2018年05月24日
失語症者の知能低下 〜ST・STS向け〜
皆さんこんにちは。
言語聴覚士の桃の助です![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
本日は失語症者の知能低下についてお話ししたいと思います。
はじめに言っておきますが、このページは非常に専門的な内容のオンパレードです。
言語聴覚士、言語聴覚学科の学生対象に書きますので、その他の方は他のページをご覧ください![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
![](https://www21.a8.net/svt/bgt?aid=180302830086&wid=001&eno=01&mid=s00000013960001041000&mc=1)
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私は臨床実習で学生指導を行っています。
学生が失語症患者を担当した場合にSLTA以外にも必ず知能検査もしたいと言ってきます。
確かに失語症の方に対して知能検査を行う事は有意義であり、今後の支援に対して一つの指標となることでしょう。
学生の話を聞いていると、「失語症は知能低下が無いにも関わらず、言葉が思い出せない、理解できないといった症状を呈する状態」と考えているようです。
ではなぜそういった考えになるのか?
本当にそうなのか考えていきたいと思います。
![figure_question.png](/hokadehaosietekurenai/file/figure_question-thumbnail2.png)
![kid_job_girl_teacher.png](/hokadehaosietekurenai/file/kid_job_girl_teacher-a0006-thumbnail2.png)
1861年にブローカが発表した運動性失語の報告で、知的障がいが無いにも関わらず、言葉を話せない状態と報告しています。
ブローカと言えばブローカ失語を発見した大偉人です。
その人が言った言葉と言うと誰しもが信じてしまうかもしれません。
私も授業で「失語症は知能低下がないにも関わらず、会話ができない状態」と習いました。
しかし一方で、1879年にジャクソンが発表した論文では、失語症は知的障がいに起因しているという立場をとっています。
その後も長年に渡り知的機能低下が原因かどうかという論争が行われたようですが、決着したのかは定かではありません。
知的障がいが起因した失語症でないという考えは間違っていないと思います。
つまり、知的障がいによって話せなくなったわけではなく、失語症が出現した結果、知的機能の低下が起こったと考える方が妥当だと私は思います。
つまり、脳卒中後に失語症を呈し、その結果知的機能が低下したと考えています。
![コース立方体組み合わせテスト イメージ.png](/hokadehaosietekurenai/file/E382B3E383BCE382B9E7AB8BE696B9E4BD93E7B584E381BFE59088E3828FE3819BE38386E382B9E38388E38080E382A4E383A1E383BCE382B8-thumbnail2.png)
知能を測定する検査として、コース立方体組み合わせテストやレーヴン色彩マトリックス検査、WAISなどがあります。
一つコース立方体組み合わせテストの例をとって考えてみたいと思います。
もし、あなたがコース立方体組み合わせテストを被検者として検査されたとしたら、完成までにどんな事を考えますか?
「ここは赤か…」
「ここは三角形になっているから…」
「16個だから縦4個、横4個だな…」etc…
なんてことを頭の中で考えると思います。
では、次に失語症者の頭の中を考えていきたいと思います。
「ここがこうなって」
「ここはこうかな?」
「なんだこれ?」
「し、し、四角形?」
「4個、4個、全部で?あれ?」
といった具合に頭の中で考えている可能性が高いのです。
つまり、頭の中でも喚語困難や語想起困難は出現しているので、代名詞主体の思考になっているはずです。
そうすると、より深い考えは生まれず、端的な考え方になりがちなのです。
また、錯語が出現する場合もあるかもしれないので、途中で何を考えていたのか分からなくなってしまう可能性も大いにあります。
先行研究を見ていくと、失語症によって知能低下は生じる場合とそうでない場合とがあるようです。
傾向としては、@軽微な失語症では知能低下はきたしにくい、A失語症が重度になればなるほど知能低下は比例する、という結果が出ていました。
つまり、知的障がいによって失語症が生じるのではなく、失語症によって知能低下が起こる可能性があるという結果だと考えられます。
ここまで読んで頂ければ、たいていの学生さんは「学校で習った内容と違う!」「レポートにどう書こう?」という話になると思います。
もし、担当患者さんが失語症で、軽度知能低下がみられた場合には、「軽度知能低下がみられているが、会話能力低下に直接起因する程度ではなく、会話力を低下させている原因は失語症である」といった書き方をすればいいと思います。
本日は難しい内容になってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。
この他にも色々な記事を書いているので、読んで頂けると嬉しいです。
それではまた。
桃の助でした![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
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言語聴覚士の桃の助です
![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
本日は失語症者の知能低下についてお話ししたいと思います。
はじめに言っておきますが、このページは非常に専門的な内容のオンパレードです。
言語聴覚士、言語聴覚学科の学生対象に書きますので、その他の方は他のページをご覧ください
![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
![](https://www18.a8.net/0.gif?a8mat=2ZCIJY+1F7ASY+2ZPS+674EP)
私は臨床実習で学生指導を行っています。
学生が失語症患者を担当した場合にSLTA以外にも必ず知能検査もしたいと言ってきます。
確かに失語症の方に対して知能検査を行う事は有意義であり、今後の支援に対して一つの指標となることでしょう。
学生の話を聞いていると、「失語症は知能低下が無いにも関わらず、言葉が思い出せない、理解できないといった症状を呈する状態」と考えているようです。
ではなぜそういった考えになるのか?
本当にそうなのか考えていきたいと思います。
![figure_question.png](/hokadehaosietekurenai/file/figure_question-thumbnail2.png)
ブローカが言った知能低下が原因でない説
![kid_job_girl_teacher.png](/hokadehaosietekurenai/file/kid_job_girl_teacher-a0006-thumbnail2.png)
1861年にブローカが発表した運動性失語の報告で、知的障がいが無いにも関わらず、言葉を話せない状態と報告しています。
ブローカと言えばブローカ失語を発見した大偉人です。
その人が言った言葉と言うと誰しもが信じてしまうかもしれません。
私も授業で「失語症は知能低下がないにも関わらず、会話ができない状態」と習いました。
しかし一方で、1879年にジャクソンが発表した論文では、失語症は知的障がいに起因しているという立場をとっています。
その後も長年に渡り知的機能低下が原因かどうかという論争が行われたようですが、決着したのかは定かではありません。
イメージとしては間違っていない
知的障がいが起因した失語症でないという考えは間違っていないと思います。
つまり、知的障がいによって話せなくなったわけではなく、失語症が出現した結果、知的機能の低下が起こったと考える方が妥当だと私は思います。
つまり、脳卒中後に失語症を呈し、その結果知的機能が低下したと考えています。
失語症者の知能イメージ
![コース立方体組み合わせテスト イメージ.png](/hokadehaosietekurenai/file/E382B3E383BCE382B9E7AB8BE696B9E4BD93E7B584E381BFE59088E3828FE3819BE38386E382B9E38388E38080E382A4E383A1E383BCE382B8-thumbnail2.png)
知能を測定する検査として、コース立方体組み合わせテストやレーヴン色彩マトリックス検査、WAISなどがあります。
一つコース立方体組み合わせテストの例をとって考えてみたいと思います。
もし、あなたがコース立方体組み合わせテストを被検者として検査されたとしたら、完成までにどんな事を考えますか?
「ここは赤か…」
「ここは三角形になっているから…」
「16個だから縦4個、横4個だな…」etc…
なんてことを頭の中で考えると思います。
では、次に失語症者の頭の中を考えていきたいと思います。
「ここがこうなって」
「ここはこうかな?」
「なんだこれ?」
「し、し、四角形?」
「4個、4個、全部で?あれ?」
といった具合に頭の中で考えている可能性が高いのです。
つまり、頭の中でも喚語困難や語想起困難は出現しているので、代名詞主体の思考になっているはずです。
そうすると、より深い考えは生まれず、端的な考え方になりがちなのです。
また、錯語が出現する場合もあるかもしれないので、途中で何を考えていたのか分からなくなってしまう可能性も大いにあります。
失語症によって生じる知能低下
先行研究を見ていくと、失語症によって知能低下は生じる場合とそうでない場合とがあるようです。
傾向としては、@軽微な失語症では知能低下はきたしにくい、A失語症が重度になればなるほど知能低下は比例する、という結果が出ていました。
つまり、知的障がいによって失語症が生じるのではなく、失語症によって知能低下が起こる可能性があるという結果だと考えられます。
おわりに
ここまで読んで頂ければ、たいていの学生さんは「学校で習った内容と違う!」「レポートにどう書こう?」という話になると思います。
もし、担当患者さんが失語症で、軽度知能低下がみられた場合には、「軽度知能低下がみられているが、会話能力低下に直接起因する程度ではなく、会話力を低下させている原因は失語症である」といった書き方をすればいいと思います。
本日は難しい内容になってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。
この他にも色々な記事を書いているので、読んで頂けると嬉しいです。
それではまた。
桃の助でした
![](https://fanblogs.jp/_images_g/a1.png)
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