アフィリエイト広告を利用しています

2013年03月04日

霊使い達の黄昏・12

318638-1.output.png


作成絵師 ことかす@Youtuber様(渋 user/2734137 スケブ https://skeb.jp/@NNPS_KM_SONYA)

 はい、皆様こんばんわ。土斑猫です。
 今日は「霊使い」の日。と、言うわけで「霊使い達の黄昏」18話掲載です。
 ところで、デュエルターミナルのマスターガイドが出ましたね。
 さっそく購入して読んでみましたが、いろいろと驚きが。
 まあ、ともかく打ち切り臭がプンプンしていたストーリーが実はしっかり完結していたのはなによりでした。
 それも結構良質(個人的感想)な終わり方で。
 あ、コ〇ミ、体育館裏来なくていいからね。
 まぁ、キャラ好きな身としては大雑把なストーリー解説だけでなく、個々人がどうなったのかも教えて欲しかった所ですが・・・。例えば、あの娘とかあの娘とかあの娘とか(ネタバレ防止のため伏字)
 何よりビビッたのは”あの人”が実は良い人だったという事。
 ここまで二次創作してきた身としては、非常に由々しき問題です。
 やっべー、すげー極悪人に書いちゃってるよ・・・。
 まぁ、ウチの場合はなからパラレル設定なんでそれで納得してください(開き直り)



黄昏2.jpg

 

                     ―12―


 「なるほど。これはなかなか良い趣向じゃ。シャドウ、誉めてつかわす。」
 薄暗い城の中に、艶ある声が厳かに響き渡る。
 玉座に腰を据えたリチュア・ノエリアは目の前の巨大な儀水鏡が映し出す光景を見ながら、満足気に目を細ませた。
 「はは、ありがたきお言葉、恐悦至極にございますれば・・・。」
 彼女の前に傅いたシャドウ・リチュアが深々と頭を垂れる。
 そこから一歩引いた場所では、リチュア・ヴァニティとアバンスが同じ様に傅いてその様を見ている。
 (・・・憎しみに憎しみを喰わせる・・・。相変わらず、悪食な事を・・・。)
 愉快気に儀水鏡を覗き込むノエリアと、その前で頭を垂れるシャドウ。
 それを苦虫でも噛み潰した様な顔で見ながら、アバンスはそう心の声で呟いた。
 ―と、
 「ふふ、そう言うでない。悪食も、極めれば美食ぞ?」
 不意にノエリアが発した言葉に、アバンスの背筋を怖気が貫く。
 「え、あ、それは、その・・・!?」
 文字通り心を見透かされ、慌てるアバンス。
 彼に向かって、ノエリアは妖艶に微笑む。
 「美物も下手物もありはせぬ。わらわの前では、皆平等よ。勿論、“主ら”もな・・・。」
 「――!!」
 その言葉に込められた意を悟り、総毛立つアバンス。
 「つまらぬ矜持など捨て、受け入れよ。さすれば、この世の万物全てはおもろかしい。」
 そして、魔女の教主は教えを説く。 
 「醜く爛れたこの顕界。己も堕ちるが安寧に生きる術ぞ。」
 「は・・・はい!!こ、心得ました!!」
 震えながら平伏するアバンスにもう一度笑みを落とすと、ノエリアは儀水鏡へと視線を戻す。
 (・・・ふ。相変わらず、恐ろしいお方だ・・・。)
 傍らで事の次第を見ていたヴァニティは、心の中で苦笑する。
 無論、己の声もノエリアには筒抜けであろう事を知りながら。
 「しかし、“これ”は実に良いのう。その身に溢れる憎悪がひしひしと感じられるわ。実に心地良い。この蜥蜴、あの村の者共に何ぞ良き縁えにしでもあったのかえ?」
 悦に行った要に鏡を眺めるノエリアの問いに、シャドウは頭を捻る。
 「さて、残念ながら。ただ、“それ”を寄り戻した時より、その魂はかの村の者共に対する怨嗟で溢れかえっておりました。」
 その答えに、ほくそ笑むノエリア。
 「そうか。よいよい。理由など、些細な事じゃ。要はこの魂魄が良き闇に染まっているという事。憎悪、怨嗟、憤怒、殺意。それらこそ、“我ら”の望む力の源泉足りうるものなれば・・・。」
 優しく、けれど冷たく響く声音。
 その場にいる皆が、同意するかの要に頭をたれる。
 「今は、存分に暴れるが良い。そして、より多くの憎悪をその身に取り込むのじゃ。そして、その暁には・・・」
 生白い手がゆっくりと上がり、儀水鏡に映るその姿を愛しげに撫でる。
 「誉れ高き“贄”として、“我ら”が糧としてやろう・・・。」
 破壊されゆく村と、“彼”を映した儀水鏡が妖しく輝く。
 楽しげな笑い声が、城の薄闇に響いて消えた。


 目の前に、青白い水槍が迫る。
 その軌道は、カムイとファルコをもろともに刺し貫かんとするもの。
 「―ファルコスッ!!左だっ!!」
 咄嗟の指示。
 それに従い、ファルコスは急旋回を試みる。
 しかし、避けきれない。
 貫かれる右翼。
 ピィイイイイイイイイイッ!!
 飛ぶ術を奪われたファルコスが、体勢を崩す。
 「ウワァアアアアッ!!」
 成す術もなく落下する、ダイガスタ・ファルコス。
 「アハハハハハハハハ、落ちた落ちた!!」
 嘲る様に響く、エリアルの哄笑。
 「クゥッ!!」
 カムイは混乱しそうな思考を必死に保ち、落ちるファルコスの体勢を立て直す。
 ズザァアアアアアッ
 結果、何とか脳天からの墜落は免れる。
 しかし、それが限界。
 ファルコスの腹が地面を削り、カムイは地面に投げ出される。
 「う・・・くぅ・・・!!」
 全身を襲う鈍痛。
 それに耐えながら、何とか身を起こす。
 「ファ・・・ファルコ・・・」
 霞む視界で、シンクロの解けたパートナーの姿を探す。
 はたして、彼はカムイより数メートル先で傷ついた翼をバタつかせながらもがいていた。
 「ま・・・待ってろ・・・今・・・」
 フラフラと立ち上がりながら、そのもとへ行こうとするカムイ。
 しかし―
 ゾクゥ
 背後に感じる視線。
 全身を襲う悪寒。
 振り向いたその瞬間、目の前に迫る青白い光―
 逃げられない。
 思わず目をつぶる。
 直後、彼がいる場所より少しずれた場所に着弾する水槍。
 弾け飛ぶ地面。
 「うわぁあああっ!!」
 爆風に弄ばれ、小石の様に転がった身体が壊れた家の柱に叩きつけられる。
 「かはっ!!」
 激痛に詰まる息。
 霞む視界に、迫り来る巨大な足が見えた。
 「―――っ!!」
 痺れる身体に力を込め、何とか身を逸らす。
 耳元を、轟音と共に通り過ぎる鉄の爪。
 木っ端微塵に砕け散る、家の残骸。
 「は・・・はぁ・・・!!」
 バラバラと落ちてくる破片の中を這いずりながら、必死に逃げる。けれど、その背に張り付く視線は決して離れない。
 再び迫る轟音。
 巨木の様な尻尾がその背をかすめ、小さな身体を再び転がらせた。
 ・・・嬲られている。
 気付いたその事実に、カムイは戦慄する。
 この身が地に落ちてから、“アレ”が自分を殺す機会など、掃いて捨てる程あった筈だ。
 なのに、それをしない。
 と言う事は、わざと外しているという事。
 いたぶっているのだ。
 いたぶっていたぶって、いたぶりぬいて、その上で殺すつもりなのだ。
 霞む目で、“ソレ”の顔を見上げる。
 鈍く光る白金しろがねに覆われた、醜い顔。
 しかし、その顔には間違いなく、あの使い魔の面影がある。
 あの少女とともに奈落に落とした、使い魔の面影が・・・。
 「・・・お前、なのか・・・?」
 自分を見つめる紅い目に向かって、カムイは呟く。
 「・・・オレを、殺しにきたのか・・・?」
 その声が届いているのかいないのか、“ソレ”は黙って彼を見据える。
 「・・・仇を、取りにきたのか・・・?あの娘の、仇を・・・?」
 ギギ・・・
 と、軋む様な音を立てて、鋼の口がゆっくりと開いていく。
 大きく、大きく開く、口。
 その奥にあるのは、虚無。真っ暗な、がらんどう。
 それが振るえ、静かに大気を揺るがせる。
 「エ゛ェリ゛リィァアアァアアアア・・・」
 虚ろに、だけど悲しげに響く声。
 それが、全てをカムイに悟らせる。
 (ああ・・・そうなんだな・・・)
 全身から、力が抜けていく。
 自分は奪われた。
 両親を。
 友を。
 仲間を。
 だから、奪ってやろうと思った。
 あの娘から。
 命も。
 何もかも。
 その願いが間違っていたとは、今でも思えない。
 大切な者を奪われた悲しみは。
 苦しみは。
 空虚さは。
 今でもこの心の中にある。
 確かに、ある。
 確かな憎しみとして、心ここにある。
 だけど。
 だけど、それならば。
 “それ”をなす権利は、“彼”にもある。
 不条理に。
 理不尽に。
 大切な者を奪われた悲しみを。
 苦しみを。
 空虚さを。
 その相手にぶつける権利は、“彼”にもある。
 それを否定する事は出来ない。
 決して、出来ない。
 何故ならば。
 それを否定する事は、自分を否定する事になるのだから。
 ただ一つ、“彼”と自分に違う所があるとしたら。
 自分は、間違えてしまった。
 この憎しみを、この想いを。
 ぶつけるべき相手を、間違えてしまった。
 (カムイ・・・アンタの目は何処まで曇っちまったんだ!?)
 頭の中に、何度も響くリーズの言葉。
 今なら、その意味がよく分かる。
 この想いは。
 憎しみは。
 曇らせるのだ。
 カムイはもう一度、“彼”の目を見る。
 自分を見据える、真っ赤な目。
 憎悪と怒りに燃えて、紅く、紅く濁った目。
 あの時の自分も、きっと同じ目をしていたのだろう。
 でも。
 でも、大丈夫。
 “彼”は間違っていない。
 その憎しみを。
 その想いを。
 ぶつけるべき相手は、“ここ”にいる。
 今確かに、“ここ”にいるのだ。
 大丈夫だよ。ほら・・・。
 諦観、贖罪、自嘲。
 それらの想いを持って、カムイは両手を広げる
 “彼”の口が、ゆっくりと開く。
 その奥に広がる、虚ろな闇。
 そこに集束していく、青白い光。
 それに向かって、カムイはゆっくりと目を閉じる。
 その目蓋の裏に、“向こう”で待っているであろう人達の姿が浮かぶ。
 父さん・・・。母さん・・・。
 闇を揺るがし、放たれる閃光。
 その光に照らされながら、カムイは微かな微笑みを浮かべた。


 その頃、療養所の付近では―
 【くっ!!何なんだ!?お前ら!!】
 【やめてください〜!!】
 周囲の家々が燃え盛る中で、ダイガスタ・エメラルが数体の異形の人影達と対峙していた。
 彼らはコソコソと動き回り、逃げ惑う村人、特に子供を標的にして襲い掛かる。
 炎の中響き渡る、子供達の悲鳴。
 「ああ〜、良い子や良い子や。泣きんとき。すぐいいトコに連れてったるさかいな。」
 人影の一人、蛸顔の男―リチュア・マーカーがそう言いながら泣き叫ぶ少女をその触手で絡め取る。
 【この!!やめろっつってんだろ!!】
 そう叫び、マーカーに向かってエメラルが旋風を飛ばす。
 しかし―
 ゴオゥッ
 突然吹き上がった炎が、その旋風を遮った。
 【チッ!!】
 【おおっと。ワリィが、テメェの相手はオレだぜ?】
 そんな言葉と共に、エメラルの前に立ち塞がるのは全身を紅蓮の炎に包んだ火蜥蜴。
 大きく鰭を広げるその影に隠れながら、マーカー達は蛮行を続ける。
 「皆!!こちらへ!!」
 「ムスト様ー!!」
 マーカー達の手を逃れた子供達が、ムストの元へ集まる。
 それを背に庇いながら、ムストはマーカー達を睨みつける。
 「お主ら、何者だ・・・!?何の故あって、ガスタ(我ら)が村を襲う!?」
 「何・・・?」
 「何者だと・・・?」
 その言葉に、チェイン、マーカー、アビス、ヴィジョンの四人はニヤリと笑みを浮かべる。(シェルフィッシュは無表情。)
 【なんだかんだと訊かれたら!!】
 「答えてあげるが世の情け!!」
 「闇に闇へと暗躍しせし、誉れ高き悪の組織!!」
 「禁呪集団リチュアとは、我らが事よ!!」
 「・・・・・・(キメ)」
 ビシィッとポーズをキメる五人を前に、ムストはその表情を険しくする。
 「リチュアじゃと・・・!?それではあの毒の風は・・・!?」
 「はいなぁ。ご察しの通り、わてらの仕業でんがな。」
 「!!」
 その言葉に、騒然となる村人達。
 「ホンマならなぁ、あれで皆さん具合いよう昇天してもろて、その後ゆっくり回収する手筈やったんやけど、実際にはご覧の有様や。世の中、ようけ上手くいかへんもんですわ。それで、ちょいと方針を変えさせてもろた訳で。」
 そう言って、ニョッニョッニョッと笑うマーカー。
 それに合わせて、他の面子も笑う。
 「おのれら・・・!!」
 【そうか・・・。事は全部テメェらが・・・!!】
 【許せない・・・!!】
 例えようもない怒りに、三人の声が震える。
 しかし、当のマーカーはあくまでおどけた調子を崩さない。
 「おお、こわ。せやけどなぁ、だからってどうするんでっか?そちらさん、一番腕っ節強そうな鎧の方でもウチのチェインとどっこいどっこいみたいですけどなぁ?」
 【・・・ちっ・・・!!】
 【うぅ・・・。】
 確かに、ダイガスタ・エメラルとラヴァルヴァル・チェインの力は拮抗していた。
 お互いの力が同等である以上、一瞬の隙が勝負を決める。
 その事を十二分に理解しているのだろう。
 チェインは常にエメラルの前に回り、その焔の大鰭で行手を遮る。
 少しでも気をそらせば、紅蓮の焔がエメラルの身を包むだろう。
 今のエメラルに、逃げ惑う民達やムストの援護に向かう余裕はない。
 「これ以上、子供達に手出しはさせんぞ!!」
 その事を悟り、ムストは決死の覚悟で四人のリチュアの前に立ちはだかる。
 「おやおや、血の気の多いおっさんでやんす。あんまり興奮すると、頭の血管切れるでやんすよ?」
 「何故だ!?何故子供達を狙う!?」
 「シャシャ。そりゃ、潰しがきくからでやんす。」
 その問いに、アビスが答える。
 「何・・・!?」
 「リチュア(ウチ)、少数勢力でしてな。人材不足にゃいつも苦労してるんでやんす。だから、こうやってガキ共さらってって、小さい内から仕込むんでやんすよ。ガキの可能性は無限大でやんすからな、上手くいけば良い手駒になると・・・。それに・・・」
 「それに・・・何だ!?」
 ムストの言葉に、アビスはその大きな口を歪に歪める。
 「どうにもならん落ちこぼれなら、儀式の生贄(えさ)に出来るでやんすからなぁ・・・。」
 「・・・!!この外道共めが・・・!!」
 ムストの表情が憤怒のものへと変わり、その身からその歳からは考えられない程の闘気が立ち昇る
 「おおぅ!?」×4
 その勢いに押され、思わずたじろぐ四人。
 「貴様らの様な輩に、これ以上民達に手出しはさせん・・・!!」
 手にした杖を刀剣の様に構え、ムストは叫ぶ。
 「病み上がりと思って甘くみるでないぞ!!おのれら雑魚を打ち倒す程度の力、ないと思うか!?」
 その覇気にタジタジとなりながらも、マーカーはなおもその顔に笑みを浮かべる。
 「ニョニョ・・・。確かにこれは、まともにやり合ったら敵いそうにありまへんな。せやけど・・・ヴィジョン!!」
 「はい!!」
 マーカーの声に答えるヴィジョン・リチュア。
 しかし、その声が聞こえたのは・・・
 「うわーん!!ムスト様ー!!」
 「何!!」
 背後から響いた声に驚いて振り向いたムストの目に映ったのは、子供達を両脇に抱えるヴィジョンの姿。
 「貴様!!いつの間に!?」
 「すいませんねぇ。これも渡世の義理というやつです。どうぞ、御容赦を・・・。」
 「おのれ!!」
 ムストの杖が、鋭く宙を凪ぐ。
 しかし―
 ヴォン
 その目の前で、ヴィジョンの姿が子供達ごと揺らいで消える。
 「なっ!?」
 再び驚くムスト。
 ―と、その背中に迫る殺気。
 「!!」
 咄嗟に振り返れば、両手の双剣を振りかざして飛びかかって来るシェルフィッシュの姿。
 「・・・・・・(殺)」
 「ぬぅ!!」
 ガキィイイイイインッ
 振り下ろされる剣を、何とか杖で受け止めるムスト。
 ギリギリギリッ
 そのまま、鍔迫り合いの体勢となる。
 その視線の先で、再び具現化するヴィジョン。
 その両脇には、しっかりと泣き叫ぶ子供達が抱えられている。
 「く・・・!!」
 歯噛みするムストを、マーカー達が嘲笑う。
 「ニョッニョッニョッ。どうでっか?どうやら能力と人数の利はこっちにあるようでんなぁ。」
 「・・・・・・!!」
 「まぁ、わいらの仕事は資源の調達ですからな。テキトーに集めたら、トンズラこかせてもらいまっさ。ヴィジョン、シェル。その間、このじーさんの足止め、頼みまっせ。」
 「はい。」
 「・・・・・・(了解)」
 「卑怯な・・・!!」
 「卑怯?なら月並みですが、言わせてもらいまっさ。“良い響きでんなぁ”!!」
 ニョニョニョッ、と高らかに笑うマーカー。
 エメラルとムストが、悔しげに顔を歪める。
 たった二人で事に挑まなければならないガスタ。
 数で勝り、必要最小限の任務をこなせばいいリチュア。
 情勢の優劣は、明らかだった。
 「ニョニョニョ。もう諦めなはれ。勝敗はつい・・・」
 ・・・と、それまで余裕の態だったマーカーが途端にキョロキョロし始めた。
 「どうしたでやんす?マーカー?」
 同輩の様子に、怪訝そうに問いかけるアビス。
 「いやな、ホレ。こないだも、こないな具合に調子良うやっとったら突然上からグチャーッと・・・」
 その言葉に、アビスがあからさまに嫌な顔をする。
 「あの電波娘でやんすか?嫌な事思い出させるなでやんすよ。」
 「いやぁ・・・事がこう上手く進んどると、どうにも気になってなぁ・・・」
 「完全にトラウマでやんすな。あんな事、そうそうあるもんじゃないでやんす。気にするなでやんす。」
 そう言って、肩をトントンと叩くアビスに、マーカーは苦笑いで返す。
 「そ、そうやな。あないな凶事、そうそう起こるわけないわ。ニョニョ。阿呆やなぁ、わい。つまらん事気にしおってからに。」
 「そうそう。今は素直にこの勝利に酔いしれればいいでやんす。」
 「全く!!全くや!!ニョッニョッニョッ!!」
 そしてマーカーは天を仰ぎ、高らかに笑う。
 ―と、
 フッ
 上を向いたその顔に、落ちる影。
 「・・・へ?」
 マーカーがそう言って目を開いた瞬間―
 「ちょいなーーーっ!!!」
 ゴブチャァアアアアアアアアッ
 「エブォラァアアアアアアッ!!?」
 降って来た靴底に顔面を踏み抜かれ、マーカーは陸揚げされた蛸の様に地に伸び転がった。
 「マ、マーカーァアアアアアッ!?」
 目の前で起こった再びの惨劇に、アビスの叫びが虚しく空に響き渡った。



                                       続く


タグ:霊使い
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前: 必須項目

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント: 必須項目

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/1405969

この記事へのトラックバック
プロフィール
土斑猫(まだらねこ)さんの画像
土斑猫(まだらねこ)
プロフィール
<< 2024年10月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
カテゴリーアーカイブ
狙いはハジメ 古より響く闇の嘶き(学校の怪談・完結(作・ナオシーさん)(11)
説明(2)
ペット(401)
雑談(254)
テーマ(8)
番外記事(105)
連絡(50)
水仙月(半分の月がのぼる空・完結)(9)
輪舞(半分の月がのぼる空・完結)(5)
不如帰(半分の月がのぼる空・完結)(2)
郭公(半分の月がのぼる空・完結)(3)
ハッピー・バースディ(半分の月がのぼる空・完結)(3)
ハッピー・クッキング(半分の月がのぼる空・完結)(3)
子守唄(半分の月がのぼる空・完結)(4)
蛍煌(半分の月がのぼる空・完結)(9)
真夏の夜の悪夢(半分の月がのぼる空・完結)(3)
想占(半分の月がのぼる空・完結)(13)
霊使い達の宿題シリーズ(霊使い・完結)(48)
皐月雨(半分の月がのぼる空・その他・連載中)(17)
霊使い達の黄昏(霊使い・完結)(41)
霊使い・外伝シリーズ(霊使い・連載中)(14)
十三月の翼(天使のしっぽ・完結)(60)
霊使い達の旅路(霊使い・連載中)(9)
十三月の翼・外伝(天使のしっぽ・完結)(10)
虫歯奇譚・歯痛殿下(学校の怪談・完結)(3)
十二の天使と十二の悪魔 (天使のしっぽ・連載中)(1)
死を招く遊戯・黄昏のカードマスター(学校の怪談・完結)(5)
絆を紡ぐ想い・澎侯の霊樹とマヨイガの森(学校の怪談・完結)(13)
無限憎歌(学校の怪談・完結)(12)
レオ受難!!・鎮守の社のおとろし(学校の怪談・完結)(11)
漫画(13)
想い歌(半分の月がのぼる空・完結)(20)
コメントレス(7)
電子書籍(2)
R-18ss(3)
トニカク……!(1)
残暑(半分の月がのぼる空・連載中)(5)
Skeb依頼品(3)
最新記事
最新コメント
検索
ファン
リンク集
EI_vI91XS2skldb1437988459_1437989639.png
バナーなぞ作ってみました。ご自由にお使いください。
月別アーカイブ