Gustave Flabert
Madam Bovary
ボヴァリー夫人
ボヴァリー夫人(20) −−−−−−−−−【20】−−−−−−−−−−−−−−−
Tout reprit son calme. Les têtes se courbèrent
sur les cartons, et le nouveau resta pendant deux
heures dans une tenue exemplaire, quoiqu'il y eût
bien, de temps à autre, quelque boulette de papier
lancée d'un bec de plume qui vînt s'éclabousser
sur sa figure. Mais il s'essuyait avec la main, et
demeurait immobile, les yeux baissés.
..−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−
すっかり静けさが取り戻されました.生徒たちの頭は
書き取りノ−トの上に沈み込みました.新入り生徒のほ
うは、まる2時間、模範的な姿勢でいた.ときどきペン
先で飛ばされた紙からのインク粒を顔に受けていたよう
だが、それを手で拭って、目を伏せたまま不動の姿勢を
保っていた.
−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−
tout:すっかり
reprit:(3単単純過去) < reprendre (他) 再び取る、
取り戻す;このreprendre の主語はcalme で倒置.
そしてreprendre は自動詞として使われています.
reprendreが自動詞のときは「再び始まる」という
意味で用いられます.従って「静けさが再び戻った」
と訳すのが正解です.より正しくは「すっかり静
けさが戻った」
calme:❶(m) 静けさ; ❷(形) 静かな
tête:(f) 頭
se courbèrent:(3複、単純過去) < se courber
❶曲がる、❷身をかがめる、❸頭を下げる
服従する
carton:(m) 厚紙、おそらくここでは厚紙表紙のペンマ
ンシップだったのだろう.書き取りノートと訳し
ました.
pendant:(前) 〜の間
tenue:(f) 行儀、姿勢、
exemplaire:(形) 模範的な
quoique:(接) <quoique + 接続法>
〜とはいえ、〜にもかかわらず
quoiqu'il y eût:(接続法半過去)
たとえ〜があったとしても
de temps à autre:[ドゥトンザオートル] 時折、ときどき
boulette:(f) ❶小さい球;❷[話] 大失敗;
* boule「球」に縮小辞がついたもの
boulette de papier:紙にできたインク粒
lancé(e):(p.passé) 投げられた、飛ばされた
bec:[ベック](m) 鳥のくちばし
bec d'une plume:ペン先
bec de plume:(本文はplumeが無冠詞)意味同様.
de のあとの冠詞は落ちることが多いが特に
どちらでないといけないということはない
ようです.意味は「ペン先で」
boulette de papier lancée d'un bec de plume:
ペン先で弾き飛ばされた紙上のインク粒
vînt:(3単接続法半過去) やってきた (としても)
< venir (自) やって来る
s'éclabousser:(pr) しぶきをあびる
venir + 不定詞:〜しに来る
éclabousser:(他) [〜に]水(泥など)をはねかける
(はねなどで)汚す
venir s'éclabousser:(再来用法) 自分にはねかけに来る
figure:(f) 顔
s'essuyait:(3単半過去) 繰り返し自分の〜を拭っていた
demeurer:〜のままでいる、(同じ状態で)いる
immobile:(形) 動かない、不動の
demeurait immobile:(半過去3単) < demeurer
不動の姿勢を続けていた
les yeux baissés:視線を下げて、うつ向き加減で