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2020年06月06日

【公開】水分を含んだ食品の乾燥技術

食品の乾燥とは

 スーパーやコンビニで三食入りのソースやきそばを買って調理するとき、粉末ソースの袋を開けて、麺や具材にふりかけ、よく混ぜてから食べます。この粉末ソースの原材料には、ソースパウダーやしょう油パウダーが含まれています。普段美味しく食べている分には、気になりませんが、実はここに食品の乾燥技術が活かされているのです。主な製法としては、5階建てのビルにも相当する非常に大きな乾燥装置を用います。一般的に液体のソースやしょう油にでんぷんを分解したデキストリンなどの粉末化を助ける食品(賦形剤)を加え、加水溶解します。この液体をポンプで送り、5階建ての装置の一番上から装置内へ霧状に吹き出します。装置内部は160〜180℃に加熱されており、水分は蒸発し、粉末のみが下まで降りてきます。その後ふるいを通し、袋に充填します。もちろんサンプルを抜き取り、風味の確認や検査を行います。
 食品の加工分野では、品質劣化防止や運搬性の向上を目的とし、乾燥技術を使用しています。より良い乾燥方法を求め、日々研究開発が繰り返されております。
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食品の乾燥の方法

 液体や水分を多く含むだし、ソースやしょうゆなどの調味料、野菜、フルーツ、から水分を取り除くには、様々は方法が用いられます。この方法について、ご紹介します。
スプレードライ

 先程のソースパウダーやしょう油パウダーの製法です。スプレードライは、液状化した原料を霧状にし、加熱空気で瞬間的に粉末化する乾燥技術です。乾燥工程が短く、大量生産が可能で、低コスト製品の安定供給が可能です。粉末のラーメンスープの原材料や脱脂粉乳の乾燥は主にこの製法です。
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ドラムドライ

 ドラムドライは、回転する加熱したドラム上に液状化した原料を薄く塗りつけて、乾燥させる技術です。固形分を含み、高粘性原料の乾燥に効果的です。乾燥品はフレーク状になりますが、粉砕して粉末状にします。ドラムの温度や乾燥時間を調整することで、ローストした香ばしい風味をつけることもできます。ふりかけの具材の乾燥に用いられています。
連続式真空乾燥

 原料を真空にした装置の中に連続供給し、加熱乾燥後、粉砕します。真空下では常圧より低い温度で乾燥することができるため、熱による変性を極力防止し、果汁や糖度の高いものの乾燥に適しています。さらに多孔質状の粉末が得られるため、水またはお湯に簡単に溶けます。果汁や果肉の粉末は、お菓子類などに使用されています。
フリーズドライ

 スーパーとなどでもよく見かけるブロック状の乾燥スープは、主にフリーズドライ製法によるものです。フリーズドライのいちごをチョコレートでコーティングしたお土産は、主に北海道で販売されています。フリーズドライは、凍結させた原料を真空状態のもと、低温で乾燥させる技術です。素材の色、味、香り、栄養をそこなうことなく乾燥することが可能です。水またはお湯を加えるだけでもとの食品に復元できるという特長を持っています。保存性や簡便性に加えて、素材の持ち味を最大限残すことができる方法ですが、他の乾燥方法と比べて高コストとなります。
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エアードライ

 カップ焼きそばの具材のキャベツやカップラーメンのわかめは、主にエアードライで乾燥しています。エアードライは、単純に熱風を供給し、水分をとばすというシンプルで、低コストな方法です。
食品を乾燥するメリットとデメリット

メリット

  1. 食品の品質劣化を防ぐ。
  2. 保存性を高めて安定的に供給する。
  3. 運搬性を高める。
  4. 加工性を高める。
  5. 成分を濃縮する。
  6. 味や食感に変化を付ける。

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デメリット

  1. 液体ソースやしょう油の好ましい香りが少なからず揮発により減少する。
  2. 熱によって壊れやすいたんぱく質やビタミンなどの栄養的損失を伴う。

まとめ

 食品を乾燥することは、以前より行われてきました。目的は、品質の劣化を防ぎ、保存性を良くする、運搬性を高める、加工性を高める、成分を濃縮する、味や食感に変化を付けるなどです。また、乾燥させた果実や野菜をチョコレートでコーティングし、お土産として販売するなど、これまでの技術では成しえなかった、考えられなかった製品を実現しています。加工食品の分野では、あらゆる食品やその原材料に対し、様々な乾燥方法が用いられ、あるいは技術を組み合わせることで、試行錯誤を繰り返しながら、新製品の開発に取り組んでいます。

2020年06月05日

【驚愕】レトルト食品の功罪

レトルト食品とは

 レトルトとは、もともとレトルト殺菌釜という設備の名称です。レトルト殺菌に使用される袋をレトルトパウチ、殺菌された食品をレトルト食品と呼びます。レトルトパウチによる本格的な商業利用は1969年発売のボンカレーが最初です。殺菌温度120℃、殺菌時間30〜60分が最も一般的な加工条件です。温度を上げると殺菌時間は飛躍的に短くなります。枯草菌など芽胞を形成する細菌は、死滅させるのに100℃にて400分かかりますが、120℃なら4分となり、味や香りの熱による劣化も抑えられます。レトルト殺菌済の製品は、無菌状態のため常温保管が可能となります。
 実際の加工事例として、レトルト白がゆは、お米と水のみを使用しています。レトルトパウチ袋にお米と水をそれぞれ充填し、シール機で袋を溶着、トレーに袋を並べ、レトルト殺菌釜に入れ、殺菌温度120℃、殺菌時間30〜60分の条件を設定し、ボイラーの蒸気を熱源として加熱し、調理と殺菌が始まります。製品化に至るまでにお米と水の分量や殺菌条件を調整し、味やお米からのでんぷんの溶出による物性のチェック、殺菌条件に問題がないかを確認します。殺菌が不十分であると細菌が袋の中で増殖をはじめ、呼吸により二酸化炭素などが発生し、膨らんで袋が破裂します。そのため製品化前に少なくとも数十回の試作を行うことになります。
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レトルト食品の歴史

 レトルト食品の歴史は、第二次大戦後の1950年代に米軍が缶詰にかわる軍用携帯食として開発したところまで遡ります。その後、アポロ計画で宇宙食に採用されたことで多くの食品メーカーが商用での使用を検討しました。
 日本では1969年に大塚食品が、世界初の一般向けレトルト食品としてボンカレーを発売しました。昨今では大小さまざまな企業がレトルト食品を生産しています。
レトルト食品の生産量と種類

 日本缶詰びん詰レトルト食品協会の2018年の国内生産数量統計によるとレトルト食品の生産量トップは、161,711トンのカレーとなります。レトルト食品全体の43%を占めています。2番目は50,085トンのつゆ・たれ、3番目は44,275トンの料理用調味ソース、4番目は31,665トンのパスタソース、5番目は18,605トンのハンバーグなどの食肉野菜混合煮となります。その他にスープ類やおかゆ、白飯などの飯類、釜飯の素、麻婆豆腐の素、サバの味噌煮などの水産類、シチュー、ハヤシが続きます。
 レトルト食品は、製造工程上、向き不向きがあります。カレーやシチュー、ハヤシなどの煮込み料理には最適ですが、逆に炒飯などの炒め物やホワイトソース、緑黄色野菜は不得手です。これは120℃で30〜60分加圧加熱することで、食感や香り、色が劣化するためです。
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レトルト食品のメリットとデメリット

 スーパーやコンビニで目にするレトルト食品は、化粧箱に入れられたレトルトパウチ袋が主流で、もっとも多く販売されています。次が鍋の素をはじめとしたスタンディングパウチ袋となります。個食の場合、一食200g前後で、製品価格は100〜900円台となります。レトルト食品は、以下のような特徴があります。
メリット

  1. 加圧加熱殺菌により保存料を必要としません。
  2. 常温で1年以上の長期間保存が可能です。
  3. 短時間で加熱調理ができます。

デメリット

  1. 120℃で30〜60分加圧加熱するため、家庭での調理に比べて熱に弱いビタミンCなどの栄養素が減少する可能性があります。
  2. レトルトの調味ソースやパスタソースの完成度が高いため、自身で味を組み立てる技術が蓄積されません。

レトルト食品の製造工程

 レトルト食品の代表的な製品であるレトルトカレーの簡単な製造工程を紹介します。

  1. 蒸気で加熱するニーダーという業務用調理釜あるいは直火釜で玉ねぎやニンジン、ジャガイモなどの野菜や肉を個別に炒めます。
  2. 直火釜で油脂やコリアンダー、クミン、ターメリック、ペッパーなどの香辛料、調味料、小麦粉、水を加熱混合し、カレールーを作ります。
  3. レトルトパウチ袋に野菜、肉、ルーを充填し、レトルト殺菌釜にて120℃で30〜60分加圧加熱殺菌します。
  4. 2週間程倉庫に保管し、風味のチェックと確実に殺菌されていることを確認します。
  5. 箱に詰め、出荷します。

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まとめ

 レトルト食品は、レトルト殺菌釜で120℃、30〜60分の加圧加熱条件下で殺菌された食品です。カレーをはじめ様々なラインアップがあり、食生活を豊かにしてくれます。メリットは、保存料不要、常温で1年以上保存性、喫食時の簡便性と加熱調理の時間短縮が挙げられます。一方で、家庭での調理に比べて熱に弱いビタミンCなどの栄養素が減少する可能性があること、調味ソースやパスタソースの完成度が高いため、自身で味を組み立てる技術が蓄積しないことがデメリットとなります。生活者の様々なニーズに応えることで消費が伸び、いまや一般の家庭では欠かせない食品のひとつとなっています。

2020年06月03日

【イメージ回復】脂質の役どころ

脂質とは

 脂質と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。ともすると肥満の張本人とお考えではないでしょうか。炭水化物、たんぱく質と共に三大栄養素となる脂質は、1グラムあたり9キロカロリーと、三大栄養素の中でも最も高いエネルギーを得ることができます。脂質は水に溶けず、炭素、水素、酸素で構成されています。脂質は重要なエネルギー源だけでなく、ホルモンや細胞膜、核膜を構成したり、皮下脂肪として、臓器を保護したり、体を寒冷から守ったりする働きもあります。また、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、Eなど)の吸収を促すなど、重要な役割を担っています。脂質は私たちの体にとっては欠かせない三大栄養素の1つです。しかし、脂質は摂り過ぎると肥満などの原因になるため注意が必要です。
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脂質の種類

 脂質は、構造の違いによって、中性脂肪などの単純脂質、リン脂質などの複合脂質、ステロールなどの誘導脂質に分類されます。脂肪は体内の消化酵素の働きによって脂肪酸とグリセリン(グリセロール)というアルコールの一種に分解され、吸収されます。脂肪酸は炭素と水素が結合し鎖状になったものです。鎖の長さや二重結合(炭素の結びつきで一重や二重の結合があります)の有無の違いにより、多くの種類の脂肪酸があり、どんな脂肪酸が含まれているのかによって、その脂質の性質も変わってきます。二重結合がないものを飽和脂肪酸、二重結合があるものを不飽和脂肪酸と言い、そのうち二重結合が1つのものを一価不飽和脂肪酸、二重結合が2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と言います。多価不飽和脂肪酸は、二重結合の部分が炭化水素鎖の末端から何番目にあるかによって分類され、3番目にあるものをn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)、6番目にあるものをn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)といいます。脂肪酸のうち食物からとる必要があるものを必須脂肪酸といいます。リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が必須脂肪酸にあたります。
脂肪酸とは

飽和脂肪酸

 飽和脂肪酸は、炭素間に二重結合を持たない脂肪酸で、乳製品、肉などの動物性脂肪やパーム油などの植物油脂に多く含まれています。これらも重要なエネルギー源ではありますが、飽和脂肪酸をとりすぎると、血中総コレステロールが増加し、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患のリスクが増加することが予想されています。
一価不飽和脂肪酸

 炭素間に二重結合をもつ脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。一価不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸のうち、二重結合を一つもつもので、動物性脂肪やオリーブ油などの植物油に多く含まれ、その大部分はオレイン酸です。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取するほか、体内で飽和脂肪酸から合成することができるため、必須脂肪酸ではなく、食事摂取基準では、目安量や目標量は設定されていません。
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n-6系脂肪酸

 炭素間の二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した炭素のうち、末端から数えて6個目と7個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-6系脂肪酸」といいます。n-6系脂肪酸には、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などがあります。日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸とされており、大豆油やコーン油などの植物油が主な摂取源です。リノール酸などのn-6系脂肪酸は体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。日本人の食事摂取基準では、一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量として、n-6系脂肪酸7.0〜11.0g/日と定められています。
n-3系脂肪酸

 炭素間の二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した炭素のうち、末端から数えて3個目と4個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-3系脂肪酸」といいます。n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあり、α-リノレン酸は植物油が、EPAやDHAは魚介類が主な摂取源です。これらの脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸です。えごま油は100gあたり58g、あまに油は100gあたり57g、くるみは100gあたり9gのn-3系脂肪酸を含んでいます。日本人の食事摂取基準では、一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量として、n-3系脂肪酸1.6〜2.4g/日と定められています。
コレステロール

 コレステロールは、脳神経や筋肉の働き、細胞膜やホルモンの生成に不可欠な物質です。コレステロールは体内(肝臓)で合成できる脂質となります。食事から摂取されるコレステロールが少ないと体内で作られるコレステロールが増加し、逆に食事から摂取されるコレステロールが多いと体内で作られるコレステロールは減少します。よって、食事から摂取されたコレステロールの量が、そのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではありません。食事摂取基準では、目標量は設定されていませんが、脂質異常症の方等においては、その重症化予防の目的から、コレステロールの摂取量を200 mg/日未満に抑えることが望ましいとされています。
脂質の吸収と働き

 脂質のうち、食品中の脂質の主成分であり、エネルギーとして利用されるのは、主に中性脂肪です。水に溶けない中性脂肪は、小腸から吸収された後、水に溶けるたんぱく質と結合して体の各部に運ばれます。

 植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸には、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きもありますが、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させるので、摂りすぎ注意です。
脂質の味と香り

 脂質自体に味、香りはありませんが、 脂質を含まない食物は複雑さを感じられません。マグロのトロには脂質が50%程度含まれ、ラーメンもカレーも脂質があることで、濃厚感が増し、食欲をそそられます。脂ののった魚に舌鼓を打ち、植物性油脂のブレンドされたドレッシングを野菜にかけ、食後のケーキで癒されるとき、脂質と糖やうま味成分との絶妙な味のハーモニーを実感します。ところが、驚くべきことに脂質の味が脳に伝えられているかどうかも含め、脂質を舌で感じるしくみはまだよくわかっていないようです。今後の研究が楽しみな分野です。
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まとめ

 肥満の原因となる脂質は敬遠されがちですが、食事の量が少ない高齢者などの場合は、脂質の摂取量が不足すると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり、体の抵抗力が低下したりする可能性があります。脂質とともに吸収される脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、Eなど)が吸収されにくくなり、ビタミン欠乏になるリスクもあります。反対に、肥満傾向の人は、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の原因になるため摂りすぎないように注意しなければなりません。また、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸をバランスよく摂取するためにも、さまざまな食品から脂質を摂取するように心がけましょう。脂質自体に味も香りもありませんが、食品に濃厚さ、複雑さを増強するなくてはならない栄養素です。

参考URL:農林水産省 
posted by Kaoru at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分

2020年06月02日

【諦めない】認知症の予防方法3選

認知症とは

 厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると認知症高齢者の数は、2012年で 462 万人、2025年には約 700 万人、65 歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれています。今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。
 ご家族が高齢化してくると、心配になるのが認知症の発症です。体は健康でも、もの忘れが増えてくると「もしかすると認知症?」と不安になってしまいます。近年では高齢でなくても若年性認知症にかかる方も増加しています。
 精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態を認知症と言います。記憶障害と知的障害の損失で定義されている疾患ですが、主にアルツハイマー型認知症と血管性認知症の二つに分けられます。
 
・アルツハイマー型認知症
 「アルツハイマー型認知症」は、1906年にドイツの医学者だったアロイス・アルツハイマーが、学会ではじめて認知症の症例を報告したことが病名の由来です。進行性の病気で、現れる症状としては、もの忘れがひどくなる記憶障害や時間や場所がわからなくなる見当識障害、電気製品が上手く使えないなどの実行機能障害、物盗られ妄想などが挙げられます。アルツハイマー型認知症の原因はまだ完全に解明されていません。最も有力なのは、脳内に「アミロイドβ」や「タウ」などの異常なタンパク質が蓄積し、それが脳の神経細胞の働きを低下させるという見解です。最近の研究によると、糖尿病や高脂血症の方は、アルツハイマー型認知症のリスクが高いと報告されています。

・血管性認知症
 血管性認知症は、脳内の血管に障害が起きることで、神経細胞が壊れて発症する病気です。アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症の原因となっています。血栓によって血管が詰まったり(脳梗塞)、脳の血管が破れて出血してその後遺症が残ったりすると(脳出血)、その部位および周辺にある神経細胞が壊れます。それが原因で、認知症を引き起こします。

 残念なことに現在使用されている薬には、根本的に認知症の進行を止める働きはなく、服用しても最終的に認知症は進行します。記憶障害を劇的に改善させるほどの効果も期待できません。しかし脳の働きをある程度保つ可能性があります。
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認知症を予防する方法その1 食生活

 1. バランスの良い食事
  たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどの栄養バランスの良い食事をすることで、脳に必要な栄養素である魚油に多く含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸、葉酸、ビタミンA、C、E、ファイトケミカル(健康に良い影響を与える植物由来の化学物質 トマトのリコピンやニンジンのβ-カロテン、イチョウ葉のフラボノイド、大豆のイソフラボン、キノコのβ-グルカン、米ぬかのポリフェノールなど)、ミネラルを補うことができます。
  緑黄色野菜や豆類、果実類には、葉酸が多く含まれています。葉酸はビタミンB群の一種であり、ホモシステインという物質の生成を抑制します。ホモシステインは、動脈硬化を進行させ、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの作用を強める働きがあります。葉酸は、藻類、肉類、野菜類、卵類、乳類、豆類などに多く含まれ、通常の食事で不足することはありません。
  さんま、あじ、いわし、さばなどの青魚には、オメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。DHAは脳の構成成分であり、記憶力や判断力の向上、認知症予防、特にアルツハイマー型認知症の発症予防に有効であるという報告があります。

 2. 適正な摂取カロリー
  摂取カロリーに気をつけることで肥満を予防します。肥満はアルツハイマー型認知症になりやすいからです。

 3. 必要以上の塩分を避ける
  血管性認知症は脳梗塞と関連性があり、高血圧が引き金となっている場合が多いので、高血圧予防のために減塩を心がけましょう。カリウムを多く含む野菜や果物、海藻類は血液中のナトリウムを排泄する働きがあります。脳梗塞を予防することで、脳血管性認知症の予防につながります。

 4. 間食を避け、糖分を抑える
  糖尿病は、脳血管性認知症及びアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めます。血糖値をコントロールするためにも、糖分の多いお菓子、炭水化物中心の食事を控え、野菜やきのこ類、海藻類から食物繊維を摂取し、血糖値の上昇を防ぎましょう。
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認知症を予防する方法その2 有酸素運動

 認知症の予防法としてよく挙げられるのが、有酸素運動です。有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことをいいます。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった、ある程度の時間をかけながら、少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表例です。1日30分の運動を週3回以上行うことが良いとされています。有酸素運動をすることで、脳由来神経栄養因子が出て新しい神経や血管が生まれることがわかっており、認知症の予防につながると期待されています。
認知症を予防する方法その3 サプリメント

 厚生労働省によると多くのサプリメントは、記憶力を強化し脳機能と脳の健康を改善すると謳って市販されています。現時点では、サプリメントが認知症やアルツハイマー病の進行を逆行させたり遅らせたりするという確固たる報告は研究から得られていません。しかしながら、サプリメントに関する研究は進行中であり、効果がないとは言いきれません。あくまでも感想となりますが、体験談による改善報告は散見されます。
中でも、イチョウ葉に含まれるフラボノイド、米ぬかに含まれるポリフェノールの一種となるフェルラ酸、中国では宮廷料理の珍味とされ、食材としても多くの国で人気があるヤマブシタケというキノコに含まれるヘリセノンとエリナシンという成分に予防効果が期待されます。特にヘリセノンとエリナシンは、近年注目されています。 アルツハイマー型認知症では、神経細胞の働きが低下すると言われておりますが、それを防ぐのがNGFという神経細胞成長因子です。ヘリセノンとエリナシンはNGFを増加させ、神経細胞の働きが低下するのを防ぐことが報告されたことから、注目を集めています。併せて、オメガ3脂肪酸のDHAやEPAを摂取することが予防に効果的でしょう。
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まとめ

 高齢者は特にもの忘れを心配し、それがアルツハイマー型認知症の最初の徴候ではないかと不安になります。実際、もの忘れにはさまざまな原因があります。通常の加齢に伴うものや治療可能なさまざまな健康問題、もしくはストレスや不安などの情緒障害と関連していることもあります。この認知症を予防するには、バランスの取れた食生活や有酸素運動が効果的です。頭では理解していても、実際に行動することは難しいこともあります。「毎日気を使って献立を考えるのが大変」、「外食ばかりでバランスを保てない」、「毎日の有酸素運動は続けられない」といった悩みが払拭できない場合、まずはイチョウ葉や米ぬか、ヤマブシタケ、オメガ3脂肪酸などを含有する健康食品を取り入れてみてはいかがでしょうか。
 行動することで、不安が和らぎ、今の生活が落ち着きます。主治医が認知症のご家族に対して、「数年後には、家族の顔も名前も分からなくなる日が来る」と言われる日がくるかもしれません。とても悲しいことですが、大変な思いをしている方々はたくさんいます。だからこそ、ご家族のためにできることを行い、楽しい思い出を沢山つくることを願ってやみません。

2020年05月31日

【知らないと損】食品から幸せホルモンを分泌させる方法

幸せホルモンとは

 人間の脳から幸せな気分になれるホルモンが分泌されます。このホルモンは、心の充足感やストレスを軽減させたりします。幸せホルモンは、日常のささいな行動で分泌するのです。

 幸せホルモンは、脳内ホルモンの中でも、分泌されると心と体に心地良さを感じるもののことをいいます。その中でも今注目されているのは、イライラを抑えてくれる「セロトニン」、快感を得ることができる「ドーパミン」です。

 幸せホルモンを普段の生活の中で、どのように出すことができるのかを紹介します。
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幸せホルモン働き

 セロトニンは、心の充足感を促すホルモンです。セロトニンがきちんと分泌されると、ほかの神経伝達物質が暴走するのを抑制し、平常心を持ち続けることができます。セロトニンが不足するとイライラし、うつ状態や暴力的になりやすいそうです。

 ドーパミンは、うれしいことや良いことが起きると、脳内で分泌され、快感を得ることができます。ドーパミンが分泌されると人間は意欲が湧いてきて、今以上にうれしいことや良いことを実践しようと考えます。分泌されればされるほど意欲が上がり、さらに取り組もうとするので、人生が好循環します。
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食品から幸せホルモンセロトニンを分泌させる方法

 ・おいしいものや大好物のものを食べる
 
 セロトニンはおいしいものを食べたときなど、幸福感を味わったときにも増えるといわれています。大好きなスナックやチョコレートなどの加工食品を食べだすと止まりませんよね。きっと脳からセロトニンが分泌され、脳が幸せで満たされているので、どんどん食べなさいと指令を出しているのかもしれません。

 ・たんぱく質をバランスよく摂取する

 肉や魚、卵、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐やみそなどの大豆食品といったたんぱく質には、セロトニンの原料となるアミノ酸のトリプトファンが多く含まれます。このような食品が好物であれば、セロトニンの原料を取り込みながら、幸福に包まれていることでしょう。
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食品から幸せホルモンドーパミンを分泌させる方法

 ・課題を設定し、達成する
 
 ドーパミンは、なにかを達成した後に分泌され、達成感を与えられると分泌量が増えるそうです。自身の中で様々な分野の加工食品を食べ比べるなど課題をたくさん設定し、達成するごとに達成感を味わいましょう。

 ・ドーパミンを生み出すのを促進する「チロシン」を摂取する
 
 ドーパミンの生成促進には、アミノ酸のチロシンが関与しています。チーズなどの乳製品や納豆、枝豆、豆腐などの大豆食品、かつお節などに多く含まれるため、ぜひ取り入れましょう。
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まとめ

 幸せホルモンは日常の食事で増やすことができます。楽しくないあるいはイライラするようであれば、幸せホルモンが不足しているかもしれません。この機会に大好物を良質なたんぱく質を含む食品と食べて、幸せホルモンで満たされてください。適度なスナックなどの加工食品もオススメです。

【安心】食品添加物の安全性と注意点

食品添加物とは

 食品添加物ってどのようなものか知っていますか?食品添加物は十分に調査され、適切に使用すれば、安全性が確認されております。食品メーカーは、以下の目的で使用しています。

 ・食品を長持ちさせる
 ・形を良くする
 ・色や香りを付与する
 ・味や舌ざわりを良くする

 食品添加物に指定されている化学物質としては、化学合成物と天然由来の物質が用いられ、使ってもよい食品添加物は、国で定められています。

 食品添加物の例として、魚や肉の加工食品を生のものより長持ちさせる「保存料」などが挙げられます。菌やカビの発生を防ぎ、食品を長く保つことなどにも、役に立っています。食品添加物を使用しないと製造できない食品の例は豆腐です。「にがり」という食品添加物を使わないと、固まりません。ハムの赤い色、飲み物の香り、たれやソースのとろみなど食品のおいしさを作りだすために、食品添加物は使用する量は少ないのですが、なくてはならないものなのです。食品の酸化を防ぐために添加される「ビタミンC」も食品添加物に含まれます。そのままでは、空気中の酸素によって徐々に酸化が進み品質が劣化してしまうので、酸化防止の目的で「ビタミンC」を添加することは、品質と安全性を保つために大きな役割を果たしています。誰も「ビタミンC」が食品添加物だからといって、不健康なイメージは持っていません。アミノ酸もうま味を呈すグルタミン酸ナトリウムをはじめとして食品添加物に該当します。

 少々話がそれますが、日々食品から摂取している食塩は食品添加物ではありません。しかし、だから安全だという訳ではありません。厚生労働省が生活習慣病を予防する目的で掲げた食塩摂取の目標量は、1日あたり男性8グラム未満、女性7グラム未満です。ゾッとしますが、食塩による致死量は、体重60sの大人だと食塩30gほど、子供の場合は体重10sで5gほどです。目安として、体重1Kgあたり、塩は0.5〜1gが致死量となります。食品添加物でなくとも、適正な量を大きく越えることで、死に至るリスクがあるのです。

 このように適正な量を守ることで、食品添加物は私たちの食生活を豊かにしてくれますが、一方で食品添加物ではなくとも、過度に摂取すると体に害が及びます。

食品添加物を正しく知ることで、安心して食品を味わいましょう。

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食品添加物の安全性の基準

 もちろん食品添加物も多く使い過ぎると健康に害を及ぼすことがあります。新しい食品添加物を使う場合、メーカーは厚生労働大臣に申請します。厚生労働大臣は、食品安全委員会が行うリスク評価を受けて、使用基準を設定し、食品添加物として指定します。 食品安全委員会では、動物又は人での安全性試験の結果に基づいて無毒性量(NOAEL)を求めます。原則として、推定一日摂取量と、各試験の無毒性量のうちで最も低い無毒性量を比較し、一日摂取許容量(ADI)を特定することが必要であるかどうかを検討し、必要な場合は、ADI を設定します。厚生労働大臣は、使用が認められた食品添加物について、国民一人あたりの摂取量を調査して、ADIの範囲内であることを確認しています。

・無毒性量(NOAEL)

 ある物質について、動物又は人に有害な影響が認められない最大量。

・一日摂取許容量(ADI)

 人が毎日一生涯にわたって摂取しても、健康への悪影響がない 1 日あたりの摂取量。通常、体重 1kg あたりの物質量で示される(○mg/kg 体重 / 日)。
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食品添加物の種類

 使用できる食品添加物は食品衛生法で定められています。指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物、天然香料の種類があります。

・指定添加物(449 品目:平成 27 年 9 月現在)

 リスク評価を行った上で指定されるもので、甘味料(アスパルテーム、キシリトールなど)、着色料(βカロテン、赤色 40 号など)、保存料(ソルビン酸など)、酸化防止剤(ビタミン C など)などがあります。

・既存添加物(365 品目:平成 26 年 1 月現在)

 以前から日本で広く使用されており、長い食経験があるもので、にがり、カラメルなどがあります。

・一般飲食物添加物(約 100 品目)

 一般の食品を、食品添加物として使用されるもので、いちご果汁や寒天などがあります。

・天然香料(約 600 品目)  動植物から得られる天然物質で、食品に香りをつける目的で使用されるバニラ、ガーリック、ジンジャー、オニオンなどがあります。水蒸気蒸留法などを用いて香りを回収します。
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まとめ

 食品添加物は、安全性試験の結果にもとづき使用基準が設定され、基準内での安全性が確認されています。一方で食塩のような食品添加物には該当しない成分も、度を越えて摂取すると体に害が及び、最悪の場合は死に至ります。食品添加物を正しく知ることで、安心して食品を楽しみましょう。
posted by Kaoru at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品添加物

【知ってるようで知らない】加工食品メーカーは必ず使っている「アミノ酸」の恩恵

アミノ酸とは

 人体を構成する要素として、60%を占める水に次いで約20%はたんぱく質となり、そのたんぱく質を構成しているのがアミノ酸です。その中で人の体をつくるアミノ酸は20種類となり、人が体内で作ることのできない9種類を必須アミノ酸、体内で糖質や脂質から作り出すことのできる11種類を非必須アミノ酸と呼んでいます。必須アミノ酸はイソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、スレオニン(トレオニン)、ヒスチジン、非必須アミノ酸はチロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニンとなります。必須アミノ酸は、食べ物から摂らなければなりませんが、通常不足することはありません。
アミノ酸の働き

 アミノ酸は臓器や筋肉などのたんぱく質のもととなり、ホルモンや酵素、抗体、血液などを構成する主要な成分です。髪の毛、爪などの成分もアミノ酸がかかわっています。肌の内側にあるコラーゲンの原料になるのもアミノ酸です。それ以外にもアミノ酸には以下のような個別の働きがあります。

・エネルギー代謝に関与するアミノ酸

   バリン・ロイシン・イソロイシン・アルギニン

 バリン、ロイシン、イソロイシンなどは、その一部が筋肉内に蓄えられて、激しい運動をした時のエネルギー源となります。さらにアルギニンは強靭な筋肉をつくるために必要な成長ホルモンの分泌を促します。

・脂肪からのエネルギー代謝を促進するアミノ酸

   リシン・プロリン・アラニン・メチオニン・アルギニン

 ダイエットの基本として体脂肪の蓄積を防ぐことが挙げられます。そのためにも体脂肪をなるべく燃焼することが大切です。アミノ酸の中でも特にダイエットに役立つアルギニン、プロリン、リジン、アラニンは、気になる体脂肪を燃焼させる働きがあります。

・免疫力に関わるアミノ酸

   アルギニン・グルタミン

 人の体を構成するアミノ酸は、免疫細胞の産生を高め、その働きを強化することで、免疫力を高め、病気にかかりにくい体づくりに役立ちます。特にグルタミン、アルギニンは、弱った免疫システムを正常に修復する働きがあります。

・リラックスと集中に影響するアミノ酸

   トリプトファン・チロシン

 トリプトファンとチロシンは脳の伝達物質に関わるアミノ酸です。トリプトファンは脳をリラックスさせるセロトニンというホルモンの原料となり、チロシンは脳の興奮や集中に影響すると考えられているドーパミンというホルモンの原料となります。
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アミノ酸の味

 アミノ酸にはそれぞれ味があり、グリシン、アラニン、スレオニン(トレオニン)、プロリン、セリン、グルタミン、アスパラギンは甘味、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、メチオニン、リジン、トリプトファン、システイン、ヒスチジンは苦味、グルタミン酸とアスパラギン酸はうま味と酸味を呈します。
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加工食品でのアミノ酸の使用例

 グルタミン酸は、昆布のうま味成分です。調味料として使いやすくするために、ナトリウムをつけて乾燥したものがグルタミン酸ナトリウムです。グルタミン酸ナトリウムはうま味調味料として家庭でも使用されています。しいたけのうま味成分となるグアニル酸ナトリウムや鰹節のうま味成分となるイノシン酸ナトリウムは、グルタミン酸ナトリウムとの相乗効果により、うま味が一層増強されます。食品メーカーにおいては多用する組み合わせです。

 グリシンは、自然な甘味とまろやかな旨味をもっており、甘味度は砂糖の約70%です。調味にも使われる甘味を持つアミノ酸です。食品の塩味・酸味を和らげる塩なれ、酢なれ効果があります。また、菌の活動をおさえる静菌作用を持つ数少ない物質です。アミノ酸の中で最もリーズナブルです。

 アラニンはタコ、イカなどの魚介類や肉類等、様々な食品に含まれる甘味成分の一つです。他のうま味物質との相乗効果により、旨味が増強されます。食品の酸化を防止する働きがあります。

 システインは調理過程で糖と反応させると肉の香りを持つ成分が生成します。肉をはじめ食材は加熱調理によって茶色くなり、香ばしい風味を醸しだします。これをメイラード反応(アミノ・カルボニル反応)と呼びます。トーストの焼き色、ご飯のおこげ、コーヒーの色もすべてこの反応です。食材に含まれるアミノ酸と糖が結びついて化学反応を起こし、褐色物質であるメラノイジンや香味成分を生成します。身近な例として、ホットケーキを考えてみてください。アミノ酸を豊富に含む卵や牛乳と、砂糖、小麦粉を混ぜて加熱すると、元々は白い生地が褐色に焼き上がります。これがメイラード反応です。程よく焦げ目の付いた焼き魚、焼肉、こんがりと揚がった揚げ物など料理の多くがこの反応によって、よりおいしく仕上がっています。
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まとめ

 アミノ酸は、体を構成する重要な成分です。人間自身で作り出せるアミノ酸と食べ物から摂取しなければならないアミノ酸があり、健康維持に欠かすことはできません。また、アミノ酸は様々な味を呈し、食品の加工分野では様々な場面で使用されております。
posted by Kaoru at 13:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分

【納得】加工食品の研究開発でも扱う酵素の本質

酵素とは

 酵素は、体の中で起こるさまざまな反応に関与しています。わかりやすい例としては、ご飯を口に入れたとき、唾液に含まれるアミラーゼという酵素が、ご飯のでんぷんを消化し、体内に吸収しやすいように作用しています。老化や病気の原因となる体内に有害な活性酸素を除去するのもスーパオキシドジスムターゼという酵素です。ある空気清浄機のフィルターには、細菌を分解する溶菌酵素がコーティングされています。最近では、コロナウイルスを調べるためのPCRという方法をよく耳にしますが、ここでもポリメラーゼという遺伝子を増幅させる酵素が活躍しています。酵素は、ある特定の対象に対してのみ反応します。どんな生物も生きていくために、酵素が必要なのです。
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酵素の働き

 人類にとって有益な微生物の酵素を利用した食品は、みそやしょう油、ビールなどが挙げられます。どれも微生物の酵素を用いた発酵食品です。パパイヤから取り出したパパインというたんぱく質分解酵素は、食品加工の分野では肉を柔らかくするために使用します。洗顔料にも含まれ、たんぱく質が主成分となる角質を分解します。コンタクトレンズの洗浄液中にも含まれ、レンズに付着したたんぱく質を除去してくれます。つまり、酵素は私たちの身近なところで使用されているのです。
酵素の性質

酵素は主にアミノ酸が50個以上つながったたんぱく質です。卵や肉などのたんぱく質を多く含む食品は、加熱すると状態が変化し、冷やしてももとに戻ることはありません。同様に酵素もたんぱく質のため、加熱により構造が変化して、本来の能力を失ってしまいます。このように酵素は温度の影響をうけます。人間の場合は体温と同じ温度で最も反応が加速します。酵母などの微生物の酵素を利用する発酵食品の場合も40℃前後を維持し、反応を最大化させます。その後加熱し、酵素の状態を変化させることで、完全に反応を止めます。

 もう1つ性質は、酸性やアルカリ性の影響を受けるということです。人間の胃の中は胃酸により強い酸性であるため、胃で働くたんぱく質を分解する酵素はよく働きますが、その他の酵素はあまり能力を発揮できずに分解されてしまいます。
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酵素を含むドリンクをはじめとした健康食品

 酵素を含む健康食品は数多く存在し、インターネットで手軽に購入することができます。酵素を含むサプリメントやドリンクは、それぞれの酵素の持つ働きにより体内での反応を助けることで、健康に良いといううたい文句です。しかし、特に酵素を含むドリンクによる健康増進効果には、根拠がないと消費者庁から認定されたケースも見受けられます。それは酵素ドリンクを飲んで健康が増進したというデータがない、つまりは科学的な根拠が見当たらないからです。

 酵素ダイエットについても、生の果物や野菜などを発酵させた酵素ドリンクを飲むことにより、消化や代謝に大きな影響を持つ酵素を体内にとり入いれ、代謝を上げて痩せやすいカラダを目指すという方法ですが、ドリンクは法律で加熱殺菌工程が義務付けられているため、酵素は能力を失っており、こちらについても同様に効果の根拠が不十分と推察されます。

 酵素ドリンクが、体内の消化酵素として機能しないことを知らずに利用していると考えられますので、まずは酵素の性質を正しく理解することが大切です。
医薬品としての酵素

 主としてでんぷんなどの炭水化物の消化異常症状の改善のため、ジアスターゼという酵素製剤が用いられますが、胃中において食物がまだ十分に胃液と混合し強い酸性にならないうちに作用すると考えられます。
まとめ

 生きていく上で、酵素は欠かせません。人間はアミノ酸から必要な時に必要な量の酵素を作り出すので、不足する事は基本的にありません。酵素を含む食品を摂取した場合は、体内でアミノ酸まで分解され、栄養分として利用されます。
 
posted by Kaoru at 13:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 酵素

【ポイント】まだ間に合う!健康寿命の理解と2025年問題の影響

平均寿命と健康寿命

 平均寿命は、人が死亡する年齢の平均値となります。厚生労働省によって公表された平成28年のデータでは、日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳です。一方、健康寿命とは、WHOが提唱した新しい指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間です。厚生労働省のデータによると健康寿命は、女性74.79歳で、男性は72.14歳です。データ上では、女性の健康寿命と平均寿命の差は12.35年です。これに対して、男性では健康寿命と平均寿命では8.84年の差があります。健康上の問題により日常生活が制限された状態で、9~12年を過ごすことになるのです。
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2025年問題

 団塊の世代が75歳を迎え、医療費、介護費が高騰し、財政支出が膨大に膨らむ2025年問題は、高齢者だけが抱える問題ではなく、日本人全体が抱える大きな問題となります。総務省の統計によると2025年に団塊世代の全員が75歳以上となるため、2010年時点で11.1%だった75歳以上人口の割合は、推計によると18.1%まで上昇する見通しです。これ以降、75歳以上人口は2200万人超で高止まりとなります。15〜64歳の現役世代は減少の一途を辿り、2060年には国民の4人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えることになります。これまで国の社会保障制度の大部分を数の力で支えてきた団塊の世代が、いっきに給付を受ける側に回るので、その影響は甚大です。2010年には75歳以上一人分を現役世代5.8人で支えていたのが、2025年に3.3人、2060年には1.9人で支えることになる見通しです。
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まとめ

 高齢になるほど、疾病などにかかるリスクも高まります。生涯医療費の推移を見ると、ピークに達するのは75〜79歳です。また、生涯医療費のおよそ半分は70歳を過ぎてからかかります。要介護(要支援)になるリスクも75歳を境に跳ね上がります。前期高齢者(65歳〜74歳)の要介護認定率が4%なのに比べて、後期高齢者になると29%に急増します。75歳以上人口が増えることは、介護される側の人数とそれに伴うサービス需要が爆発的に拡大することを意味します。介護保険の総費用は、制度が開始された2000年度の3.6兆円から13年度には9.4兆円へ増加。25年には約20兆円にまで膨れ上がると試算されています。このままでは現役世代の負担増と給付削減は避けられず、社会保険料負担の増加は家計のみならず、企業にも重くのしかかることなります。自分のためにも家族のためにも健康寿命を考え、行動する時期なのです。
posted by Kaoru at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | トピックス

【自己紹介】Kaoruです

自己紹介


 Kaoruです。

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 食品メーカーの研究開発職に十数年在籍しています。
 味、香り、成分にこだわりを持ち、世界中から原料を調達し、身近なところでは和食やカレー、ラーメン、パスタ、ドレッシング、スナック菓子、健康食品などを製品化しています。
 主に食品や食品原材料、機能性を持ち合わせた成分を紹介することで、健康に寄与することを目的としています。
 健康と更には長寿に貢献することで、人類がいまだ到達していない123歳の世界の扉を開きます。
posted by Kaoru at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 自己紹介
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