2016年06月25日
世界遺産 ポンペイの壁画展
日本とイタリアの国交が樹立されて、今年で150年になります。そんな記念すべき年に、世界遺産として有名な古代都市、ポンペイの壁画展が東京・六本木ヒルズで開催されることになりました。
本展は、ポンペイの出土品の中でも最も人気の高い壁画に焦点を絞り、壁画の役割と、その絵画的な価値を紹介するものです。本展では、壁画コレクションの双璧である、ナポリ国立考古学博物館、ポンペイ監督局の貴重な作品約80点を厳選し、「第1章 建築と風景」、「第2章 日常の生活」、「第3章 神話」、「第4章 神々と信仰」と描かれたテーマごとに紹介し、古代ローマの人々が好んだモチーフや構図、その制作技法に迫ります。あらゆる建造物を美しい絵画で飾り、人生を謳歌した人々の美意識を、当時の室内を飾ったすがたそのままに、一連の空間装飾として一部再現展示します。出品作品のなかでも皇帝崇拝の場であるアウグステウムから出土した《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》は、ギリシャ神話を題材にした美しい壁画で、本邦初公開であると同時に、海を渡って初めて持ち出される大変重要な作品です。
ポンペイ壁画のまさに決定版ともいえる展覧会を、ぜひご覧ください。[美術館サイトより]
西暦79年、繁栄をきわめたイタリア・ポンペイの町は、想像を絶する規模となったヴェスヴィオ火山の噴火により、一瞬にしてその歴史に幕をおろすこととなります。
これまでも古代都市ポンペイを紹介する展覧会は日本で開催されて来ましたが、ポンペイ遺跡の中でも際立って人気の高い壁画だけを紹介する展覧会は今回が初めてのことです。
壁画と言っても、ポンペイの遺跡から出土した壁画だけでも、紀元前2世紀から街が火山に飲み込まれて消滅した紀元79年までの約300年間で、大きく分けると「第1様式」〜「第4様式」まで、4つの様式が確認されています。展示会では、時代ごとに細かくその壁画の描かれ方が変わっていくところも、わかりやすく前半部分の展示で説明されています。
第T章 建築と風景
ポンペイでは、ローマの植民都市となる以前、前2世紀頃から壁画が描かれていました。火山の噴火により地中に埋没する西暦79年までの間、描き継がれた壁画の様式は大きく4つに分類されます。建物の外観を模した立体的な装飾が特徴の第1様式。遠近法を駆使して巨大な建築物をだまし絵のように描いた第2様式。平面的かつ非現実的な装飾モティーフを規則的に配した第3様式。様々な要素が混在する第4様式。これら4つの様式は、おおむね時代にしたがって変遷していきました。本章では、幻想的な建築物や風景を描いた壁画を取り上げながら、各様式の特徴と違いをご覧いただきます。また発掘された壁画の制作道具、顔料の展示を通じて、その制作技法を紹介します。[美術館サイトより]
《赤い建築を描いた壁面装飾》 前1世紀後半、第2様式入口入って次の部屋の右側一面に展示されています。紀元前1世紀後半頃の「第2様式」と呼ばれるスタイルで描かれており、その特徴は、飛び出す絵本的な効果を持つ遠近法の使い方をしていることです。2000年も前に、一種の『だまし絵』的な立体感を持たせる技法が既に完成していたんだな、と感心しました。マグリッドなど、現在のシュールレアリズムのよう。真っ赤な神殿に想像上の動物や女神像を配置、部屋の中壁面いっぱいに空想上の豪華な建造物が描かれています。
《詩人のタブロー画がある壁面断片》部分(ポンペイ、黄金の腕輪の家) 前1世紀初頭、第3様式
第U章 日常の生活
古代ローマ時代の住居は、街中の家(ドムス)と郊外の別荘(ウィラ)に二分されます。古代ローマの人々は自然を愛し、農業という生産活動を尊重しました。美しい自然のそばにウィラを建て、街中のドムスには中庭を作ります。自然は愛でられるものであり、また豊かな恵みをもたらすものでした。壁画にも樹木や果実、鳥や魚、小動物など多くの自然モティーフを見ることができます。本章では、ポンペイの人々の日常生活が窺える作品を中心に紹介します。加えて、葡萄酒の生産拠点として建てられた「カルミアーノの農園別荘」の一室(トリクリニウム=食堂)を再現し、自然の恵みに祝杯をささげる古代ローマの人々の生活を追体験していただきます。[美術館サイトより]
カルミアーノの農園別荘(壁画を一連の空間装飾として再現した展示イメージ)
当時の姿そのままに立体展示している「カルミアーノの農園別荘」の一室です。総壁長16メートルの再現展示がなされた空間は、まるで2000年前のポンペイの別荘に誘われたかのような時空を超えた体験が待っています。今回の展示会の見どころの一つが、農園別荘の壁画です。北側の入口をくぐると、正面、つまり南側にあるのがディオニュソスの凱旋ですディオニュソスはギリシャ神話に登場するワインの神様です。農園別荘の壁画のイメージにぴったりですね。東側の壁には、ディオニュソスとケレスの壁画が描かれています。ケレスというのはデメテルのことですね。ギリシャ神話に登場する、豊穣の神です。西側の壁には、同じくギリシャ神話のポセイドンとアミュモネの絵が描かれています。
下には池に浮かぶ鳥が描かれていますが、まるで蓮池水禽図のようでした。
《植物の燭台》部分 後30〜40年、第3様式
《小鳥》 後20〜40年、第3様式
第V章 神話
古代ローマ人にとって必須の教養の一つがギリシアの文化でした。彼らはギリシア神話にもとづく神話画を自身の邸宅の壁画に描かせ、自らの教養を誇示するようになります。作品における神々の姿には、ギリシア時代あるいはヘレニズム時代の偉大な芸術家が生み出した「型」が踏襲されました。鑑賞者には、神話のストーリーだけでなく、様々な芸術作品に対する知識が求められていたのです。本章では、ギリシア神話を主題にした作品、神話の神々が登場する作品を紹介します。なかでも、皇帝を顕彰する建築物アウグステウムを彩った作品は本展覧会の目玉。無名の職人が手がけた他の多くの壁画とは一線を画す、当代最高水準の美を間近に見ることができます。[美術館サイトより]
過去一度を除いてイタリア国外に持ちだされたことのない《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》。絵画的な完成度の高さと、2000年近い時を超えて蘇った奇跡的な美しさを誇る作品。
《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス (エルコラーノ、アウグステウム出土) 後1世紀後半、第4様式 下部に描かれたライオン、鹿、鷹の表現も見事です。ヘラクレスと向かい合っている女性らしき人物は、アルカディア地方を神格化した、女神アルカディア。
《ケイロンによるアキレウスの教育》(エルコラーノ、アウグステウム出土) 後1世紀後半、第4様式
《テセウスのミノタウロス退治》(エルコラーノ、アウグステウム出土)
牛の頭のついた人間ミノタウロスが倒れているのがわかります。
この3点はルネッサンス時代の作品かと思うほど完成度が高い。「名もない巨匠」の解説にも納得です。
第W章 神々と信仰
古代ローマの世界にはさまざまな神があふれていました。ギリシアのアフロディテがローマのウェヌスにあたるなど、ギリシア文化の絶大な影響のもと主な神々の習合は進みます。ただし、その土地固有の信仰はつづき、著名な神々でもその属性は地方によって差がありました。加えて領土の拡大とともにエジプトのイシス信仰がもたらされるなど、多種多様な信仰の様相を見て取ることができます。本章では、神々の像を描いた壁画、または意匠化された神々の眷属、「勝利」や「季節」といった概念の擬人化像が登場する壁画を紹介し、古代ローマにおける信仰の様子を探ります。。[美術館サイトより]
ポンペイの「船団の家」から出土した、小さな壁画「踊るマイナス」「マイナス」とは、ディオニュソス神に付き従う、熱狂的な女性信者。ディオニュソスとともに、野山で歌い踊り、駆け回ると考えられていました。
このマイナス像も、踊を踊っている最中のような、軽やかな動きをしています。
暗い背景の色の中に浮かぶ柔らかな女性像は、透明感があり幻想的。
特徴的な「ポンペイの赤」と呼ばれる色彩ですが、当初は黄色で高温と火山灰で変色したものもあるとか。
ヘルメス、竪琴を弾くアポロ、ウェヌス、デメテルなど想像以上に色彩豊かで美しい壁画ばかりでした。これまで2回ポンペイには行っていますが、遺跡ではこうした壁画はほとんど見ることはできません。会場では、「ポンペイに行った気になれるよ〜」っていう撮影コーナーもありましたが(笑)、またイタリアに行きたいと思う展覧会でした。
まだご覧になっていない方は、ぜひ足を運んでみてくださいね〜!
日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展
会期: 2016年4月29日(金・祝)〜7月3日(日) 会期中無休
会場: 森アーツセンターギャラリー
開館時間:午前10時〜午後8時(5月3日をのぞく火曜日は午後5時まで) ※入館はいずれも閉館時間の30分前まで
本展は、ポンペイの出土品の中でも最も人気の高い壁画に焦点を絞り、壁画の役割と、その絵画的な価値を紹介するものです。本展では、壁画コレクションの双璧である、ナポリ国立考古学博物館、ポンペイ監督局の貴重な作品約80点を厳選し、「第1章 建築と風景」、「第2章 日常の生活」、「第3章 神話」、「第4章 神々と信仰」と描かれたテーマごとに紹介し、古代ローマの人々が好んだモチーフや構図、その制作技法に迫ります。あらゆる建造物を美しい絵画で飾り、人生を謳歌した人々の美意識を、当時の室内を飾ったすがたそのままに、一連の空間装飾として一部再現展示します。出品作品のなかでも皇帝崇拝の場であるアウグステウムから出土した《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》は、ギリシャ神話を題材にした美しい壁画で、本邦初公開であると同時に、海を渡って初めて持ち出される大変重要な作品です。
ポンペイ壁画のまさに決定版ともいえる展覧会を、ぜひご覧ください。[美術館サイトより]
西暦79年、繁栄をきわめたイタリア・ポンペイの町は、想像を絶する規模となったヴェスヴィオ火山の噴火により、一瞬にしてその歴史に幕をおろすこととなります。
これまでも古代都市ポンペイを紹介する展覧会は日本で開催されて来ましたが、ポンペイ遺跡の中でも際立って人気の高い壁画だけを紹介する展覧会は今回が初めてのことです。
壁画と言っても、ポンペイの遺跡から出土した壁画だけでも、紀元前2世紀から街が火山に飲み込まれて消滅した紀元79年までの約300年間で、大きく分けると「第1様式」〜「第4様式」まで、4つの様式が確認されています。展示会では、時代ごとに細かくその壁画の描かれ方が変わっていくところも、わかりやすく前半部分の展示で説明されています。
第T章 建築と風景
ポンペイでは、ローマの植民都市となる以前、前2世紀頃から壁画が描かれていました。火山の噴火により地中に埋没する西暦79年までの間、描き継がれた壁画の様式は大きく4つに分類されます。建物の外観を模した立体的な装飾が特徴の第1様式。遠近法を駆使して巨大な建築物をだまし絵のように描いた第2様式。平面的かつ非現実的な装飾モティーフを規則的に配した第3様式。様々な要素が混在する第4様式。これら4つの様式は、おおむね時代にしたがって変遷していきました。本章では、幻想的な建築物や風景を描いた壁画を取り上げながら、各様式の特徴と違いをご覧いただきます。また発掘された壁画の制作道具、顔料の展示を通じて、その制作技法を紹介します。[美術館サイトより]
《赤い建築を描いた壁面装飾》 前1世紀後半、第2様式入口入って次の部屋の右側一面に展示されています。紀元前1世紀後半頃の「第2様式」と呼ばれるスタイルで描かれており、その特徴は、飛び出す絵本的な効果を持つ遠近法の使い方をしていることです。2000年も前に、一種の『だまし絵』的な立体感を持たせる技法が既に完成していたんだな、と感心しました。マグリッドなど、現在のシュールレアリズムのよう。真っ赤な神殿に想像上の動物や女神像を配置、部屋の中壁面いっぱいに空想上の豪華な建造物が描かれています。
《詩人のタブロー画がある壁面断片》部分(ポンペイ、黄金の腕輪の家) 前1世紀初頭、第3様式
第U章 日常の生活
古代ローマ時代の住居は、街中の家(ドムス)と郊外の別荘(ウィラ)に二分されます。古代ローマの人々は自然を愛し、農業という生産活動を尊重しました。美しい自然のそばにウィラを建て、街中のドムスには中庭を作ります。自然は愛でられるものであり、また豊かな恵みをもたらすものでした。壁画にも樹木や果実、鳥や魚、小動物など多くの自然モティーフを見ることができます。本章では、ポンペイの人々の日常生活が窺える作品を中心に紹介します。加えて、葡萄酒の生産拠点として建てられた「カルミアーノの農園別荘」の一室(トリクリニウム=食堂)を再現し、自然の恵みに祝杯をささげる古代ローマの人々の生活を追体験していただきます。[美術館サイトより]
カルミアーノの農園別荘(壁画を一連の空間装飾として再現した展示イメージ)
当時の姿そのままに立体展示している「カルミアーノの農園別荘」の一室です。総壁長16メートルの再現展示がなされた空間は、まるで2000年前のポンペイの別荘に誘われたかのような時空を超えた体験が待っています。今回の展示会の見どころの一つが、農園別荘の壁画です。北側の入口をくぐると、正面、つまり南側にあるのがディオニュソスの凱旋ですディオニュソスはギリシャ神話に登場するワインの神様です。農園別荘の壁画のイメージにぴったりですね。東側の壁には、ディオニュソスとケレスの壁画が描かれています。ケレスというのはデメテルのことですね。ギリシャ神話に登場する、豊穣の神です。西側の壁には、同じくギリシャ神話のポセイドンとアミュモネの絵が描かれています。
下には池に浮かぶ鳥が描かれていますが、まるで蓮池水禽図のようでした。
《植物の燭台》部分 後30〜40年、第3様式
《小鳥》 後20〜40年、第3様式
第V章 神話
古代ローマ人にとって必須の教養の一つがギリシアの文化でした。彼らはギリシア神話にもとづく神話画を自身の邸宅の壁画に描かせ、自らの教養を誇示するようになります。作品における神々の姿には、ギリシア時代あるいはヘレニズム時代の偉大な芸術家が生み出した「型」が踏襲されました。鑑賞者には、神話のストーリーだけでなく、様々な芸術作品に対する知識が求められていたのです。本章では、ギリシア神話を主題にした作品、神話の神々が登場する作品を紹介します。なかでも、皇帝を顕彰する建築物アウグステウムを彩った作品は本展覧会の目玉。無名の職人が手がけた他の多くの壁画とは一線を画す、当代最高水準の美を間近に見ることができます。[美術館サイトより]
過去一度を除いてイタリア国外に持ちだされたことのない《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》。絵画的な完成度の高さと、2000年近い時を超えて蘇った奇跡的な美しさを誇る作品。
《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス (エルコラーノ、アウグステウム出土) 後1世紀後半、第4様式 下部に描かれたライオン、鹿、鷹の表現も見事です。ヘラクレスと向かい合っている女性らしき人物は、アルカディア地方を神格化した、女神アルカディア。
《ケイロンによるアキレウスの教育》(エルコラーノ、アウグステウム出土) 後1世紀後半、第4様式
《テセウスのミノタウロス退治》(エルコラーノ、アウグステウム出土)
この3点はルネッサンス時代の作品かと思うほど完成度が高い。「名もない巨匠」の解説にも納得です。
第W章 神々と信仰
古代ローマの世界にはさまざまな神があふれていました。ギリシアのアフロディテがローマのウェヌスにあたるなど、ギリシア文化の絶大な影響のもと主な神々の習合は進みます。ただし、その土地固有の信仰はつづき、著名な神々でもその属性は地方によって差がありました。加えて領土の拡大とともにエジプトのイシス信仰がもたらされるなど、多種多様な信仰の様相を見て取ることができます。本章では、神々の像を描いた壁画、または意匠化された神々の眷属、「勝利」や「季節」といった概念の擬人化像が登場する壁画を紹介し、古代ローマにおける信仰の様子を探ります。。[美術館サイトより]
ポンペイの「船団の家」から出土した、小さな壁画「踊るマイナス」「マイナス」とは、ディオニュソス神に付き従う、熱狂的な女性信者。ディオニュソスとともに、野山で歌い踊り、駆け回ると考えられていました。
このマイナス像も、踊を踊っている最中のような、軽やかな動きをしています。
特徴的な「ポンペイの赤」と呼ばれる色彩ですが、当初は黄色で高温と火山灰で変色したものもあるとか。
ヘルメス、竪琴を弾くアポロ、ウェヌス、デメテルなど想像以上に色彩豊かで美しい壁画ばかりでした。これまで2回ポンペイには行っていますが、遺跡ではこうした壁画はほとんど見ることはできません。会場では、「ポンペイに行った気になれるよ〜」っていう撮影コーナーもありましたが(笑)、またイタリアに行きたいと思う展覧会でした。
まだご覧になっていない方は、ぜひ足を運んでみてくださいね〜!
日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展
会期: 2016年4月29日(金・祝)〜7月3日(日) 会期中無休
会場: 森アーツセンターギャラリー
開館時間:午前10時〜午後8時(5月3日をのぞく火曜日は午後5時まで) ※入館はいずれも閉館時間の30分前まで