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2020年06月21日
【貫禄】加工食品で使用する世界3大珍味
加工食品メーカーに在籍すると仕事で美味しいものを食べ歩く機会に恵まれます。世界3大珍味であるキャビア、フォアグラ、トリュフを使った製品の開発となると、市場調査の名のもと名だたる名店に足を運びます。キャビアやフォアグラ、トリュフを食べ、どのようなレシピを開発するかを検討します。ヒレステーキにフォワグラとトリュフのソテーを添えたロッシーニ風ステーキが有名で、結婚式でも良く見受けられます。試食を繰り返す中で見えてきたことは、加工食品に相性の良い素材は、トリュフであることです。原材料の調達から、応用できるメニューに幅があるからです。キャビアは塩漬けされた缶詰のものをそのままオードブルで使用しますし、フォアグラも冷凍品などを使い料理として提供することが多いからです。
キャビアは、チョウザメの卵です。チョウザメは、サケと同様に川をさかのぼり、淡水に産卵します。長寿でも知られ、寿命は100年以上とも言われます。チョウザメは主に、ロシアとイランにまたがるカスピ海に生息しています。キャビアは、チョウザメの種類とその卵の粒の大きさによって価値が変動します。
フォアグラは、ガチョウやカモの肝臓です。ガチョウやカモに必要以上にエサをたくさん与え、肝臓に脂肪が蓄積した状態、すなわち脂肪肝を人工的に作り出します。濃厚で口どけの良い風味は主に脂肪によるものです。
トリュフは、きのこの仲間で最大の特徴が香りです。白トリュフの香りは刺激が強く、パスタやサラダなどの上に削って振りかけて提供されます。黒トリュフの香りは刺激が少なく、マッシュルームにも似た雰囲気で、香りはすぐに広がります。天然のトリュフを探すときは、鋭敏な嗅覚を持っているブタやイヌを用います。本場はフランスのプロヴァンス地方となりますが、アジアでも発見されており、今では中国の雲南省が世界一の黒トリュフの生産国となり、主にヨーロッパへ輸出されています。加工食品で使用する場合も、中国雲南省産を使用します。
加工食品メーカーでは、主にトリュフを使用し、芳醇な香りを活かしたメニュー開発を行います。代表的な事例としは、トリュフオイルやトリュフ塩、トリュフバター、トリュフ風味のパスタソース、トリュフチーズなどです。
トリュフオイルは、植物性の油脂にスライスしたトリュフを漬け込み、高級感のある香りを閉じ込めたオイルです。家庭でも容易に作ることができます。
また、トリュフ風味の加工食品には、コストや経時変化をカバーするため、特長となる香気成分を合成したトリュフの香料を併用することもあります。加工食品メーカーとしては、リーズナブルな価格で、トリュフの香りを楽しんでもらいたいからです。
世界3大珍味であるキャビア、フォアグラ、トリュフを食べる機会は、普段それほど多くはないかもしれません。キャビアのオードブルやヒレステーキにフォワグラとトリュフのソテーを添えたロッシーニ風ステーキは、特別なイベントにお目にかかる絶品料理です。
加工食品メーカーとしては、原材料の安定供給が可能なトリュフを使用し、トリュフオイルやトリュフ風味のパスタソースを提供することで、食文化の発展に寄与していきたいと考えています。機会があれば、ぜひトリュフ風味の製品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
【神秘】味覚のメカニズム
加工食品の開発で味を組み立てるとき、甘味、苦味、塩味、酸味、うま味の 5 つの味は基本の味となります。刺激の受容と伝達という観点から、基本となる味は、主に舌の上にある味覚受容器となる「みらい」という味細胞で受容され、神経細胞を介して脳の味覚野に伝達され、「うまい」や「酸っぱい」といった味を判断します。辛味や渋味は、口腔内に生じる痛覚,温覚,触覚などの体性感覚の要素を多く含んでいます。組み合せ次第で、無限に味を創造することができるところが、加工食品の開発の最大の魅力です。
基本となる5つの味と呈味を示す成分は、以下の通りです。
・甘味・・・エネルギー源のシグナルで、砂糖やブドウ糖などの成分で甘味を感じます。
・塩味・・・食塩を感じます。
・酸味・・・食酢やクエン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)で酸味を感じます。腐敗で生じる成分も酸味を呈します。
・苦味・・・お茶に含まれるカテキンやコーヒーに含まれるカフェイン、マグネシウム塩で苦味を感じます。体に有害な成分の多くは苦味を呈します。
・うま味・・・体を構成するアミノ酸などのシグナルで、昆布のうま味成分となるグルタミン酸ナトリウムやかつお節のうま味成分イノシン酸ナトリウム、しいたけのうま味成分グアニル酸ナトリウムでうま味を感じます。
基本の5つの味以外に、辛味や渋味は痛覚、温覚、触覚などの体性感覚が刺激されることで脳に信号が伝達されます。
・辛味・・・唐辛子に含まれるカプサイシン、わさびに含まれるアリルイソチオシアネートにより辛味を感じます。
・渋味・・・ワインやお茶に含まれるタンニンで渋味を感じます。
味覚の情報は、電気信号として神経細胞から脳の味覚野に伝わります。同時に味以外の香りや食感の情報も脳の感覚野に伝達され、すべての情報が脳内で最終的に総合されます。
おいしいと感じた食品を食べることで、脳内に満足感が得られます。一方美味しくないあるいは嫌いという感覚が生じるのは、不快感の記憶が脳内にあり、拒絶するからです。
基本の5つの味は、甘味、苦味、塩味、酸味、うま味です。特に甘味、うま味、塩味は、人が生きていく上で必要な成分が含まれていることを知らせるため、脳が積極的に摂取しなさいとシグナルを送っています。つまり、ブドウ糖や砂糖などの甘味は生きていくために必要なエネルギーを得なさいというシグナルであり、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどのうま味は、体を構成するアミノ酸や核酸が含まれていることを示すシグナルです。食塩も体に不可欠な要素です。
苦味は体に良くない成分のシグナルでもあり、害のある成分を防ぐため、不快感を示す味となる一方、お茶やコーヒー、ビールなど苦味のある食品も、経験よって安全と判断されることで、好ましいと脳で判断され、摂取されるようになります。
加工食品を開発する上で、この基本の5つの味に加え、辛味と渋味を組み合わせることで無限に味を創造することができます。脳を満足させてやまない加工食品を味わってみてはいかがでしょうか。
【食のダイバーシティ】ヴィーガン
加工食品の開発は多岐にわたり、宗教上の戒律に対応したもの、ベジタリアン向け、そしてヴィーガン向けなどです。ヴィーガン向けの加工食品の開発にあたり、どのような制限があるのか、まずはヴィーガンについて、調査しないといけません。ヴィーガンという言葉は、1944年イギリスでヴィーガン協会が設立された際に命名されたとされています。ベジタリアンは、様々なタイプの菜食主義者を指しますが、ヴィーガンは卵や乳製品、そして蜂蜜を含め、あらゆる動物性食品をいっさい口にしません。ヴィーガニズムの定義は、可能な限り動物由来の食品、革製の衣服、あらゆる動物への残虐行為、動物の搾取を取り入れないようにする生き方です。そのため、パームヤシから採れるパームオイルは、その栽培過程で原生林を大規模に伐採していることから、野生動物の生息地を奪っていることにつながり、生態系を破壊することを意味するため、原材料として使用できません。
インターネット上において、ヴィーガン向けの加工食品は、たくさんあります。代表的なところでは、カレーやパスタソース、ラーメンなどでしょう。
ヴィーガニズムの定義にもとづき、肉や魚、卵、乳製品、蜂蜜、パームオイルを一切使用せず、植物性の原材料だけでラーメンなどのレシピを作ります。
当然ですが、豚骨や魚介系のスープは使えません。そのため、野菜や昆布、しいたけを煮出してスープをつくり、しょう油やみそ、香辛料、さらにこれらの一部をローストし植物性油脂に香りを移した香味油などを合わせます。チャーシューの代わりに使う具材も大豆を加工したものを使用することや野菜、メンマを多めにすることで、バラエティが広がります。このようにして組み上げたレシピは、どことなく体にやさしい、素材の風味が活きたラーメンに仕上がります。
カレーやパスタソースも同様に動物性油脂を植物性油脂に置き換え、動物由来のうま味やコクは、野菜や酵母から補います。
植物由来の原材料だけでも、野菜からのうま味や植物性油脂のコクを上手く取り入れることで、十分に美味しい加工食品ができるのです。さらにお好みの香辛料などを加えることで、一味違ったメニューの完成です。
ヴィーガンの方々は、卵や乳製品などあらゆる動物性食品をいっさい口にせず、革製の衣服を含め、あらゆる動物への残虐行為、動物の搾取を取り入れないようにする生き方です。
加工食品においてもヴィーガンの方々に向けた製品の開発は、とてもやりがいを感じます。使用できる原材料は限られますが、その限られた範囲の中で、素材が本来持つ味を引き出しながら、美味しいものを製品化できるからです。
ヴィーガンではない方々も、たまにはヴィーガン向け加工食品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【伝統】貴族の料理ジビエ
仕事で北海道に出張すると食生活についてのさまざまな状況をうかがい知ることができます。野生のエゾ鹿が増えすぎて狩猟が盛んになり、消費しきれないため、何とかならないかと。そこで後日鹿肉のサンプルを数キロ送って頂き、さまざまな加工食品への使用を試みます。まずは焼いて試食すると肉質が固く、獣臭がきつくて、そのままでは食べられません。それではと既存のカレーのレシピを転用し、鹿肉カレーとしました。まだまだにおいが好ましくないので、クミンなどの香辛料を多めに加え、レトルト殺菌釜に入れて、加熱調理を行います。試行錯誤を繰り返すことで、何とかレトルトカレーとして製品化することができました。しかし、原材料となる鹿肉は狩猟となり安定供給に向かないため、お土産用のレトルトカレーとして一時的な販売に留まります。
このように狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を使用する料理をジビエと言います。ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから親しまれてきました。特にフレンチレストランでは、ジビエ料理を提供しているお店も多々あり、参考のため鹿肉やキジバトのローストなるメニューを食べ、肉質やにおいを参考としました。
なお、フランスでは、ジビエを使った料理は領地で狩猟ができるような上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なもののようです。そのためフランスでは古くから高級食材として重宝されてきました。
野生の動物を狩猟しており、寄生虫や食中毒のリスクがあるため、生では食べず、必ず加熱調理して食べることになります。
普段はあまり馴染みがないジビエ料理ですが、フレンチレストランでもメニューとして提供されていることもあり、少しずつ認知度が高まってきています。加工食品メーカーでは、地元だけでは消費しきれない鹿肉などの原材料を有効に活用するためにさまざまな試行錯誤を繰り返し、レトルトの鹿肉カレーなどを開発しております。旅行や出張で、北海道などへ出向かれた際は、土産物店で鹿肉カレーなどのジビエ料理を手に取ってみてはいかがでしょうか。
【畑の共生者】抜群のたんぱく質含量を誇る大豆
畑から大豆を抜いて根っこを見てみると、根っこにこぶのようなものがたくさんくっついています。これは根粒と呼ばれる部分で、この中に根粒菌という微生物が住んでいます。根粒菌は大気中の窒素を取り込み、大豆の生育に欠かせないたんぱく質の原料となる窒素を大豆に供給する働きをしています。科学的に空気中の窒素を取り込むためには、1000気圧、500℃が必要で、莫大なエネルギーを消費しますが、根粒菌は酵素反応により、簡単にやってのけることができます。大豆に限らずマメ科植物は、根粒菌と助け合っているのです。
特に日本人は昔から大豆を食べており、大豆をうまく食生活に取り入れることで、現在の長寿の一因になっていると考えられます。乾燥した大豆のおおよそ30%はたんぱく質です。たんぱく質は、健康維持に不可欠な栄養素です。この大豆たんぱく質は、根粒菌の働きもあり、必須アミノ酸がバランスよく含まれています。肉や卵は良質のたんぱく質を豊富に含む代表例ですが、大豆たんぱく質はこれらに負けない良質のたんぱく質です。大豆たんぱく質には、血中コレステロールの低下作用、肥満の改善効果などの生理機能も期待されています。
大豆たんぱく質は、植物性たんぱく質の中で最も動物性たんぱく質に近い良質のたんぱく質で、消化吸収に優れます。
大豆は、食物繊維やカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ビタミンE、ビタミンB1をはじめとしたB群、葉酸など様々な栄養素が含んでいます。
加工食品では、抗酸化の目的で大豆由来のビタミンEを使用します。ビタミンEにはα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、σ-トコフェロールの4種類があり、最も抗酸化力の高いγ-トコフェロールが豊富です。老化の原因のひとつには活性酸素による酸化作用が関係していると報告されており、抗酸化作用のあるビタミンEを摂ることで、老化の防止が期待されます。
また、総コレステロールを低下させる大豆レシチン、腸内細菌を増殖させるオリゴ糖、
血中脂質の低下が期待できる大豆サポニン、骨粗しょう症の予防や更年期の不調を改善するといわれるイソフラボンといった多くの機能性物質が含まれています。
大豆はさまざまな食品に加工され、食生活で広く浸透しています。豆乳、豆腐、みそ、しょう油、納豆、きなこ、大豆油、おから、油揚げ、枝豆(大豆を青いうちに収穫したもの)、豆もやし(大豆を発芽させたもの)など多岐にわたっています。
大豆が持つ栄養素のなかでもっとも注目すべき点は、根粒菌との共生により成しえた良質なたんぱく質です。たんぱく質は、体を構成するうえで欠かせない成分で、魚や肉に匹敵する豊富なたんぱく質を大豆は、含んでいます。
たんぱく質の栄養価を評価するアミノ酸スコアは、100に近いほど優れています。大豆のアミノ酸スコアは最高値の100となり、消化吸収も良く、体内での合成できない必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。
また、大豆はたんぱく質以外に総コレステロール値を低下させる大豆レシチンや抗酸化作用を持つビタミンE、腸内細菌を増やすオリゴ糖、更年期の不調改善が期待される大豆イソフラボンなど健康に寄与する成分が豊富に含まれています。
ただし、大豆が身体に良いからといっても、意識すべき点は食事の栄養バランスです。全体のバランスを考えながら、日々の食生活に大豆を取り入れましょう。
【在籍してわかった】加工食品メーカーの光と闇
加工食品メーカーとして一般的にイメージされるのは、スーパーやコンビニに並ぶ加工食品を作っているメーカーです。加工食品メーカーでは、加工食品の研究開発から製造、販売までを担っておりますが、原材料を調達するためには、商社や原材料メーカーとのサプライチェーンの構築が欠かせません。例えばレトルト雑穀かゆを販売する場合、主な原材料はお米と雑穀です。お米と雑穀を提供するのが原材料メーカーや商社となり、雑穀かゆを製造するのが加工食品メーカーとなります。
加工食品メーカーは製造した食品をスーパーやコンビニに販売し、消費者への売却を担ってもらいます。消費者との直接的な関わりはそれほどなく、スーパーやコンビニを通して、要望が届きます。現在ではイーコマースの発達により、消費者へ直接販売流れも活発化しています。
加工食品メーカーには、さまざまな部署があります。会社にもよりますが、まずは工場にて製造業務を数カ月から数年経験します。ここで原材料メーカーや商社から届く原材料を理解し、レシピを見ながら原材料の特徴を把握し、調理釜など設備への知見を深めます。さらに品質検査部門での検査や物流部門での製品の出荷までを経験することで、加工食品の製造の一連の流れを学びます。部門毎の職務は以下の通りです。
研究開発は、新製品を生み出すための基礎及び応用研究をおこなう部門です。新製品の開発の場合、スーパーやコンビニからの依頼やマーケティング部門から提案された内容、あるいは自ら考案した加工食品のレシピ開発を進めます。この過程で、製品の味や香りはもとより、物性や保存性の検証、簡便さの追求、原材料メーカーや商社との原料の打ち合わせ、原価計算を担うことになります。もちろんパスタソースの開発であれば、納得のいく製品ができるまで、何度もトライし、試食も繰り返します。試食はすなわち官能検査です。自ら口に入れ、香り立ちやうま味の出方、後味ののび、のど越しをチェックします。必要とあらば、原材料の産地に出向き、生産状況の把握や関連する工場の監査も実施します。
研究の場合は、長期的なスパンで自社の有する原材料の機能性成分の調査や有用な微生物のスクリーニング、研究機関との連携、論文発表、特許申請などを職務とします。
新製品を生み出すあるいはリニューアルを行う要の部署であり、加工食品メーカーにおいては極めて重要な役割を果たします。
品質管理は、製品化した加工食品を大量に製造する工場に併設され、製品の水分や塩分、物性などの一般的な分析や菌検査を行います。製品によってはラインから一部抜き取り検査を実施することや目視による確認も行います。多いときは1日で数十品を検査することになり、納期も限られているため、時間に追われることもあります。不良品を流通させないためにも、十分な管理体制が望まれ、問題があれば製造部門に毅然とした態度で指摘できるよう工場の製造ラインからは独立した組織となっています。規模に応じて、工場全体の衛生管理を兼務することもあります。
マーケティング部門は、消費者の動向調査とその分析結果にもとづき、新製品開発案や既存品リニューアル案などを企画します。マーケティングの主な仕事は消費者の行動の調査分析となり、これらの結果をもとに企画書の作成、社内会議や取引先でのプレゼンテーションを行います。また、製品の企画の取りまとめも兼ね、研究開発部門や品質管理部門、製造部門と連携を取って、販売までをコーディネイトします。流行を素早くキャッチすること、そして取引先に対して説得力のある高いコミュニケーション能力が要求されます。
営業は製品の販売を行う部門です。製品のカタログを準備し、主にスーパーやコンビニに自社製品を提案します。さらに分類するとルート営業は、すでに取引がある顧客に対して行う営業になります。顧客の抱える課題を深堀りすることで、自社製品と絡めた課題解決方法を提案します。ここで現状の取引とは別の案件が発生する可能性もあり、顧客との信頼関係が深まることで、別顧客を紹介してもらうことも可能です。もうひとつは新規開拓営業です。新規開拓営業は、まだ取引も面識もない企業に対して、何かしらの方法でアプローチし、新規顧客を獲得することです。既存顧客に対する営業と異なり、面識がない相手に対してアプローチするので、難易度は高くなります。
工場内は主に機械設備が適切な位置に配置されています。製造部門は、調理釜などへ原材料の投入から混合、加熱調理、充填、梱包、出荷に至る工程のほとんどが自動化されており、これらの操作を担います。また、ラインの洗浄工程も自動化が進んでいます。一部手作業が要求される工場では、20s入の段ボールやクラフト袋を持ち上げ、釜に投入する工程が残っていることもあります。現場は蒸気を熱源とした加熱工程があるため、汗が止まらないこともあります。
経営企画は、市場や競合他社、自社についてのデータを収集分析し、会社全体の経営目標や中長期計画の立案、計画の進捗のフォロー、新規事業の立案、M&A戦略の立案などを担う部門です。また、経営会議を運営して経営者の意志決定をサポートします。
この他にも加工食品メーカーには、他の業界と同様に総務、経理、人事、庶務といったいわゆるバックオフィスとなる部門があります。
人口の減少及び超高齢化社会に伴い、一人当たりの飲食量も減少しますが、健康の要素を持つ付加価値の高い製品や高品質な製品などが実績を伸ばすことによって、単価が上昇するため、市場はなんとか拡大推移を維持すると予想されています。もともと食品は生活する上では欠かせないものであり、業績が大きく変動することはありません。
日常の食生活で健康の維持を図り、健康寿命延伸やアンチエイジングにつなげたいという意識が広まっており、加工食品メーカーでは健康要素を訴求する製品を拡充する動きが出てきています。健康を訴求した製品はスーパーやコンビニでも取扱い意欲が高まっており、実績伸長が期待されるとともに、加工食品市場に占める割合も高まる可能性があります。
高齢者や一人世帯の増加により、小容量タイプや食べ切りタイプといった、個食対応の製品需要が今後さらに増加します。より調理が簡便な製品を求める傾向も強まります。
また、食品の市場の拡大は、国内にとどまらず、海外に目を向ける加工食品メーカーは増えています。海外では日本食がブームであり、国外での成長を求めるか加工食品メーカーは少なくありません。特に経済発展が著しく、かつ日本の食品への信頼が高いアジア地域に注力して展開する加工食品メーカーは増えています。
食品は生活に欠かせない重要なものであり、なくなることがない業界です。しかしながら、人口減少と超高齢化社会の到来によって、将来的には少しずつ国内の市場規模が縮小する見通しです。国内で求められるのは、多様化するライフスタイルに合わせた加工食品です。健康の要素や個食対応といった付加価値のある加工食品が、今後さらに登場することで、しばらくは市場の拡大基調を維持する傾向です。国内市場の縮小により、海外市場に目を向けており、現在でも海外展開に積極的です。
また、加工食品メーカーの仕事内容に少しでも興味を持ってもらえると幸いです。加工食品メーカーで市場調査をしてみたい方、加工食品を開発してみたい方、食品の基礎研究をしてみたい方がいれば、どこかでお会いできることを楽しみにしています。
なお、食品業界への就職や転職をお考えであれば、以下のサイトに訪問されてみてはいかがでしょうか。全国各地の食品メーカーをはじめとした「ものづくり業界」の工場で従事するさまざまな職種の求人情報が掲載されています。
【やっぱり】加工食品に対する誤解
食品表示法によると食品は、「加工食品」、「生鮮食品」、「添加物」の3つに区分されます。
加工食品・・・製造又は加工された飲食物として別に定めるものをいう。
生鮮食品・・・加工食品及び添加物以外の飲食物として別に定めるものをいう。
例)米穀・・・収穫後選別、水洗い等を行ったもの並びに単に混合したもの
例)肉類・・・単に切断、薄切りしたもの並びに単に冷蔵及び冷凍したもの
添加物・・・食品衛生法第4条第2項に規定するものをいう。
加工食品とは、食品になんらかの加工を施したものであり、菓子や冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品など多岐にわたります。食品の多くは長期間保存することができないため、品質の保持を目的として、さまざまな方法を用いて食品を加工しています。味や香りなどの嗜好性を高めるだけではなく、簡便性を図ることも目的のひとつです。
加工食品の種類は、米粉、タピオカでんぷん、コーヒー製品、香辛料、麺類、パン粉、豆腐、納豆、砂糖、みそ、しょうゆ、ソース、水産加工品、肉加工品、乳加工品、野菜加工品、果実加工品、油脂食品、嗜好食品、調味料、菓子類、冷凍食品、レトルト、缶詰、びん詰め食品、インスタント食品など多岐にわたります。最近は、時間的かつ経済的な理由で冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品の利用が増えています。
これらの加工食品は、食品の製造工程中での味や香りの低減をカバーするため、調味料や食品添加物などで補うこともあります。調理済みの加工食品は手軽で、安価といった利点もありますが、頻度が高くなるとエネルギーや脂質、食塩の過剰摂取につながるといった問題点もあります。
食生活のなかで適切に使用することが重要です。
ある消費者動向調査によると加工食品に対するイメージは、ネガティブな回答が多く8割の方々が、なんらかの不安を持っているという結果です。不安の要因は、食品添加物、遺伝子組み換え、原産地・原産国表示となります。
食品添加物の目的は、味や香りの付与、ビタミンやミネラルといった栄養補給、品質保持、食品の製造です。安全性と有効性を科学的に評価し、厚生労働大臣が認めたものだけが食品添加物として使用できます。パッケージに添加物不使用、無添加と書かれているだけで、体にいい食品と誤解してしまうかもしれません。食品添加物が入った食品より無添加食品の方が安全という科学的な根拠はありません。食品添加物は体に良くない危険なものと決め付けてしまっているのかもしれません。逆に無添加をうたう食品ほど安全性についての科学的な評価がなされていないことも考えられます。
遺伝子組み換えとは、ある作物にほかの作物の遺伝子を組み込み、気候や害虫、薬品への耐性や品質の向上といった性質持たせることです。これは昔から行われてきた品種改良も含まれます。ただし、品種改良の場合、人間が遺伝子に直接手を加えることはありません。
また、国内で製造されるすべての加工食品に原料の原産地の表示を義務付ける新たな表示制度が2017年9月より始まっています。製品中に最も多く使われた原料の原産地を表示することになります。
食品添加物情報や原産地情報を提供することが、加工食品に対する不安解消の一助となるかもしれません。
加工食品メーカーの加工方法を家庭での料理方法で表現すると、以下のようになります。大がかりな装置を使って大量に加工しているだけで、家庭のキッチンで行うこととあまり変わりません。
・加熱
・乾燥
・浸漬
・粉砕
・加圧
・燻製
・混合
加工食品メーカーは、食品を美味しくする、食べやすくする、微生物の活動を抑制し保存性を高める、運搬性を高めるといった意味でこのような加工を行っています。
食生活に占める加工食品の割合は増加傾向にあり、製品ラインアップも多種多様化しています。加工食品とは、食品になんらかの加工を施したものです。品質の保持、味や香りといった嗜好性の向上、簡便性の向上が主な目的です。製品は冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、みそ、しょう油、ソース、豆腐、納豆など多岐にわたります。加工食品の外装には、原材料名や内容量、期限表示、保存方法が明記されています。これらの情報を活用し、適切な加工食品を選んで、バランスの良い食事による健康維持を図りましょう。
【解説】グルテンフリー製品の開発
最近では、グルテンフリーの食品をスーパーやコンビニでもよく見かけます。グルテンフリーをうたい文句に米粉を代替原材料とした街のベーカリーも散見されます。小麦粉を使用しない食品として、小麦アレルギーの方々を対象に健康に高い関心をお持ちの方々からも支持を集めているようです。
加工食品においても、グルテンフリーのラーメンやパスタ、スープ、スイーツの開発が加速しています。小麦粉を米粉に置き換えることをはじめ、使用する原材料に細心の注意を払い、味の基本となるしょう油やみそにも小麦が含まれるため、しょう油の場合は丸大豆のみの原材料を厳選し、うま味が不足する場合は、魚醤を併用したります。麺も米粉やこんにゃくを使用します。
グルテンとは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質で構成されています。小麦粉に水を加えて練ることで、弾力と伸張性の高い性質が形成され、パンなどのいわゆる生地ができあがります。この性質が、パンやラーメン、うどん、パスタなどの小麦粉を使用した食品を生み出し、世界中の食文化を支えています。とろみ付けやつなぎなどの目的で、カレールー、てんぷらやコロッケの衣、ハンバーグ、さらには中華まんや餃子の皮にも小麦粉が使用されています。
しかしながら、小麦粉に含まれるグルテンでアレルギー反応が出る方々がいらっしゃいます。可能性がある症状としては、グルテンが消化されにくいことで不調となるグルテン過敏症が知られています。このような場合、小麦粉を使用した製品を食べないグルテンフリーを実践することで、改善が期待されます。加工食品の場合は、原材料やアレルゲン表示を確認することが重要です。
グルテンフリーの食品は主にアレルギー反応が出る方々向けの製品です。グルテンフリーがダイエット法の一種と認識されていることがあるかもしれませんが、ダイエット効果の科学的根拠は今のところ見受けられません。
グルテンを摂取することで、不調やアレルギー反応を起こす方々に対し、腹痛や便秘、下痢などの消化器症状、消化吸収の低下による栄養失調、思考力減などさまざまな症状の改善効果が期待されます。
また、体質によってはグルテンの摂取を控えることで体に良い影響をもたらす可能性があるかもしれません。
バランスのとれた食生活が健康の一番のポイントです。アレルギー反応でお困りの方々以外がグルテンフリーにこだわりすぎて、様々な食品を食べることの機会損失となり、必要な栄養の不足につながり、逆に体調を崩すこともありえるかもしれません。
アメリカではグルテンフリーの原材料として、イネ科のたかきびの一種ホワイトソルガムが注目されています。 たかきびはブレンドされた雑穀の原材料としても、認知度が高まりつつあります。食物繊維やビタミン類、マグネシウム、鉄分を多く含み、味にクセが無く、さまざまな料理に相性抜群です。
現在の食生活の多くの場面で小麦粉が使用されており、そこからグルテンを摂取しています。これらの食品すべてを一切摂らずに健康を維持するのは極めて困難です。しょう油やみそをはじめとした調味料など、少量でも頻繁に食品に使用されています。このためグルテンフリーで自炊することも大変です。そこで加工食品メーカーは、徹底的にグルテンフリーとなる原材料を調査し、グルテンアレルギーをお持ちの方々のためにグルテンフリーのラーメンやパスタといった加工食品を開発、提案します。
一方、ダイエットのためにグルテンフリーの食品を取り入れるのであれば、残念ながら科学的根拠は今のところ見受けられません。
【食料問題の切り札!?】浸透しつつある昆虫食
加工食品の原材料を求めて、中国に出張すると現地の方々から夜は必ず近所の名店に招待され、会食となります。名店のドアを開け、中に入ると大抵さまざまな食材が陳列され、目を楽しませてくれます。そこには普段見慣れない中国の野菜やワニの肉も無造作に置かれ、さらに見渡すとサソリや芋虫といった昆虫が並んでいます。これらの食材を選び、お店に料理方法を伝え、しばらくすると円卓に見事な料理が届きます。ここで一口サイズのサソリの素揚げのようなものを食べました。ピリッとして、一瞬毒なのかと頭をよぎりましたが、何事もなく、食感は揚げたてのエビの尻尾をかみ砕いている感じです。エビなどの甲殻類の殻やカブトムシのような節足動物の外骨格は、キチンやキトサンという同じ成分で構成されているからかもしれません。正直なところ美味しいとは言えず、現地の方々から感想を聞かれても、笑顔でごまかしていました。さらに勧められたらどうしようという心境です。
また、昆虫と間違えられやすい陸に棲む巻貝のエスカルゴであれば、何かの機会にフレンチレストランなどで、ニンニクやパセリの香りとともに美味しく頂いた記憶があります。
さて、今後食料問題が深刻化した場合の食材として注目されているのが、昆虫食です。昆虫食といえば、日本でも長野県などの内陸部では、イナゴの佃煮などを食べる文化が根付いています。まだまだ昆虫を食べたいという会話をする機会はなく、実際に目の前にすると口に運ぶのをためらいます。
しかしながら、将来的には世界的な人口の増加により、いやおうなしに食べざるを得ない状況がやってくるかもしれません。そのような状況はできれば避けたいですが、予備知識として、昆虫食について考えてみてもよいかもしれません。
既にインターネットで、昆虫食が手軽に購入できます。グロテスクな画像とともにさまざまな製品が紹介されています。購入ボタンをクリックすることにためらいを感じてしまうことも少なくありません。ですが、今後主要なたんぱく源としての可能性を秘めている食材です。昆虫食のメリットとデメリットについて考察します。
1 優れた栄養価
昆虫類はたんぱく質の割合が高く、脂質は青魚のようにリノール酸などの不飽和脂肪酸を多く含み、ビタミンやミネラルも高含有で、バランスの良い食品とされています。
2 高い生産効率
昆虫は成長が早く、必要な餌は家畜と比較しておおよそ25%で済む生産効率の高い経済的な食材です。
3 馴染みがないことによる好奇心と食材としての可能性
コオロギの串焼きやタガメのお吸い物、セミの煮物などアイデア次第、加工方法次第で、様々な組み合わせや味を創造することができるかもしれません。
1 視覚による衝撃
まずは昆虫の形そのままの状態で袋詰めされています。花壇や草むらから出てくる雰囲気を保ちながら何匹もまとめて入っています。食べ物としての概念がないので、恐怖を覚えます。
2 毒の影響
サソリなど毒をもつ昆虫も市販されており、当然毒が気になります。加熱することで毒の効果がなくなっているかもしれませんが、口に入れる際は考えてしまいます。
3 不明確な組成
食品として提供されているので、問題ないと思いますが、昆虫の食品としての一般的規格や生菌数、昆虫の餌となる植物からの残留農薬の管理が気になります。また、アレルゲンとなる可能性もあります。
4 調理方法
まだクックパッドにもタガメやサソリの調理方法は載っていないはずです。スーパーでも昆虫のコーナーは見かけません。また、すでに加熱されているのか、あるいはそのまま食べるのか謎は深まるばかりです。
世界中を見渡すとさまざまな国で昆虫が食されています。タガメ、カメムシ、セミ、ゲンゴロウ、カミキリムシ、コガネムシ、クワガタムシ、ゾウムシ、ガ、アリ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ハエ、カ、トンボ、シロアリ、ゴキブリ、タランチュラ、サソリ、ムカデ、クモ、カタツムリはそれぞれ特定の地域に限り、すでに食材として広く認知されています。
残念ながら昆虫を加工食品の原材料として扱う機会に恵まれず、昆虫に合う味付けを検討したこともありません。昆虫の製品サンプルを頂いたこともありません。ですが、今後の食糧問題の切り札と考えられていることは事実であり、新たな昆虫食のメニュー開発にかかわりたいところです。
一部のコアな方々には不満かもしれませんが、昆虫食の最大の欠点はそのままの形状を残していることではないでしょうか。粉砕機で粉々にし、麺や挽肉に練り込むことで、見た目の食べやすさは少なくとも解消できます。香辛料の効いたカレーに昆虫のペーストや粉末を加えれば、昆虫由来のたんぱく質と脂質により濃厚な味になるかもしれません。
食糧問題の解決のカギを握るかもしれない昆虫食の普及には、しばらく時間を要しそうです。
【憧憬】宇宙食の開発
2020年6月の株式会社ローソンの発表によると、スペースからあげクンが宇宙食として正式に認証されたとのことです。スペースからあげクンは宇宙飛行士からの要望を受け、2017年から開発を開始しました。フリーズドライ化したスペースからあげクンはおよそ1年におよぶ保存性試験に合格し、宇宙食として認証を受けるに至りました。
宇宙食は、国際宇宙ステーションなどで宇宙滞在を行う宇宙飛行士に提供される食品です。宇宙食には、健康を維持するための栄養の確保のみならず、設備が限られた状態でもおいしく食べられること、飛び散ったりしない食品であること、長期保存が可能なことなど厳しい条件が要求されます。
宇宙食の特長としては、無重力に対応する工夫です。ラーメンの場合、麺は飛び散らないような形状になっており、スープもとろみが付与されています。保存性も常温で1年半の賞味期限があることが条件です。今現在はレトルトやフリーズドライなどの技術発展によってメニューの幅が広がっています。また、輸送できる物資の量は限られるので、さらなる軽量化もポイントです。
宇宙食は、主に以下の条件を満たす必要があります。
・常温で少なくとも1年半の賞味期限を有すること
・衛生性が高いこと
・飛び散らないようにすること
・臭気がないこと
水やお湯を加えることで戻して食べる食品やレトルト食品、半乾燥食品、放射線照射による殺菌された食品などがあります。
サバの味噌煮、イワシのトマト煮、サンマの蒲焼き、粉末緑茶、粉末ウーロン茶、羊羹、黒飴、ミントキャンディー、わかめスープ、白飯、赤飯、山菜おこわ、おにぎり、マヨネーズ、白がゆ、ラーメン、レトルト カレー、ドライフルーツ、ビーフジャーキー、ビーフステーキ、ゼリー、プリンなどの事例があります。
この他にも国際宇宙ステーションでは様々な国の様々な宇宙飛行士が生活するため、各国の料理の宇宙食が開発されています。
そう遠くはない未来に宇宙旅行が実現する可能性が見えてきました。宇宙旅行産業は、2028年には約1.5兆円になるとの予測もあります。実際に宇宙旅行サービスを展開している会社は4社あります。現時点での宇宙食の市場規模はあまり期待できないですが、宇宙旅行がはじまる際には、さまざまな宇宙食の開発が進みます。地球を眺めながら食べる料理はきっと格別で、忘れられない思い出となるに違いありません。
宇宙食に要求される内容は、常温で少なくとも1年半の賞味期限を有すること、衛生性が高いこと、飛び散らないようにすること、臭気がないことです。この要求に応えられる食品の加工技術としては、フリーズドライやレトルト、そしてレシピ開発時に粘性を付与することです。既に確立された内容となり、色々なアイデアが浮かんできます。機会をみつけて、開発を進めたいところです。宇宙船の窓から宇宙に目を凝らし、フリーズドライえいひれやフリーズドライ枝豆、レトルトの煮込み料理などをつまみに飛び散らない容器に入れた発泡しないアルコール(現時点で国際宇宙ステーションでの飲酒は禁止)を嗜みたいところです。