2014年10月13日
京へのいざない「ズラリ国宝、ずらり重文」
10月12日、京都国立博物館、平成知新館オーブン記念展の「京へのいざない」展に、九州の帰りに行ってきました。
まず会場の「平成知新館」が素晴らしい。シンプルで簡潔ながら、美しく機能的なデザインです。
国宝の伝源頼朝像や伝平重盛像をふくめ、国宝や重文が、10月13日までが一期、そのあと11月16日までが二期で、合わせて四百点が展示されます。詳しくは京博のサイトをご覧ください。http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/index.html
2階の特集展示を行う特別展示室(時期によって場所は変わります)では、前期は肖像画、後期は豊臣秀吉を特集します。
今回は肖像画特集。「伝源頼朝像」「伝平重盛像」は日本の肖像画作品で最も優れているといわれる逸品。神護寺では、後白河法皇を間にはさんで3幅が展示されていましたが、今回は鳥羽天皇像(満願寺)が真ん中に。
歴史の教科書にも載っていた有名な作品ですが、今回初めて美術館で見て、お寺で自然光で見るのとは違ったとても荘厳な印象を受けました。照明や展示のしかたも素晴らしいのでしょうね。また改めて見てみると、かなり大きな肖像画だなと思いました。ほぼ等身大。3点を近くで見るだけでなく、遠くから見ても圧巻でした。
「伝源頼朝像」は、美術史家の米倉迪夫さんが足利尊氏の弟・直義(ただよし)説を発表し、いまだに日本美術史における大きな問題となっています。
山下裕二先生は美術手帖2009年6月号で「この絵のリアルで洗練された容貌の描き方は、中国絵画史の分厚いバックグラウンドを反映している。中国絵画の手法を消化したのちに初めて生み出されるもので、宋時代の肖像画の豊かさを醸成しないと絶対に生まれない。」ので、この説を300%支持するとおっしゃっています。
個人的には源頼朝像と思いたいのですが、どうなんでしょう?
あと印象に残ったのが、後宇多天皇像。
元寇のときの天皇ですが、なぜか口をあけてびっくりした表情をしています。
「えっ!! また元の軍が来たの?!」とでも言っているようで、面白かったです。
中世絵画:幽玄の美―山水画の世界―
このコーナーは、前期は水墨画、後期は華やかな花鳥画でこちらも全く違う作品を楽しめます。
まず国宝「瓢鰻図」。画題は、禅への傾倒の深かった室町幕府4代将軍、足利義持の問いかけを反映したもの。
雪舟の「天橋立図」。日本三景の1つ、丹後天の橋立を東側から鳥瞰的にとらえた図で、図中の智恩寺の多宝塔と成相寺の伽藍が同時に描かれることから、制作期が一応明応10年(1501)から永正3年(1506)の間とされています。
雪舟(1420−1506)が80歳を越してなお現地に足を運んで、実景を写したことは驚異ですね。
水々しい墨色と確実に形をとらえる筆致、雄大に組立てる構図は雪舟の優れた画技の頂点というべき作品でしょう。
雪舟の作品は3点も並んでいます!こんな贅沢な展示はめったにありません。
•中国絵画:宋元絵画と京都
前期は宋・元時代にスポットをあて、東山御物でもある伝牧谿筆「遠浦帰帆図」も素晴らしいのですが、今回は長年見たかった伝徽宗筆「秋景冬景山水図」が素晴らしかった!
山梨の久遠寺が蔵する夏景山水図と同じく、中国所蔵家の「仲明珍玩」「盧氏家蔵」の印と足利3代将軍義満の蔵有を示す「天山」印が押され、絹幅・作風も共通するところから、元来は、失われた春景図をふくめて4幅揃いの四季山水図であったと考えらています。
この両幅は10代将軍義稙(よしたね)のときに大内氏に渡り、明智院を経て、金地院崇伝に贈られたものだそうで、徽宗皇帝の筆者伝承は日本に渡ってからのものと思われますが、構図は馬遠の辺角の景に、皴法では梁楷に類似しながらも、やや先行する特色を示していて、制作時期は12世紀後半と考えられています。
今年は三井記念美術館の「東山御物の美」でも拝見できます。贅沢な年だな〜。
•近世絵画:京のにぎわい
洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳筆 4曲1双、釈迦堂春景図屏風 狩野松栄筆 2曲1隻が親子で展示。松栄の作品はきれいなのですが、何かインパクトに欠ける様な・・・・。
祇園祭礼図屏風、知っている山鉾を探したり、町の風景を楽しんでいたら、時間がなくなってしまい鑑賞を中断。またじっくり見たいですね。
今回は、「国宝 鳥獣戯画と高山寺展」には行かなかったのですが、山口晃さんの「ヘンな日本美術史」によると、この絵巻は甲巻は動物の擬人化、乙巻は麒麟や獅子など想像上のむ含めて動物を動物として書き、空想の世界へ。丙巻は擬人化された動物の中に人がでてくる。描き方はしっかりしています。
最後の丁巻。ここでは人間だけ。びっくりするくらい奔放な筆致で即興性に溢れている。
丙丁は甲乙から制作年代が下ると言われていますが、巻が下るほど先の巻を参照して、応答する形で進んでいくという構成だそう。
13時に着いたらなんと入場150分待ち!さらに甲巻を見るのに80分。東京に帰れなくなってしまいます。。。
11月に行くつもりですが大変ですね〜。
来年は東博で「鳥獣戯画と高山寺展」が開催されるようですが、そのときも混みそうだし。。
ちなみに今日は台風で10時半から臨時休館。それまでに入れた人はどうなったのでしょう?
まず会場の「平成知新館」が素晴らしい。シンプルで簡潔ながら、美しく機能的なデザインです。
国宝の伝源頼朝像や伝平重盛像をふくめ、国宝や重文が、10月13日までが一期、そのあと11月16日までが二期で、合わせて四百点が展示されます。詳しくは京博のサイトをご覧ください。http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/index.html
2階の特集展示を行う特別展示室(時期によって場所は変わります)では、前期は肖像画、後期は豊臣秀吉を特集します。
今回は肖像画特集。「伝源頼朝像」「伝平重盛像」は日本の肖像画作品で最も優れているといわれる逸品。神護寺では、後白河法皇を間にはさんで3幅が展示されていましたが、今回は鳥羽天皇像(満願寺)が真ん中に。
歴史の教科書にも載っていた有名な作品ですが、今回初めて美術館で見て、お寺で自然光で見るのとは違ったとても荘厳な印象を受けました。照明や展示のしかたも素晴らしいのでしょうね。また改めて見てみると、かなり大きな肖像画だなと思いました。ほぼ等身大。3点を近くで見るだけでなく、遠くから見ても圧巻でした。
「伝源頼朝像」は、美術史家の米倉迪夫さんが足利尊氏の弟・直義(ただよし)説を発表し、いまだに日本美術史における大きな問題となっています。
山下裕二先生は美術手帖2009年6月号で「この絵のリアルで洗練された容貌の描き方は、中国絵画史の分厚いバックグラウンドを反映している。中国絵画の手法を消化したのちに初めて生み出されるもので、宋時代の肖像画の豊かさを醸成しないと絶対に生まれない。」ので、この説を300%支持するとおっしゃっています。
個人的には源頼朝像と思いたいのですが、どうなんでしょう?
あと印象に残ったのが、後宇多天皇像。
元寇のときの天皇ですが、なぜか口をあけてびっくりした表情をしています。
「えっ!! また元の軍が来たの?!」とでも言っているようで、面白かったです。
中世絵画:幽玄の美―山水画の世界―
このコーナーは、前期は水墨画、後期は華やかな花鳥画でこちらも全く違う作品を楽しめます。
まず国宝「瓢鰻図」。画題は、禅への傾倒の深かった室町幕府4代将軍、足利義持の問いかけを反映したもの。
雪舟の「天橋立図」。日本三景の1つ、丹後天の橋立を東側から鳥瞰的にとらえた図で、図中の智恩寺の多宝塔と成相寺の伽藍が同時に描かれることから、制作期が一応明応10年(1501)から永正3年(1506)の間とされています。
雪舟(1420−1506)が80歳を越してなお現地に足を運んで、実景を写したことは驚異ですね。
水々しい墨色と確実に形をとらえる筆致、雄大に組立てる構図は雪舟の優れた画技の頂点というべき作品でしょう。
雪舟の作品は3点も並んでいます!こんな贅沢な展示はめったにありません。
•中国絵画:宋元絵画と京都
前期は宋・元時代にスポットをあて、東山御物でもある伝牧谿筆「遠浦帰帆図」も素晴らしいのですが、今回は長年見たかった伝徽宗筆「秋景冬景山水図」が素晴らしかった!
山梨の久遠寺が蔵する夏景山水図と同じく、中国所蔵家の「仲明珍玩」「盧氏家蔵」の印と足利3代将軍義満の蔵有を示す「天山」印が押され、絹幅・作風も共通するところから、元来は、失われた春景図をふくめて4幅揃いの四季山水図であったと考えらています。
この両幅は10代将軍義稙(よしたね)のときに大内氏に渡り、明智院を経て、金地院崇伝に贈られたものだそうで、徽宗皇帝の筆者伝承は日本に渡ってからのものと思われますが、構図は馬遠の辺角の景に、皴法では梁楷に類似しながらも、やや先行する特色を示していて、制作時期は12世紀後半と考えられています。
今年は三井記念美術館の「東山御物の美」でも拝見できます。贅沢な年だな〜。
•近世絵画:京のにぎわい
洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳筆 4曲1双、釈迦堂春景図屏風 狩野松栄筆 2曲1隻が親子で展示。松栄の作品はきれいなのですが、何かインパクトに欠ける様な・・・・。
祇園祭礼図屏風、知っている山鉾を探したり、町の風景を楽しんでいたら、時間がなくなってしまい鑑賞を中断。またじっくり見たいですね。
今回は、「国宝 鳥獣戯画と高山寺展」には行かなかったのですが、山口晃さんの「ヘンな日本美術史」によると、この絵巻は甲巻は動物の擬人化、乙巻は麒麟や獅子など想像上のむ含めて動物を動物として書き、空想の世界へ。丙巻は擬人化された動物の中に人がでてくる。描き方はしっかりしています。
最後の丁巻。ここでは人間だけ。びっくりするくらい奔放な筆致で即興性に溢れている。
丙丁は甲乙から制作年代が下ると言われていますが、巻が下るほど先の巻を参照して、応答する形で進んでいくという構成だそう。
13時に着いたらなんと入場150分待ち!さらに甲巻を見るのに80分。東京に帰れなくなってしまいます。。。
11月に行くつもりですが大変ですね〜。
来年は東博で「鳥獣戯画と高山寺展」が開催されるようですが、そのときも混みそうだし。。
ちなみに今日は台風で10時半から臨時休館。それまでに入れた人はどうなったのでしょう?