄えに見応えがあり、印象的な一瞬を切り取った絵と巧みなコマ割りで魅せる原作とはまた別の魅力を堪能できる。それにしても悲鳴すら上げていないがナイフが手の甲を貫通するのは結構な大怪我なので、初春の気苦労も分かるというものである。
超電磁砲作画の澁川大祐さんのツイートを紹介。
とある科学の超電磁砲T13話、黒子と警策のシーン担当させていただきました!
— 澁川 大祐 (@camus27315) May 1, 2020
描きたいシーンやれてよかった!
#超電磁砲T pic.twitter.com/QNSAQxz7y0
「ドリー……」
ストーリー上に残る最後の謎、【警策の正体】がほぼ明らかに。まあアニメの描写だと誰なのか分かった人がほとんどだと思うが一応推定の段階なので言及は次回に。原作では「一足先に逝ってて頂戴…」「あの世で『彼女』に詫びろッ!」と叫ぶ回と決着回が分かれているので答え合わせまで間があるのだが、アニメだと同一回なので分かりやすくなっている。余裕のある態度だった警策が憎悪をむき出しにして叫ぶところが印象深い。決着シーンの絶叫や、黒子を殺したと思って動揺するシーンなど、CV富田美憂さんの熱演が光るエピソードである。
場面が変わって、倒れる幻生。原作の時点でも思ったのだが普通に描くと「なぜか幻生が倒れてその後答え合わせをする」という地味オブ地味な決着シーンになるので、それを補うために黒子VS警策が派手に決着したシーンに重ねているのが上手い。「洗脳能力者が自分を洗脳する」という作戦は上述の「テレポーターがテレポートしない」に近いコペルニクス的なんちゃらを感じる。
「リミッター解除コードと自壊コードの私自身の認識を入れ替え、その記憶をすべて消す――」
自分が敗北するほうに賭けるこの作戦、敗北しなかった場合は食蜂の記憶に強烈な地雷が残ることになるがまあ今死ぬよりは全然マシだろう。ちなみに「その記憶をすべて消す」の部分はアニオリ追加である。確かにそこを覚えていたら意味がないので細かいが厳密な改変。(まあもっと厳密に言うなら「この発想には二度と至ることはない」も追加しないとコードがぐるぐる入れ替わるループに入ってしまうが。)実は原作では前もって自壊コードがリミッター解除コードと並んで表記されていて、目を皿のようにして読み込んでいた人なら警策戦の決着が付く前に幻生がまんまと自壊コードを入力しているのが分かるのだが、アニメではそういう伏線・ギミックは張られていないため自壊コードの存在が唐突に感じる人もいるかもしれない。
「……御坂さんはどうなってもいいけどぉ」
内心の思考なので本気でそう思っている可能性が高い。食蜂の選択肢としては【逃げ切る】【交渉する】【認識改変した上で対決する】があり原作だと交渉もちらっと考えているが、その場合学園都市が壊滅して黒子らや派閥メンバーも死ぬので食蜂の性格的には論外だろう。つまり美琴だけが犠牲になる【逃げ切り】と【対決】を天秤にかけていることになる。美琴→食蜂の感情は日常によくあるレベルの嫌悪で、美琴は食蜂が死にそうになれば迷わず助けるだろうが、食蜂→美琴は「助けてもいいけど、別に死んでもかまわない」という嫌悪以上憎悪未満くらいの深く昏いものを感じる。
ミサカ妹が倒れる姿に死を迎えるドリーを重ね、幻生のウィルスからミサカ妹を確実に治すためにリスクをとる食蜂。8話の感想で美琴と食蜂は根底の性格が似ていると書いたが、食蜂→美琴への悪感情もそのあたりに理由があるのかもしれない。美琴は「原因の一端」を「責任」と捉えがちなので妹達の境遇について責任を感じているが、その感情をそのまま食蜂も持っている可能性がある。美琴が持つ「妹達を死なせてしまった自己嫌悪」と同じものを食蜂が持っているとしたら、美琴への強い嫌悪も納得できる。美琴の姿こそないものの、食蜂と美琴の鏡写しのような関係性が深く感じられるエピソードである。
「さすが私ってところかしらぁ? ……覚えてないけど。」
決めセリフがいまいち決まらないところが6話の泡浮さんを思い出させる。絶大な力を持つわりにちょっと抜けている食蜂のギャップが体現されている勝利セリフである。
「――まだ、終わりってわけじゃねえみてえだな」
美琴が自我を取り戻したのは幻生が倒れてミサカネットワークから完全ではないにせよウィルスが消えたためだろう。決着は次回に持ち越しになるが、最初の黒子の振り返りがなければ決着していたのだろうか……と思わなくもない。(次回予告のノリを見る限り予定通りにも見えるが。)
さて、次回は大覇星祭編ラストになるかと思っていたが原作はあと90ページ程あるのでもう1回ある可能性も。原作にある婚后さんの桃李成蹊エピソードもやってほしいのだがどうなるか。さらに次回放送予定がこれを書いている時点でまだ決まっていないので2週以上空く可能性もありそうだ。何度も書いているがすべてのスタッフさんの健康を最優先して制作していただきたいと思う。
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