2020年06月21日
【在籍してわかった】加工食品メーカーの光と闇
加工食品メーカーとして一般的にイメージされるのは、スーパーやコンビニに並ぶ加工食品を作っているメーカーです。加工食品メーカーでは、加工食品の研究開発から製造、販売までを担っておりますが、原材料を調達するためには、商社や原材料メーカーとのサプライチェーンの構築が欠かせません。例えばレトルト雑穀かゆを販売する場合、主な原材料はお米と雑穀です。お米と雑穀を提供するのが原材料メーカーや商社となり、雑穀かゆを製造するのが加工食品メーカーとなります。
加工食品メーカーは製造した食品をスーパーやコンビニに販売し、消費者への売却を担ってもらいます。消費者との直接的な関わりはそれほどなく、スーパーやコンビニを通して、要望が届きます。現在ではイーコマースの発達により、消費者へ直接販売流れも活発化しています。
加工食品メーカーには、さまざまな部署があります。会社にもよりますが、まずは工場にて製造業務を数カ月から数年経験します。ここで原材料メーカーや商社から届く原材料を理解し、レシピを見ながら原材料の特徴を把握し、調理釜など設備への知見を深めます。さらに品質検査部門での検査や物流部門での製品の出荷までを経験することで、加工食品の製造の一連の流れを学びます。部門毎の職務は以下の通りです。
研究開発は、新製品を生み出すための基礎及び応用研究をおこなう部門です。新製品の開発の場合、スーパーやコンビニからの依頼やマーケティング部門から提案された内容、あるいは自ら考案した加工食品のレシピ開発を進めます。この過程で、製品の味や香りはもとより、物性や保存性の検証、簡便さの追求、原材料メーカーや商社との原料の打ち合わせ、原価計算を担うことになります。もちろんパスタソースの開発であれば、納得のいく製品ができるまで、何度もトライし、試食も繰り返します。試食はすなわち官能検査です。自ら口に入れ、香り立ちやうま味の出方、後味ののび、のど越しをチェックします。必要とあらば、原材料の産地に出向き、生産状況の把握や関連する工場の監査も実施します。
研究の場合は、長期的なスパンで自社の有する原材料の機能性成分の調査や有用な微生物のスクリーニング、研究機関との連携、論文発表、特許申請などを職務とします。
新製品を生み出すあるいはリニューアルを行う要の部署であり、加工食品メーカーにおいては極めて重要な役割を果たします。
品質管理は、製品化した加工食品を大量に製造する工場に併設され、製品の水分や塩分、物性などの一般的な分析や菌検査を行います。製品によってはラインから一部抜き取り検査を実施することや目視による確認も行います。多いときは1日で数十品を検査することになり、納期も限られているため、時間に追われることもあります。不良品を流通させないためにも、十分な管理体制が望まれ、問題があれば製造部門に毅然とした態度で指摘できるよう工場の製造ラインからは独立した組織となっています。規模に応じて、工場全体の衛生管理を兼務することもあります。
マーケティング部門は、消費者の動向調査とその分析結果にもとづき、新製品開発案や既存品リニューアル案などを企画します。マーケティングの主な仕事は消費者の行動の調査分析となり、これらの結果をもとに企画書の作成、社内会議や取引先でのプレゼンテーションを行います。また、製品の企画の取りまとめも兼ね、研究開発部門や品質管理部門、製造部門と連携を取って、販売までをコーディネイトします。流行を素早くキャッチすること、そして取引先に対して説得力のある高いコミュニケーション能力が要求されます。
営業は製品の販売を行う部門です。製品のカタログを準備し、主にスーパーやコンビニに自社製品を提案します。さらに分類するとルート営業は、すでに取引がある顧客に対して行う営業になります。顧客の抱える課題を深堀りすることで、自社製品と絡めた課題解決方法を提案します。ここで現状の取引とは別の案件が発生する可能性もあり、顧客との信頼関係が深まることで、別顧客を紹介してもらうことも可能です。もうひとつは新規開拓営業です。新規開拓営業は、まだ取引も面識もない企業に対して、何かしらの方法でアプローチし、新規顧客を獲得することです。既存顧客に対する営業と異なり、面識がない相手に対してアプローチするので、難易度は高くなります。
工場内は主に機械設備が適切な位置に配置されています。製造部門は、調理釜などへ原材料の投入から混合、加熱調理、充填、梱包、出荷に至る工程のほとんどが自動化されており、これらの操作を担います。また、ラインの洗浄工程も自動化が進んでいます。一部手作業が要求される工場では、20s入の段ボールやクラフト袋を持ち上げ、釜に投入する工程が残っていることもあります。現場は蒸気を熱源とした加熱工程があるため、汗が止まらないこともあります。
経営企画は、市場や競合他社、自社についてのデータを収集分析し、会社全体の経営目標や中長期計画の立案、計画の進捗のフォロー、新規事業の立案、M&A戦略の立案などを担う部門です。また、経営会議を運営して経営者の意志決定をサポートします。
この他にも加工食品メーカーには、他の業界と同様に総務、経理、人事、庶務といったいわゆるバックオフィスとなる部門があります。
人口の減少及び超高齢化社会に伴い、一人当たりの飲食量も減少しますが、健康の要素を持つ付加価値の高い製品や高品質な製品などが実績を伸ばすことによって、単価が上昇するため、市場はなんとか拡大推移を維持すると予想されています。もともと食品は生活する上では欠かせないものであり、業績が大きく変動することはありません。
日常の食生活で健康の維持を図り、健康寿命延伸やアンチエイジングにつなげたいという意識が広まっており、加工食品メーカーでは健康要素を訴求する製品を拡充する動きが出てきています。健康を訴求した製品はスーパーやコンビニでも取扱い意欲が高まっており、実績伸長が期待されるとともに、加工食品市場に占める割合も高まる可能性があります。
高齢者や一人世帯の増加により、小容量タイプや食べ切りタイプといった、個食対応の製品需要が今後さらに増加します。より調理が簡便な製品を求める傾向も強まります。
また、食品の市場の拡大は、国内にとどまらず、海外に目を向ける加工食品メーカーは増えています。海外では日本食がブームであり、国外での成長を求めるか加工食品メーカーは少なくありません。特に経済発展が著しく、かつ日本の食品への信頼が高いアジア地域に注力して展開する加工食品メーカーは増えています。
食品は生活に欠かせない重要なものであり、なくなることがない業界です。しかしながら、人口減少と超高齢化社会の到来によって、将来的には少しずつ国内の市場規模が縮小する見通しです。国内で求められるのは、多様化するライフスタイルに合わせた加工食品です。健康の要素や個食対応といった付加価値のある加工食品が、今後さらに登場することで、しばらくは市場の拡大基調を維持する傾向です。国内市場の縮小により、海外市場に目を向けており、現在でも海外展開に積極的です。
また、加工食品メーカーの仕事内容に少しでも興味を持ってもらえると幸いです。加工食品メーカーで市場調査をしてみたい方、加工食品を開発してみたい方、食品の基礎研究をしてみたい方がいれば、どこかでお会いできることを楽しみにしています。
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