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2020年09月10日
【歴史的大発見】冒険家たちを駆り立てるスパイス
財宝にも匹敵するようなスパイスの原産地探しは、長い間ヨーロッパ人の心を捕らえてやまないロマンでした。スパイス貿易を独占したアラビア商人たちが貫いた秘密主義によっても、かえって冒険心と欲望が刺激されました。その冒険心に火をつけたのが、東洋を旅したベネチア商人のマルコポーロが1299年に著した東方見聞録です。スパイスをふんだんに使う中国の都や黄金でできた城を持つジパングなど、ヨーロッパ人の目をいやがうえにも東洋に向けさせる内容です。
しかし、当時の陸路はすべてアラビア商人によって押さえられていたので、東を目指す冒険家たちは、帆船で大洋へと乗り出していきました。海洋を舞台に夢と略奪と闘争に彩られた大航海時代のはじまりです。15世紀の地球がまだ丸いと信じられていなかった頃です。
ヨーロッパの港を後にした冒険家たちは、ポルトガルのエンリケ王子とその部下によるアフリカ喜望峰到達、イタリアのコロンブスのアメリカ大陸到達など次々に未知の大陸を制覇していきます。その中でもっともスパイスに近づいた人物は、海路でインドへたどり着いたポルトガル人のバスコダガマでした。1498年にバスコダガマは、120トンクラスの小さな船で喜望峰を回り、ポルトガルを出港してから10ヶ月後にインド西岸のカルカッタに到着しました。インドに数ヶ月滞在する間、マルコポーロが記した胡椒海岸の現地調査を行い、船倉をスパイスでいっぱいにして帰国しました。こうして、インドで直接スパイスを買いつけることに成功したポルトガルがスパイス貿易の海路を握り、ついにアラビア商人のスパイス取引の独占が崩れました。
さらに16世紀初頭には、ポルトガル人のマゼランが東洋におけるスパイスの集積地であるマレー半島南端のマラッカを攻略し、ポルトガルにさらなる繁栄をもたらしました。しかし、母国へ帰港したマゼランを待ちかまえていたのは、偉大な冒険者に対する賞賛ではなく、国王からの冷遇でした。失意のうちのポルトガルを去ったマゼランはスペイン王に仕え、スパイスの原産地を求めるスペイン船団を指揮して大西洋航路を目指します。この航海によって、大西洋から太平洋へと抜ける南米大陸先端のマゼラン海峡が発見され、ついに世界一周が可能になりました。
地球が丸いということを証明した偉大な航海ですが、その代償はあまりにも大きなものでした。5隻で出発した船団のうち、スペインの母港にたどり着いたのは、わずか1隻、18人の乗組員だけでした。マゼラン自身も途中で命を落としています。この偉業に感動した当時のスペイン王は、生き残った乗組員にナツメグやシナモン、クローブを組み合わせた紋章の入った盾を与えました。
スパイスは、水や主食のように生命の維持にどうしても必要なものではありません。しかし、このスパイスが冒険家たちを駆り立て、歴史上の大発見まで成し遂げさせたことにスパイスの計り知れない力を感じます。
冒険家たちが多大な犠牲を払ってまでもかなたにスパイスを探し求める以前、スパイスは香辛料としてよりも、肉の貯蔵用に重宝されていました。それが、海路の発見によってコーヒーやレモンなど新しい食材が手に入るようになると、人々はより複雑な味、さらに香気豊かなスパイスを求めるようになります。
特にインド南西部のペッパーやインドネシアのクローブとナツメグなど産地が限られているスパイスを手中におさめようと、当時の列強諸国は制海権をめぐって熾烈な争いを繰り広げました。
まず、東南アジアの実権を握ったのはポルトガルで、続いてスペインが進出し、植民地支配を拡大していきます。やがて17世紀になると、勢力を伸ばしたオランダが東南アジアからポルトガルを追い出し、ペッパー貿易の独占を狙って東インド会社を設立しました。東洋貿易重視の政策をとったオランダは、鎖国下の日本とも盛んに取引を行っています。
しかし、オランダとポルトガルという2大貿易国のアジア独占は、長くは続きませんでした。この2国の植民地支配に割って入ってきたのは、後発の航海国イギリスです。イギリスは北米大陸発見によりカナダを手に入れていましたが、スパイスの産地を見つけることはできませんでした。そこで、イギリス政府がとった行動は、オランダ船やスペイン船を襲う行為です。スパイスを満載した船を奪うことでイギリスは勢力を増大させ、ついにはオランダをまねた東インド会社を設立して、大々的に植民地政策を展開し始めました。植民地戦争という世界中を巻き込んでの争いの発端も、スパイスだったのです。
オランダの支配下に置かれた東南アジアのスパイス原産地では、先住民たちが意外なしたたかさを発揮し、ポルトガルやスペイン、フランス、イギリスなどとスパイスの裏取引を行っていました。こっそりと持ち出されたペッパーやナツメグ、クローブの苗木は、ヨーロッパ列強の植民地で根づき、南米までも産地を広げていきました。かつては、頑なに原産地の秘密を守り通したアラビア商人までもが熱心に栽培に取り組んだほどです。長い間守り続けられたスパイスの原産地神話は、意味を失いつつありました。
19世紀には、原産地よりも移植された場所での生産が多くなり、今日のように誰でも気軽にスパイスを使えるようになりました。
財宝にも匹敵するようなスパイスの原産地探しは、長い間ヨーロッパ人の心を捕らえてやまないロマンでした。スパイス貿易を独占したアラビア商人たちが貫いた秘密主義によっても、かえって冒険心と欲望が刺激されました。その冒険心に火をつけたのが、マルコポーロの東方見聞録です。スパイスが冒険家たちを駆り立て、歴史上の大発見まで成し遂げさせたことにスパイスの計り知れない力を感じます。
オランダとポルトガルという2国の植民地支配に割って入ってきたのは、後発の航海国イギリスです。イギリスは、オランダやスペインのスパイスを満載した船を奪うことで、勢力を増大させ、ついにはオランダをまねた東インド会社を設立して、大々的に植民地政策を展開し始めました。植民地戦争という世界中を巻き込んでの争いの発端も、スパイスだったのです。
また、先住民たちがポルトガルやスペイン、フランス、イギリスなどとスパイスの裏取引を行うことで、こっそりと持ち出されたペッパーやナツメグ、クローブの苗木は、ヨーロッパ列強の植民地で根づき、南米までも産地を広げていきました。19世紀には、原産地よりも移植された場所での生産が多くなり、今日のように誰でも気軽にスパイスを使えるようになりました。
2020年09月09日
【人類を魅了】スパイスとの出会いと旅路
人類がスパイスと出会ったのは、いつの時代のことでしょうか。祖先は2足歩行をはじめて間もないころから、野に生える植物を摘んでは口にしていました。時には毒のあるものを口にして、痛ましい犠牲がでることもあったでしょう。それでも勇気ある祖先たちは、さまざまな植物の味と効果を身をもって確かめてくれました。そのお陰で、今日スパイスと呼ばれる香りのよい植物が、はるかな時の流れを越えて現代に伝えられました。
地中海のサルジニア島には、自生するローズマリーやオレガノの枝々が、数千年も前から芳香を漂わせています。この地に暮らした人々が、狩りでとらえた動物の肉を偶然これらのスパイスで包んだとしても不思議ではありません。そのまま放置しておけば、きっと2〜3日で腐ってしまう肉が、不思議な植物の作用によって保存性と食欲のそそられる香りがつき、より美味しく食べられることがわかりました。冷蔵庫などむろんなかった時代のこと、たき火を囲む人々の顔には喜びの表情が浮かんだことでしょう。獲物が少ない時期に、いくつもの集落が飢餓から救われたかもしれません。
古代エジプトの地はまさにスパイスの先進地でした。王族の権威を誇示する巨大ピラミッドに納められた貴人の遺体は、遠くアジアから運ばれたクミンやクローブなどのスパイスが詰められ、ミイラとなりました。亡くなった人の霊魂は復活すると信じられていたため、肉体が再び活動できるように、スパイスの力を借りて防腐処置がとられていました。
その一方で、生きている人々に対しては、即効性のあるスパイスが盛んに使われました。ピラミッドの建設には何万人もの奴隷の労働力が投下されましたが、奴隷の疲労を回復させるためにニンニクやオニオンを大量に使用した食事が与えられたようです。ほかにどのような原材料が使われたかは不明ですが、ニンニクとオニオンが入れば、たいていそれなりの味に仕上がります。
医学と呪術の境界があいまいであった古代エジプトから、ギリシャローマ時代になると、薬用としての植物研究が盛んになります。ヒポクラテスといった医学の祖によって編纂された植物事典は、長い間西洋医学の基礎となりました。
しかし、スパイスの魔力は学問の対象にとどまらず、人々の贅沢心も煽り立てました。2000年以上も昔、ギリシャの裕福な植民都市シバリスでは、夜ごとの宴にスパイスやワインをブレンドしたソースを使用した料理が供されていました。見事なソースをつくった料理人には手厚い褒美が与えられたようです。一度スパイスの味と香りの虜になったシリバス人は、戦争によって廃墟となる直前まで、味覚の贅を尽くし続けました。シリバスは滅びても、スパイスは現代に至るまで、新しい味や珍しい風味を求める人間の欲望をかきたて続けます。それゆえに、あたかもひとつまみのスパイスが料理の運命を定めるかのごとく、時に世界の歴史は大きく変動しました。
ユーラシア大陸を横断し、あまたの交易品や金銀財宝を運んだのはシルクロードです。この道はまた、スパイスロードともいうべき役割を担っていました。
当時珍重されたスパイスは、スパイスアイランドといわれたインドネシアのモルッカ諸島やセレベス島のクローブやナツメグ、ペッパーなど東洋を原産とするものです。これらのスパイスは海路マラッカ海峡を渡り、インドへと運ばれました。ここでセイロンのシナモンやインドのペッパー、カルダモンと合流し、はるばる地中海へと運ばれました。
現在のインドからアフガニスタン、イラクを経由し、アラビア半島を横切って紅海を渡る長い旅路は、西を目指すシルクロードです。砂漠や険しい山脈を抜け、時には盗賊におびえながら、片道2年もかかる過酷な道中です。そのため、当時のスパイスがヨーロッパに渡ると、原産地の1000〜2000倍の値がつきました。同じ重さの金銀よりも価値があったという話は、まんざら誇張ではないようです。
このスパイスの交易で、最も大きな利益を上げていたのはアラビアの商人たちです。交易路の中間に位置するアラビア半島には、ヨーロッパに渡るすべてのスパイスが集まったため、紀元前後から中世に至るまで、スパイスの貿易を独占していました。その様子は、アラビア半島に世界中の富が集まるといわれていたほどです。この莫大な利益を独占するため、アラビアの商人たちは原産地の秘密を守り抜こうと知恵を絞り、原産地に住む怪物などの作り話を流布しました。
一度インドに集められたスパイスには、東を目指したものもありました。シルクロードの一方の終点である日本には、聖武天皇の時代にすでにスパイスが伝えられています。正倉院には、1000年以上も前に海を渡ってきたペッパーやクローブ、シナモンが保管されています。
当時の東アジアでは、スパイスは味覚の楽しみを増進させる香辛料ではなく、もっぱら薬と考えられていたようです。中国の南方で発達した漢方医学では、ペッパーやフェンネル、キャラウェイ、シナモン、クローブ、ナツメグ、ニンニクなど今の時代でもおなじみのスパイスが、薬種として使われていました。正倉院に残されているスパイスも、貴重な薬として渡来したものかもしれません。
祖先は2足歩行をはじめて間もないころから、野に生える植物を摘んでは口にしていました。勇気ある祖先たちは、さまざまな植物の味と効果を身をもって確かめてくれました。そのお陰で、今日スパイスと呼ばれる香りのよい植物が、はるかな時の流れを越えて現代に伝えられました。
ユーラシア大陸を横断し、あまたの交易品や金銀財宝を運んだのはシルクロードです。この道はまた、スパイスロードともいうべき役割を担っていました。現在のインドからアフガニスタン、イラクを経由し、アラビア半島を横切って紅海を渡る長い旅路は、西を目指すシルクロードです。片道2年もかかる過酷な道中です。そのため、当時のスパイスがヨーロッパに渡ると、原産地の1000〜2000倍の値がつきました。同じ重さの金銀よりも価値があったという話は、まんざら誇張ではないようです。
2020年09月08日
【奇跡】味覚を変化させる物質
味覚は、主に舌の味蕾に含まれる味細胞が味を呈する物質を検出して、その情報を脳の大脳皮質の味覚野に送ることによって生じます。味覚は甘味、酸味、塩味、うま味、苦味の基本5味に分類でき、甘味やうま味、薄い塩味を美味しいと感じ、一方で苦味や酸味、濃い塩味をあまり好まない傾向にあります。
ある種の物質は、主に舌の甘味受容体に作用し、甘味受容体の機能を変えてしまう性質を持っています。ミラクリンやクルクリンなどは、酸っぱいものや水を甘く感じさせる性質を持っています。一方、ギムネマ酸やジジフィンなどは、甘味受容体に作用し、甘味を選択的に抑制します。このように甘味を誘導したり、逆に甘味だけを感じなくする物質は、それぞれ甘味誘導物質、甘味制御物質と呼ばれています。このような物質は、その特異な作用を明らかにすることにより、甘味の仕組みの解明に有用な情報を提供することができます。
西アフリカ原産のアカテツ科の樹木はオリーブ大の赤い実をつけます。実の中には大きな種子があり、そのまわりを果肉が取り囲んでいます。成熟した赤い実の果肉を口に入れてから酸っぱいものを味わうと、強い甘味を感じます。酸っぱいものなら酢酸でもクエン酸でも甘くなり、レモンを味わうと甘いオレンジのような味になります。
このように不思議な作用を持っているので、この実はミラクルフルーツと呼ばれています。アフリカの先住民族は、何世紀にもわたって酸っぱいヤシ酒や発酵したパンに甘味をつけるためにこの実を使用してきました。
1965年以降ミラクルフルーツに含まれている活性成分ミラクリンの研究が行われ、構造がつきとめられました。ミラクリンは糖たんぱく質で、191個のアミノ酸からなる2つの同種のポリペプチドがジスルフィド結合で結びついた2量体として存在します。単量体ミラクリンはそのなかに7個のシステインが存在し、そのうちの6個はポリペプチド内で3組のジスルフィド結合をしています。糖含量は13.9%で、単糖としてN-アセチルグルコサミンやマンノース、ガラクトース、キシロースを含んでいます。
ちなみにミラクルフルーツは、インターネットで簡単に手に入れることができます。
マレーシア地方に野生しているキンバイザサ科の植物クルクリゴは、根元にラッキョウのような形をした白い実をつけます。この実を口に含んだ後、水を飲むと甘く感じ、紅茶はもちろん砂糖なしでも甘くなります。また、ミラクリンと同様に、酸っぱいものを味わうと強い甘味を感じます。
昔から現地では、この実を酸っぱいものに甘味をつける目的で用いられてきました。この実の成分は、クルクリゴの植物名にちなんで、クルクリンと命名されました。
クルクリンは、分子量12,000のポリペプチドがジスルフィド結合で結びついた2量体です。単量体のクルクリンは114個のアミノ酸から構成されており、その中に4個のシステインが存在します。そのうち2個でペプチド内ジスルフィド結合をつくり、残る2個のシステインで2組にペプチド間ジスルフィド結合を形成しています。
クルクリンはそれ自身甘味を有し、またミラクリンと同様に酸っぱいものを甘くする作用がありますが、両たんぱく質のアミノ酸配列には全く相同性がみられません。
ガガイモ科に属するつる性多年草の植物ギムネマ・シルベスタは、インドから中国南部にかけて自生しています。この葉を噛んだ後に砂糖をなめると、あたかも砂をなめているように甘味が感じられなくなります。このようなギムネマの葉に含まれている特異な成分はギムネマ酸と呼ばれています。
ギムネマ酸は食品と一緒に摂取すると小腸からの糖質の吸収を抑制し、血糖値の低下を促します。さらに血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を抑制します。
ギムネマ酸は、ギムネマ茶やキャンディー、健康食品などとして、市場に出回っています。
クロウメモドキ科のナツメの葉には、ジジフィンと呼ばれる甘味抑制物質が含まれています。ジジフィンは、ギムネマ酸より特異性が高く、甘味以外の物質にはまったく抑制作用を示しませんが、甘味を呈す砂糖やアスパルテーム、グリシンなどの甘味は抑制します。
ある種の物質は、主に舌の甘味受容体に作用し、甘味受容体の機能を変えてしまう性質を持っています。ミラクリンやクルクリンなどは、酸っぱいものや水を甘く感じさせる性質を持っています。一方、ギムネマ酸やジジフィンなどは、甘味受容体に作用し、甘味を選択的に抑制します。このように甘味を誘導したり、逆に甘味だけを感じなくする物質は、それぞれ甘味誘導物質、甘味制御物質と呼ばれています。
2020年09月07日
【地道】白髪の原因と可能な限り防止する方法
白髪が目立つようになると、より老けて見られるようなります。母親として参加した子供の会合などでは、祖母が参加しているようにとられ、ショックを受けることも少なくありません。
病気やストレスなどで一時的に白髪が増えていた人は、原因を取り除くと黒髪に戻ることがあります。再び黒髪が生えてくることは、珍しいことではありません。
白髪を可能な限り防止するには、睡眠不足や夜更かしなど不規則な生活を改め規則正しい生活習慣を心がけること、ストレスを抱え込まないこと、そしてたんぱく質やミネラル分などをバランスよく含む食品を日々の食生活を積極的に取り入れることです。
白髪が目立つようになると、より老けて見られるようなります。母親として参加した子供の会合などでは、祖母が参加しているようにとられ、ショックを受けることも少なくありません。
白髪は、毛母細胞の近くに存在する色素細胞(メラノサイト)の機能が低下し、メラニン色素を作ることができないことにより生じます。ではなぜ、色素細胞の機能が低下しまうのでしょうか。
そもそも、毛母細胞で髪の毛がつくられた時点では、白髪の状態です。そこに色素細胞(メラノサイト)が、メラニン色素を入れることで、髪の毛が黒くなります。つまり、髪の毛そのものをつくる毛母細胞と、髪の毛に色を付ける色素細胞(メラノサイト)が存在します。このうち色素細胞(メラノサイト)だけ活性が弱まり、色素をつくることができなくなると白髪となってしまうわけです。最近の研究によると色素細胞(メラノサイト)は色素幹細胞からできます。色素幹細胞がなくなると、色素細胞を供給し続けることができなくなり、白髪になることがわかってきました。
また、髪の毛はずっと伸び続けるものではありません。髪の毛には寿命があり、男性で3〜5年、女性の場合は4〜6年といわれています。頭皮には、10〜15万本の毛髪が生えているといわれているので、1日に約50本程度の抜け毛は、髪の寿命による自然な脱毛とされます。問題となるのは、脱毛の際に色素細胞(メラノサイト)が、髪の毛とともに失われることです。健康な頭皮であれば、色素細胞(メラノサイト)が失われても、次の髪の毛が生えるときに再配置され、メラニン色素がつくられます。しかし、何らかの要因で再配置が起こらないと、白髪となってしまいます。
現在考えられている白髪を引き起こす原因は、次のとおりです。通常、これらのうちどれか又は複数が関係していることが考えられます。
老化によって細胞の機能が弱まるためです。個人差がありますが、30代から白髪が目立ちはじめ、年を重ねるごとに徐々に増えていき、50代中頃になると髪の半分近くが白髪になります。
ミネラルやアミノ酸、ビタミンなどの栄養素は毛母細胞や色素細胞が活発に働くために必要です。これらの栄養素が不足すれば、当然年齢に関係なく機能が低下してしまいます。
髪が最も成長するのは、1日の中で副交感神経が活発になる21時〜2時です。睡眠不足や夜更かしなど不規則な生活により、細胞が活発に働くことができません。
ストレスは髪に強い影響を与えます。また、ストレスの高い状態が続くことで、免疫力の低下などを引き起こします。
胃腸疾患や貧血症、甲状腺疾患などの病気があると、白髪が増えることがあります。また、薬の副作用で白髪になることもあります。短い期間で急激に白髪が増えた場合は、この可能性が高いかもしれません。
白髪は遺伝的要素に強く影響されるといわれていますが、まだすべて解明されているわけではないため、一概に遺伝の影響といいきれません。
このような原因により、白髪が進行すると考えられています。しかし、ここで遺伝や加齢による白髪だからといって諦めてはいけません。食生活や生活習慣によって、ある程度発生を遅らせること、防止することはできるのです。
睡眠不足や夜更かしなど不規則な生活を改め規則正しい生活習慣を心がけること、ストレスを抱え込まないこと、そして以下の食品を日々の食生活を積極的に取り入れることが、白髪の防止につながります。
髪の毛の99%が、ケラチンというたんぱく質で構成されています。弾力性がある繊維状の細長いたんぱく質であり、含硫アミノ酸をおおよそ14〜18%含みます。そのため、たんぱく質は髪の毛の主な原材料です。健康な髪には、肉や魚介類、大豆製品、卵などから良質なたんぱく質を摂る必要があります。
なお、メラニン色素は、血中から供給されるアミノ酸のチロシンを起源とし、反応を触媒する活性中心という場所に銅を有するチロシナーゼなどの酵素の作用で、さまざまな化合物を経て合成されます。
亜鉛は、毛髪の主成分であるケラチンの合成をサポートする機能があります。亜鉛が不足すると毛髪が生えにくくなります。牡蠣やレバー、魚介類、肉、チーズ、アーモンドなどに多く含まれています。亜鉛の吸収効果を高めるためには、ビタミンB2やB6、ビタミンCと合わせて摂る方がよいといわれています。
微量ミネラルのヨウ素は、甲状腺に多く存在し、新陳代謝を高めるとともにたんぱく質の合成をサポートします。新陳代謝を高めることは、すなわち毛母細胞や色素細胞(メラノサイト)が古いものから新しいものに生まれ変わることを意味し、髪の毛の健康維持につながります。さらにヨウ素は血行促進効果にも優れ、血中から栄養素や酸素などが頭皮の毛母細胞や色素細胞(メラノサイト)に届けられることになります。ヨウ素は、昆布やわかめ、のりなどの海藻類や魚介類にも含まれています。
白髪は、毛母細胞の近くに存在する色素細胞(メラノサイト)の機能が低下し、メラニン色素を作ることができないことから生じます。この原因には、老化や栄養不足、生活習慣、ストレスなどが関係しています。
そもそも、毛母細胞で髪の毛がつくられた時点では、白髪の状態です。そこに色素細胞(メラノサイト)が、メラニン色素を入れることで、髪の毛が黒くなります。つまり、髪の毛そのものをつくる毛母細胞と、髪の毛に色を付ける色素細胞(メラノサイト)が存在します。このうち色素細胞(メラノサイト)だけ活性が弱まり、色素をつくることができなくなると白髪となってしまうわけです。
白髪を可能な限り防止するには、睡眠不足や夜更かしなど不規則な生活を改め規則正しい生活習慣を心がけること、ストレスを抱え込まないこと、そしてたんぱく質やミネラル分などをバランスよく含む食品を日々の食生活を積極的に取り入れることです。
2020年09月06日
【解明】食品の産地と効いた気分を演出する成分
天津甘栗と呼ばれる小粒の甘栗を口に入れると、甘さが広がってきます。この天津甘栗の甘さは、何かを加えていると思う人もいるかもしれませんが、あの味は栗本来のもつ甘さです。天津甘栗は、中国で収穫されたもので、日本の栗とは種類が違います。ほんのりとした甘さが持ち味なのです。
ただし、その名前から北京より東の港湾都市である天津で収穫されたものと考えてしまいますが、本当は天津産ではありません。天津甘栗に使われているのは、中国の河北省で収穫された栗です。北京の北の万里の長城に近い地域です。河北省で収穫された栗をなぜ天津栗と呼ぶ理由は、その昔中国の栗は天津港から日本へ出荷されていたからです。そのため、中国で収穫された小粒の栗は、すべて天津栗とよばれるようになりました。
日本の栗は、それほど甘くなく、渋皮が取りにくいという特徴があります。それに比べて、中国の栗は小粒ですが、栗そのものが甘く、渋皮も取れやすいので、釜の中で砂利と一緒に炒るだけで、渋皮がポロっと取れる天津甘栗ができあがります。
生の魚の場合は、スーパーで販売されるときに産地が表示されます。その場合、太平洋やインド洋などの海域名で表示されることもあれば、銚子産や境港産など水揚げした漁港名で表示される場合もあります。魚の産地とは、本来漁獲された水域のことになりますが、現実的にはそのように表示しにくい問題もあります。例えば、漁船が複数の水域にまたがって漁をした場合、魚ひとつひとつにどこの水域で獲れたかを明示することは困難です。そのため、大ざっぱな海域や水揚げした漁港名で表示されています。
最近ではごたぶんにもれず、干物もグローバル化が進んでいます。韓国で獲れたアジが、日本国内で加工され、スーパーで干物として販売されるときには、ラベルに国内の製造者名と原材料名アジ(韓国)が、明記されることになります。アジが国産であれば、国内の製造者名、原材料名アジ(国産)と表示されます。加工自体が韓国であれば、原産国名が韓国となります。
体の疲れを感じたら、栄養ドリンク剤を一気に飲み干す人がいるかもしれません。市場調査によると愛飲家は、次の3つのタイプに分かれます。出勤前に飲む朝飲み派、仕事の途中や残業前に飲む夕飲み派、そして仕事帰りや帰宅後に飲む夜飲み派です。いずれも栄養ドリンクをグイッと飲み干し、体の奥から元気が湧いてくることを期待してのむわけですが、その元気の素というのが、アルコールとガラナであることは、あまり知られていません。
そもそも栄養ドリンク剤は、開発段階ではぶどう糖とビタミンB1を使って試作されていました。ぶどう糖が疲労回復に即効性があり、それをエネルギーに変換するために必要な成分がビタミンB1だったためです。ところが、当時の消費者テストの評判は、飲んでも効いた気がしないなど散々な結果でした。
そこで、メーカーは栄養ドリンク剤にわずかなアルコールと血管の拡張効果があるガラナを加えて再テストを実施しました。すると体がカッカとほてり、よく効いたなどと評判がよく、そのまま販売に至りました。アルコールは、わずかな量でも、とくにすきっ腹に摂取すれば、体がほてってきます。しかも、ガラナが血管を拡張させているため、栄養ドリンク剤を飲めば、元気が湧いてきたように感じるのです。そのノウハウが現在の栄養ドリンク剤にも踏襲されています。
天津甘栗に使われているのは、中国の河北省で収穫された栗です。河北省で収穫された栗をなぜ天津栗と呼ぶ理由は、その昔中国の栗は天津港から日本へ出荷されていたからです。そのため、中国で収穫された小粒の栗は、すべて天津栗とよばれるようになりました。中国の栗は小粒ですが、栗そのものが甘く、渋皮も取れやすいので、釜の中で砂利と一緒に炒るだけで、渋皮がポロっと取れる天津甘栗ができあがります。
干物もグローバル化が進んでいます。韓国で獲れたアジが、日本国内で加工され、スーパーで干物として販売されるときには、ラベルに国内の製造者名と原材料名アジ(韓国)が、明記されることになります。アジが国産であれば、国内の製造者名、原材料名アジ(国産)と表示されます。加工自体が韓国であれば、原産国名が韓国となります。
栄養ドリンク剤は、開発段階ではぶどう糖とビタミンB1を使って試作されていました。ぶどう糖が疲労回復に即効性があり、それをエネルギーに変換するために必要な成分がビタミンB1だったためです。ところが、当時のテストの評判は、飲んでも効いた気がしないなど散々な結果でした。そこで、栄養ドリンク剤にわずかなアルコールと血管の拡張効果があるガラナが配合し、飲めば体がカッカとほてることで、元気が湧いてくる気分を演出しています。
2020年09月05日
【試作そしてまた試作】食品メーカーの製品開発
コンビニで売られているカップラーメンにどんどん新顔が登場しています。極端なことをいえば、しばらくしてあのカップラーメンをもう一度食べたいと買いに行っても、もう扱っていないこともありえます。それほど次々と新製品が販売されているのですが、そうなったのは移り気なコンビニの客層に合わせているためです。
コンビニでカップラーメンを買うのは、主に20〜40代の男性が中心です。基本的に買ってからすぐに食べるため、そのときに1番食べたい製品を買っていきます。外食することを思えば、カップラーメンの値段はリーズナブルです。それゆえ、値段は少々高くても、食べたい製品を購入し、新しい製品が出れば試そうとします。さらにコンビニは、POSシステムで販売数を徹底管理しているので、売れ行きがすぐに数字に表れます。当然、売れ行きの思わしくない製品は店頭から消えるので、食品メーカーとしては、消費者のお気に入りの製品を求めて、次々と新製品を出し続けなければなりません。
たまにヒット製品が出ても、今の消費者はとにかく飽きっぽいため、いつ他社の新製品に関心が移っていくかわかりません。というわけで、コンビニではカップラーメンの種類がどんどん入れ替わっていきます。
ちなみにスーパーで売られているカップラーメンは、主婦が家族のために買い置きすることが多いので、定番やヒット製品が選ばれることが多く、コンビニほど頻繁に製品の入れ替えはありません。
オフィスやキャンパスで、昼休みに女性がクロワッサンを食べている姿を見かけることは少なくありません。サクッとした食感とクロワッサンというエレガントなネーミングにひかれて、このパンを選ぶこともあるかもしれません。そして、見た目がシンプルなだけに、ダイエット中なので昼食はクロワッサンのみという人もいるかもしれません。しかし、これはとんでもない誤解です。
100gあたりのカロリーを比べると、ご飯と食パンが400kcal前後ですが、クロワッサンは570kcalもあります。クロワッサンは、シンプルな見かけとは裏腹に、けっこう高カロリーなパンなのです。というのも、クロワッサンは多量の油脂を含んでいます。原材料の1/3は油脂となり、それはクロワッサンに触れると指先がべたつくことからもわかります。
クロワッサンの生地には、ショートニングやラードなどの油脂が含まれています。食パンと同じようにクロワッサンを毎日食べると、気づいたときには、体重計の針がますます大きく振れていることにもなりかねません。
しかし、パン類のGI値を比較すると、あんぱんはGI値95、フランスパンはGI値93、食パンはGI値90、ベーグルはGI値75、クロワッサンはGI値68、ライ麦パンはGI値58となり、パン類の中でクロワッサンはライ麦パンに次いで低くなります。つまり、あんぱんやフランスパン、食パンよりも、クロワッサンの方が糖質の吸収がおだやかで、太りにくい傾向があるというわけです。
GIとはグライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。オーストラリアのシドニー大学ではぶどう糖を基準とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品 56〜69の間の食品を中GI食品 55以下の食品を低GI食品と定義しています。WHOから過体重や肥満などを低GI食品が低減させる可能性があるというレポートが出されたことから、食品メーカーは食物繊維が多く、エネルギーが少ない、GIの低い食品を供給するために製品開発を行っています。
焼きそばやとんかつ、お好み焼きなどにソースは欠かせません。今では日本の食卓に不可欠な調味料になっていますが、もともとはイギリス由来です。1850年代にイギリスのウースターシャ州のウースターというところでつくられたのが、ルーツです。日本のウスターソースは、この地名からつけられた名前です。ウスターソースが日本に渡ってきたのは、明治の文明開化期で、現在のウスターソースとはかなり味が異なり、相当しょっぱかったようです。それが、洋食店の普及にともない次第に日本人好みの味にアレンジされ、現在のマイルドな風味に落ち着きました。
現在、ウスターソースをはじめとするソースは、JAS規格によって、普通のウスターソース、とろみのついた中濃ソース、とんかつソースなどの濃厚ソースの3種類に分類されています。お好み焼きなどに使うソースは濃厚ソースのカテゴリーに入ります。
ところで、普段なにげなく使っているソースですが、いったいどんな原材料からできているのでしょうか。ウスターソースは、玉ねぎやニンジン、トマト、リンゴ、セロリなどを煮込んで熟成させ、ペッパーや唐辛子、にんにくなどの香辛料、砂糖、塩、食酢を加えて、カラメルで着色し、1ヶ月程熟成させてつくられます。中濃や濃厚ソースとウスターソースの製法の違いは、まず野菜のしぼり方にあります。ウスターソースは、野菜をしぼったジュース状のものを使用しますが、中濃や濃厚ソースは野菜をミキサーにかけてピューレ状にしたものを使用します。このため、粘性が違ってきます。
また、ウスターソースは酸味が強くスパイシーなのに対し、濃厚ソースは甘味が強いなど、それぞれ味の特徴も異なります。これは、香辛料や調味料の使い方の違いによるものです。
ちなみに国産ソースの第1号は、1885年にヤマサ醤油が発売したミカドソースです。といっても、このソースのベースはしょう油でした。しょう油に食酢や唐辛子などを配合した相当スパイシーな味だったそうです。
コンビニでカップラーメンを買うのは、主に20〜40代の男性が中心です。外食することを思えば、カップラーメンの値段はリーズナブルです。それゆえ、値段は少々高くても、食べたい製品を購入し、新しい製品が出れば試そうとします。さらにコンビニは、POSシステムで販売数を徹底管理しているので、売れ行きがすぐに数字に表れます。当然、売れ行きの思わしくない製品は店頭から消えるので、食品メーカーとしては、消費者のお気に入りの製品を求めて、次々と新製品を出し続けなければなりません。
クロワッサンの原材料の1/3は油脂となり、100gあたりのカロリーは570kcalもあります。しかし、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示すGI(グライセミック・インデックス)値をパン類で比較すると、あんぱんはGI値95、フランスパンはGI値93、食パンはGI値90、ベーグルはGI値75、クロワッサンはGI値68、ライ麦パンはGI値58となります。つまり、あんぱんやフランスパン、食パンよりも、クロワッサンの方が糖質の吸収がおだやかで、太りにくい傾向があるというわけです。
ウスターソースは、玉ねぎやニンジン、トマト、リンゴ、セロリなどを煮込んで熟成させ、ペッパーや唐辛子、にんにくなどの香辛料、砂糖、塩、食酢を加えて、カラメルで着色し、1ヶ月程熟成させてつくられます。中濃や濃厚ソースとウスターソースの製法の違いは、まず野菜のしぼり方にあります。ウスターソースは、野菜をしぼったジュース状のものを使用しますが、中濃や濃厚ソースは野菜をミキサーにかけてピューレ状にしたものを使用します。このため、粘性が違ってきます。
2020年09月04日
【アイデア】食品を製造するための工夫
お茶の栽培には、山間地が適しているとされます。静岡や狭山もそうですが、中国やインド、スリランカなど世界のお茶の産地もやはり山間の環境です。
ところが、山間地では、新茶の時期に茶葉の天敵である霜が降りやすくなります。実際に静岡では、茶葉に霜がついて、一番茶が全滅したこともありました。この霜害から茶葉を守るために開発されたのが、茶畑に立つ大型扇風機です。東海道新幹線の車窓からも、静岡の茶畑に設置された扇風機が見えますが、地元では防霜ファンと呼ばれています。
早朝に空気が冷えると比重が重くなって、茶畑の低いところに降りてきます。これが、茶葉や茶畑の細長く直線状に土を盛り上げた畝に水分を結晶化させて霜を降ろします。そのため、防霜ファンは霜の降りそうな低温になると、センサーが働いて羽が回りだす仕組みになっています。冷たい空気を撹拌して、それ以上温度が下がらないようにしているのです。
昔は、茶葉に煙を出して温めたり、朝方に水をまいて霜を防いでいました。それだけ手間をかけても霜害はなくなりませんでしたが、防霜ファンを使うようになってから、霜害はほぼなくなったようです。茶畑の扇風機は、なかなかの優れものなのです。
砂糖のシャリっとした舌ざわりの中から、ウィスキーやリキュールの甘いシロップがトロリと流れ出てくるのがボンボン菓子です。口に入れたとたん砂糖が溶けて、すぐに割れるのがボンボン菓子の特徴です。この割れやすいボンボンにどうやって中身のシロップを入れるのでしょうか。
お菓子づくりに詳しい人であれば答えられるかもしれませんが、安易に想像すると半球型の殻にシロップを入れその上から別の殻でふたをするとか、殻に注射器のようなものでシロップを注入すると考えるかもしれません。
しかし、実際にはボンボンをつくるのに手間は必要ありません。砂糖とシロップを一緒に煮詰めて型に流し込めば、自然とできてしまいます。手順としては、まず砂糖に水を加えて煮詰め、その後でボンボンの中身となるウィスキーやリキュールを加え温めます。次にコーンスターチなどのデンプンを容器に入れ、ボンボン型で押してくぼみをつくり、そこに砂糖液を流し込んでゆっくり冷やします。すると液に溶けきれなかった砂糖が結晶化して、表面に砂糖の殻がつくられます。そして、シロップを封じ込めたボンボンができあがります。ボンボンは砂糖特有の性質を利用してつくられたお菓子なのです。
ただし、ボンボンを砂糖殻のまま販売しているケースはあまりありません。というのも、砂糖の殻がもろく、壊れやすいからです。そこで、砂糖殻のまわりをチョコレートでかたくコーティングしたチョコレートボンボンがボンボン菓子の代表となっています。
ちなみに砂糖殻がかたまる原理は単純ですが、誰にでもボンボンをつくれるかというと意外に難しいです。砂糖液の濃度や温度管理をきちんと行わないと、殻が上手く結晶化しません。
現代人の生活にインスタントコーヒーは欠かせません。このインスタントコーヒーを飲むことは簡単ですが、製造には意外に手間がかかります。コーヒーの香りを損なうことなく、コーヒーの液体を乾燥させるのは、技術的に非常に難しい作業です。
コーヒーの液体を乾燥させる方法はいくつかあります。もっとも古典的なのは、スプレードライ製法です。これは、コーヒーの液体を霧状にして、熱風の中をくぐらせ乾燥させます。技術的には簡単ですが、コーヒーの香りが逃げてしまうという欠点があります。そこで開発されたのが、フリーズドライ製法です。コーヒーの液をマイナス40℃で凍結させ、真空装置に入れて乾燥させ、粉末や固形にする方法です。この方法だと香り成分の損失は最小限に抑えられます。この製法で真空装置に入れるのは、コーヒーの液体の凝固点と沸点を近づけるためです。そうするとコーヒーの香りを損ねることなく、水分だけをきわめて短時間で気化させることができます。
2020年09月03日
【たまには食べたい】高級食材の現状
秋の味覚マツタケは、国際的にもマツタケと呼ばれています。学名もトリコローマ・マツタケです。
世界でもマツタケを好んで食べるのは、日本人ぐらいですが、いまや国産品のシェアはわずかに5%程度です。広島県や長野県、岡山県、岩手県、京都府などで、細々と収穫されているにすぎません。山仕事をする人が少なくなって山が荒れ、また異常気象が増えている日本では、繊細なマツタケは年々育ちにくくなっているのです。
そこで残りの95%のマツタケは、世界各国から輸入されています。韓国や中国といった古株のほかにも、アメリカやカナダ、ロシア、ニュージーランド、さらにメキシコ、トルコ、モロッコ、ブータンなどからも輸入されています。
マツタケの特長は香りにあります。その香りは、収穫してからどれだけ早く調理されるかによって決まります。なので、輸送に時間のかかる輸入物は、同じ形、大きさでも、香りが乏しい分、国内産より割安になります。国内産の価格を100とすると韓国産は50、中国産は40、カナダ産などは20以下といわれています。日本との距離と価格が、反比例するわけです。
フグといえば下関です。その下関フグのブランドが確立したきっかけは、長州出身の初代総理大臣伊藤博文の下関訪問だったそうです。1888年に下関を訪れた伊藤博文が、食べたフグのあまりの美味しさに豊臣秀吉以来のフグ食の禁止令を解きました。それをきっかけに下関のフグが有名になりました。
下関のはえどまり市場の周辺には、現在数十社は入居するフグの加工団地があります。セリ落とされたばかりのフグが次々とさばかれ、肝など毒のある部位が取り除かれていきます。フグの処理施設を持つ市場は全国でも少なく、フグを食用とするには特別な技術が必要なことから、全国のフグが下関に集まってきました。こうして全国のフグの8割が下関に集まるようになり、フグの値段は下関が決めると長年いわれてきました。そして、フグが高級魚化するにつれて、下関のフグはブランド化されてきました。
ところが、この下関ブランドの威光が揺らいでいます。下関産と名乗らないフグが、市場に出回るようになりました。1980年頃は、下関産の天然トラフグは、20匹前後で100万円の値がつくこともありました。それが今では10万円前後にしかなりません。その大きな理由は、全国に出回るフグの多くが養殖ものになったことです。品質も安定し、下関の独占的な地位がくずれてきました。さらに、地球温暖化の影響で日本近海の海水温度が上昇し、いまでは伊勢湾や遠州灘、宮城沖あたりでも、フグが水揚げされるようになったことも、大きな理由です。
一時期、三重や静岡で獲れたフグは、いったん下関へ運ばれ、下関産として出荷されたりしましたが、産地から直接出荷されるようになりました。フグの卸業者が、必ずしも下関ブランドにこだわらなくなり、直接安い値段で取引するようになりました。
また、産地表示が義務付けられたことも大きいです。これまで、黄海や東シナ海で獲れた天然もののフグは、下関市場に水揚げされ、下関産として売られてきました。しかし、今では東シナ海産と表示しなければならず、下関ブランドが使えなくなりました。
なお、現在では、下関市内にも養殖ものを使った安いフグ料理店が増えつつあります。
世界三大珍味に数えられるキャビアは、ご存知のようにチョウザメの卵を塩漬けにしたものです。舌ざわりはどこまでもやわらかく、とろけるような食感があります。
しかし、意外な場所で出会ったキャビアは、膜がかたく、プチッと卵を噛むような食感があるかもしれません。それは世の中にチョウザメ以外の魚の卵でつくった模造品が大量に出回っているからです。模造品には、タラやニシン、トビウオなどの卵が使われています。チョウザメのキャビアと同じように塩漬けにし、その後で調味液に浸漬したり、着色されて市場に出回ります。欧米では、これら模造品は本物と厳密に区別され、販売されます。値段は本物のキャビアと1ケタ、場合によっては2ケタ異なります。
本物と模造品の見分け方、まず色をよく見ることです。模造品は、着色されて黒光りしていますが、本物のキャビアはくすんだ灰色です。
世界でもマツタケを好んで食べるのは、日本人ぐらいですが、いまや国産品のシェアはわずかに5%程度です。山仕事をする人が少なくなって山が荒れ、また異常気象が増えている日本では、繊細なマツタケは年々育ちにくくなっているのです。そこで残りの95%のマツタケは、世界各国から輸入されています。マツタケの特長は香りにあります。その香りは、収穫してからどれだけ早く調理されるかによって決まります。
フグの処理施設を持つ市場は全国でも少なく、フグを食用とするには特別な技術が必要なことから、全国のフグが下関に集まってきました。こうして全国のフグの8割が下関に集まるようになり、フグの値段は下関が決めると長年いわれてきました。そして、フグが高級魚化するにつれて、下関のフグはブランド化されてきました。ところが、この下関ブランドの威光が揺らいでいます。その大きな理由は、全国に出回るフグの多くが養殖ものになったこと、地球温暖化の影響で日本近海の海水温度が上昇し、伊勢湾や遠州灘、宮城沖あたりでも、フグが水揚げされるようになったことです。
世界三大珍味に数えられるキャビアは、チョウザメの卵を塩漬けにしたもので、舌ざわりはどこまでもやわらかく、とろけるような食感があります。しかし、世の中にチョウザメ以外の魚の卵でつくった模造品が大量に出回っています。模造品には、タラやニシン、トビウオなどの卵が使われています。模造品は、着色されて黒光りしていますが、本物のキャビアはくすんだ灰色です。
2020年09月02日
【腐心】食品メーカーや食品工場のたゆまぬ努力
超高級のやわらかい霜降り牛肉を口に入れると、舌の上でトロリと溶けていきます。まさしく至福のひとときですが、そんな霜降り牛肉が、最近は安い値段で食べられるようになりました。
実際のところ、安価な霜降り牛肉には、工場で加工されたものもあります。その加工方法は2通りあり、ひとつは赤身肉を薄く切り、そこに薄い脂身を挟み込んでいく方法です。卵白や牛乳などを接着剤代わりにして、赤身肉と脂身を張り合わせ、幾層にも積み重ねていきます。こうして、肉の塊をつくり、輪切りにすると霜降り模様入りの牛肉ができ上ります。もうひとつの方法は、赤身肉の塊に、加熱して液状にした脂身を注射器で注入するという方法です。全体にまんべんなく脂肪が入るように、長短さまざまな注射針をたくさん並べた加圧注入装置で、霜降り模様がつくられます。その後、肉全体をよく馴染ませてから、冷やして輪切りにすると、霜降り様の牛肉ができあがります。
この工場で加工された霜降り模様の牛肉は、味も栄養成分も霜降り牛肉とほとんどかわりません。口に入れても、よほどのグルメでなければ見分けがつかないところまで、技術水準は高まってきています。
弁当につきもののおかずのひとつにエビフライがあります。持ち帰り弁当やコンビニ弁当では、エビフライ入りの弁当は常に売れ筋です。
そして、市販の弁当のエビフライは一見どれもが見事な見た目をしています。身は大きくプリプリしていて、がぜん食欲をそそられます。ところが、そのエビフライは、残念なことにひと口目では、エビまでたどりつけないこともあります。ころもが分厚すぎるため、肝心のエビにまで、歯が届きません。もうひと口食べて、ようやくころもの下にエビを確認できます。外見からは見事な見た目のエビは、実はやせ細った貧弱な体つきをしていることが多いです。
もともと持ち帰り弁当に使われるエビは、カナダやアメリカ、東南アジアなどから輸入された冷凍ものです。フライや天ぷらにすると、ただでさえ小さく縮みます。そこで、弁当屋のセントラルキッチンやエビの加工工場が編み出したのが、貧弱なエビを大きく見せかける技術です。エビフライの場合は、パン粉と卵を2度つけ、着ぶくれのエビフライにします。また、天ぷらはころもをつけたエビを油の中に入れたあと、さらにその上からころもだけ振りかける方法をとっています。この方法は、業界で花揚げと呼ばれるエビをより大きく見せるための術です。
こうして、見た目の見事なエビについつい食欲をそそられ、厚着の下の貧弱なエビにしばしば愕然とさせられるのです。
大人に人気のガムといえば、虫歯や口臭予防、眠気覚まし効果などをうたっている機能性のチューインガムです。一方、子供たちに人気なのは、大きく膨らむ風船ガムでしょうか。
普通のチューインガムと風船ガムでは、噛み心地も伸び具合もまったく異なります。この2つはどこがどう異なるのでしょうか。チューインガムも風船ガムも、原材料は同じです。ガムを噛んだ後に残る味もそっけもない物体が、ガムの主要な原材料で、ガムベースと呼ばれています。これは、酢酸ビニル樹脂という合成樹脂などからつくられています。このガムベースに香料や甘味料などを加えたものがガムとなります。
では、どうやって同じ原材料から普通のチューインガムと風船ガムをつくり分けられるかというと、原材料となる酢酸ビニル樹脂の重合度を変えることにより可能となります。酢酸ビニル樹脂は、分子がつながってできており、普通のチューインガムと風船ガムでは、この分子のつながりの長さが異なります。風船ガムの方がおおよそ4倍も長くなります。分子のつながりが長いほど、より伸びのいい膜を形成することができます。つまり、同じ原材料を使用しても、重合度を変えることによって、伸びがよくて膨らむガムもできれば、伸びのあまりよくないガムもできるのです。
また、普通のチューインガムと風船ガムでは、天然の植物性樹脂の配合割合も異なります。天然樹脂を混ぜると香りは向上しますが、硬すぎて噛み心地が低下するというマイナス面も生じます。そこで、普通のチューインガムにはおおよそ2割、風船ガムにはおおよそ8割の人工樹脂が配合されています。
ちなみに風船ガムに比べて、普通のチューインガムのほうが、香りがいいのは、天然樹脂の配合量が多いことがひとつの理由です。
実際のところ、安価な霜降り牛肉には、工場で加工されたものもあります。その加工方法は2通りあり、ひとつは赤身肉を薄く切りそこに薄い脂身を挟み込んでいく方法と、赤身肉の塊に、加熱して液状にした脂身を注射器で注入するという方法です。この工場で加工された霜降り模様の牛肉は、味も栄養成分も霜降り牛肉とほとんどかわりません。
弁当に使われるエビは、カナダやアメリカ、東南アジアなどから輸入された冷凍ものです。フライや天ぷらにすると、ただでさえ小さく縮みます。弁当屋のセントラルキッチンやエビの加工工場が編み出したのが、貧弱なエビを大きく見せかける技術です。
普通のチューインガムと風船ガムの違いは、原材料となる酢酸ビニル樹脂の重合度です。酢酸ビニル樹脂は、分子がつながってできており、普通のチューインガムと風船ガムでは、この分子のつながりの長さが異なります。風船ガムの方がおおよそ4倍も長くなります。分子のつながりが長いほど、より伸びのいい膜を形成することができます。
2020年09月01日
【主食】毎日食べているお米
無洗米とは、名前の通り、洗わなくても炊ける米のことです。従来の白米に比べて、研がずに炊けるので手間がかからない、環境にやさしい、ビタミンが豊富という特長を持っています。
水を入れるだけで炊けるという便利さが受け、米を大量に扱う外食産業の消費に加えて、家庭用の売上げも増えています。無洗米が環境に優しいといわれるのは、米のとぎ汁にはリンや窒素が多く含まれているため、そのまま流すと海や河川を汚染する恐れがあるからです。その点、無洗米はとぎ汁を出さないので、環境にやさしいといわれます。また、ビタミンが豊富なのは、米を研ぐときに水と一緒に流れ出るビタミンB1やナイアシンが、そのまま残るという利点があるためです。
ではなぜ、無洗米は研がずに炊けるのでしょうか。そもそも、ご飯を炊く前に米を研ぐのは、白米の表面に付着した米ぬかを洗い流すためです。米ぬかがついたままの状態で炊くと、ご飯につやがなく、舌ざわりも香りも悪くなってしまいます。しかし、米ぬかは普通の精米機では取り除くことができません。一方、特殊な精米機にかけ、米ぬかを取り除いたものが無洗米です。すでに米ぬかを落としてあるので、研がずに炊くことができます。白米の表面に付着した粘着性の高い米ぬかを同じように粘着性をもったぬかで、はがすように取り除きます。これは、ガムテープをはがした跡をガムテープでとるときれいにとれるのと同じ原理です。このほか少量の水分で米ぬかを洗い流してから乾燥させる方法もあります。
ちなみに無洗米を炊くときは、普通の精米を炊くときよりも、10%程水を増やすのがおいしく炊くコツです。同じ1合の米でも、無洗米は米ぬかを落としてある分だけ量が増え、通常の水量では固く炊きあがるためです。また、家庭で保存するときは、1カ月以内で食べきるか、それを過ぎる場合は冷蔵庫で保存した方が、おいしく食べることができます。
秋も深まると、その秋に収穫されたばかりの新米が出回ります。行きつけの定食屋や弁当屋に新米入荷という貼り紙が出ると、なんだか得をした気分になります。それだけ、新米に胸が踊る背景には、古米は味が落ちるというイメージがあるからでしょうか。確かに収穫後、貯蔵され、翌年の梅雨を越した古米は、めっきり味が落ちてきます。
その原因のひとつは、日本の地価の高さにあります。そもそも、米は保存性の高い穀物で、籾つきのまま保存しておけば、古米、古々米となっても、それほど味は落ちません。実際籾つき状態で貯蔵すると、かなりの年数が経っても米は発芽します。つまり、米は生きているのです。
ところが、現在の日本では籾つきでの貯蔵はほとんど行われていません。たいてい籾がらを取り除き玄米にして貯蔵されます。これは籾つきで貯蔵すると玄米の倍近い容積になり、それだけたくさんの倉庫が必要になるからです。むろん、多くの倉庫が必要になれば、地価の高い日本では、貯蔵費用がかさむことになります。けれども、玄米にしてから貯蔵すると、傷や害虫がつきやすくなります。そのため、燻蒸処理が必要になります。この処理を行うことによって、米の味が落ちてしまうのです。
戦前は、米は籾つきのまま貯蔵され、少しずつ玄米にして市場へ出荷されました。現在は、味の落ちた古米に香りの高い品種を混ぜるなどの工夫をほどこして、市場に出荷されます。
普段から健康に気を使い、食品の安全性にこだわっている家庭では、白米ではなく、玄米を食べることが多いです。また、反対に玄米を食べていると聞くと健康志向の意識の高さを感じます。
玄米は健康食というイメージが定着していますが、そのイメージだけで玄米を食べていると、かえって体に悪いケースがあります。もちろん、完全無農薬の玄米を食べていれば問題ありません。ところが、普通に農薬を使用してつくられた米の場合、玄米で食べるとかえって白米よりも多くの農薬を体に取り込むことになりかねません。農薬は表皮の内側にたまる性質があります。そのため、玄米の胚芽やぬかの部分に残留しやすいのです。つまり、農薬を使用して育てた玄米を洗わずに食べると、白米より多量の農薬を取り込むことになりかねません。健康のために玄米を食べているのに、より多くの農薬を体内に蓄積することになります。
ただし、過剰に神経質になる必要はありません。丁寧に洗えば、玄米の農薬はほとんど落ちるといわれています。体にマイナスとなるのは、あくまでよく洗うという基本作業を怠ったときです。
また、玄米は皮の部分が固いため、白米以上によく噛んで食べる必要があります。よく噛まなければ、栄養分が吸収されにくいばかりか、お腹をこわすこともあります。実際に玄米を食べてやせたというひとの中には、栄養がうまく吸収されていなかったり、消化不良を起こし、ほかの食品までしっかり食べられなくなったということもあります。
確かに玄米をよく噛んで食べると、少量でも満足感が得られるため、効率よくやせることも可能かもしれません。しかし、玄米をよく噛まずに食べて、栄養不足でやせてしまうのでは、かえって体によくないのは当然です。
無洗米とは、名前の通り、洗わなくても炊ける米のことです。従来の白米に比べて、研がずに炊けるので手間がかからない、環境にやさしい、ビタミンが豊富という特長を持っています。無洗米は、特殊な精米機にかけ、米ぬかを取り除いたものです。
米は保存性の高い穀物で、籾つきのまま保存しておけば、古米、古々米となっても、それほど味は落ちません。ところが、現在の日本では籾つきでの貯蔵はほとんど行われていません。たいてい籾がらを取り除き玄米にして貯蔵されます。これは籾つきで貯蔵すると玄米の倍近い容積になり、それだけたくさんの倉庫が必要になるからです。玄米にしてから貯蔵すると、傷や害虫がつきやすくなります。そのため、燻蒸処理が必要になります。この処理を行うことによって、米の味が落ちてしまうのです。
農薬は表皮の内側にたまる性質があります。そのため、玄米の胚芽やぬかの部分に残留しやすいのです。農薬を使用して育てた玄米を洗わずに食べると、白米より多量の農薬を取り込むことになりかねません。しかし、丁寧に洗えば、玄米の農薬はほとんど落ちるといわれています。体にマイナスとなるのは、あくまでよく洗うという基本作業を怠ったときです。