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2016年09月17日

黒部下ノ廊下:開通前踏破(16年9月)

 黒部峡谷の下ノ廊下にチャレンジすべく2016年9月14日(水)に欅平から阿曽原小屋に入りキャンプ泊しました。阿曽原小屋のHPによる事前情報では自宅出発時は下記のような記述でした。

【9月12日】
十字峡〜黒部別山谷間は整備中ですが、今週の天気予報が悪くなり作業が思う様に進まなくなるかもしれません。現在は、手すりの針金が切れている所・草刈りがしてない区間等があります。注意して通って貰えれば通れない訳ではありませんが、怖いのが苦手な方は完全に整備が終わるのを待った方が良いかと思います。週末までには、もう一度確認して来る予定ですが、あまりにも天気が悪いと予定通りに行かないかもしれません。

阿曽原小屋のご主人ともお話し、「なんとか行ける」とのことなので、翌日の15日(木)に下ノ廊下を目指すことにしました。



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コース情報を理解しやすくするために下ノ廊下の地図を添付してみます(地図をクリックすると拡大します)。やはり通行上の問題は、「十字峡〜黒部別山谷出合」にありそうです。では阿曽原小屋から黒部ダムまでの現地状況を紹介してみたいと思います。



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9月14日の13時30分頃に水平歩道をのんびり歩き阿曽原小屋に到着しました。天候は曇りで山の上部はガスっていましたが、まずまずの状態でした。メンバーは当方自遊人Jackと友人で先輩のMickey氏であります。


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小屋の宿泊者はなく、キャンプサイトも我々だけの貸切り状態でした。阿曽原温泉にゆっくりと浸かり、最高に気分の良いリラッックスタイムを過ごせました。


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15日、明るくなる5時半に小屋を出発しました。小屋から急坂を登り権現峠のトンネルを抜けていきます。そして大きく下ると森の中に関電人見平の宿舎が見えてきます。遠くに三枚滝の絶景が広がり黒部の雰囲気が濃くなってきますね。


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ここから関電の施設内(鉄格子の先)を通って工事用のトンネルを進みます。


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施設内は電車の軌道があり、一般的な登山道とは違う別な世界にワープしたような錯覚を覚えます。


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トンネルを抜けて仙人谷ダムに上がります。ダムから下を覗くと高度感に圧倒されます。


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ダムを渡ったところで標識があります。H28年度の工事完了予定は9月21日となっています。阿曽原小屋のHPやご主人のお話し、そしてこの標識など、総合的に判断すると中間部の通行はかなり苦戦するかもしれませんね。最大限の集中力を持って踏破するつもりで進みました。


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黒部川の水の色がすごく綺麗です。東谷の吊り橋を渡り本格的な峡谷に入ります。写真右の山の斜面にある怪しげな建造物は、黒四地下発電所でここが高圧線取り出しの末端部になっているようです。さあ、いよいよ始まるねえ〜


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絶壁に付けられている歩道は、昨日阿曽原小屋まで通ってきた水平歩道に比べ、一段と荒々しさを増してきますが、同時に黒部の大自然や迫力に唖然とさせられます。


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谷はV字に切れ込み、かつS字に曲がりながら名前を「S字峡」→「半月峡」と変え「この先どうなるの?」と期待させてくれます。


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絶壁に作られた水平歩道を進みます。人が米粒のように小さく見えます(写真の中央部付近)。ここまでは歩道は完璧に整備されていて、壁側にワイヤーが二重で取り付けられているため、景色を楽しみながら歩行を続けられました。


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十字峡に近づくにつれ、作業用のワイヤーや作業者用のハーネスなどが取り残されています。この日は作業者の方々にはお会いしませんでした。


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さてさて、問題の十字峡に到着です。ここから先は整備が完了していない区間になるので心して進みます。劔沢を吊り橋で渡ります。


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劔沢の流れはエメラルドグリーンで吊り橋の下を轟音をあげて流れています。



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なるほど、道脇にワイヤーを通す金具や、橋の資材などが準備されています。ただ工事完了までには、まだ相当な日数を必要としそうです。


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十字峡の先から黒部川が歩道に近づいてきます。このあたりは一体が藪に覆われていて(藪の刈り取り作業が未)、「藪漕ぎ」をしながら大きな岩を何度も乗り越えます。さすがに「この藪漕ぎはいつまで続くんだ?」って思いながらしぶとく前進です。踏み跡らしきがかろうじてあるところと、全然なくなるところがありますが、黒部川の流れからの相対的な位置関係で前進していきます。



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藪を突破し壁に取り付くと前方対面にV字の切れ込みが現れ「白竜峡」に到着です。ここまでは藪漕ぎや、崩れた橋など難なく突破してきましたが、「白竜峡」からは別次元の緊張と集中力を必要としました。



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滝の向かい側の壁を右に回り込みます。この辺りはワイヤーの設置はありません。冬場の雪や岩石の崩れでもぎ取られてしまったのでしょう。また足元と壁の岩が脆くて崩れやすいので、一つ一つ足がかりと手がかりを見極めながら、ザックを壁に当てないように右側に回り込みます。去年の橋の残骸が残っています(写真右)。


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さらに壁沿いを進みます。去年設置されていたであろうワイヤーは途中で切れているのでワイヤーに頼ると危険です。5センチ四方ほどのしっかりした足場を見極め、手がかりを探しながら前進です。顔(写真右)は怖く見えますが、最高レベルの集中力を発揮しようとしています。


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まだまだ続きます。崩れた橋の残骸に落石が乗り上げ、足の踏み場が見つからない場所や、手がかりがない場所の連続でした。しかし冷静になって見極めると通るべきラインが見えてきます。時間の感覚はとっくになくなり、目の前と少し先の岩に集中しラインを探し出します。


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岩肌の違う壁をなんとかクリアし、別山沢の標識が目に入りました。もう少しで別山谷出合だと思いながら突破していきます。


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もうすぐ整備完了区域に入り楽になると思いきや、別山谷出合直前で最大の難関が待っていました。歩道上に落石が乗り上げ、足元も壁側も超不安定な区間の発生です。距離にして5mくらいの区間ですが、ここも心眼でラインを見極めます。ワンポイントのしっかりした足場を猫足で踏みつけ、壁に軽く触れながら何事もなかったように通り過ぎるしかありませんね。


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ここの区間だけは「どうしたもんかなあ〜」最大のピンチでした。写真で見てもビビります。





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別山谷出合から先はしっかり整備の行き届いた歩道でした。しっかりした材木の階段はありがたいことです。歩道わきの花を見る余裕も出てきます。大文字草が出迎えてくれました。


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鳴沢小沢を超え、内蔵助谷を難なく超えていきます。


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やったぜえ〜 ゴールの黒部ダムが見えてきました。阿曽原小屋から延々と20kmほど歩いてきたのですね。


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Mickey氏の後ろ姿にも疲労の跡が。。。当方も極度の集中とゴールの安堵感で足から力が抜けていました。



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よっしゃー 鉄の扉を越えればシャバだぜえ〜 何事もなかったようにトロリーバスに乗り込みます。 職人のMickey氏は涼しい顔してますが、「恐るべし! 開通前の下ノ廊下!!」でした。



ちなみに帰宅後、阿曽原小屋のHPを確認すると下記のように更新されていました。 やれやれです。整備が完了するまで通行しない方が良いですね。


【9月15日】
シルバーウイークに下ノ廊下を計画されている方、必見です。
本日、阿曽原から黒部別山谷出合までルートの状況を見てきました。
ここ数日の不安定な天気のせいもあり、十字峡から上流の整備があまり進んでいませんでした。明日は天気が良いので白竜峡のあたりまで作業が入ると思われますが、明後日以降は台風とそれに伴う前線の影響で黒部別山谷までの整備はまだ遅れそうな気配です。
現在のところ、十字峡の上流(H23に山抜けして道がなくなった場所)までは整備が終わっていますが、そこから白竜峡を経て黒部別山谷出合まで未整備です。
特に白竜峡から黒部別山谷出合までは、危険個所が多く一般の登山者の通行は見合わせたほうが良い状況です。
この区間は整備後でも岩場のヘツリが続く緊張感のある場所ですが、まだ未整備で、桟道が傾いていたり、手すりの番線(針金)が切れて無くなっていたり、転石が道を塞いでいたりするうえに、全体的に転石がかなりたまっており、手元・足元にかなりの注意が必要です。
明後日以降不安定な天気になりそうですので、一般の登山者の方はもとより上級者の方も無理なさらないようお願いします。
シルバーウイーク後半(22日〜25日)に計画されている方につきましては、整備が進んでいるかどうか今後の天候次第ですので、台風の様子も見ながら20日頃に新しい情報が入り次第お知らせする予定です。







posted by Jack at 10:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 山登り
この記事へのコメント
ダレンさん。コメントありがとうございました。しばらく山を離れているとのことですが、機会を見つけて山行できると良いですね〜 by Jack
Posted by Jack at 2016年09月21日 23:16
初めてコメントさせて頂きます。
自分は、しばらく山を離れているのでこんな記事を見ると大変だと思う反面、冒険心と好奇心がすごく刺激されます!!
たまたま見かけたのでこの記事しかまだ見れてないですが、他の記事も読みたくなりますね。
この先の冒険譚も安全を祈りつつ、楽しみにさせて頂きます♪
Posted by ダレン at 2016年09月21日 11:52
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2015年の夏で長らく勤めたサラリーマン生活に終止符を打ちました(依願早期退職)。2016年の夏に百名山を達成し、その後、残っていた3000m峰も登り、一区切りしました。現在は、さいたま市【やまざ器】にて焼き物製作販売・陶芸教室を主催中です。これからも色々なチャレンジを進めていきたいですね。
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