新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2014年11月03日
京へのいざないU 関西でアートの日々♪
11月1、2日で京都、奈良に行ってきました。
ここのところ毎月の京都訪問です。
今回はまず第50回記念 京都非公開文化財特別公開のうち、知恩院 大方丈・小方丈・方丈庭園の拝観に行きました。
徳川家が菩提所として整備した知恩院の伽藍。
大(おお)方丈・小(こ)方丈は1641年に3代家光が建立しました。
大方丈の中心となる鶴の間奥の仏間には、快慶作と伝えられる本尊阿弥陀如来像が安置されています。
方丈庭園は3年後にでき、今も江戸期の名所図絵とほぼ同じ姿をとどめています。大方丈は、春に続いての公開。今回は12年ぶりに小方丈も公開されました。
現在山門が工事中でいつもと違う風景にびっくり。
まず大方丈、尚信の鶴の絵はあいかわらず美しい。
上段の間の豪華な滝の流れ落ちる豪華な障壁画。
小方丈は今回初めてです。6室から成り、大方丈と同様、襖には狩野派の絵が描かれていますが、大方丈のものとは対照的に淡彩で落ち着いた雰囲気に包まれています。
絵の保存状態がとても良く、水墨画の世界の魅力を堪能しました。特に入ってすぐ左側の文人画風の山水図、山が海になだれ込むような感じで、雄大でよかったです。
ここはいつもは「華頂山」の掛軸がかかっていますが、今回は昇り竜、下り龍の掛軸が。作者や描かれた時期は不明だそうです。
雨の日でしたが、やや薄暗い中、江戸時代の建物を歩いていると、時代劇のワンシーンの中にタイムスリップしたようでした。
ランチのあと、平成知新館オープン記念展 京へのいざない第U期展示を見に行ってきました。
「仏画 密教信仰の名品」では、孔雀明王像が良かった。正面からまっすぐ見据える孔雀が迫力でした。
星曼荼羅図 (久米田寺)これはおもしろいです。西洋占星術の影響か、ふたご座、かに座、てんびん座などが描かれています。東洋の星座もよく似た構成なのでしょうか?
「中世絵画 美を尽くす」では、四季花鳥図屏風(雪舟) 丹頂鶴と紅椿。他は特に色彩を持たない。上の方には叭叭鳥。太湖石、オシドリがにやりと笑ったり、と不思議な情景ですね。ぎっしり書き込んである、という印象です。
似たような絵はたくさんあり、これだけが真筆といわれていますが、どうなんでしょう?
「桃山絵画」では、永徳と等伯の対決!が見ごたえがあります。
花鳥図襖(聚光院方丈障壁画) 狩野永徳 力強い墨絵で、梅は大木、鶴は牧谿鶴。聚光院では現在複製画で、全場面を見ることができますが、そのときはあまりいいとは思わなかったのですが、今回実物を見て、筆の力強さ、構成の見事さ、永徳の力量を再認識しました。
対して、枯木猿猴図 長谷川等伯(龍泉庵)。右は木に母子猿。左は掴まった枝から腕を伸ばす猿。どちらも等伯の好きな(?)牧谿猿。枯木から生えている枝が生きているような大胆な筆遣い。
どちらも見ごたえありましたね〜。
その他通期展示の京焼、仏像(特に金剛寺)もこれでもか〜!というくらい名品揃い。もう1日あっても足りないくらい。
これで平常展だから驚きです。
鳥獣戯画は入場1時間待ちでようやく拝見できました。歴史ある鳥獣戯画が、4年もの長い間、修復作業されて、甲乙丙丁の4部作がすべて公開されるというビッグイベントとあって、京都国立博物館 明治古都館にて10月7日から開催され、連日、長蛇の列のようです。
とにかく兎も猿も蛙も、実に生き生きと描かれていて、今にも動き出しそう!本当に理屈抜きに心から楽しめる絵画です。後期巻きなおしがありますので、また来たいなと思いますが、この行列は考えてしまいますね。。。
面白かったのは、消しゴムなどなかった時代、うっすら下絵を描いて、ホワイトでその線を修正しているのがちゃんと見えること。
平成知新館では、鳥獣人物戯画 墨一色で描き出された動物と人の姿 [ハイビジョン](上映時間:約38分)も上映されます。日程があえばお見逃しなく。http://www.kyohaku.go.jp/jp/event/mov/index.html
「京へのいざない」は量質ともに今年bPの展覧会でした。
この後はどのような展示があるのでしょうか。しばらく京都通いは続きそうです。
ここのところ毎月の京都訪問です。
今回はまず第50回記念 京都非公開文化財特別公開のうち、知恩院 大方丈・小方丈・方丈庭園の拝観に行きました。
徳川家が菩提所として整備した知恩院の伽藍。
大(おお)方丈・小(こ)方丈は1641年に3代家光が建立しました。
大方丈の中心となる鶴の間奥の仏間には、快慶作と伝えられる本尊阿弥陀如来像が安置されています。
方丈庭園は3年後にでき、今も江戸期の名所図絵とほぼ同じ姿をとどめています。大方丈は、春に続いての公開。今回は12年ぶりに小方丈も公開されました。
現在山門が工事中でいつもと違う風景にびっくり。
まず大方丈、尚信の鶴の絵はあいかわらず美しい。
上段の間の豪華な滝の流れ落ちる豪華な障壁画。
小方丈は今回初めてです。6室から成り、大方丈と同様、襖には狩野派の絵が描かれていますが、大方丈のものとは対照的に淡彩で落ち着いた雰囲気に包まれています。
絵の保存状態がとても良く、水墨画の世界の魅力を堪能しました。特に入ってすぐ左側の文人画風の山水図、山が海になだれ込むような感じで、雄大でよかったです。
ここはいつもは「華頂山」の掛軸がかかっていますが、今回は昇り竜、下り龍の掛軸が。作者や描かれた時期は不明だそうです。
雨の日でしたが、やや薄暗い中、江戸時代の建物を歩いていると、時代劇のワンシーンの中にタイムスリップしたようでした。
ランチのあと、平成知新館オープン記念展 京へのいざない第U期展示を見に行ってきました。
「仏画 密教信仰の名品」では、孔雀明王像が良かった。正面からまっすぐ見据える孔雀が迫力でした。
星曼荼羅図 (久米田寺)これはおもしろいです。西洋占星術の影響か、ふたご座、かに座、てんびん座などが描かれています。東洋の星座もよく似た構成なのでしょうか?
「中世絵画 美を尽くす」では、四季花鳥図屏風(雪舟) 丹頂鶴と紅椿。他は特に色彩を持たない。上の方には叭叭鳥。太湖石、オシドリがにやりと笑ったり、と不思議な情景ですね。ぎっしり書き込んである、という印象です。
似たような絵はたくさんあり、これだけが真筆といわれていますが、どうなんでしょう?
「桃山絵画」では、永徳と等伯の対決!が見ごたえがあります。
花鳥図襖(聚光院方丈障壁画) 狩野永徳 力強い墨絵で、梅は大木、鶴は牧谿鶴。聚光院では現在複製画で、全場面を見ることができますが、そのときはあまりいいとは思わなかったのですが、今回実物を見て、筆の力強さ、構成の見事さ、永徳の力量を再認識しました。
対して、枯木猿猴図 長谷川等伯(龍泉庵)。右は木に母子猿。左は掴まった枝から腕を伸ばす猿。どちらも等伯の好きな(?)牧谿猿。枯木から生えている枝が生きているような大胆な筆遣い。
どちらも見ごたえありましたね〜。
その他通期展示の京焼、仏像(特に金剛寺)もこれでもか〜!というくらい名品揃い。もう1日あっても足りないくらい。
これで平常展だから驚きです。
鳥獣戯画は入場1時間待ちでようやく拝見できました。歴史ある鳥獣戯画が、4年もの長い間、修復作業されて、甲乙丙丁の4部作がすべて公開されるというビッグイベントとあって、京都国立博物館 明治古都館にて10月7日から開催され、連日、長蛇の列のようです。
とにかく兎も猿も蛙も、実に生き生きと描かれていて、今にも動き出しそう!本当に理屈抜きに心から楽しめる絵画です。後期巻きなおしがありますので、また来たいなと思いますが、この行列は考えてしまいますね。。。
面白かったのは、消しゴムなどなかった時代、うっすら下絵を描いて、ホワイトでその線を修正しているのがちゃんと見えること。
平成知新館では、鳥獣人物戯画 墨一色で描き出された動物と人の姿 [ハイビジョン](上映時間:約38分)も上映されます。日程があえばお見逃しなく。http://www.kyohaku.go.jp/jp/event/mov/index.html
「京へのいざない」は量質ともに今年bPの展覧会でした。
この後はどのような展示があるのでしょうか。しばらく京都通いは続きそうです。
2014年10月25日
「ウフィツィ美術館展 黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで」
東京都美術館で開催中の「ウフィツィ美術館展 黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで」を見て来ました。
フィレンツェが誇るイタリア・ルネサンスの殿堂「ウフィツィ美術館」。意外にも同館の名前を掲げた展覧会としては日本で初めての開催だそうです。 出品は75点ですが、デッサンは少なく、大きな作品も多いので、とても見ごたえがありました。
作品は必ずしも全てウフィツィ美術館のコレクションではありません。半数以上は同館の作品ですが、フィレンツェのアカデミア、パラティーナ、捨て子養育院などの美術館の作品が展示されています。
今回の目玉作品は、何と言ってもサンドロ・ボッティチェリ「パラスとケンタウロス」1480‐85年 です。大きさもですが、圧倒的な存在感です。
女性は、学問の女神パラス(ミネルウァ)で、足や手は女性とは思えない骨太で、硬く鋭い輪郭線を使って描かれています。頭部や体に巻き付くオリーブは、勝利と平和の象徴。彼女は左手に斧のついた大槍を携え、右手でケンタウロスの髪をつかんでいます。半人半獣のケンタウロスは、暴力や肉欲などの象徴。
この作品は理性による獣性の統御を表わしているとか。パラスの白い衣装に付いているメディチ家の標章はダイヤモンドの指輪を組み合わせたものだそうです。
ボッティチェリと画家周辺、ないしは帰属作、また後世の加筆作を含め9点が展示され、。初期の聖母子から晩年まで宗教画まで、比較的幅広い年代の作品が展示されています。
またボッティチェリでは「聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルとガブリエル」も印象深い。晩年の画家の特徴として捉えられる屈曲した聖母を描いた「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」も魅惑的でした。「聖母子と天使」建築物を背後に聖母子に幼子イエスを支える天使が寄り添う構図はリッピの作品と似ていますね。
さて、ボッティチェリがメインの展覧会ですが、ボッティチェリの作品以外の作品も見逃せません。
ドメニコ・ギルランダイオの「聖ヤコブス、聖ステファヌス、聖ペテロ」。
バルトロメオ・ディ・ジョヴァンニの「砂漠で改悛する聖ヒエロニムス」。ライオンやふくろうが描かれて、まるでマグリットの作品のように感じました。
ブロンズィーノ「公共の福祉の寓意」。
「公共の幸福」の擬人像は中央に赤い衣と青いマントを付け、乳房を出し、右手にはカドケウス、左手には果物は入った豊穣の角を持っています。天上には冠を持つ「栄光」とラッパを吹く「名声」。隣の愛のクピドの左には、男女二つの顔(男の顔はコジモ1世に似ています)。小品ですが詳細にみると、さまざまな寓意がとても見ごたえにある作品です。
ヴァザーリの作品も良かった!「無原罪の御宿りの寓意」、「羊飼いの礼拝」光と暗闇の対比が見事で、レンブラントのように感じました。
デッサンはほとんどなく、見ごたえのある作品が多いので、時間の余裕を見ていくことをオススメします。
来年春には渋谷のBunkamuraで「ボッティチェリとルネサンス」展が開催されます。これも楽しみですね。
今日は、その後根津美術館へ。
期間限定展示の瀟湘八景図のうち伝牧谿「洞庭秋月」(徳川美術館蔵)を見るためです。
牧谿の瀟湘八景図は大軸と小軸の2種類あって、これは小軸のほう。伝牧谿だからか重文指定も受けていません。
これが牧谿も真筆かどうか、判断はできませんが、とても詩情にあふれた静かで美しい作品だと思いました。
今回はほとんどこの1点を見たいために行ったようなものですが、良かったなと思います。
瀟湘八景図は現在7幅あるそうですが、今年その4幅を拝見することができました。うち2つは個人蔵ですので、なかなか拝見する機会はないかもしれません。
フィレンツェが誇るイタリア・ルネサンスの殿堂「ウフィツィ美術館」。意外にも同館の名前を掲げた展覧会としては日本で初めての開催だそうです。 出品は75点ですが、デッサンは少なく、大きな作品も多いので、とても見ごたえがありました。
作品は必ずしも全てウフィツィ美術館のコレクションではありません。半数以上は同館の作品ですが、フィレンツェのアカデミア、パラティーナ、捨て子養育院などの美術館の作品が展示されています。
今回の目玉作品は、何と言ってもサンドロ・ボッティチェリ「パラスとケンタウロス」1480‐85年 です。大きさもですが、圧倒的な存在感です。
女性は、学問の女神パラス(ミネルウァ)で、足や手は女性とは思えない骨太で、硬く鋭い輪郭線を使って描かれています。頭部や体に巻き付くオリーブは、勝利と平和の象徴。彼女は左手に斧のついた大槍を携え、右手でケンタウロスの髪をつかんでいます。半人半獣のケンタウロスは、暴力や肉欲などの象徴。
この作品は理性による獣性の統御を表わしているとか。パラスの白い衣装に付いているメディチ家の標章はダイヤモンドの指輪を組み合わせたものだそうです。
ボッティチェリと画家周辺、ないしは帰属作、また後世の加筆作を含め9点が展示され、。初期の聖母子から晩年まで宗教画まで、比較的幅広い年代の作品が展示されています。
またボッティチェリでは「聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルとガブリエル」も印象深い。晩年の画家の特徴として捉えられる屈曲した聖母を描いた「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」も魅惑的でした。「聖母子と天使」建築物を背後に聖母子に幼子イエスを支える天使が寄り添う構図はリッピの作品と似ていますね。
さて、ボッティチェリがメインの展覧会ですが、ボッティチェリの作品以外の作品も見逃せません。
ドメニコ・ギルランダイオの「聖ヤコブス、聖ステファヌス、聖ペテロ」。
バルトロメオ・ディ・ジョヴァンニの「砂漠で改悛する聖ヒエロニムス」。ライオンやふくろうが描かれて、まるでマグリットの作品のように感じました。
ブロンズィーノ「公共の福祉の寓意」。
「公共の幸福」の擬人像は中央に赤い衣と青いマントを付け、乳房を出し、右手にはカドケウス、左手には果物は入った豊穣の角を持っています。天上には冠を持つ「栄光」とラッパを吹く「名声」。隣の愛のクピドの左には、男女二つの顔(男の顔はコジモ1世に似ています)。小品ですが詳細にみると、さまざまな寓意がとても見ごたえにある作品です。
ヴァザーリの作品も良かった!「無原罪の御宿りの寓意」、「羊飼いの礼拝」光と暗闇の対比が見事で、レンブラントのように感じました。
デッサンはほとんどなく、見ごたえのある作品が多いので、時間の余裕を見ていくことをオススメします。
来年春には渋谷のBunkamuraで「ボッティチェリとルネサンス」展が開催されます。これも楽しみですね。
今日は、その後根津美術館へ。
期間限定展示の瀟湘八景図のうち伝牧谿「洞庭秋月」(徳川美術館蔵)を見るためです。
牧谿の瀟湘八景図は大軸と小軸の2種類あって、これは小軸のほう。伝牧谿だからか重文指定も受けていません。
これが牧谿も真筆かどうか、判断はできませんが、とても詩情にあふれた静かで美しい作品だと思いました。
今回はほとんどこの1点を見たいために行ったようなものですが、良かったなと思います。
瀟湘八景図は現在7幅あるそうですが、今年その4幅を拝見することができました。うち2つは個人蔵ですので、なかなか拝見する機会はないかもしれません。
2014年10月19日
三井記念美術館「東山御物の美」
三井記念美術館開催中の特別展「東山御物の美」。現在の日本美術の美の基準を作った「東山御物」が一堂に会する素晴らしい展覧会、開催を知ってからとても楽しみにしていました。
畳敷きに床の間といった私たちが通常イメージする和の文化が生まれたのが室町時代です。そして床の間を唐絵唐物つまり中国から輸入された絵画、工芸品で飾るのが当時最高の美意識でした。なかでも東山御物、足利将軍コレクションは名品揃い!
なぜ、東山?というと、東山の慈照寺(銀閣)に居を構え「東山殿」といわれた室町幕府8代将軍足利義政の所蔵していたものだからです。ただ実際には3代将軍義満や4代将軍義教が集めたものもかなりあります。
名物茶道具も展示されています。今回は堺の豪商天王寺屋が所蔵し、唐物肩衝の代表格の一つといわれる「北野肩衝」などがありました。根津美術館でも奈良の松屋が所蔵した松屋3名物の一つ「松屋肩衝」など大名物といわれる茶入を拝見しましたが、正直言って茶道具の素晴らしさはよくわかりません^_^ ;
「織田信長最後の茶会」(小島毅著 光文社新書)から引用します。
「九十九茄子(大名物茶入のひとつ)がそれ自体としてすばらしい焼き物かどうかはもはや問題ではない。それが佐々木道誉から足利義満に献上され、しばらく御物であったということにこそ、この物品の商品価値が存在するのである。」
室町殿の所有する御物であったということが、その物に威信財としての価値を付与すると。納得しました^^
今回は個人蔵の作品も多く、絵画はほとんど展示替えがありますので、最低でも2回は行くつもりでした。今回は1回目。
この日は展覧会の企画委員であるる東京大学東洋文化研究所の板倉聖哲教授の講演会があり、会場はかなり混んでいました。
今回は梁楷の作品が目立ちました。梁楷は南宋の宮廷画家として、本国でも高く評価され、室町時代の日本美術にも大きな影響を与えました。
国宝の「出山釈迦・雪景山水図」は3幅のうち釈迦図と左幅の2幅が展示。足利将軍家を出た後、吉備大臣入唐絵巻なども所蔵していた若狭酒井家に伝えられ、本願寺や三井家を経て、今は東京国立博物館に3幅とも所蔵されています。
『君台観左右帳記』 足利将軍家が会所の諸室を飾るために用いた宋元画の筆者名と茶器および文房具の類を列記した秘伝書です。
中国画家のリストは、上中下に三品等別して画家の名前と得意とするジャンルが列記されています。その他図入りの座敷の飾りつけ、陶磁器、文房具などの鑑識とその配置方法などを説明しています。
国立歴史民俗博物館本は、はじめて実物を拝見。感動しましたね〜。前半の絵画の分類の上の部には牧谿、徽宗皇帝などの名前がありました。
小品ですが、「雪中帰牧図」李迪や「高士探梅図」(伝)馬遠筆も良かったです。
その後、板倉先生が会場に登場!いくつかの作品の説明や、開催に至るまでのご苦労などのお話を聞くことができました。ラッキー^^♪
「宮女図」(伝)銭選筆は唐の時代にはやったいう男装の女性を元時代に描いた作品。とてもエロティックな作品とか。
「松下眺望図」(伝)夏珪筆、「老子図」牧谿筆は代2次世界大戦で消滅したといわれていたこと。
「夏景山水図」(伝)胡直夫「秋景山水・冬景山水図」(伝)徽宗筆は、4幅対だったものが春だけ失われて、今回後半に3幅並んで拝見できます。
夏は水墨、秋は緑、冬は白など色の対比がなされているとか。「秋景山水・冬景山水図」は京博で見たばかりですが、まとめて拝見することでまた違った発見がありそうで楽しみです。
「桃鳩図」、「鴨図」、そして「夏景山水図」、「秋景山水・冬景山水図」を同時期に展示したかったともおっしゃっていました。
板倉先生のお話はとてもわかりやすくかつ面白く、とても勉強になりました。
日本の美の原点ともいうべき世界をまとめて拝見できる10年に一度ともいうべきとても貴重な展覧会です!
このような素晴らしい展覧会の開催にご尽力いただいた皆さまに深く感謝したいと思います。
特別展 東山御物の美 −足利将軍家の至宝−
会期:2014(平成26)年10月4日(土)〜11月24日(月・振替休)
会場:三井記念美術館
(〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階)
http://www.mitsui-museum.jp/
開催時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
ナイトミュージアム :会期中毎週金曜日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日:月曜日。ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・振替休)は開館
畳敷きに床の間といった私たちが通常イメージする和の文化が生まれたのが室町時代です。そして床の間を唐絵唐物つまり中国から輸入された絵画、工芸品で飾るのが当時最高の美意識でした。なかでも東山御物、足利将軍コレクションは名品揃い!
なぜ、東山?というと、東山の慈照寺(銀閣)に居を構え「東山殿」といわれた室町幕府8代将軍足利義政の所蔵していたものだからです。ただ実際には3代将軍義満や4代将軍義教が集めたものもかなりあります。
名物茶道具も展示されています。今回は堺の豪商天王寺屋が所蔵し、唐物肩衝の代表格の一つといわれる「北野肩衝」などがありました。根津美術館でも奈良の松屋が所蔵した松屋3名物の一つ「松屋肩衝」など大名物といわれる茶入を拝見しましたが、正直言って茶道具の素晴らしさはよくわかりません^_^ ;
「織田信長最後の茶会」(小島毅著 光文社新書)から引用します。
「九十九茄子(大名物茶入のひとつ)がそれ自体としてすばらしい焼き物かどうかはもはや問題ではない。それが佐々木道誉から足利義満に献上され、しばらく御物であったということにこそ、この物品の商品価値が存在するのである。」
室町殿の所有する御物であったということが、その物に威信財としての価値を付与すると。納得しました^^
今回は個人蔵の作品も多く、絵画はほとんど展示替えがありますので、最低でも2回は行くつもりでした。今回は1回目。
この日は展覧会の企画委員であるる東京大学東洋文化研究所の板倉聖哲教授の講演会があり、会場はかなり混んでいました。
今回は梁楷の作品が目立ちました。梁楷は南宋の宮廷画家として、本国でも高く評価され、室町時代の日本美術にも大きな影響を与えました。
国宝の「出山釈迦・雪景山水図」は3幅のうち釈迦図と左幅の2幅が展示。足利将軍家を出た後、吉備大臣入唐絵巻なども所蔵していた若狭酒井家に伝えられ、本願寺や三井家を経て、今は東京国立博物館に3幅とも所蔵されています。
『君台観左右帳記』 足利将軍家が会所の諸室を飾るために用いた宋元画の筆者名と茶器および文房具の類を列記した秘伝書です。
中国画家のリストは、上中下に三品等別して画家の名前と得意とするジャンルが列記されています。その他図入りの座敷の飾りつけ、陶磁器、文房具などの鑑識とその配置方法などを説明しています。
国立歴史民俗博物館本は、はじめて実物を拝見。感動しましたね〜。前半の絵画の分類の上の部には牧谿、徽宗皇帝などの名前がありました。
小品ですが、「雪中帰牧図」李迪や「高士探梅図」(伝)馬遠筆も良かったです。
その後、板倉先生が会場に登場!いくつかの作品の説明や、開催に至るまでのご苦労などのお話を聞くことができました。ラッキー^^♪
「宮女図」(伝)銭選筆は唐の時代にはやったいう男装の女性を元時代に描いた作品。とてもエロティックな作品とか。
「松下眺望図」(伝)夏珪筆、「老子図」牧谿筆は代2次世界大戦で消滅したといわれていたこと。
「夏景山水図」(伝)胡直夫「秋景山水・冬景山水図」(伝)徽宗筆は、4幅対だったものが春だけ失われて、今回後半に3幅並んで拝見できます。
夏は水墨、秋は緑、冬は白など色の対比がなされているとか。「秋景山水・冬景山水図」は京博で見たばかりですが、まとめて拝見することでまた違った発見がありそうで楽しみです。
「桃鳩図」、「鴨図」、そして「夏景山水図」、「秋景山水・冬景山水図」を同時期に展示したかったともおっしゃっていました。
板倉先生のお話はとてもわかりやすくかつ面白く、とても勉強になりました。
日本の美の原点ともいうべき世界をまとめて拝見できる10年に一度ともいうべきとても貴重な展覧会です!
このような素晴らしい展覧会の開催にご尽力いただいた皆さまに深く感謝したいと思います。
特別展 東山御物の美 −足利将軍家の至宝−
会期:2014(平成26)年10月4日(土)〜11月24日(月・振替休)
会場:三井記念美術館
(〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階)
http://www.mitsui-museum.jp/
開催時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
ナイトミュージアム :会期中毎週金曜日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日:月曜日。ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・振替休)は開館
2014年10月17日
英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展はオススメです!
東京富士美術館で開催中の華麗なる 英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展〜ターナーからラファエル前派までに行ってきました。
昨年のターナー展や、今年の春開催の森アーツセンターギャラリーの「ラファエル前派展 」、三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル」を見て良かった〜という人にもぜひオススメしたい展覧会です。
ロイヤル・アカデミーのコレクションをかつてない規模で集めた本展では、初代会長のレノルズをはじめ、ゲインズバラ、ターナー、カンスタブル、ミレイ、ウォーターハウス、サージェントといった英国美術界を華やかに飾った歴代会員の優品を中心に、油彩・彫刻・素描・版画・書籍など約90点の作品を紹介。創立当初から20世紀初頭までのアカデミーにおける150年の歴史をたどっています。
まずはミュージアムシアターでロイヤル・アカデミーのお勉強。英国美術の歴史、印象派の登場が英国美術界に与えた衝撃と影響など、15分弱ですが、かなり面白かったです。
お気に入りの作品をいくつか。
ポスターにもなっているジョン・エヴァレット・ミレイ「ベラスケスの想い出」はさすが!という感じ。
真近でじっくり拝見できます。
実際に見ると筆遣いまで感じられるような力強い作品でした。
ロイヤル・アカデミー草創期の作品では、ジョシュア・「セオリー」が美しいルネッサンスのイタリア絵画風の美女に見惚れてしまします。
ジョゼフ・マラド・ウィリアム・ターナー「ドルバダン城」は近景に人を、遠景に雄大な山々を描いて、いかにもターナーらしい。改めてみると北宋絵画のようですね。
トマス・ゲインズバラ「羊のいるロマンティックな春の風景」とともに、光と空気が見事に表現されています。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「人魚」、フランク・カドガン・クーパー「虚栄」など、第3章はラファエル前派ファンは見逃せませんね!
最後に、1895年〜1918年の作品にあたるジョン・シンガー・サージェント「室内、ヴェネツィア」、「庭の女性たち、トッレ・ガッリ」なども紹介されており、アカデミーの創立当初から20世紀初頭までの歴史をたどることができます。
会期末は混雑必至かな?
あと常設展もお見逃しなく。ルーベンスやモネ、ルノワール、シスレーなどが「オルセー美術館展」とは違って、ゆったり鑑賞できます。
美術館2階に新たにラウンジがオープンしたとのことで、鑑賞後に行ってみました。コーヒー・紅茶・お茶が無料でいただけます。
目の前の西洋風の重厚で美しい牧口記念会館と庭園や彫刻、広がる森を前にして、図録を見ながら、ゆったりとお茶をいただいていると、とても贅沢な気分になりました。
いい1日でした^^♪
昨年のターナー展や、今年の春開催の森アーツセンターギャラリーの「ラファエル前派展 」、三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル」を見て良かった〜という人にもぜひオススメしたい展覧会です。
ロイヤル・アカデミーのコレクションをかつてない規模で集めた本展では、初代会長のレノルズをはじめ、ゲインズバラ、ターナー、カンスタブル、ミレイ、ウォーターハウス、サージェントといった英国美術界を華やかに飾った歴代会員の優品を中心に、油彩・彫刻・素描・版画・書籍など約90点の作品を紹介。創立当初から20世紀初頭までのアカデミーにおける150年の歴史をたどっています。
まずはミュージアムシアターでロイヤル・アカデミーのお勉強。英国美術の歴史、印象派の登場が英国美術界に与えた衝撃と影響など、15分弱ですが、かなり面白かったです。
お気に入りの作品をいくつか。
ポスターにもなっているジョン・エヴァレット・ミレイ「ベラスケスの想い出」はさすが!という感じ。
真近でじっくり拝見できます。
実際に見ると筆遣いまで感じられるような力強い作品でした。
ロイヤル・アカデミー草創期の作品では、ジョシュア・「セオリー」が美しいルネッサンスのイタリア絵画風の美女に見惚れてしまします。
ジョゼフ・マラド・ウィリアム・ターナー「ドルバダン城」は近景に人を、遠景に雄大な山々を描いて、いかにもターナーらしい。改めてみると北宋絵画のようですね。
トマス・ゲインズバラ「羊のいるロマンティックな春の風景」とともに、光と空気が見事に表現されています。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「人魚」、フランク・カドガン・クーパー「虚栄」など、第3章はラファエル前派ファンは見逃せませんね!
最後に、1895年〜1918年の作品にあたるジョン・シンガー・サージェント「室内、ヴェネツィア」、「庭の女性たち、トッレ・ガッリ」なども紹介されており、アカデミーの創立当初から20世紀初頭までの歴史をたどることができます。
会期末は混雑必至かな?
あと常設展もお見逃しなく。ルーベンスやモネ、ルノワール、シスレーなどが「オルセー美術館展」とは違って、ゆったり鑑賞できます。
美術館2階に新たにラウンジがオープンしたとのことで、鑑賞後に行ってみました。コーヒー・紅茶・お茶が無料でいただけます。
目の前の西洋風の重厚で美しい牧口記念会館と庭園や彫刻、広がる森を前にして、図録を見ながら、ゆったりとお茶をいただいていると、とても贅沢な気分になりました。
いい1日でした^^♪
2014年10月13日
京へのいざない「ズラリ国宝、ずらり重文」
10月12日、京都国立博物館、平成知新館オーブン記念展の「京へのいざない」展に、九州の帰りに行ってきました。
まず会場の「平成知新館」が素晴らしい。シンプルで簡潔ながら、美しく機能的なデザインです。
国宝の伝源頼朝像や伝平重盛像をふくめ、国宝や重文が、10月13日までが一期、そのあと11月16日までが二期で、合わせて四百点が展示されます。詳しくは京博のサイトをご覧ください。http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/index.html
2階の特集展示を行う特別展示室(時期によって場所は変わります)では、前期は肖像画、後期は豊臣秀吉を特集します。
今回は肖像画特集。「伝源頼朝像」「伝平重盛像」は日本の肖像画作品で最も優れているといわれる逸品。神護寺では、後白河法皇を間にはさんで3幅が展示されていましたが、今回は鳥羽天皇像(満願寺)が真ん中に。
歴史の教科書にも載っていた有名な作品ですが、今回初めて美術館で見て、お寺で自然光で見るのとは違ったとても荘厳な印象を受けました。照明や展示のしかたも素晴らしいのでしょうね。また改めて見てみると、かなり大きな肖像画だなと思いました。ほぼ等身大。3点を近くで見るだけでなく、遠くから見ても圧巻でした。
「伝源頼朝像」は、美術史家の米倉迪夫さんが足利尊氏の弟・直義(ただよし)説を発表し、いまだに日本美術史における大きな問題となっています。
山下裕二先生は美術手帖2009年6月号で「この絵のリアルで洗練された容貌の描き方は、中国絵画史の分厚いバックグラウンドを反映している。中国絵画の手法を消化したのちに初めて生み出されるもので、宋時代の肖像画の豊かさを醸成しないと絶対に生まれない。」ので、この説を300%支持するとおっしゃっています。
個人的には源頼朝像と思いたいのですが、どうなんでしょう?
あと印象に残ったのが、後宇多天皇像。
元寇のときの天皇ですが、なぜか口をあけてびっくりした表情をしています。
「えっ!! また元の軍が来たの?!」とでも言っているようで、面白かったです。
中世絵画:幽玄の美―山水画の世界―
このコーナーは、前期は水墨画、後期は華やかな花鳥画でこちらも全く違う作品を楽しめます。
まず国宝「瓢鰻図」。画題は、禅への傾倒の深かった室町幕府4代将軍、足利義持の問いかけを反映したもの。
雪舟の「天橋立図」。日本三景の1つ、丹後天の橋立を東側から鳥瞰的にとらえた図で、図中の智恩寺の多宝塔と成相寺の伽藍が同時に描かれることから、制作期が一応明応10年(1501)から永正3年(1506)の間とされています。
雪舟(1420−1506)が80歳を越してなお現地に足を運んで、実景を写したことは驚異ですね。
水々しい墨色と確実に形をとらえる筆致、雄大に組立てる構図は雪舟の優れた画技の頂点というべき作品でしょう。
雪舟の作品は3点も並んでいます!こんな贅沢な展示はめったにありません。
•中国絵画:宋元絵画と京都
前期は宋・元時代にスポットをあて、東山御物でもある伝牧谿筆「遠浦帰帆図」も素晴らしいのですが、今回は長年見たかった伝徽宗筆「秋景冬景山水図」が素晴らしかった!
山梨の久遠寺が蔵する夏景山水図と同じく、中国所蔵家の「仲明珍玩」「盧氏家蔵」の印と足利3代将軍義満の蔵有を示す「天山」印が押され、絹幅・作風も共通するところから、元来は、失われた春景図をふくめて4幅揃いの四季山水図であったと考えらています。
この両幅は10代将軍義稙(よしたね)のときに大内氏に渡り、明智院を経て、金地院崇伝に贈られたものだそうで、徽宗皇帝の筆者伝承は日本に渡ってからのものと思われますが、構図は馬遠の辺角の景に、皴法では梁楷に類似しながらも、やや先行する特色を示していて、制作時期は12世紀後半と考えられています。
今年は三井記念美術館の「東山御物の美」でも拝見できます。贅沢な年だな〜。
•近世絵画:京のにぎわい
洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳筆 4曲1双、釈迦堂春景図屏風 狩野松栄筆 2曲1隻が親子で展示。松栄の作品はきれいなのですが、何かインパクトに欠ける様な・・・・。
祇園祭礼図屏風、知っている山鉾を探したり、町の風景を楽しんでいたら、時間がなくなってしまい鑑賞を中断。またじっくり見たいですね。
今回は、「国宝 鳥獣戯画と高山寺展」には行かなかったのですが、山口晃さんの「ヘンな日本美術史」によると、この絵巻は甲巻は動物の擬人化、乙巻は麒麟や獅子など想像上のむ含めて動物を動物として書き、空想の世界へ。丙巻は擬人化された動物の中に人がでてくる。描き方はしっかりしています。
最後の丁巻。ここでは人間だけ。びっくりするくらい奔放な筆致で即興性に溢れている。
丙丁は甲乙から制作年代が下ると言われていますが、巻が下るほど先の巻を参照して、応答する形で進んでいくという構成だそう。
13時に着いたらなんと入場150分待ち!さらに甲巻を見るのに80分。東京に帰れなくなってしまいます。。。
11月に行くつもりですが大変ですね〜。
来年は東博で「鳥獣戯画と高山寺展」が開催されるようですが、そのときも混みそうだし。。
ちなみに今日は台風で10時半から臨時休館。それまでに入れた人はどうなったのでしょう?
まず会場の「平成知新館」が素晴らしい。シンプルで簡潔ながら、美しく機能的なデザインです。
国宝の伝源頼朝像や伝平重盛像をふくめ、国宝や重文が、10月13日までが一期、そのあと11月16日までが二期で、合わせて四百点が展示されます。詳しくは京博のサイトをご覧ください。http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/index.html
2階の特集展示を行う特別展示室(時期によって場所は変わります)では、前期は肖像画、後期は豊臣秀吉を特集します。
今回は肖像画特集。「伝源頼朝像」「伝平重盛像」は日本の肖像画作品で最も優れているといわれる逸品。神護寺では、後白河法皇を間にはさんで3幅が展示されていましたが、今回は鳥羽天皇像(満願寺)が真ん中に。
歴史の教科書にも載っていた有名な作品ですが、今回初めて美術館で見て、お寺で自然光で見るのとは違ったとても荘厳な印象を受けました。照明や展示のしかたも素晴らしいのでしょうね。また改めて見てみると、かなり大きな肖像画だなと思いました。ほぼ等身大。3点を近くで見るだけでなく、遠くから見ても圧巻でした。
「伝源頼朝像」は、美術史家の米倉迪夫さんが足利尊氏の弟・直義(ただよし)説を発表し、いまだに日本美術史における大きな問題となっています。
山下裕二先生は美術手帖2009年6月号で「この絵のリアルで洗練された容貌の描き方は、中国絵画史の分厚いバックグラウンドを反映している。中国絵画の手法を消化したのちに初めて生み出されるもので、宋時代の肖像画の豊かさを醸成しないと絶対に生まれない。」ので、この説を300%支持するとおっしゃっています。
個人的には源頼朝像と思いたいのですが、どうなんでしょう?
あと印象に残ったのが、後宇多天皇像。
元寇のときの天皇ですが、なぜか口をあけてびっくりした表情をしています。
「えっ!! また元の軍が来たの?!」とでも言っているようで、面白かったです。
中世絵画:幽玄の美―山水画の世界―
このコーナーは、前期は水墨画、後期は華やかな花鳥画でこちらも全く違う作品を楽しめます。
まず国宝「瓢鰻図」。画題は、禅への傾倒の深かった室町幕府4代将軍、足利義持の問いかけを反映したもの。
雪舟の「天橋立図」。日本三景の1つ、丹後天の橋立を東側から鳥瞰的にとらえた図で、図中の智恩寺の多宝塔と成相寺の伽藍が同時に描かれることから、制作期が一応明応10年(1501)から永正3年(1506)の間とされています。
雪舟(1420−1506)が80歳を越してなお現地に足を運んで、実景を写したことは驚異ですね。
水々しい墨色と確実に形をとらえる筆致、雄大に組立てる構図は雪舟の優れた画技の頂点というべき作品でしょう。
雪舟の作品は3点も並んでいます!こんな贅沢な展示はめったにありません。
•中国絵画:宋元絵画と京都
前期は宋・元時代にスポットをあて、東山御物でもある伝牧谿筆「遠浦帰帆図」も素晴らしいのですが、今回は長年見たかった伝徽宗筆「秋景冬景山水図」が素晴らしかった!
山梨の久遠寺が蔵する夏景山水図と同じく、中国所蔵家の「仲明珍玩」「盧氏家蔵」の印と足利3代将軍義満の蔵有を示す「天山」印が押され、絹幅・作風も共通するところから、元来は、失われた春景図をふくめて4幅揃いの四季山水図であったと考えらています。
この両幅は10代将軍義稙(よしたね)のときに大内氏に渡り、明智院を経て、金地院崇伝に贈られたものだそうで、徽宗皇帝の筆者伝承は日本に渡ってからのものと思われますが、構図は馬遠の辺角の景に、皴法では梁楷に類似しながらも、やや先行する特色を示していて、制作時期は12世紀後半と考えられています。
今年は三井記念美術館の「東山御物の美」でも拝見できます。贅沢な年だな〜。
•近世絵画:京のにぎわい
洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳筆 4曲1双、釈迦堂春景図屏風 狩野松栄筆 2曲1隻が親子で展示。松栄の作品はきれいなのですが、何かインパクトに欠ける様な・・・・。
祇園祭礼図屏風、知っている山鉾を探したり、町の風景を楽しんでいたら、時間がなくなってしまい鑑賞を中断。またじっくり見たいですね。
今回は、「国宝 鳥獣戯画と高山寺展」には行かなかったのですが、山口晃さんの「ヘンな日本美術史」によると、この絵巻は甲巻は動物の擬人化、乙巻は麒麟や獅子など想像上のむ含めて動物を動物として書き、空想の世界へ。丙巻は擬人化された動物の中に人がでてくる。描き方はしっかりしています。
最後の丁巻。ここでは人間だけ。びっくりするくらい奔放な筆致で即興性に溢れている。
丙丁は甲乙から制作年代が下ると言われていますが、巻が下るほど先の巻を参照して、応答する形で進んでいくという構成だそう。
13時に着いたらなんと入場150分待ち!さらに甲巻を見るのに80分。東京に帰れなくなってしまいます。。。
11月に行くつもりですが大変ですね〜。
来年は東博で「鳥獣戯画と高山寺展」が開催されるようですが、そのときも混みそうだし。。
ちなみに今日は台風で10時半から臨時休館。それまでに入れた人はどうなったのでしょう?