2020年06月06日
【公開】水分を含んだ食品の乾燥技術
食品の乾燥とは
スーパーやコンビニで三食入りのソースやきそばを買って調理するとき、粉末ソースの袋を開けて、麺や具材にふりかけ、よく混ぜてから食べます。この粉末ソースの原材料には、ソースパウダーやしょう油パウダーが含まれています。普段美味しく食べている分には、気になりませんが、実はここに食品の乾燥技術が活かされているのです。主な製法としては、5階建てのビルにも相当する非常に大きな乾燥装置を用います。一般的に液体のソースやしょう油にでんぷんを分解したデキストリンなどの粉末化を助ける食品(賦形剤)を加え、加水溶解します。この液体をポンプで送り、5階建ての装置の一番上から装置内へ霧状に吹き出します。装置内部は160〜180℃に加熱されており、水分は蒸発し、粉末のみが下まで降りてきます。その後ふるいを通し、袋に充填します。もちろんサンプルを抜き取り、風味の確認や検査を行います。
食品の加工分野では、品質劣化防止や運搬性の向上を目的とし、乾燥技術を使用しています。より良い乾燥方法を求め、日々研究開発が繰り返されております。
食品の乾燥の方法
液体や水分を多く含むだし、ソースやしょうゆなどの調味料、野菜、フルーツ、から水分を取り除くには、様々は方法が用いられます。この方法について、ご紹介します。
スプレードライ
先程のソースパウダーやしょう油パウダーの製法です。スプレードライは、液状化した原料を霧状にし、加熱空気で瞬間的に粉末化する乾燥技術です。乾燥工程が短く、大量生産が可能で、低コスト製品の安定供給が可能です。粉末のラーメンスープの原材料や脱脂粉乳の乾燥は主にこの製法です。
ドラムドライ
ドラムドライは、回転する加熱したドラム上に液状化した原料を薄く塗りつけて、乾燥させる技術です。固形分を含み、高粘性原料の乾燥に効果的です。乾燥品はフレーク状になりますが、粉砕して粉末状にします。ドラムの温度や乾燥時間を調整することで、ローストした香ばしい風味をつけることもできます。ふりかけの具材の乾燥に用いられています。
連続式真空乾燥
原料を真空にした装置の中に連続供給し、加熱乾燥後、粉砕します。真空下では常圧より低い温度で乾燥することができるため、熱による変性を極力防止し、果汁や糖度の高いものの乾燥に適しています。さらに多孔質状の粉末が得られるため、水またはお湯に簡単に溶けます。果汁や果肉の粉末は、お菓子類などに使用されています。
フリーズドライ
スーパーとなどでもよく見かけるブロック状の乾燥スープは、主にフリーズドライ製法によるものです。フリーズドライのいちごをチョコレートでコーティングしたお土産は、主に北海道で販売されています。フリーズドライは、凍結させた原料を真空状態のもと、低温で乾燥させる技術です。素材の色、味、香り、栄養をそこなうことなく乾燥することが可能です。水またはお湯を加えるだけでもとの食品に復元できるという特長を持っています。保存性や簡便性に加えて、素材の持ち味を最大限残すことができる方法ですが、他の乾燥方法と比べて高コストとなります。
エアードライ
カップ焼きそばの具材のキャベツやカップラーメンのわかめは、主にエアードライで乾燥しています。エアードライは、単純に熱風を供給し、水分をとばすというシンプルで、低コストな方法です。
食品を乾燥するメリットとデメリット
メリット
- 食品の品質劣化を防ぐ。
- 保存性を高めて安定的に供給する。
- 運搬性を高める。
- 加工性を高める。
- 成分を濃縮する。
- 味や食感に変化を付ける。
デメリット
- 液体ソースやしょう油の好ましい香りが少なからず揮発により減少する。
- 熱によって壊れやすいたんぱく質やビタミンなどの栄養的損失を伴う。
まとめ
食品を乾燥することは、以前より行われてきました。目的は、品質の劣化を防ぎ、保存性を良くする、運搬性を高める、加工性を高める、成分を濃縮する、味や食感に変化を付けるなどです。また、乾燥させた果実や野菜をチョコレートでコーティングし、お土産として販売するなど、これまでの技術では成しえなかった、考えられなかった製品を実現しています。加工食品の分野では、あらゆる食品やその原材料に対し、様々な乾燥方法が用いられ、あるいは技術を組み合わせることで、試行錯誤を繰り返しながら、新製品の開発に取り組んでいます。
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