作成絵師 ことかす@Youtuber様(渋 user/2734137 スケブ https://skeb.jp/@NNPS_KM_SONYA)
はい、皆様こんばんわ。土斑猫です。
本年最初の掲載は「霊使い」です。
今年もどうぞ、よろしくお願いしますm(_ _)m
それでは、コメントレスです。
zaru-guさん
隔週でよろしいのでは?
週2つ更新なら今までの感じから見てもイケソウカナーという感じがします。曜日も月・金なら一番無理のないタイミングかと。
ご理解の程、ありがとうございます。
上手く捌けるといいんですけどねーw
それでも4作品同時制作には変わりないのできついだろうなーwww
あ、あはは・・・(乾いた笑い)
まぁ、ボチボチやってみますw
―10―
辺りは、ピリピリとした空気に包まれていた。
場にいるのは5人の術師と、5体の使い魔。
つい先刻まで喜びに沸いていた彼女達は、今は打って変わって深刻な顔で見つめ合っている。
術師の一人―ウィンが震える声を漏らす。
「ギゴ君が・・・見つからない・・・?」
その言葉に、ライナが無言で頷く。
『あいつなら、死んでもエリアさんにくっついてると思ったのに・・・』
プチリュウが、信じられないと言った顔で呟く。
「崖から落ちる時に、離れ離れになったとしか思えないな・・・。」
言いながらリーズが見上げる先には、高く高く切り立った崖。
そこから落ちた者の末路を思うと、背筋が震えた。
「でも、あれだけ探しても見つからなかったんだよ!?」
ウィンが、もう訳が分からないと言った体で喚く。
『そ・・・それじゃあ、やっぱり肉食のモンスターに・・・?』
『・・・いや。多分、それはないぞ。』
戦慄く様なハッピー・ラヴァーの言葉を、今度はきつね火が否定する。
『・・・その心は?』
『・・・血の匂いがしない。』
『うぇ!?』
思わず顔をしかめるラヴァーに構わず、きつね火は続ける。
『モンスターに喰われたなら、多かれ少なかれ血が出るだろう。あいつら爬虫類族の血は、青臭い様な独特の匂いがする。』
確かめる様に、クンクンと鼻をひくつかせる。
『それがしない。少なくとも、相応の出血が伴う様な事態はここじゃ起きていない。』
「確かか?」
『某の鼻に間違いはない。信じてくれ。主。』
使い魔の言葉に、ホッと息をつくヒータ。
「でも、それじゃあ、ギゴ君はどこに・・・」
途方に暮れるウィンの横で、今度はD・ナポレオンが声を上げる。
『ソウデス!!マスター達と私達ハ主従ノ契約ヲ結ンデイマス!!マスター達ガ召喚権ヲ行使スレバ、呼ビ寄セラレマス!!えりあ様サエ無事ナラ・・・』
しかし、
「やれるなら、とうにやっているだろう?」
自分の使い魔の言葉を、ダルクが遮る。
『ウ・・・!!』
言葉に詰まるD・ナポレオン。
「そんな事、精霊使いなら言われずとも承知の上だ。まして、エリアなら何よりも先にそれをやるさ。」
『タ・・・確カ二・・・。』
ヒータが、デーモン・ビーバーに詰め寄る。
「おい!!アウスは、どういうつもりだったんだよ!?」
『え、は、はぁ・・・ワイも、さすがにそこまでは・・・。』
「あー、畜生!!あいつときたら、いつもいつも!!」
苛立たしげに頭を掻き毟るヒータ。
『マスター・・・どないすればいいんですのや・・・?』
騒然とするその場で、デーモン・ビーバーは空を見上げてそう呟いた。
その騒ぎより少し前、ウィン達から離れた場所にある高地では・・・
「・・・みっともない所、見せたわね・・・。」
ひとしきり泣いた後、アウスから身を離したエリアが、乱れた髪を整えながらそう呟いた。
「なに、大した事じゃないよ。むしろ、これでこの無駄に大きい脂肪の塊にも存在意義が見出せたというものだ。」
「・・・遠回しに自慢してない?アンタ・・・。」
「何を言ってるのかな?君だってなかなかのものだと思うけど?」
涙で腫れぼったくなった目で睨むエリアの視線を受け流しながら、そんな事を言うアウスだった。
「ねぇ、ところでさぁ・・・」
「何だい?」
「ギゴは、何処に行ったの?」
「・・・・・・!!」
その言葉にアウスの顔が一瞬険しくなるが、エリアは気付かない。
「どっか、薪拾いにでも行ってんの?何よ、アイツ。こんな時にご主人様の近くにいないなんて。下僕失格ね。」
わざとらしく憤慨するふりをしながら、エリアは辺りをキョロキョロする。
「エリア女史・・・」
そんな彼女に、アウスが声をかける。
「何?」
「ギゴ氏の念波を、探れるかい・・・?」
「え・・・?どう言う事・・・?」
「いいから!!」
らしくもなく真剣な面持ちの彼女に、エリアは面食らいながらもギゴバイトの念波を探る。
1分・・・。
2分・・・。
やがて、その顔に焦燥の色が滲み出してくる。
「・・・ギゴの、念波が・・・追えない!?」
その言葉に、アウスが微かに歯噛みする。
「どういう事!?ねぇ!!どういう事なの!?」
取り乱したエリアが、アウスにすがり付く。
「何で!?何でギゴの念波が追えないの!?ねぇ、いるんでしょ!?あいつ、ここにいるんでしょ!?」
「・・・・・・。」
ゆっくりと首を振るアウス。それを見たエリアの顔が強張っていく。
「そんな・・・そんな・・・!!あたし、抱いてたのよ!?あいつの事、この手に、この手に、しっかり・・・確かに・・・!!」
「エリア女史、落ち着いて聞いてくれ。」
半狂乱のエリアを制しながら、アウスは言う。
「君を、霞の谷の大怪鳥やつから取り戻した時、もうすでにギゴ氏の姿はなかった。多分、落ちる途中で君がさらわれた時、彼だけが取りこぼされたんだろう。」
その言葉を聞いたエリアの表情が、絶望に彩られていく。
「・・・それじゃ・・・それじゃあ、ギゴは・・・」
「君がギゴ氏の察知する事に、一抹の期待を抱いていたんだけど・・・」
無念そうに唇を噛むアウス。
「念波が追えないと言う事は、相手の思念が停止しているという事だ。それが何を意味するか、分かるだろう・・・?」
「・・・・・・!!」
息を呑むエリア。その目が一瞬放心した様に宙を泳ぎ、そしてその身がヘタヘタと崩れ落ちる。
「嘘・・・!!」
戦慄く口が、呟く。
「嘘・・・!!嘘よ・・・!!あたし達、約束したもの・・・!!一緒にいるって・・・!!ずっと一緒にいるって、約束したもの・・・!!」
「・・・すまない・・・。」
脱力し、立ち上がる事も出来ないエリア。彼女に向かって、アウスが言う。
「君は掴みやすい衣装を身にまとっているけど、ギゴ氏にはそれがない。恐らくは、その差だ。ギゴ氏につけたダニポンは、落下の途中で振り落とされてしまったらしい・・・。」
唇を噛むアウス。
その様には、いつもの余裕に満ちた様子は微塵もない。
「止めてよ・・・」
「ボクのミスだ・・・。本当に、すまない・・・。」
「止めて!!」
血を吐くような叫びが、その言葉を遮る。
地面に屈みこんだエリアが、その身を震わせる。
「・・・止めてよ・・・。そんなの、あんたらしくない・・・。止めてよ・・・。」
自分を見つめるアウスに向かって、力ない声で言うエリア。
「あたしの・・・あたしのせいよ・・・!!考えもなしに、カッコ付けた事したから・・・!!」
ショックのあまり涙も出ないのだろう。乾いた瞳を虚ろに彷徨わせながら、エリアはただただ己の身をかき抱く。
まるで、その腕の中に“彼”がいるとでも言うかの様に。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
しばしの沈黙。
しかし、
「・・・けど・・・」
エリアに向かって、アウスが再び声をかけた。
「・・・まだ望みはある。」
「・・・・・・?」
その言葉に、虚ろな瞳が上がる。
「知ってるだろ?霊使いボク達の契約証印はしもべが死んでいても、その効力を保っている。つまり・・・」
アウスは腰を屈めると、放心状態のエリアの瞳を見つめる。
「君が召喚権を行使すれば、ギゴ氏は君の元に戻ってくる。例え、“どんな姿”になっていても。」
「―――!!」
その言葉を聞いたエリアが、目を見開く。
やがて、その意味を理解したのか、その身体が再び瘧に罹った様に震え始める。
アウスの手が、そんなエリアの肩をガシッと掴んだ。
「いいかい?気をしっかり持って、聞いてほしい・・・。」
震えの止まらない身体をかき抱く様にしながら、アウスは続ける。
「例え、彼がそうなっていたとしても、肉体さえあれば、転生術や蘇生術で蘇らせる事が出来る・・・。」
「あ・・・!!」
その言葉に、エリアが小さく声を上げる。
虚ろだった瞳に、微かに戻る光。
「分かるかい?まだ、“彼”を助ける事は出来るんだ。」
「ギゴを・・・助けられる・・・?」
力強く、頷くアウス。
それを見たエリアの瞳に、今度こそ確かな光が宿った。
「・・・いいかい。第一に考えなければならないのは、ギゴ氏の“肉体”を取り戻す事だ。魂の寄り代となる肉体がなければ、どんな術も蘇生させる事は叶わない。」
「分かってる・・・。」
杖を構えたエリアが、ゆっくりと頷く。
「さっき、めー氏の携帯を通してウィン女史達と連絡をとった。向こうでも、ギゴ氏の“身体”は見つかっていないそうだ。となると、やはり大怪鳥に運ばれる途中で落とされた可能性が高い。」
アウスはそこで一旦言葉を切ると、エリアの方を見る。
杖を握る彼女の手は、プルプルと震えていた。
無理もない。
これからひょっとしたら・・・否、ほぼ確実に想い人の無残な姿を見る事になるのだから。
その心の負担は、計り知れないものだろう。
しかし、それを知りながらもアウスは次の言葉を紡いだ。
「事態から考えて、ギゴ氏の身体は“相応”の事になってると思われる。繰り返して言うけど、覚悟はしておいてくれ。」
「分かってる・・・。」
再び頷くエリア。
そう。
それが、どんなに辛くとも。
それが、どんなに残酷な事でも。
これは、エリアにしか出来ない事。
アウスでも、否、他のどの術師でも、エリアと契約したギゴバイトを召喚する事は出来ない。
術者はしもべの全てを背負い、しもべは全てをかけて術者を護る。
そこには、他の誰しもが介入する事は出来ない。
それが、しもべ契約というもの。
術者とモンスターとの間に交わされる、絶対の不文律。
だから、エリアはここに立つ。
自分に全てを委ねてくれた、彼の全てを救うために。
カチャリ・・・
エリアが、静かに杖を構える。
震える手。
カタカタという音が止まらない。
―と、その手をもう一つの手が包み込む。
「・・・・・・?」
見れば、エリアの傍らに寄り添ったアウスが、彼女の手を自分の手で包み込んでいた。
「・・・これで、幾らかましだろう・・・?」
そう言って、優しく微笑むアウス。
「ホント、今日のアンタ、らしくないわ・・・。」
弱々しく、けれど確かに微笑み返しながら、エリアは杖を掲げる。
そして―
「来て!!ギゴ!!」
叫びと共に、杖が地面に叩きつけられる。
しかし、
ガキィイイイイインッ
「キャアッ!?」
「クッ!?」
一瞬、見た事のない魔法陣が浮かび上がり、高く響く音とともに、エリアの杖が弾かれた。
その衝撃で倒れ伏す、エリアとアウス。
「な・・・何・・・!?今の!?」
「召喚喚起が拒絶された・・・!?」
茫然とするエリアの横で、アウスが呟く。
「召喚権を・・・奪われた・・・!?」
「・・・・・・!!」
アウスの言葉に、エリアは思わず息を呑んだ。
―その頃、エリア達のいる場所から遠く離れたリチュアの城。
その地下室で、“ある事”が行われていた。
ゴポ・・・ゴポゴポ・・・
薄暗い部屋の中には、得体の知れない機器が幾つも設置されている。部屋の中をグルリと囲む様に置かれたそれらの中心には、大きな筒状の水槽が柱の様にそびえ立つ。
その中は淡く輝くコバルトの液体に満たされ、何本ものチューブやコードが漂っている。
そして、それらの先にあったのは―
「ふんふふーん♪おーぅ!!経過は順調ですねぃ!!」
機械をカチャカチャと弄っていた白衣の男―コザッキーが、手元の計器を見ながら楽しそうな声を上げる。
と、
「ねーぇ。これ、いつ終わんの?アタシ、早く遊びたいんだけど?」
水槽の傍らに立っていた青髪の少女が、コザッキーに向かってそう言った。
「おーぅ、ミス・エリア〜ル。そう急くものではありません!!急いては事を仕損じる、といぃまぁ〜す。大丈夫!!作業は順調でぃす!!あと半日程、待ってくぅださ〜い。」
「えぇ〜、そんなにぃ!?もぅ、じれったいわねぇ。」
苛立たしげにそう言いながら、少女―リチュア・エリアルは水槽に手を這わせる。
「ねぇ、“アンタ”も早く、遊びたいわよねぇ?」
そんな言葉と共に、見上げる水槽の中。
そこには、“彼”がいた。
“彼女”が探し求める、“彼”がいた。
しかし、もし今の“彼”の姿を見たなら。
見てしまったのなら。
“彼女”は間違いなく悲鳴を上げた事だろう。
コバルトブルーの揺らぎの中、幾本ものチューブやコードに束縛されて、“彼”はいた。
「だから、早く出ておいで・・・」
言いながら、エリアルが水槽にキスをする。
それに呼応する様に、薄く開いた“彼”の口からゴポリと気泡が上る。
『エ・・・リァア゛ア゛アァア・・・』
細く濁った声が、闇の中に漏れて消えた。
続く
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