2020年09月04日
【アイデア】食品を製造するための工夫
お茶の栽培には、山間地が適しているとされます。静岡や狭山もそうですが、中国やインド、スリランカなど世界のお茶の産地もやはり山間の環境です。
ところが、山間地では、新茶の時期に茶葉の天敵である霜が降りやすくなります。実際に静岡では、茶葉に霜がついて、一番茶が全滅したこともありました。この霜害から茶葉を守るために開発されたのが、茶畑に立つ大型扇風機です。東海道新幹線の車窓からも、静岡の茶畑に設置された扇風機が見えますが、地元では防霜ファンと呼ばれています。
早朝に空気が冷えると比重が重くなって、茶畑の低いところに降りてきます。これが、茶葉や茶畑の細長く直線状に土を盛り上げた畝に水分を結晶化させて霜を降ろします。そのため、防霜ファンは霜の降りそうな低温になると、センサーが働いて羽が回りだす仕組みになっています。冷たい空気を撹拌して、それ以上温度が下がらないようにしているのです。
昔は、茶葉に煙を出して温めたり、朝方に水をまいて霜を防いでいました。それだけ手間をかけても霜害はなくなりませんでしたが、防霜ファンを使うようになってから、霜害はほぼなくなったようです。茶畑の扇風機は、なかなかの優れものなのです。
砂糖のシャリっとした舌ざわりの中から、ウィスキーやリキュールの甘いシロップがトロリと流れ出てくるのがボンボン菓子です。口に入れたとたん砂糖が溶けて、すぐに割れるのがボンボン菓子の特徴です。この割れやすいボンボンにどうやって中身のシロップを入れるのでしょうか。
お菓子づくりに詳しい人であれば答えられるかもしれませんが、安易に想像すると半球型の殻にシロップを入れその上から別の殻でふたをするとか、殻に注射器のようなものでシロップを注入すると考えるかもしれません。
しかし、実際にはボンボンをつくるのに手間は必要ありません。砂糖とシロップを一緒に煮詰めて型に流し込めば、自然とできてしまいます。手順としては、まず砂糖に水を加えて煮詰め、その後でボンボンの中身となるウィスキーやリキュールを加え温めます。次にコーンスターチなどのデンプンを容器に入れ、ボンボン型で押してくぼみをつくり、そこに砂糖液を流し込んでゆっくり冷やします。すると液に溶けきれなかった砂糖が結晶化して、表面に砂糖の殻がつくられます。そして、シロップを封じ込めたボンボンができあがります。ボンボンは砂糖特有の性質を利用してつくられたお菓子なのです。
ただし、ボンボンを砂糖殻のまま販売しているケースはあまりありません。というのも、砂糖の殻がもろく、壊れやすいからです。そこで、砂糖殻のまわりをチョコレートでかたくコーティングしたチョコレートボンボンがボンボン菓子の代表となっています。
ちなみに砂糖殻がかたまる原理は単純ですが、誰にでもボンボンをつくれるかというと意外に難しいです。砂糖液の濃度や温度管理をきちんと行わないと、殻が上手く結晶化しません。
現代人の生活にインスタントコーヒーは欠かせません。このインスタントコーヒーを飲むことは簡単ですが、製造には意外に手間がかかります。コーヒーの香りを損なうことなく、コーヒーの液体を乾燥させるのは、技術的に非常に難しい作業です。
コーヒーの液体を乾燥させる方法はいくつかあります。もっとも古典的なのは、スプレードライ製法です。これは、コーヒーの液体を霧状にして、熱風の中をくぐらせ乾燥させます。技術的には簡単ですが、コーヒーの香りが逃げてしまうという欠点があります。そこで開発されたのが、フリーズドライ製法です。コーヒーの液をマイナス40℃で凍結させ、真空装置に入れて乾燥させ、粉末や固形にする方法です。この方法だと香り成分の損失は最小限に抑えられます。この製法で真空装置に入れるのは、コーヒーの液体の凝固点と沸点を近づけるためです。そうするとコーヒーの香りを損ねることなく、水分だけをきわめて短時間で気化させることができます。
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