2016年07月09日
「開館50周年記念美の祝典V - 江戸絵画の華やぎ - 」展 出光美術館
今年開館50周年を迎えた出光美術館。「美の祝典」では、国宝・重要文化財を中心とする所蔵絵画作品を厳選し、3部構成によって公開しています。第3部のテーマは「江戸絵画」。伝統的な価値観が解放されていく江戸時代、狩野派、琳派、そして浮世絵といった諸派の画家たちが活躍しました。本展では、重要文化財の「祇園祭礼図屏風」、喜多川歌麿「更衣美人図」や酒井抱一「風神雷神図屏風」などの優品が展示。また、国宝も特別展示中です。
「伴大納言絵巻」下巻は、 上中巻のようなダイナミックな場面はなく、ひたすら悲劇の場面が続きます。有名なのが、応天門の放火の嫌疑をかけられて牛車で身柄を引かれている伴善男。
彼の姿は牛車に乗り込んだ袂しか確認できません。作者は伴善男の姿をあえて描かなかったのでしょうが、上中巻にも描かれていないため、伴善男は一切描かれないという絵巻になるわけです。どのような意図があったのでしょう。
実物を鑑賞する前にかなり詳しい解説のパネルがあるので、まったく予備知識のない方でも絵巻を楽しむことができます。
さて、今回の展覧会の目玉は《伴大納言絵巻》だけではありません。
重要文化財である喜多川歌麿の肉筆美人画《更衣美人図》をはじめ、《祇園祭礼図屏風》、《江戸名所図屏風》、当時の西欧人が南蛮船で来航した様子を描いた《南蛮屏風》、酒井抱一の《紅白梅図屏風》、《風神雷神図屏風》、《八ツ橋図屏風》、伝尾形光琳《禊図屏風》 、鈴木其一の《四季花木図屏風》、野々村仁清のやきものなど、同美術館の所蔵する珠玉のコレクションが目白押しです。
私が特に気にったのは、酒井抱一筆《十二ヵ月花鳥図貼付屏風》で、1月から12月までの四季の移ろいをそれぞれの季節を象徴する植物と生き物によって描き出した六曲一双の屏風です。そこに描かれた花や昆虫、小鳥の姿が実に色鮮やかで日本の四季の美しさを表現しています。7月の月とすすき、10月の枝にとまった3羽の鳥などに惹かれました。
また《四季日待図巻》英一蝶もおもしろい。正月・五月・九月の特定の日に人々が集まり潔斎して終夜こもって日の出を礼拝する神事が時代を下ると夜通し遊ぶ遊興を描いています。こうした理由で集まることが当時の貴重な娯楽だったのでしょうね。
尾形乾山の焼物も秀逸です。《色絵定家12か月和歌花鳥図角皿》も4枚展示。裏面に絵の説明がありました。光琳が焼物の絵の手本として描いた深省茶碗絵手本なども。
鑑賞後は窓の外に広がる皇居の堀を眺めながら無料サービスの冷たい緑茶を飲んで一服。この絶景とお茶が無料で味わえるというのも出光ならではの楽しみですね。
美の祝典を通して、出光美術館のレベルの高い所蔵品の充実ぶりを再認識しました。
開館50周年記念美の祝典V - 江戸絵画の華やぎ -
会期 2016年06月17日 〜 2016年07月18日
「美の祝典」期間中は開館時間10:00〜18:00、金曜日の延長開館なし
入場料 一般 1000円、大学生・高校生 700円、中学生以下 無料
アクセス 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
電話: 03-5777-8600