2020年09月20日
【水と油が混じりあう】食品メーカーの乳化技術
マヨネーズやアイスクリーム、バターなど水と油が混じった食品が市販されていますが、なぜ分離しないのか、栄養成分に影響はといった疑問や不安は、ありませんか。
食品メーカーでは、互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散する乳化装置を使用します。この装置により、水と油が混じりあい、製品自体の安定化やアイスクリームなどの滑らかな舌触りが実現します。食品そのものに含まれる栄養成分が変化することはありません。
20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍すると、高圧ホモジナイザーなどの乳化装置を頻繁に使用します。
なお、乳化と分散は同意としています。
互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散した系を乳化(エマルション)といい、食品をはじめ医薬品や化粧品などあらゆる分野で活用されている技術です。エマルションには、大きく分けて水中に油滴が分散した水中油滴分散型エマルション(O/W:oil in water)と油中に水滴が分散した油中水滴分散型エマルション(W/O:water in oil)があります。
水中油滴分散型エマルションには、マヨネーズやアイスクリーム、化粧品乳液などがあります。油中水滴分散型エマルションには、バターやマーガリン、ハンドクリームなどがあります。
もっとも簡単な乳化は、水と油が混じった液体を入れた容器を勢いよく振ることです。ドレッシングは、使う前によく振りますが、これは容器の中に物理的対流を起こすことにより、水と油の粒子を一時的に混ぜ合わせるためです。
機械装置による物理的な対流を利用して、物質を乳化する方法もあります。代表的な乳化機は、ホモジナイザーと呼ばれる装置です。毎日使っているさまざまな製品の多くが、物質を乳化することによってつくられています。
なお、機械装置で乳化を行っても、時間がたてば水と油が分離することがあります。そこで、乳化剤を加えることにより、水と油が混ざったまま安定化します。マヨネーズの場合、食酢と油が分離してしまいますが、卵に含まれるレシチンが、乳化した状態を安定させます。
乳化を目的とした装置は、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、ウルトラミキサー、撹拌機などがあります。
高圧ホモジナイザーは、1900年初頭にフランス人のオーガスト・ゴーリンが牛乳を長期保存するために乳脂肪球を微粒化及び均質化する目的で開発した装置が始まりであるといわれています。ゴーリンのホモジナイザーは、液体が装置内部を10〜50MPaの圧力で通過したときに、せん断力を与えることができます。高圧ホモジナイザーは、高圧ポンプで物質を狭い隙間から押し出す方法や物質を対向衝突する方法でせん断力を与えます。大学の研究室などでは、ごく少量の物質を分散化する場合に、超音波を利用したホモジナイザーが使われることもあります。ホモジナイザーの乳化力は高く、液滴の微細化に適していますが、供給する液体を100MPa以上の高圧に加圧するためには技術力や付帯装置が必要となります。なお、ホモジナイザーは、物質の粒子を均一化することもできるので分散機とも呼ばれます。さらに最大275MPaとエ ネルギーレベルが非常に高く、超微粒子の調製が可能な高圧ホモジナイザーとして、アメリカのMicrofluidics社が開発したマイクロフルイダイザが、広く使用されています。
ホモミキサーは、力を発生させる部分となるステー タ内の羽根を高速回転させることにより、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象を生じさせ、ポンプのような働きで絶えず液体を底部から吸い上げ、 高速回転する羽根と固定のカバーの隙間が狭いことから、その隙間を液が通過するときに、強力なせん断力や衝撃によって撹拌され、均一かつ微細な乳化粒子を得ることができます。一般的なエマルション製造に用いられる装置は、タンクとミキサーが一体となったバッチ式の装置が主流となっています。
ウルトラミキサーは、ホモミキサーよりも高いせん断力を持ち、高粘度に対して有効で す。液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象による吸引力などによって、ミキサー内に液体を送り込み、側面へ吹き出すことを繰り返し、乳化させます。
撹拌機は、物質を勢いよく混ぜ合わせることで物理的な対流を起こし、混ぜ合わせます。
食品メーカーなどで、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、撹拌機は頻繁に使用されているほか、高圧ホモジナイザーに入れる前にまず物質同士をよく混ぜ合わせるために撹拌機など使われることもあります。アイスクリームなどの滑らかな舌触りや製品自体の安定化を図る場合、ただ攪拌しただけだと物質の粒子は均一化しないため、高圧ホモジナイザーで分散化することが必要です。
高圧ホモジナイザーは物質の粒子を分散化するだけで、食品の栄養成分を変化させることはありません。
20年前後食品メーカーの製品開発職に在籍すると、高圧ホモジナイザーやホモミキサーは頻繁に使用します。マヨネーズやアイスクリーム、バター、マーガリンにとどまらず、さまざまなドレッシングや豚骨ラーメンスープにも乳化装置は活躍しています。
ホモミキサーのみであると時間が経てば分離してくることもあるので、その時は乳化剤の使用や高圧ホモジナイザーを併用します。分離が抑えられ、安定した状態が続くと乳化剤の使用の低減や高圧ホモジナイザーの圧力を下げ、コストダウンや工場での生産性を検討します。
スーパーなどで販売されている乳化した食品を製造している食品メーカーでは、このような技術を日々研究しています。
互いに混ざり合わない水と油のような2つの物質の一方が、もう一方に微細な液滴として分散した系を乳化(エマルション)といい、食品をはじめ医薬品や化粧品などあらゆる分野で活用されている技術です。
食品メーカーでは、高圧ホモジナイザーやホモミキサー、撹拌機などの乳化装置は頻繁に使用され、製品自体の安定化やアイスクリームなどの滑らかな舌触りが実現しています。なお、食品そのものに含まれる栄養成分が変化することはありません。
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