2020年06月03日
【イメージ回復】脂質の役どころ
脂質とは
脂質と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。ともすると肥満の張本人とお考えではないでしょうか。炭水化物、たんぱく質と共に三大栄養素となる脂質は、1グラムあたり9キロカロリーと、三大栄養素の中でも最も高いエネルギーを得ることができます。脂質は水に溶けず、炭素、水素、酸素で構成されています。脂質は重要なエネルギー源だけでなく、ホルモンや細胞膜、核膜を構成したり、皮下脂肪として、臓器を保護したり、体を寒冷から守ったりする働きもあります。また、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、Eなど)の吸収を促すなど、重要な役割を担っています。脂質は私たちの体にとっては欠かせない三大栄養素の1つです。しかし、脂質は摂り過ぎると肥満などの原因になるため注意が必要です。
脂質の種類
脂質は、構造の違いによって、中性脂肪などの単純脂質、リン脂質などの複合脂質、ステロールなどの誘導脂質に分類されます。脂肪は体内の消化酵素の働きによって脂肪酸とグリセリン(グリセロール)というアルコールの一種に分解され、吸収されます。脂肪酸は炭素と水素が結合し鎖状になったものです。鎖の長さや二重結合(炭素の結びつきで一重や二重の結合があります)の有無の違いにより、多くの種類の脂肪酸があり、どんな脂肪酸が含まれているのかによって、その脂質の性質も変わってきます。二重結合がないものを飽和脂肪酸、二重結合があるものを不飽和脂肪酸と言い、そのうち二重結合が1つのものを一価不飽和脂肪酸、二重結合が2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と言います。多価不飽和脂肪酸は、二重結合の部分が炭化水素鎖の末端から何番目にあるかによって分類され、3番目にあるものをn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)、6番目にあるものをn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)といいます。脂肪酸のうち食物からとる必要があるものを必須脂肪酸といいます。リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が必須脂肪酸にあたります。
脂肪酸とは
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、炭素間に二重結合を持たない脂肪酸で、乳製品、肉などの動物性脂肪やパーム油などの植物油脂に多く含まれています。これらも重要なエネルギー源ではありますが、飽和脂肪酸をとりすぎると、血中総コレステロールが増加し、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患のリスクが増加することが予想されています。
一価不飽和脂肪酸
炭素間に二重結合をもつ脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。一価不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸のうち、二重結合を一つもつもので、動物性脂肪やオリーブ油などの植物油に多く含まれ、その大部分はオレイン酸です。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取するほか、体内で飽和脂肪酸から合成することができるため、必須脂肪酸ではなく、食事摂取基準では、目安量や目標量は設定されていません。
n-6系脂肪酸
炭素間の二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した炭素のうち、末端から数えて6個目と7個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-6系脂肪酸」といいます。n-6系脂肪酸には、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などがあります。日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸とされており、大豆油やコーン油などの植物油が主な摂取源です。リノール酸などのn-6系脂肪酸は体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。日本人の食事摂取基準では、一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量として、n-6系脂肪酸7.0〜11.0g/日と定められています。
n-3系脂肪酸
炭素間の二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した炭素のうち、末端から数えて3個目と4個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-3系脂肪酸」といいます。n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあり、α-リノレン酸は植物油が、EPAやDHAは魚介類が主な摂取源です。これらの脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸です。えごま油は100gあたり58g、あまに油は100gあたり57g、くるみは100gあたり9gのn-3系脂肪酸を含んでいます。日本人の食事摂取基準では、一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量として、n-3系脂肪酸1.6〜2.4g/日と定められています。
コレステロール
コレステロールは、脳神経や筋肉の働き、細胞膜やホルモンの生成に不可欠な物質です。コレステロールは体内(肝臓)で合成できる脂質となります。食事から摂取されるコレステロールが少ないと体内で作られるコレステロールが増加し、逆に食事から摂取されるコレステロールが多いと体内で作られるコレステロールは減少します。よって、食事から摂取されたコレステロールの量が、そのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではありません。食事摂取基準では、目標量は設定されていませんが、脂質異常症の方等においては、その重症化予防の目的から、コレステロールの摂取量を200 mg/日未満に抑えることが望ましいとされています。
脂質の吸収と働き
脂質のうち、食品中の脂質の主成分であり、エネルギーとして利用されるのは、主に中性脂肪です。水に溶けない中性脂肪は、小腸から吸収された後、水に溶けるたんぱく質と結合して体の各部に運ばれます。
植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸には、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きもありますが、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させるので、摂りすぎ注意です。
脂質の味と香り
脂質自体に味、香りはありませんが、 脂質を含まない食物は複雑さを感じられません。マグロのトロには脂質が50%程度含まれ、ラーメンもカレーも脂質があることで、濃厚感が増し、食欲をそそられます。脂ののった魚に舌鼓を打ち、植物性油脂のブレンドされたドレッシングを野菜にかけ、食後のケーキで癒されるとき、脂質と糖やうま味成分との絶妙な味のハーモニーを実感します。ところが、驚くべきことに脂質の味が脳に伝えられているかどうかも含め、脂質を舌で感じるしくみはまだよくわかっていないようです。今後の研究が楽しみな分野です。
まとめ
肥満の原因となる脂質は敬遠されがちですが、食事の量が少ない高齢者などの場合は、脂質の摂取量が不足すると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり、体の抵抗力が低下したりする可能性があります。脂質とともに吸収される脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、Eなど)が吸収されにくくなり、ビタミン欠乏になるリスクもあります。反対に、肥満傾向の人は、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の原因になるため摂りすぎないように注意しなければなりません。また、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸をバランスよく摂取するためにも、さまざまな食品から脂質を摂取するように心がけましょう。脂質自体に味も香りもありませんが、食品に濃厚さ、複雑さを増強するなくてはならない栄養素です。
参考URL:農林水産省
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