人死して後・色の黒きは地獄の業と定むる事は仏陀の金言ぞかし
報恩抄 316頁
インド、中国、日本においては、人の肌の色は、肌色ですから、黒くなることはよくないことと言われても違和感はありません。
死に化粧においては、白く化粧をされているものです。このことから、黒ではなく白が成仏の相と考えられているわけですね。
ただ、疑問に思ったのは、黒人の場合どうなのか、という点です。
黒人は生きている時から黒いわけで、死後、白くなることもなく、黒いままでしょう。
さて、地獄の業とまで言っていいものなのか。
仏陀の金言の趣旨は、もともとの顔色よりも悪い顔色になった場合、それが地獄の業をあらわしているということでしょう。
ということは、黒色と限定せずに、顔色が悪くなることと考えればよいでしょう。
英語で言えば、black ではなく、pale と表現できましょうか。
英訳を確認してみましょう。
We have the Buddha’s own golden word for it that, if a person’s skin turns black after he dies, it is a sign that he has done something that destined him for hell.
The Writings of Nichiren Daishonin Volume I p.719
ん〜ん。turns black となっていますね。 turns pale とした方がよいと思いますね。
日蓮の原文では、「色の黒きは」となっていますから、black としたのでしょうが、世界に発信する英訳においては、仏陀の金言の趣旨を踏まえて pale と意訳するのが適切でしょう。
表面にあらわれた言葉のままであると、逆に誤解を招く場合があります。
特に翻訳の場合、その懸念がありますが、翻訳でなくとも、日常生活において、その通りの言葉を発して、気まずくなることも多いですね。
正しいということよりも、価値があるということの方が重要でしょう。
正しい正しいといきり立ちながら、無価値な振る舞いをしている人もいます。
我々としては、正しいことは、それはそれで結構だと認識しながらも、価値のあることを重視して生きていきたいものですね。