2020年09月18日
【飛散防止と溶解性向上】食品の造粒技術
スーパーを見渡すとさまざまな造粒した食品が陳列されています。代表的な製品としては、粉末スープやだしの素などです。それではなぜ、食品メーカーは粉末化するだけに留まらず、単一もしくは多くの成分からなる粉末の原材料を、より大きな粒状に加工するのでしょうか。
造粒の目的としては、具体的に次のことがあげられます。
1 粉塵の飛散防止
しょう油などの粉末の場合、飛散するので、消費者の使い勝手の向上や作業の効率化、工場での製造工程中の原材料ロスの減少になります。
2 溶解性や流動性の改善
造粒品は、多くの細孔ができることで粉末よりも溶解性が向上し、流動性も高いため取り出しやすく、工場では均一な流量の制御が可能です。
3 吸湿性の改善
しょう油などの粉末の場合と比べて、粒子の増大により相互凝集が弱まり、吸湿面積の減少となり、吸湿しにくくなります。
4 物性の安定化
香気成分などの揮発性物質を保持し、品質の劣化を防止します。
造粒は、大きく分けると湿式造粒と乾式造粒に分類されます。湿式造粒とは、水またはでんぷんを分解したデキストリンなどの結合剤を溶解した溶液を粉末に噴霧し、湿潤させてから、その水分を乾燥する方法で、装置によって得られる造粒品の物性が異なります。乾式造粒とは、粉末の原材料をシリンダーと呼ばれる定形の圧縮装置で造粒する方法です。水や結合剤を使用せず、原料をそのまま圧縮することで、成分量を最大限保ったまま製造できます。食品メーカーでは主に湿式造粒を用います。
流動層造粒は、装置内の造粒室の下部から熱風を送り込み、原材料の粉末を空中に巻き上げることで、粉末が流動する状態になる層を形成してから、そこに液体を噴霧して、凝集させることにより造粒する方法です。多くの細孔ができるため、溶解性に優れた0.3o〜2o程度の造粒品が得られます。造粒と乾燥を同時に行うことで湿式造粒では対応できない粘度の高い原材料でも、造粒が可能です。
流動層造粒は、造粒と乾燥を 1 台の設備で同時に行うことができ、設備自体も小さいことから、据付に必要な面積が少なく、生産効率が高くなります。また、流動層造粒による造粒品は丸みを帯び硬度が高いので、粒度分布が狭く均一な造粒品が得られやすいです。
スープやスポーツ飲料、ココア、抹茶、青汁、健康食品などの製造に用いられます。
押出造粒は、原材料粉末に水または液体を加えて混合してから、スクリューまたはローラなどを使い、圧力をかけて混合物を強制的にスクリーン(多数の孔の開いている板)から円柱状の形にして押し出し、カッターで一定のサイズで切断することで、造粒する方法です。直径2o〜6o、長さ10o〜15o程のペレットと呼ばれる円柱状の造粒品が得られます。
押出造粒は、設備導入コストが安く、省スペースで設置できる一方、混合や押出など工程数が多くなり、生産能力が低く大量生産にはあまり向いていません。造粒品は密度と強度が比較的高く、粒度はスクリーンに開いている孔のサイズに依存するため、粒度の調整が簡単で粒度分布が狭くなります。
だしの素やスープ、ふりかけなどに用いられます。
撹拌造粒は、装置内に原材料となる粉末と水または液体を加え、ブレードと呼ばれるスクリューと遠心力で混合撹拌して、回転させながら粉末を凝集させる造粒方法です。100μm〜3oの微細な造粒品が得られます。造粒品は、攪拌羽根の粉砕作用によって、均一な粒度になります。
撹拌造粒装置は、低コストの上、短時間での生産が可能となり、洗浄も容易です。
調味料や打錠食品などの原材料として用いられます。
食品を造粒する目的は、粉塵の飛散防止、溶解性や流動性の改善、吸湿性の改善、物性の安定化です。
造粒は、大きく分けると湿式造粒と乾式造粒に分類され、湿式造粒は、水またはでんぷんを分解したデキストリンなどの結合剤を溶解した溶液を粉末に噴霧し、湿潤させてから、その水分を乾燥する方法です。湿式造粒には、流動層造粒や押出造粒、撹拌造粒などの方法があります。
だしの素やふりかけ、スープ、スポーツ飲料、ココア、抹茶、青汁、健康食品などに幅広く用いられています。
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