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2016年12月15日

指定生乳生産者団体についての昨今の議論について

最近、指定生乳生産者団体の見直しについて、
新聞紙面を賑わせています。

どうやら農協改革の話はいったん棚上げに
なったようですが、指定団体の話は
進んでいきそうですね。

この指定団体制度の議論、なかなかに
やっかいな話だなと最近思うようになりました。


指定団体が乳業会社と交渉して価格を決めているので、
強い交渉力を持つ、という話は以前書いたとおりです。

もう一つ大きな役割として、販売した生乳の代金を
全てまとめて、酪農家にキロあたりいくらで
支払っている、というのがあります。


言い換えると、実は生乳はその用途によって販売額が
違います。飲用乳としてパック詰めされる用の生乳は
高く、バターやチーズになる生乳は安く買い取られます。

その売上を合計し、キロあたりいくらで酪農家に
支払うのです。


すなわち、ある酪農家の生乳は飲用乳になって高く買われた、
とある酪農家の生乳はバターになった。それでも、
それぞれの酪農家に入るキロいくらの単価は同じなのです。
(厳密には乳脂肪分や無脂固形分の量などで少し差は出ます)


このことが、議論を真っ二つに割る原因になっているんです。

指定団体制度賛成派は、
「バターやチーズになる生乳を出荷している酪農家がつぶれる。」
指定団体制度反対派は、
「うちは飲用乳として買われている(あるいは飲用乳として売りたい)
のに安く買い叩かれている。」
という主張になるわけです
(ここまで露骨には言ってないと思いますが)。


そしてこの議論、どちらももっともな所があるんです。

まず賛成派の主張については、北海道は広大で
条件不利地がたくさんある、ということがあります。

牛乳の消費地から遠い地区では、地元に飲用乳として
パック詰めする工場がなく、バターやチーズに
加工する工場しかないため、そこに出荷せざるを得ない、
という実情があります。
(飲用乳向けの工場は大消費地近郊に多いですね。
鮮度が特に大事ですから。加工してしまえば保存が
ききます。)

そういった地区の酪農家が、バターやチーズ向けに
卸す価格をそのまま受け取る仕組みになってしまうと、
補給金を考慮しても今よりもだいたい2割ぐらい収入が
減るんじゃないですかね。

一方で飲用乳向けになっている生乳を出荷している
酪農家にとっては収入増となるわけです。


反対派の主張としては、より条件のいい所に
売りたい、となるわけですね。
それももっともだし、政府の考え方にも合っている
感じがします。


実のところ、上記のような条件不利地の酪農家でも、
生乳の品質がとてもいいということで遠方の工場から
飲用乳向けに集荷しに来ている事例はあるんです。

一方で条件のいい所の酪農家でも、生乳の品質が
良くないとバターやチーズなどの加工品向けにまわされます。

最近話題のMMJも今は飲用乳向けに出荷をしているため、
品質については厳しいという話を聞きます。
基準を満たしていなければ集荷しないという話も。


言ってしまえば、今の指定団体制度は品質の悪い生乳を
出荷してもちゃんとした値段で買い取ってもらえるから
いいや、という酪農家の甘えにつながってしまっている
側面もあると思います。



こう書くと指定団体制度は良くないんじゃないかと
思えてきそうですが、結局は競争と淘汰を取るか、
支えあいと安定を取るかなんだろうと思います。

私が酪農家ならたとえ自分の生乳が飲用乳向けに
高く売られていたとしても今のままで満足するでしょう。
国から変化を求められても反対するでしょうね。

今の乳価で充分ですし、ホクレンが責任持って
集荷に来てくれる安心感もあります。
乳業メーカーと交渉してくれている点も
心強いです。

それに自分の牧場が大丈夫であっても、
まわりの酪農家が廃業していったら
自分もきっと経営が成り立たなくなって
しまいます。

今の酪農は地域ぐるみで協力してやって
いることが多いですから、仲間がいなくなると
立ち行かなくなることは明らかなんです。


今後どのような展開になっていくのか。
何が酪農家にとっていいのか、ということだけで
なく政策の方向性という条件も含んでいますから、
どう転ぶか正直よくわからないですね。


指定団体以外の生乳卸会社でも、加工原料向けに
出荷するなら補給金を出す。
それはいいと思うのですが。

そういった卸会社が生乳の需給調整や
生産者の保護をやってくれるのか、と
言うとそれは難しいでしょう。

そもそも補給金制度は、高価な牛乳向けだけでなく
安価なバターやチーズ向けにも生乳を出荷させるための
制度だ、と言われると、確かに指定団体は
消費の動向や国の意向に合わせて出荷先を
振り分けるでしょうから、そういう意味では
指定団体制度の方が需給調整が利く、とも言えそう。

すなわち、バターを作るために安く生乳を
卸すことだってきちんとやっていますよ、
ということです。


そんな数々の状況を鑑みて、どのあたりが落としどころか
今後話し合われていくんでしょうね。


ちょっと出遅れましたが、話題のネタで
書いてみました。
そんなに知識は持っていないものの、
だいたいこんな感じだと思うのですが…。

牛乳や乳製品を買ってくれるのは
消費者のみなさんなので、スーパーより
さらに上流ではどのようになっているのか、
多少なりと知ってもらえたら嬉しいです。
posted by とば吉 at 22:15 | TrackBack(0) | 酪農

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