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2020年09月20日
【水と油が混じりあう】食品メーカーの乳化技術
マヨネーズやアイスクリーム、バターなど水と油が混じった食品が市販されていますが、なぜ分離しないのか、栄養成分に影響はといった疑問や不安は、ありませんか。
食品メーカーでは、互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散する乳化装置を使用します。この装置により、水と油が混じりあい、製品自体の安定化やアイスクリームなどの滑らかな舌触りが実現します。食品そのものに含まれる栄養成分が変化することはありません。
20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍すると、高圧ホモジナイザーなどの乳化装置を頻繁に使用します。
なお、乳化と分散は同意としています。
互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散した系を乳化(エマルション)といい、食品をはじめ医薬品や化粧品などあらゆる分野で活用されている技術です。エマルションには、大きく分けて水中に油滴が分散した水中油滴分散型エマルション(O/W:oil in water)と油中に水滴が分散した油中水滴分散型エマルション(W/O:water in oil)があります。
水中油滴分散型エマルションには、マヨネーズやアイスクリーム、化粧品乳液などがあります。油中水滴分散型エマルションには、バターやマーガリン、ハンドクリームなどがあります。
もっとも簡単な乳化は、水と油が混じった液体を入れた容器を勢いよく振ることです。ドレッシングは、使う前によく振りますが、これは容器の中に物理的対流を起こすことにより、水と油の粒子を一時的に混ぜ合わせるためです。
機械装置による物理的な対流を利用して、物質を乳化する方法もあります。代表的な乳化機は、ホモジナイザーと呼ばれる装置です。毎日使っているさまざまな製品の多くが、物質を乳化することによってつくられています。
なお、機械装置で乳化を行っても、時間がたてば水と油が分離することがあります。そこで、乳化剤を加えることにより、水と油が混ざったまま安定化します。マヨネーズの場合、食酢と油が分離してしまいますが、卵に含まれるレシチンが、乳化した状態を安定させます。
乳化を目的とした装置は、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、ウルトラミキサー、撹拌機などがあります。
高圧ホモジナイザーは、1900年初頭にフランス人のオーガスト・ゴーリンが牛乳を長期保存するために乳脂肪球を微粒化及び均質化する目的で開発した装置が始まりであるといわれています。ゴーリンのホモジナイザーは、液体が装置内部を10〜50MPaの圧力で通過したときに、せん断力を与えることができます。高圧ホモジナイザーは、高圧ポンプで物質を狭い隙間から押し出す方法や物質を対向衝突する方法でせん断力を与えます。大学の研究室などでは、ごく少量の物質を分散化する場合に、超音波を利用したホモジナイザーが使われることもあります。ホモジナイザーの乳化力は高く、液滴の微細化に適していますが、供給する液体を100MPa以上の高圧に加圧するためには技術力や付帯装置が必要となります。なお、ホモジナイザーは、物質の粒子を均一化することもできるので分散機とも呼ばれます。さらに最大275MPaとエ ネルギーレベルが非常に高く、超微粒子の調製が可能な高圧ホモジナイザーとして、アメリカのMicrofluidics社が開発したマイクロフルイダイザが、広く使用されています。
ホモミキサーは、力を発生させる部分となるステー タ内の羽根を高速回転させることにより、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象を生じさせ、ポンプのような働きで絶えず液体を底部から吸い上げ、 高速回転する羽根と固定のカバーの隙間が狭いことから、その隙間を液が通過するときに、強力なせん断力や衝撃によって撹拌され、均一かつ微細な乳化粒子を得ることができます。一般的なエマルション製造に用いられる装置は、タンクとミキサーが一体となったバッチ式の装置が主流となっています。
ウルトラミキサーは、ホモミキサーよりも高いせん断力を持ち、高粘度に対して有効で す。液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象による吸引力などによって、ミキサー内に液体を送り込み、側面へ吹き出すことを繰り返し、乳化させます。
撹拌機は、物質を勢いよく混ぜ合わせることで物理的な対流を起こし、混ぜ合わせます。
食品メーカーなどで、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、撹拌機は頻繁に使用されているほか、高圧ホモジナイザーに入れる前にまず物質同士をよく混ぜ合わせるために撹拌機など使われることもあります。アイスクリームなどの滑らかな舌触りや製品自体の安定化を図る場合、ただ攪拌しただけだと物質の粒子は均一化しないため、高圧ホモジナイザーで分散化することが必要です。
高圧ホモジナイザーは物質の粒子を分散化するだけで、食品の栄養成分を変化させることはありません。
20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍すると、高圧ホモジナイザーやホモミキサーは頻繁に使用します。マヨネーズやアイスクリーム、バター、マーガリンにとどまらず、さまざまなドレッシングや豚骨ラーメンスープにも乳化装置は活躍しています。
ホモミキサーのみであると時間が経てば分離してくることもあるので、その時は乳化剤の使用や高圧ホモジナイザーを併用します。分離が抑えられ、安定した状態が続くと乳化剤の使用の低減や高圧ホモジナイザーの圧力を下げ、コストダウンや工場での生産性を検討します。
スーパーなどで販売されている乳化した食品を製造している食品メーカーでは、このような技術を日々研究しています。
互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散した系を乳化(エマルション)といい、食品をはじめ医薬品や化粧品などあらゆる分野で活用されている技術です。
食品メーカーでは、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、撹拌機などの乳化装置は頻繁に使用され、製品自体の安定化やアイスクリームなどの滑らかな舌触りが実現しています。なお、食品そのものに含まれる栄養成分が変化することはありません。
2020年09月19日
【解説】たんぱく加水分解物のすべて
食品の原材料表示にたんぱく加水分解物と記載されていますが、一体どういうものなのか、加水分解とはどのようなことか、 安全性はといった疑問や不安は、ありませんか。
たんぱく加水分解物は、小麦や脱脂大豆、豚や魚などの原材料を塩酸で加水分解した食品の1種です。製造工程中に塩酸は、苛性ソーダによる中和を経て、食塩となり、除去されます。
たんぱく加水分解物を加工食品に用いることで、味の幅が広がることから、実際にさまざまな食品メーカーが、多くの製品に採用されています。
「食品の原材料表示に、たんぱく加水分解物と記載されていますが、一体どういうものですしょうか。」、「加水分解とはどのようなことですか。」、「よくわからない原材料なので、 安全性が心配です。」といった疑問や不安は、ありませんか。
たんぱく加水分解物は、小麦や脱脂大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、甜菜、豚やカツオ、マグロ、イワシの皮や骨などの原材料を塩酸で加水分解した食品の1種です。小麦や大豆など植物性たんぱく質を塩酸で分解したものは、HVP(hydrolyzed vegetable protein)、豚や魚など動物性たんぱく質を塩酸で分解したものは、HAP(hydrolyzed animal protein)と呼ばれます。食品業界内ではアミノ酸液やアミノ酸パウダーとも呼ばれます。植物性たんぱく質由来のたんぱく加水分解物は、口に入れたときに最初に感じる先味が強くなり、シャープな味に仕上げることができます。動物性たんぱく質由来のたんぱく加水分解物は、甘味があり食品にまろやかさを持たせる効果があります。
たんぱく加水分解物は、原材料のたんぱく質を塩酸で加水分解することで製造されます。10,000~20,000LのFRP製タンクに原材料と塩酸を加え、蒸気を吹き込むなどで100℃前後まで加熱し、pH1以下で数日間、加水分解を行います。その後中和タンクに移送し、苛性ソーダでpHを戻します。このときに活性炭なども加え脱臭脱色も同時に行います。それからろ過設備やクロロプロパノール類の除去装置を通し、鉄分や色素を吸着樹脂にて取り除き、真空設備で脱臭します。2〜4週間程タンクで静置させ、オリを沈殿除去し、濃縮や脱塩を経て、製品となります。
製造工程中に塩酸を使用するため、心配になるかも知れませんが、胃酸でたんぱく質が消化されるのと同様です。分解が終わった後に塩酸は、苛性ソーダで中和され、食塩となります。
また、原材料中に含まれる脂肪に由来するグリセリンと塩酸によって、変異原性の恐れがあるといわれたクロロプロパノール (3-MCPD)と呼ばれる物質が、製造工程中に微量に生成されますが、上述した通り、こちらは専用の装置で除去されています。もちろん、製造元も定期的に残留の有無を確認しています。なお、クロロプロパノール については、FAO/WHO合同食品添加物専門委員会などが評価を行い、変異原性は認められなかったと結論づけました。
たんぱく加水分解物は、たんぱく質をほぼ単体のアミノ酸にまで高度に分解されており、うま味をはじめ、口に入れたときに強いパンチの効いた呈味が得られ、非常に安価で流通しています。たんぱく加水分解物は、原材料由来のさまざまなアミノ酸から構成され、しょう油や漬物をはじめ、即席めんやスナック菓子などの加工食品全般の調味目的で使用されます。アミノ酸は、食品にうま味を付与する重要な要素です。昆布からだしを取ったり、豚骨や鶏ガラからスープを取ったりするのは、主にこれらの原材料が持つアミノ酸などの成分を取り出しているわけです。加工食品の場合、製造工程中や保存時にどうしても失われてしまう味を補い、また均一な味に仕上げる必要があるため、原材料の味だけでなく、たんぱく加水分解物が使用されることになります。たんぱく加水分解物は、長期保存が可能で、用途が幅広いこともあり、日本だけでなく、欧米やアジアでも使用されています。
一般的には、たんぱく加水分解物を使うと、使用量にもよりますが呈味力が高いことから、味が強く感じられるようになり、メリハリのある味に仕上がるため、同じ加工食品でも、たん白加水分解物を使った場合と使わなかった場合では、仕上がりの味に大きな違いがあります。
分類上は食品扱いとなり、食品添加物ではありません。たんぱく加水分解物は、加水分解という比較的簡易な加工工程を経て製造されることから、食品に分類されています。一方、アミノ酸の単体であるグルタミン酸ナトリウムやアスパラギン酸ナトリウムなどは、食品添加物です。
たんぱく加水分解物の製法は、100年以上も前にヨーロッパで確立されたといわれています。日本でも1930年代から作られるようになり、主にしょう油業界において改良が行われ、しょう油製造の簡素化と品質向上に貢献してきました。特に九州のしょう油は、うま味と甘味が特徴となりますが、このうま味の決め手は、たんぱく加水分解物です。この味は、たんぱく加水分解物なしでは実現できません。ちなみに甘味は、甘草やステビアなどによるものです。
20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍し、仕事柄あらゆるたんぱく加水分解物の比較検討を行いました。たんぱく加水分解物は、うま味をはじめ、口に入れたときに強いパンチの効いた呈味が得られ、非常に安価で流通しています。たんぱく加水分解物は、原材料由来のさまざまなアミノ酸から構成され、即席めんやスナック菓子などの加工食品の製品開発に使用します。もちろん、工場監査やたんぱく加水分解物の製品規格書を確認し、品質に問題がないことを確認しています。
たんぱく加水分解物を加工食品の製品開発に用いることで、味の幅が広がることは確かです。実際にさまざまな食品メーカーが、多くの食品に採用しています。
たんぱく加水分解物は、小麦や脱脂大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、甜菜、豚やカツオ、マグロ、イワシの皮や骨などの原材料を塩酸で加水分解した食品の1種です。植物性たんぱく質由来のたんぱく加水分解物は、口に入れたときに最初に感じる先味が強くなり、シャープな味に仕上げることができます。動物性たんぱく質由来のたんぱく加水分解物は、甘味があり食品にまろやかさを持たせる効果があります。
たんぱく加水分解物は、原材料のたんぱく質を塩酸で加水分解することで製造されます。
原材料中に含まれる脂肪に由来するグリセリンと塩酸によって、変異原性の恐れがあるといわれたクロロプロパノール (3-MCPD)と呼ばれる物質が、製造工程中に微量に生成されますが、専用の装置で除去されています。クロロプロパノール については、FAO/WHO合同食品添加物専門委員会などが評価を行い、変異原性は認められなかったと結論づけています。
たんぱく加水分解物を加工食品の製品開発に用いることで、味の幅が広がることから、実際にさまざまな食品メーカーが、多くの製品に採用しています。
2020年09月18日
【飛散防止と溶解性向上】食品の造粒技術
スーパーを見渡すとさまざまな造粒した食品が陳列されています。代表的な製品としては、粉末スープやだしの素などです。それではなぜ、食品メーカーは粉末化するだけに留まらず、単一もしくは多くの成分からなる粉末の原材料を、より大きな粒状に加工するのでしょうか。
造粒の目的としては、具体的に次のことがあげられます。
1 粉塵の飛散防止
しょう油などの粉末の場合、飛散するので、消費者の使い勝手の向上や作業の効率化、工場での製造工程中の原材料ロスの減少になります。
2 溶解性や流動性の改善
造粒品は、多くの細孔ができることで粉末よりも溶解性が向上し、流動性も高いため取り出しやすく、工場では均一な流量の制御が可能です。
3 吸湿性の改善
しょう油などの粉末の場合と比べて、粒子の増大により相互凝集が弱まり、吸湿面積の減少となり、吸湿しにくくなります。
4 物性の安定化
香気成分などの揮発性物質を保持し、品質の劣化を防止します。
造粒は、大きく分けると湿式造粒と乾式造粒に分類されます。湿式造粒とは、水またはでんぷんを分解したデキストリンなどの結合剤を溶解した溶液を粉末に噴霧し、湿潤させてから、その水分を乾燥する方法で、装置によって得られる造粒品の物性が異なります。乾式造粒とは、粉末の原材料をシリンダーと呼ばれる定形の圧縮装置で造粒する方法です。水や結合剤を使用せず、原料をそのまま圧縮することで、成分量を最大限保ったまま製造できます。食品メーカーでは主に湿式造粒を用います。
流動層造粒は、装置内の造粒室の下部から熱風を送り込み、原材料の粉末を空中に巻き上げることで、粉末が流動する状態になる層を形成してから、そこに液体を噴霧して、凝集させることにより造粒する方法です。多くの細孔ができるため、溶解性に優れた0.3o〜2o程度の造粒品が得られます。造粒と乾燥を同時に行うことで湿式造粒では対応できない粘度の高い原材料でも、造粒が可能です。
流動層造粒は、造粒と乾燥を 1 台の設備で同時に行うことができ、設備自体も小さいことから、据付に必要な面積が少なく、生産効率が高くなります。また、流動層造粒による造粒品は丸みを帯び硬度が高いので、粒度分布が狭く均一な造粒品が得られやすいです。
スープやスポーツ飲料、ココア、抹茶、青汁、健康食品などの製造に用いられます。
押出造粒は、原材料粉末に水または液体を加えて混合してから、スクリューまたはローラなどを使い、圧力をかけて混合物を強制的にスクリーン(多数の孔の開いている板)から円柱状の形にして押し出し、カッターで一定のサイズで切断することで、造粒する方法です。直径2o〜6o、長さ10o〜15o程のペレットと呼ばれる円柱状の造粒品が得られます。
押出造粒は、設備導入コストが安く、省スペースで設置できる一方、混合や押出など工程数が多くなり、生産能力が低く大量生産にはあまり向いていません。造粒品は密度と強度が比較的高く、粒度はスクリーンに開いている孔のサイズに依存するため、粒度の調整が簡単で粒度分布が狭くなります。
だしの素やスープ、ふりかけなどに用いられます。
撹拌造粒は、装置内に原材料となる粉末と水または液体を加え、ブレードと呼ばれるスクリューと遠心力で混合撹拌して、回転させながら粉末を凝集させる造粒方法です。100μm〜3oの微細な造粒品が得られます。造粒品は、攪拌羽根の粉砕作用によって、均一な粒度になります。
撹拌造粒装置は、低コストの上、短時間での生産が可能となり、洗浄も容易です。
調味料や打錠食品などの原材料として用いられます。
食品を造粒する目的は、粉塵の飛散防止、溶解性や流動性の改善、吸湿性の改善、物性の安定化です。
造粒は、大きく分けると湿式造粒と乾式造粒に分類され、湿式造粒は、水またはでんぷんを分解したデキストリンなどの結合剤を溶解した溶液を粉末に噴霧し、湿潤させてから、その水分を乾燥する方法です。湿式造粒には、流動層造粒や押出造粒、撹拌造粒などの方法があります。
だしの素やふりかけ、スープ、スポーツ飲料、ココア、抹茶、青汁、健康食品などに幅広く用いられています。
2020年09月17日
【自由自在】食品に使用する増粘剤やゲル化剤、安定剤
食品に粘度を付与するため、食品を固めるため、そしてその状態を安定化させるために使用される食品添加物は、増粘剤やゲル化剤、安定剤と呼ばれ、微生物由来と植物由来のものがあります。増粘剤でありゲル化剤でもあるキサンタンガムは、微生物キサントモナス キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が、でんぷんなどの原材料を発酵することで生産されます。植物由来のものとしては、海藻から抽出されるカラギーナン、マメ科の植物の種から抽出されるグァーガムなどがあります。
そのほとんどは、ぶどう糖などの糖がたくさんつながった多糖類です。食品の粘度を調節することでほどよく絡むようになるほか、具材の分散や食感の向上にも使用されます。
粘性のある食品としては、ドレッシングやタレのような液状タイプ、流動性のある食品、クリームといったペースト状の食品などがあります。このような粘性のある食品を製造するために増粘剤が用いられます。増粘を目的として使用する場合は、増粘剤(キサンタンガム)あるいは、増粘多糖類と表示されます。
食品のゲル化を目的とする食品添加物がゲル化剤です。流動性のあるゾルの状態のものが弾性を持って固まり、ゼリー状になった状態がゲルです。ゾルの状態からゲルの状態に移ることをゲル化といいます。ゲル状食品としては、ゼリーやジャムなどがあります。ゲル化剤(ペクチン)などのように用途名と物質名を併記して表示されます。 増粘剤やゲル化剤などを使用した食品で、その状態を安定化させる目的で使用する食品添加物が安定剤です。安定化が求められる理由は、食品のもろさや硬さなどの食感の保持、食品の保水、食品の結着、乳化液の安定化などのためです。食品の形態の安定化を目的として使用した場合、安定剤(カラギーナン)などと用途名に物質名を併記して表示されます。
微生物キサントモナス キャンペストリスの発酵によって生産される増粘多糖類です。主にキサンタンガム単体でドレッシングやソースなどの粘性の付与に使用されます。ゲル化剤として使用する場合は、ローカストビーンガムやグァーガムと併用することでゲルを形成する性質を利用します。キサンタンガムは単体の使用だけでなく、他のゲル化剤と組み合わせることで、冷凍食品やカスタードクリームなどにも用いられます。キサンタンガムは、温水はもちろん、冷水でも溶解し、耐熱性や耐塩性、耐酸性、冷凍解凍耐性があり、少ない添加量で高い粘度をもつことが特徴です。
また、キサンタンガムの溶液は、擬塑性流動という流動性を持ちます。擬塑性流動とは、力を加えると粘度が低くなり、力を加えないで置いておいた状態では粘度が高くなる性質のことをいいます。ドレッシングやソースなどで使用する際は粘度が低くなるため、流れやすいので使いやすくなります。一方、静置しておくと保形性、安定性が得られます。
パキスタンやインドで栽培されている1年生植物のグァーの種子から得られる多糖類です。冷水でも溶解しますが、加熱することで溶解が加速します。天然ガム類の中では最も粘度が高く、粘度は塩類の存在下でも安定しています。ドレッシングやソース、アイスクリーム、即席めんのスープなどに用いられます。
グァーガムの溶液の粘度は、温度によって可逆的に変化します。 ただし、溶液を高温で長時間放置すると粘度の低下をまねきます。
地中海沿岸のような乾燥した土地で栽培、自生している豆科の多年生常緑樹カロブ樹の種子から得られる多糖類です。80〜85℃の加熱により完全に溶解し、粘稠な水溶液となります。 ソースやアイスクリーム、ゼリー、プリンなどに使用されています。
キサンタンガムなどと併用することで、弾力のあるゲルを形成します。
カラギーナンは、紅藻類から抽出される多糖類です。構造の違いによりカッパ、 イオタ、ラムダの3タイプに分けられ、それぞれ溶解性やゲル化性、ゲルの性質が異なります。ゼリーやプリン、ドレッシング、ジャム、畜肉製品、タレ、ソースなどに増粘剤やゲル化剤、安定剤として使用されます。
カラギーナンのゲルは、熱可逆性です、カルシウムイオンなどの濃度が高くなるほどゲル化温度やゲルの溶解温度が高くなります。
リンゴや柑橘類の果皮などから抽出された多糖類です。ペクチンは常温の水に可溶で、構造や性質の異なるLM ペクチンとHM ペクチンの2タイプがあります。ジャムやフルーツソース、マーマレード、飲料、ゼリー、アイスクリームなどに使用されます。
食品に粘度を付与するため、食品を固めるため、そしてその状態を安定化させるために使用される食品添加物は、増粘剤やゲル化剤、安定剤と呼ばれます。
そのほとんどは、糖がたくさんつながった多糖類です。食品の粘度を調節することでほどよく絡むようになるほか、具材の分散や食感の向上にも使用されます。
ドレッシングやタレ、流動性のある食品、クリームなどのような粘性のある食品を製造するためには、増粘剤が用いられます。増粘を目的として使用する場合は、増粘剤(キサンタンガム)あるいは、増粘多糖類と表示されます。ゲル状食品のゼリーやジャムなどを製造する場合には。ゲル化剤を使用します。ゲル化剤(ペクチン)などのように用途名と物質名を併記して表示されます。増粘剤やゲル化剤などを使用した食品で、その状態を安定化させる目的で使用する食品添加物が安定剤です。食品の形態の安定化を目的として使用した場合、安定剤(カラギーナン)などと用途名に物質名を併記して表示されます。
2020年09月16日
【絶品】鍋料理3選
鍋料理で迷うことはありませんか。いざ決めようとなると、なんだかんだで、なかなかまとまりません。そんなときにおすすめの鍋料理は、水炊きともつ鍋、きのこ鍋です。
博多の水炊きは、骨付きの鶏肉を煮込むため、スープが白濁します。一見こってりとしているように感じますが、スープはうま味が凝縮されているにも関わらず、あっさりとしています。鶏肉のうま味を存分に味わえるスープが、博多の水炊きの最大の特徴です。シメの雑炊は、鶏肉のうま味が染みこみ、非常に美味しいです。
新鮮な「生もつ」を使った博多もつ鍋は、「もつ」が膨らむまで火を通せば食べられます。スープには、しょう油などですでに味がついているので、何もつけずに、そのまま食べます。「もつ」のとてもやわらかくプリプリした食感が楽しめます。
日本国内では、中国雲南料理のきのこ鍋が食べられるお店はあまり多くはありませんが、中国雲南省に行けば、間違いなくきのこ鍋です。烏骨鶏などの地鶏や丸鶏、牛テールを使用したスープに十数種類のきのこを加え、うま味を引き出します。珍しいきのこがたくさんある雲南きのこ鍋は、間違いなく一食の価値ありです。
ワイワイ楽しめる話題の鍋料理や家庭でお馴染みの鍋料理など、世界中にたくさんの種類の鍋料理がありますが、普段どんな鍋料理をしますか。鍋料理は、下準備や後片付けが簡単なことから、家庭でも親しまれています。家族で分けて食べるのも適しており、大人数での食事にも重宝されます。
お店や家庭で団らんのひとときを過ごせる鍋料理を、3つ紹介します。
鶏肉や野菜を水だけで煮立たせて、具材からだしを取る調理法が名前の由来です。味のベースに昆布を使うこともあり、シンプルさが一番の特徴です。さらに鶏ガラスープを加えることもあります。ねぎや柚子胡椒などの薬味と一緒にポン酢しょう油などで食べる鍋料理です。水炊きは鶏肉と決まっているわけではありませんが、鶏肉を使ったものが主流です。鶏ガラスープや昆布を入れずに水だけの場合もあります。コンソメスープと中国料理から考案されたのが、水炊きの起源と言われています。
一般的な水炊きは、スープが透き通っていますが、博多の水炊きは、スープが白く濁っているという特徴があります。一般的な水炊きは、水と昆布でスープがつくられますが、博多では骨付きの鶏肉を煮込むため、スープが白濁します。一見こってりとしているように感じますが、スープはうま味が凝縮されているにも関わらず、あっさりとしています。
使われる材料にも違いが見られます。一般的な水炊きは、白菜やネギを使い、博多ではキャベツなどの野菜を用います。博多の水炊きは鶏肉を使いますが、一般的な水炊きは豚肉や牛肉などを使用することもあります。家庭やお店で使う具材は違いますが、基本的なつくり方は同じです。
博多の水炊きは、鶏肉のうま味を存分に味わえるスープが最大の特徴です。シメの雑炊は、鶏肉のうま味が染みこみ、非常に美味しいです。博多には、美味しい水炊きが食べられるお店がたくさんあるので、お店の味を参考にしながら、家庭でもつくってみるといいのではないでしょうか。
一方、寄せ鍋は、魚介類や野菜、豆腐、鶏肉などを煮ながら食べる鍋料理ですが、塩やしょう油、酒、みりん、味噌などの調味料を加え、お店や家庭ごとに味付けを施して具材を煮込むところが、水炊きとは大きく異なります。スープに味付けがなされ、具材に染み込んでいるため、水炊きのようにポン酢しょう油を使わず、薬味としてゆずや七味唐辛子をかけて食べます。
水炊きの場合は、調味料を用いた味付けがなされていないので、素材本来の味を堪能することができます。煮詰まって味が濃くなることもありません。
博多名物もつ鍋は、プルプルした「もつ」の甘い脂が、食欲をそそります。スーパーで売っている茹でた「もつ」でつくると、お店で食べたものと食感がまったく異なり、臭みが出るといったことが、あるかもしれません。博多もつ鍋は、ゆでたもつを使うことはせず、煮込まずにさっと煮て食べます。
博多もつ鍋の最大の特徴は、鮮度のよい国産牛の「生もつ」を使うことです。「もつ」のプリプリ感や甘さは、ゆでて脂を落とした「もつ」では再現できません。豚の「もつ」は、クセがあり、においが強く、何度も下ゆでして、丁寧に洗う必要があります。濃い味つけで調理するもつ煮込みやもつ焼きなどには最適ですが、博多もつ鍋には使用しません。
牛の「生もつ」にも、さまざまな部位があります。博多もつ鍋に必ず使用するのは、小腸です。白い脂をまとい、とてもやわらかくプリプリした食感がある部位です。しかし、牛の小腸は、一頭から何sもとれない上、国産牛の高騰も伴い、手に入りにくくなっている希少部位です。スーパーではほとんど流通していません。
博多もつ鍋のスープの味付けは、しょう油やみそ、塩などさまざまです。基本のスープといえば、しょうゆ味です。「もつ」の風味を活かすあっさりした味のしょう油スープこそ、脂たっぷりの「もつ」を入れてもくどくなりません。
博多もつ鍋に入れる野菜は、山盛りのキャベツとニラです。ささがきごぼうを入れるところもあります。一方、水分の多い白菜やモヤシは、スープが薄くなってしまうので、使用しません。シイタケもスープの味を変えることから、博多もつ鍋には用いません。香辛料として、にんにくや唐辛子、ゴマをちらすことで、より美味しさを演出します。
新鮮な「生もつ」を使った博多もつ鍋は、「もつ」が膨らむまで火を通せば食べられます。煮すぎると脂が溶け出してしまいます。スープには、すでに味がついているので、何もつけずに、そのまま食べます。
シメには、「もつ」の脂とキャベツの甘みが溶けだしたスープで、雑炊やラーメンをつくっても美味しくいただけます。
鍋の具材として最近注目を集めているのがきのこです。きのこは、煮るだけでだしができるほどうま味があります。なおかつ食物繊維やビタミン類を豊富に含み、しかもローカロリーです。
昔から中国雲南省の人々は、きのこ料理を楽しんできました。そのひとつが、きのこ鍋です。烏骨鶏などの地鶏や丸鶏、牛テールを使用したスープに十数種類のきのこを加え、うま味を引き出します。珍しいきのこがたくさんある雲南きのこ鍋は、一食の価値ありです。きのこをはじめとした食材の宝庫である雲南省だからこそ、きのこ鍋が生まれたのかもしれません。
きのこをたっぷり食べられるとして評判のきのこ鍋ですが、日本国内では中国雲南料理のきのこ鍋が食べられるお店はあまり多くはありません。きのこ鍋を提供する一部のお店では、雲南省や国内の契約農家から直送して仕入れているこだわりのきのこを、食材として使用します。タモギタケやヤマブシタケ、トキイロヒラタケなど、普段なかなか食べることができない珍しいきのこも、余すところ無く堪能できます。
鮮やかな黄色のタモギタケは、鍋に入れるとうま味を出し、スープの味をよりよくしてくれます。プリプリとした食感も魅力です。ピンク色をしたトキイロヒラタケもうま味が強く、だしがよく出ます。歯ごたえのしっかりした食感が楽しめます。ヤマブシタケは、傘も軸もない特徴的な形状です。やわらかな食感で、鍋のスープを吸収し、口に含むとうま味が広がります。
さまざまな種類のきのこを地鶏や丸鶏などからとったスープの入った鍋の中に、溢れそうなくらい入れていきます。弱火で15分程度煮込んでできあがった鍋のスープは、鶏のうま味にきのこのうま味がプラスされ、コクがあり奥深い味わいになります。たっぷりとスープを吸い込んだきのこは、噛むとうま味がジュワッと広がり、濃厚な味わいです。
シメにいただくのは、きのこのうま味が十二分に溶けだしたスープでつくる米線(べいせん)です。米線は、米粉を原材料としためんの一種です。このめんは、雲南省のめんとして知られ、同じく米粉を原材料としているビーフンのような細打ちの乾燥麺ではなく、太さはあるが、コシがない断面の丸い生のめんです。もちろん雑炊も美味しく頂けます。
「今日は何の鍋料理にしようかな。」、「どこの鍋料理を食べに行こうかな。」といったことはありませんか。いざ決めようとなると、いつも迷います。
私は、20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍し、仕事柄あらゆるジャンルの食品を食べ、食品の製品開発に活かしています。
九州は博多に行くと水炊きあるいはもつ鍋を食べに行きます。博多の水炊きは、骨付きの鶏肉を煮込むため、スープが白濁します。一見こってりとしているように感じますが、スープはうま味が凝縮されているにも関わらず、あっさりとしています。鶏肉のうま味を存分に味わえるスープが、博多の水炊きの最大の特徴です。シメの雑炊は、鶏肉のうま味が染みこみ、非常に美味しいです。新鮮な「生もつ」を使った博多もつ鍋は、「もつ」が膨らむまで火を通せば食べられます。スープには、しょう油などですでに味がついているので、何もつけずに、そのまま食べます。「もつ」のとてもやわらかくプリプリした食感が楽しめます。中国雲南省に行けば、間違いなくきのこ鍋です。烏骨鶏などの地鶏や丸鶏、牛テールを使用したスープに十数種類のきのこを加え、うま味を引き出します。珍しいきのこがたくさんある雲南きのこ鍋は、間違いなく一食の価値ありです。
鍋料理で迷うことはありませんか。いざ決めようとなると、なんだかんだで、なかなかまとまりません。
そんなときにおすすめの鍋料理は、水炊きともつ鍋、きのこ鍋です。
博多の水炊きは、骨付きの鶏肉を煮込むため、スープが白濁します。一見こってりとしているように感じますが、スープはうま味が凝縮されているにも関わらず、あっさりとしています。鶏肉のうま味を存分に味わえるスープが、博多の水炊きの最大の特徴です。シメの雑炊は、鶏肉のうま味が染みこみ、非常に美味しいです。
新鮮な「生もつ」を使った博多もつ鍋は、「もつ」が膨らむまで火を通せば食べられます。スープには、しょう油などですでに味がついているので、何もつけずに、そのまま食べます。「もつ」のとてもやわらかくプリプリした食感が楽しめます。
日本国内では、中国雲南料理のきのこ鍋が食べられるお店はあまり多くはありませんが、中国雲南省に行けば、間違いなくきのこ鍋です。烏骨鶏などの地鶏や丸鶏、牛テールを使用したスープに十数種類のきのこを加え、うま味を引き出します。珍しいきのこがたくさんある雲南きのこ鍋は、間違いなく一食の価値ありです。
ぜひ試してみては、いかがでしょうか。
2020年09月15日
【均一に混合】乳化剤の用途と種類
乳化剤は、水と油のように混じり合わないものを、均一に混ざりやすくする食品添加物です。水と油のような互いに性質の異なる物質の界面、つまりこれらの物質が接する境の面の性質を変える働きを利用して、均一に混合する効果を持ちます。普段の食生活において、牛乳やバター、マヨネーズ、アイスクリーム、チョコレートなど乳化した食品は数多くあります。
乳化には、水のなかに油が分散して存在している水中油型(O/W型=Oil in Water)と油のなかに水が分散して存在している油中水型(W/O型=Water in Oil)の2種類があり、乳化してできたものをエマルジョと呼びます。
乳化剤は、乳由来原材料が含まれているとは限りません。
乳化剤は、水と油を混ぜやすくする乳化効果のほかに空気と液体、個体と液体などを均一化する働きがあり、下記のように食品のいろいろな場面で使用されています。
・起泡
液体を混ぜたときに発生する泡を安定化させ、ケーキやホイップクリームなどにボリュームを持たせることができます。
・消泡
液体に泡が発生することを防ぎ、泡を消す効果でジャムなどの食品になめらかさを出します。
・分散
飲料などに含まれる粒子の細かい固形分を液体に均一に分散させることができます。
・湿潤
固体の表面を液体に馴染みやすくすることで、粉末食品がダマになるのを防ぎます。
・滑沢
流動性を高め、表面に光沢を与えるとともに、製造工程中に設備へ付着することを防ぎます。
・可溶化
一般的な乳化は液体が白濁したままですが、可溶化作用により、溶けない物質が溶けたかのように透明な状態になります。
乳化作用を持つ物質は、おおよそ2,000種類あります。そのなかで食品添加物として指定されたものが、乳化剤として使用されています。食品衛生法で許可されている乳化剤は、長年の食生活のなかで使用されているものもあり、安全性が確認されています。
アブラナまたは大豆由来の植物レシチンと卵黄レシチンが既存添加物名簿に掲載され、天然の乳化剤として、マヨネーズやマーガリンなどの乳化安定、パンなどの乳化分散、めん類の品質改良などに使用されます。
グリセリン脂肪酸エステルは、食品用の乳化剤のなかでは最も多用されている乳化剤です。グリセリンと脂肪酸から構成される植物性油脂を分解し、再びグリセリンと脂肪酸が縮合し水分子が脱離することで得られます。グリセリン脂肪酸エステルは、乳化だけでなく、分散や起泡、消泡、湿潤作用などさまざまな働きをします。コーヒークリームや生クリーム、マーガリンなどの乳脂肪の乳化安定、チューインガムやチョコレートなどの成分の均一な分散、ケーキやアイスクリームの生地の起泡、豆腐の消泡などに幅広く使われています。
食用油脂の分解により生成する脂肪酸と、糖アルコールのソルビトールを脱水したソルビタンを反応させて得られ、単品ではなくほかの乳化剤と一緒に組み合わせて使われます。用途は、乳飲料やアイスクリームの乳化安定、クリーム類のクリーミーさの向上などです。
砂糖と食用油脂由来の脂肪酸からつくられる乳化剤です。 コーヒークリームやホイップクリームなどの乳製品の乳化安定、チョコレートのブルーミング防止、ケーキ類の起泡、香料やビタミンなどの可溶化、デンプンの老化防止、食感の改良に用いられます。
水に完全に溶解し、香料や精油など多くの有機化合物をよく溶かす特性を持つプロピレングリコールと食用油脂を分解して生成する脂肪酸からつくられます。プロピレングリコール脂肪酸エステルは、単独で使用することはなく、ほかの乳化剤の性質を向上させる働きがあります。用途は、ケーキなどの起泡などです。
乳化剤は、水と油のように混じり合わないものを、均一に混ざりやすくする食品添加物です。水と油のような互いに性質の異なる物質の界面の性質を変える働きを利用して、均一に混合する効果を持ちます。普段の食生活において、牛乳やバター、マヨネーズ、アイスクリーム、チョコレートなど乳化した食品は数多くあります。
コーヒークリームや生クリーム、マーガリン、チューインガム、チョコレート、ケーキ、アイスクリーム、豆腐、パン、調味料など普段口にする食品に使用されている乳化剤は、水と油のように混じり合わないものを、均一に混ざりやすくする乳化作用だけでなく、分散や起泡、消泡、湿潤作用を持ち、食品の風味向上や食べやすくするためには欠かせません。
乳化剤には、アブラナまたは大豆由来の植物レシチンや卵黄レシチンといった天然由来のものと、合成されたグリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがあります。
食品衛生法で許可されている乳化剤は、長年の食生活のなかで使用されているものもあり、安全性が確認されています。
2020年09月14日
【粉々】食品原材料の粉砕技術
数百o以上の食品の原材料を数十o程度まで粉砕する装置を粗砕機、数十oを数oから数百μm程度に粉砕する装置を中砕機といいます。粉砕機は、数十o以下の食品の原材料を数百μm以下にまで粉砕する装置で、数μmまで微細化することを目的とする装置を微粉砕機、数μm以下の微粉の生成を目的とする装置を超微粉砕機といいます。
・コーンクラッシャー
主に物を押す方向の力となる圧縮力によってスパイスなどを粉砕します。
・ハンマークラッシャー
スイング式のハンマー部の衝撃力と波形の容器壁部の間に生じる摩砕力で、スパイスや乾燥野菜、乾燥した魚介類を粉砕します。
・ロールクラッシャー
2個のロールを互いにかみ合うように回転させ、その間でかつお節などを主に圧縮力によって粉砕します。
・カッターミル
鋭いカッターを取り付けたローターを高速回転させ、せん断力によって、スパイスやコーヒー豆などの粉砕を行います。
・ローラーミル
複数のローラーが、遠心力によって回転するテーブルに対して押しつけられるような構造になっており,両者の間に挟まれた玄米などの原材料を圧縮粉砕します。粉砕され,細かくなった粒子は気流によって排出されます。
・ジェットミル
圧搾空気や高圧蒸気、高圧ガスを噴射ノズルより噴出させ、このジェット気流によって、さまざまな食品の原材料粒子を加速し、加速された粒子どうしの衝突または加速された粒子との衝突作用や衝撃作用、および摩砕によって粉砕します。
・ハンマーミル
高速回転するハンマーによって、供給された原材料に衝撃を加え粉砕します。出口側に多孔板やスクリーンなどを設置し、粉砕製品の粒度のコントロールを行います。
・ピンミル
向かい合った2枚の円板の表面に数十本ないしそれ以上のピンを互いにかみ合うように配置し、片方の円板あるいは両方の円板を高速で回転させて原材料を円板中心に供給し、遠心力で円周方向に移動する間にピンによる衝撃力とせん断力によって粉砕を行います。おからや海老、かつお節、乾燥野菜、きなこ、 グラニュー糖、クロレラ、コーン、スパイス、コーンスターチ、ゼラチン、大豆、フリーズドライ食品、食塩、海藻、魚の骨、米、砂糖、澱粉、小麦粉、乾燥果実などさまざまな食品を粉砕します。
・ビーズミル
容器の中にビーズを充填し、撹拌部位を回転させて、原材料をビーズの衝突、せん断力で粉砕し、原材料の舌触りを滑らかにします。
スパイスの香りや風味を損なうことなく粉砕するために、冷媒となる液体窒素を粉砕機中へ直接噴射し、原材料と装置を冷やす方法を低温粉砕、もしくは凍結粉砕といいます。さらに長い滞留時間やより低い温度が求められる場合は、装置への投入前にあらかじめ原材料を予冷することもあります。
食品メーカーの工場では、用途に応じてさまざまな粉砕機を使用します。数百o以上の食品の原材料を数十o程度まで粉砕する装置を粗砕機、数十oを数oから数百μm程度に粉砕する装置を中砕機といい、粉砕機は数十o以下の食品の原材料を数百μm以下にまで粉砕する装置で、数μmまで微細化することを目的とする装置を微粉砕機、数μm以下の微粉の生成を目的とする装置を超微粉砕機といいます。
粗砕機はコーンクラッシャーやハンマークラッシャー、中砕機はロールクラッシャー、カッターミル、微粉砕機はローラーミルやジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、超微粉砕機はビーズミルなどがあり、スパイスをはじめ、乾燥野菜やかつお節などの魚介類の乾燥品、穀類などを目的に応じて粉砕します。
また、香りや風味を保持するため、冷媒となる液体窒素を粉砕機中へ直接噴射し、原材料と装置を冷やす方法を低温粉砕、あるいは凍結粉砕といい、主にスパイスの粉砕に用います。
2020年09月13日
【足りないくらいが適量】スパイスの使い方と効能
もっとも基本的なスパイスは、ブラックペッパー、ニンニク、ナツメグです。スパイスをそろえるのであれば、この3種類から始めましょう。これだけでも7〜8種類の肉料理がつくれます。慣れてきたら、ホワイトペッパーやベイリーフ、シナモン、クローブ、マスタード、タイム、オレガノなど好きな香りを買い足しましょう。
スパイスは、パウダーやホールなどさまざまな形態で市販されています。ペッパーやオールスパイス、カルダモンなど乾燥したスパイスを買う場合は、パウダーよりもホールの方がおすすめです。使うたびにミルやフードプロセッサーで砕く手間がかかりますが、新鮮な味や香りを長く楽しむことができます。
スパイスは数種類をブレンドすると単品で使うよりも、香りに奥行きがでます。香りづけや辛味づけ、消臭、着色の4つのスパイスを組み合わせてみましょう。
スパイスを使用した料理での最たる失敗は、スパイスの量を多く使いすぎることです。スパイスはあくまでも料理の引き立て役です。ちょっと足りないくらいが適量です。
ふたの開閉だけでも、スパイスの成分はどんどん失われてしまいます。特に直射日光や湿気、熱に弱いので、乾燥スパイスは密閉容器に入れ、冷暗所で保存しましょう。バジルなどのフレッシュスパイスは、一束買ってもなかなか使いきれません。よく乾燥させて冷凍庫で保存すると、風味が長持ちします。
世界各国でブレンドされたその国特有の香りを楽しんではいかがでしょう。
フランス語で香草の束を意味するミックススパイスで、ブイヨンやスープストックをつくるときには欠かせません。使用するスパイスは、ベイリーフやタイム、パセリ、セロリです。乾燥品でつくる場合は、数種類のスパイスをガーゼなどに包んで口を縛って使用します。フレッシュ品の場合は、枝を束ねてたこ糸で縛って使います。
フランス語で4つのスパイスという意味です。ペッパーや唐辛子などの辛味スパイスにシナモン、ナツメグ、クローブをブレンドしてつくります。オールスパイスに似た風味で、パテやテリーヌの風味づけに使います。
カレーの本場インドでは各家庭で料理をつくるたびにブレンドしています。ターメリックやペッパー、唐辛子、ジンジャー、コリアンダー、カルダモン、クミン、シナモン、ベイリーフ、フェネグリーク、マスタード、オールスパイスなどを使用します。ターメリックの量が全体の20%を占め、そこにそのほかのスパイスをブレンドします。
インド料理の基本的なミックススパイスで、料理の下ごしらえやカレーの仕上げに使用します。ペッパーを効かせた辛いものから、メースやシナモンがベースとなったマイルドなものまで、多くの種類があります。原材料としては、ナツメグやクミン、シナモン、カルダモン、ニンニク、クローブ、メース、キャラウェイ、ジンジャー、ペッパーなどです。これらをブレンドして用います。
中国で、肉の下味つけやマリネなどによく使われます。その名の通り5種類のスパイスが原材料です。クローブや陳皮、フェンネル、スターアニスから2種類を選び、シナモンやクローブ、さんしょうを配合して計5種類となります。
日本の代表的なミックススパイスです。関東では唐辛子の辛さを強調しているのに対し、関西では唐辛子を抑え、さんしょうを多く使用します。原材料は、唐辛子やさんしょう、青のり、陳皮、ごま、ケシの実、麻の実です。それぞれの分量はお好みで調節し、かたいものはすり鉢ですって混ぜ合わせます。
インドや中国、ヨーロッパなどスパイスとのつき合いの長い国では、スパイスの薬効に関する研究が盛んに行われてきました。キッチンに並んでいるスパイスを健康のために使用して、医食同源を実現してみましょう。
食欲がわかないときは、ブラックペッパーを料理にかけてください。胃の調子が悪いときは、シナモンをたっぷり入れたティを試してみてはいかがでしょうか。消化不良には唐辛子が効果的です。ホットな料理でお腹をすっきりさせましょう。
ジンジャーは体を温めます。タイムは咳を止め、セージには解毒作用があります。ミックススパイスティで風邪を退散させましょう。
血行をよくするには唐辛子やジンジャーです。少量をお風呂に入れると体をほぐしてくれます。
腰痛や打ち身にはマスタードの鎮痛効果が抜群です。タイムは2日酔いのムカムカをすっきりさせてくれます。
レモングラスやペパーミントの香りは気分を高揚させ、ローズマリーの香りは頭をすっきりさせてくれます。
シナモンやクローブの香りは気持ちをリラックスさせてくれます。
唐辛子に多く含まれているカプサイシンという成分は、体内の脂質燃焼効果が認められます。
美しい肌や黒髪を保つにはローズマリーの精油でお手入れしてください。
スパイスは、パウダーやホールなどさまざまな形態で市販されています。乾燥したスパイスを買う場合は、パウダーよりもホールの方がおすすめです。使うたびにミルやフードプロセッサーで砕く手間がかかりますが、新鮮な味や香りを長く楽しむことができます。
スパイスは数種類をブレンドすると単品で使うよりも、香りに奥行きがでます。香りづけや辛味づけ、消臭、着色の4つのスパイスを組み合わせてみましょう。なお、世界各国にはスパイスをブレンドしたその国特有の香りを持つミックススパイスがあります。
インドや中国、ヨーロッパなどスパイスに長年慣れ親しんでいる国では、スパイスの薬効に関する研究が盛んに行われてきました。キッチンに並んでいるスパイスを健康のために使用して、医食同源を実現してみましょう。
2020年09月12日
【主張と融和】中東や地中海、中南米などのスパイス
サウジアラビアから北アフリカにかけて使用されているスパイスには、はっきりとした傾向があります。羊肉を食べる習慣があり、砂漠の厳しい気候条件でも食が進むように香りの強いスパイスが好まれています。
これらの地域で代表的な料理といえば、麦を発酵させてつくるクスクスです。これに肉や野菜を数々のスパイスで煮込んだソースをかけて食べます。唐辛子のピリッとした辛味とクミンの風味が効いた料理です。羊のシチューやシシカバブという焼肉料理にも、羊肉特有のにおいに負けない香りを持つクミンやカルダモンが使われています。
モロッコやアルジェリアなどの北アフリカ地方一帯では、白ごまとタイム、ウルシ科の多年生低木で熟成した果実を収穫し乾燥させ、粉末にして使用するス―マックを配合したミックススパイスがつくられています。ミートボールや野菜にかけたり、ペースト状にしてパンにぬって食べます。同じアフリカ大陸でも、南下するとスパイス事情が異なります。まず唐辛子をよく使うようになります。ケニアの主食はとうもろこしの団子とトマトの煮込みですが、味付けは塩と唐辛子だけでシンプルです。エチオピアでは、唐辛子やジンジャー、クローブ、シナモン、カルダモン、ペッパーなどをブレンドしたベレベレというミックススパイスが煮込み料理などに用いられています。
風土も料理もさまざまなヨーロッパの中で、スパイスを使いこなした食文化を築いているのが、フランスと地中海地方です。世界有数の美食大国フランスの歴史をたどるとイタリアに行き着きます。スパイスの交易で莫大な富を築いたベネチアの大富豪メディチ家とフランス王家との婚姻によって持ち込まれた最高水準のイタリア料理が、優れた味覚のフランス人によって洗練され、今日のフランス料理の基礎となりました。
フランス料理のエッセンスは、魚介類や食肉、野菜からつくるソースにあります。そのソースには、スパイスが多用されており、複雑な味わいに深みを付与しています。とは言っても、インドのように強烈な香りを持つスパイスを混ぜたり、特定のスパイスが強く主張するような使い方をすることはありません。ブーケガルニなどのミックススパイスは、ペッパーやナツメグにチャービルやタラゴンなどの繊細な香りを組み合わせたものです。クリームやバター、ワインの風味と融和することによって、フランス料理をつくり上げています。
ギリシャやイタリア、スペインなどの地中海に面した地方の料理は、トマトを多用しています。大航海時代に南米大陸から持ち込まれたトマトとこの地域の特産品となるオリーブオイルをベースに魚介類や牛肉、ピーマン、ナス、オリーブなどの食材を組み合わせた料理が発達しました。地中海料理は、ニンニクやバジル、ローズマリーなどヨーロッパのほかの地域では控えめに使用されるスパイスを組み合わせて用います。はっきりした香りを持つスパイスは、トマトやオリーブの濃厚な風味をいっそう引き立てます。
また、スペインを原産とするサフランは世界一高価で黄金色の美しいスパイスです。スペインのパエリアや南フランスのブイヤベースには欠かせません。魚介類とよく合う香りは、まさに地中海の風味です。
15世紀末にコロンブスがアメリカ大陸に到達したことで、世界中の食卓に唐辛子が普及するきっかけとなりました。メキシコを原産とする唐辛子は、ヨーロッパの支配を受けたことで、変化を遂げました。メキシコの先住民族の料理は、アヒまたはチリ―と呼ばれる唐辛子ととうもろこしを使用したものです。この伝統的な唐辛子料理にスペイン料理が混じり、チリパウダーなどが誕生しました。チリパウダーは、カイエンヌペッパーやパプリカ、オレガノ、ニンニク、クミンなどを配合したミックススパイスで、情熱的な中南米気質にふさわしい風味です。
チリパウダーを使った料理は、メキシコのタコスです。とうもろこしの粉を伸ばして焼いたトルティヤと呼ばれる平焼きパンに野菜やひき肉、チーズなどの具をはさみ、トマトやアボカド、チリパウダーで風味をつけた料理です。メキシコと国境を接しているアメリカでは、昔からチリパウダーを使用した料理があります。例えば、チリコンカンは、牛肉とうずら豆にチリパウダーを効かせて煮込んだ料理です。
アメリカのスーパーでは、バーベキューやローストチキンなどさまざまな用途別ミックススパイスが棚にずらりと並んでいます。これらのミックススパイスの製法はメーカーによって異なり、企業秘密となっています。
サウジアラビアから北アフリカにかけて使用されているスパイスは、羊肉を食べる習慣があり、砂漠の厳しい気候条件でも食が進むようにクミンなど香りの強いが好まれています。同じアフリカ大陸でも、南下するとスパイス事情が異なり、唐辛子をよく使うようになります。
フランス料理のソースには、スパイスが多用されており、複雑な味わいに深みを付与しています。ブーケガルニなどのミックススパイスは、ペッパーやナツメグにチャービルやタラゴンなどの繊細な香りを組み合わせたもので、クリームやバター、ワインの風味と調和することによって、フランス料理をつくり上げています。地中海料理は、ニンニクやバジル、ローズマリーなどヨーロッパのほかの地域では控えめに使用されるスパイスを組み合わせ、はっきりした香りを持つスパイスは、トマトやオリーブの濃厚な風味をいっそう引き立てます。
メキシコを原産とする唐辛子は、ヨーロッパの支配を受けたことで、変化を遂げました。メキシコの先住民族の料理は、唐辛子ととうもろこしを使用したものです。この伝統的な唐辛子料理にスペイン料理が混じり、チリパウダーが誕生しました。チリパウダーは、カイエンヌペッパーやパプリカ、オレガノ、ニンニク、クミンなどを配合したミックススパイスで、情熱的な中南米気質にふさわしい風味です。
2020年09月11日
【調和と特徴づけ】日本とアジアで発達したスパイス
日本料理にスパイスと聞くと何か違和感を覚えますが、しょうがやわさび、さんしょうなどの薬味は和製スパイスというべきものです。さわやかな香りとピリッとした辛味が特徴です。白身魚のお造りにおろしたてのわさびをのせると、魚の生臭さを抑えながら、程よくのった脂の味わいを生かします。また、たけのこの炊きものにさんしょうの芽という取り合わせは、香りの調和が旬の味覚を一層引き立てます。
スパイスというと辛いものを連想して、苦手意識を持つ人がいますが、これは薬味に慣れ親しんでいる日本人ならではの誤解かもしれません。世界中のスパイスを集めてみると、辛味があるのはほんの一握りです。むしろ、スパイスに共通する特性は香りです。中でも和製スパイスの使われ方は、スパイスの香りそのものの香りを楽しむというよりは、食材の味や香りとの調和を大切にしています。長い間肉食の習慣がなく、四季折々の新鮮な海の幸、山の幸がふんだんに手に入る日本では、いたみかけた肉のにおいをスパイスで消したり、熱帯地方のようにスパイスで食欲増進を図る必要がなかったのです。そのため、ヨーロッパや東南アジアとは違う目的で、和製スパイスは発達しました。
ペッパーやクローブなど肉料理に合うスパイスは1200年以上も前に渡来していました。長い間薬として珍重されてきたこれらスパイスが、今日のように頻繁に料理に使われだしたのは、それほど前からではありません。日本の食生活が豊かになって、世界中のさまざまな料理が食卓に並ぶようになってからです。
しかし、知らず知らずのうちに日本に根づいていったスパイス料理があります。明治の文明開化に沸き立つ頃、当時刊行された料理の本には、すでにカレーのつくり方が紹介されています。この時代のカレーは、インドを植民地化していたイギリス経由で伝わったもので、現在でも業務用として有名なカレー粉です。このカレー粉は、ターメリックやクローブ、ベイリーフなど日本人が薬として使用してきた香辛料をブレンドしたものです。スパイス単品では、薬くさいと敬遠していた人々が、カレーという新しい文明の味を受け入れ、日本人好みの味に改良を続けた結果、今日のような国民食となりました。
ペッパーをはじめ多種多様なスパイスを生産するインドでは、古代からスパイスを多用した料理が発達してきました。とはいっても、もともとは医学的に薬効を取り入れることが目的です。特に熱帯地方に属する南部では、食欲不振を解消するため、辛い料理が多く考案されてきました。また、暑さで腐りかけた肉や野菜のにおいを辛さと強い香りで隠すことや消化を良くするためにもスパイスは欠かせないものでした。
よく使われるスパイスは、ペッパーや唐辛子、アニス、カルダモン、ターメリック、クミン、コリアンダーなどです。本場のインドカレーには10〜30種類ものスパイスが入っています。使用するスパイスの量や種類は、地域や料理人によって微妙に異なるため、インドでは家庭の数だけカレーの味があるといわれるほどです。たくさんのスパイスを混合した複雑な味なので、インドの人は毎日カレーを食べ続けても飽きないそうです。カレーに限らず、あらゆる料理の味付けにスパイスを使用しているインドでは、サラダやピラフにも濃厚な風味をつけることを好みます。また、シナモンやジンジャーをふんだんに使ったお茶を愛飲したり、食後の口臭予防に砂糖をまぶしたフェンネルの種をかむなど、スパイスは日常生活の中に深く浸透しています。
タイやインドネシア、ベトナムなどの東南アジアの国々になると、特に唐辛子を使った辛い料理が多くなります。とは言っても、ただ辛いだけでなく、甘さや酸っぱさが混じった味です。風味づけにライムやレモングラスなど、柑橘系の香りや酸味を持つスパイスが大活躍です。また、東南アジアでも数種類のスパイスをミックスして使うことも珍しくありません。この中には、コリアンダーやクミンなど強い風味をもつスパイスも含まれています。
唐辛子を好んで使用する点では韓国も負けていません。韓国の食事には必ずキムチとスープがついてきます。キムチは一般的に野菜を香辛料と漬け込みます。一見ものすごく辛そうですが、韓国の唐辛子はさわやかな辛さです。いつまでも口の中がヒリヒリすることはありません。
中国は地方ごとに特徴のある料理が発達しています。ホイコーローや麻婆豆腐でおなじみの四川料理は、ピリリとした辛さが特徴です。内陸のため料理には川魚をよく使います。生臭さを消し、味を調える目的で、唐辛子やニンニクが多用されてきました。一方、北京のように中国北東部の寒い地方では、スターアニスやクローブで風味をつけた濃厚で甘辛い味付けが好まれています。代表的な料理に北京ダックなどがあります。海に面した上海では、新鮮な魚介類がふんだんに手に入るため、酒で酔わせたエビに塩とさんしょうを混ぜた花椒塩(ホアジャオエン)をつけ、生きたまま食べる酔蝦(スイキョー)などの海鮮料理が発達しました。さらにスターアニスやフェンネルの香りを効かせ、甘辛くこってりとした味付けの料理も好まれています。中国を代表する料理は、広東料理です。食は広州にありと言われるように、山海の原材料が豊富に手に入る地域で、あっさりした味付けが特徴です。シュウマイやめん類などに使われるスパイスは、ペッパーやジンジャーなどが中心となっています。
日本のしょうがやわさび、さんしょうなどの薬味は和製スパイスというべきものです。さわやかな香りとピリッとした辛味が特徴で、素材の味を引き立て、香りが調和することで、味覚を一層引き立てます。
インドでは、医学的薬効を取り入れることを目的とし、古代からスパイスを多用した料理が発達してきました。食欲不振の解消や消化を良くするためにもスパイスは欠かせないものでした。
タイやインドネシア、ベトナムなどの東南アジアの国々は、唐辛子を使った辛い料理が多くなり、ただ辛いだけでなく、甘さや酸っぱさが混じった味です。風味づけにライムやレモングラスなど、柑橘系の香りや酸味を持つスパイスも多用します。唐辛子を好んで使用する点では韓国も同様です。
中国は地方ごとに特徴のある料理が発達しています。四川料理では、唐辛子やニンニクが多用されてきました。北京では、スターアニスやクローブで風味をつけた濃厚で甘辛い味付けが好まれています。上海では、スターアニスやフェンネルの香りを効かせ、甘辛くこってりとした味付けの料理が人気です。広東料理は、あっさりした味付けが特徴で、ペッパーやジンジャーなどのスパイスが使用されています。