進撃のブログ人（びと）

「三匹のおっさん」


　テレビ東京、金曜午後７時５８分

　重厚なオーラに、ほとんどまばたきをしない強い目力。取材した場所は調度品が並ぶテレビ局の役員室。頭取役だったドラマ「半沢直樹」のラストシーンが頭をよぎる。ひょっとして、自分もこれから「出向」を言い渡されるのでは…。いやいや頭取ではなく「おっさん」なのだと言い聞かせて、取材開始。

　「別に大仰なドラマじゃないよ。昔のやんちゃぼうず、今はふつうのおっさんたちが自分の家庭を振り返りつつ、夜回りをして町内のいたずらを懲らしめるという話です」

　定年退職後、幼なじみの友人２人と私設自警団「三匹のおっさん」を作り、街中をパトロールする。家庭内に悩みを抱えつつも、得意の剣道を生かして街の平和を守る「おっさんヒーロー」、キヨ役を演じる。

　数多くのドラマで「大物」役を務めてきた。テレ東の高橋雄一社長も「今回ああいう役を演じてくれるのが意外でうれしかった」と語る配役に、本人は「（普段とは）構え方が違う。友達や周りの人の姿や会話など実体験を踏まえつつ、新鮮な思いでやらせてもらっています」とすっきりとした表情で語る。

　このドラマは「どこにでもある話なんだけど、ある意味理想のコミュニティーが描かれている」という。「今は隣にどんな人が住んでいるのか分からない時代。そんな中、強い絆があるのは素晴らしいし、心がすごく無垢（むく）だと思う。周りからみたら『いい年して、何やってるんだよあのじじい』と思うんだろうけど…」

　話しぶりは丁寧かつ気さく。「半沢直樹」のラストシーンについては「出向じゃなくて『副支店長にする！』って言えばよかった」と冗談を飛ばす一方、「世の中はそううまくいかない。ここで彼が出世すると、周りはもっと彼をねたむだろうね」。演じてきたさまざまな役柄が、今も体にしみこんでいるようだ。

少年時代、「正義の味方」に憧れた。「腰のこっち（左側）に剣をさして、こっち（右側）にはピストルをさしていたよ」。おっさん役はまさに正義の味方。剣道で悪人を懲らしめるシーンでは「少年に帰ったような気がする」と、心底うれしそうに語った。（本間英士）

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　＜きたおおじ・きんや＞昭和１８年、京都府出身。「竜馬がゆく」をはじめ、多くのＮＨＫ大河ドラマに出演。「銭形平次」「子連れ狼」シリーズなど数多くの時代劇で主演を務めた。ドラマ「華麗なる一族」など現代劇でも存在感を発揮。ソフトバンクのＣＭでは「犬のお父さん」の声を務める。左党で、「おいしいお酒なら何でも好き」。


msn産経ニュースより引用しました。