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2022年08月21日

私だけの特捜最前線→12「私だけの三億円犯人!〜犯罪史上に残る事件をテーマに」

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※このコラムはネタバレがあります。

三億円事件は、昭和43年12月に東京都府中市で起きた現金輸送車強奪事件で、白バイ隊員を装った犯人が現金を車両ごと奪い取って逃走。結局、犯人の逮捕には至らず、昭和50年に公訴時効が成立しました。

特捜最前線が事件をテーマに取り上げたのは時効成立の3年後でした。ドラマでは事件そのものを追うのではなく、事件を捜査してきた老刑事とその娘にスポットを当てているのが特徴です。

娘は三億円事件の少し前に見知らぬ「おじさん」に誘拐されます。しかし娘は、血のつながらない父親(老刑事)より、おじさんに父性を抱くようになるのです。事件の翌日、おじさんは自首し、娘は父親の元に戻ります。

老刑事は時効後も事件の捜査に執念を燃やします。しかし、娘とその恋人がでっち上げた偽の証拠に振り回され、絶望して自殺してしまうのです。一方の娘も、出所後のおじさんとの再会を果たすことができません。

ドラマでは、おじさんが三億円事件の犯人だと匂わすような描写がされていますが、結局真実は語られないまま、おじさんは病気で急死してしまったのです。何ともやりきれないようなストーリーになっています。

神代課長(二谷英明)は、車を乗り捨てた後の足取りがつかめないことから、犯人が周囲に土地勘のある人物であると推測しています。この推測を、娘の誘拐事件とリンクさせた展開は見事の一言に尽きます。

父親とおじさんの二つの父性に揺れる娘と橘刑事(本郷功次郎)とのやり取り、定年を控えた老刑事の執念に思い巡らす船村刑事(大滝秀治)など人間ドラマとしても見どころ満載です。

なお、同じ刑事ドラマの「太陽にほえろ」でも、三億円事件をテーマにしたドラマが作られています。こちらは事件そのものに直結した話になっていたと思います(記憶が定かではありませんが・・・)

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私だけの特捜最前線→11「交番ジャック・4人だけの忘年会!〜カンコとは違ったキャラの婦警」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線の舞台である特命捜査課には、男の刑事たちに交じって女性警察官(当時は婦警と呼ばれていた)が配属されていました。太陽にほえろのようなマスコット的存在ではなく、捜査にも携わっています。

特捜の婦警といえば、「カンコ」こと高杉幹子婦警(関谷ますみ)が有名で、長い間レギュラーを務めました。一方で、カンコの前に所属していた婦警は「誰だっけ?」という感じで、あまり知られていません。

最初期の婦警のあと、2代目として約2年間特捜に所属していたのが玉井婦警(日夏紗斗子)です。特命課に配属された理由が分かるような知的で落ち着いた感じの婦警で、カンコとは違ったキャラの持ち主でした。

第91話「交番ジャック・4人だけの忘年会!」では、交番に立てこもった若い男に、迷子の子供と一緒に監禁されてしまうという役。やみくもに怖がったり、感情的になったりするのではなく、冷静に対応しています。

若い男は泥棒の濡れ衣を着せられ、事件を起こしてしまったのですが、捜査陣との連絡役となった玉井婦警は、男とのやり取りを報告しながら「悪い人間ではないと思います」と毅然とした態度で主張しています。

ふだんのドラマでは、さりげない脇役に徹している玉井婦警が、準主役として登場する珍しい回でもあります。カンコの代わりに特命課に長く勤めていたら、課の雰囲気も少し違っていただろうと思わせました(笑)

ちなみに、同じ設定でカンコが犯人と相対していたら・・・勝手な想像ですが、もっと「情」に訴えるような対応をしていたと思います。カンコこと高杉婦警については、いずれじっくりと書くつもりです。

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2022年08月20日

私だけの特捜最前線→10「ジングルベルと銃声の街!〜荒木しげる氏がドラムを披露」

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※このコラムはネタバレがあります。

津上刑事(荒木しげる)は、警察学校を卒業したばかりの若手エリート刑事として第1話から登場しています。第13話「愛・弾丸・哀」で甘ちゃんの新米刑事ぶりを見せていた津上も、徐々に成長していったのです。

主演作の一つが第90話「ジングルベルと銃声の街!」。トランぺッターを目指す青年が、師匠の男を射殺したとして逮捕されました。無実を主張する青年の様子を見て、津上は「犯人とは思えない」と捜査を開始します。

青年はアパートや近所の住人から嫌われていました。が、住人の証言でアリバイが立証されたのです。ところが神代課長(二谷英明)は「アリバイが完璧すぎる」と疑義を覚え、津上に再捜査を指示します。

津上は住人の証言を一つずつ崩しにかかります。すると、実は青年は嫌われ者だったのではなく、逆に住人に慕われていたことが分かったのです。住人たちは青年を助けたい一心で嘘の証言をしていたのでした。

青年の心の優しさと人々の人情身あふれる交流の姿には、思わず涙ぐんでしまうほど。決して「昭和の時代だったから」と片付けてしまうのではなく、今の時代にも通じるものがあると思いたいです。

この作品のラストで青年のトランペットと津上のドラムの競演シーンが挿入されています。荒木しげる氏は俳優だけでなく、ドラマーとしても活躍しており、特捜最前線では時々、その腕前を披露しているのです。

荒木氏は残念ながら、2012年4月に63歳で亡くなられました。仮面ライダーストロンガーなど特撮でも人気だった荒木氏の若き日の熱演ぶりを、特捜でぜひご覧いただきたいと思います。

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私だけの特捜最前線→9「死体番号 044の男!〜橘刑事の親子愛を描いた原点作品」

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※このコラムはネタバレがあります。

橘刑事(本郷功次郎)は、神代課長(二谷英明)にスカウトされる形で特命課に配属されました→第53話「背番号のない刑事!」。警部の階級も与えられ、課のナンバー2として最終話まで登場していくことになります。

特捜最前線で橘刑事は、「親子愛」をモチーフにした印象的な作品を幾つも残し、とくに「子供を守ること」には全力を傾けています。そのきっかけになったのが、第74話「死体番号044の男!」です。

橘は、自分そっくりで事故死した男になり代わり、犯罪グループに潜入します。そこには男の息子が人質となっていましたが、橘にも離れ離れになった同年代の息子がおり、自分の境遇と重ね合わせてしまうのです。

男の息子は、自分と母親から逃げた男(実は橘)に激しい罵声を浴びせます。しかし、心の底では父親を慕っており、橘に鉄拳を受けたことをきっかけに、親子の情愛が少しずつ戻ってきました。

橘の方はどうかというと、修学旅行で東京にやって来た息子に会ったのですが、息子は橘を許さなかったのです。番組ではその後も、橘の息子への思いに触れるエピソードが描かれますが、親子の氷解には至りません。

自分に責任があるとはいえ、愛する子供と離れ離れになる辛さを橘は身に染みています。だからこそ、親子の情愛を引き裂きかねないような事件では、常に子供の身になり、必死で守ろうとしたのです。

橘と息子が直接的にかかわるドラマは、第313話「父と子のブルートレイン!」まで待たなければなりません。この話も素晴らしいストーリーだったので、いつか紹介したいと思っています。

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私だけの特捜最前線→8「ナーンチャッテ おじさんがいた!〜高杉刑事のシビアなドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線には、その時代の世相を反映させたドラマが時々出てきます。第54話で放送された「ナーンチャッテおじさんがいた!」も、当時(昭和53年)都市伝説となった「なんちゃっておじさん」にちなんだ話でした。

電車内で迷惑行為をする者にちょっかいを出し、怒られると大声で泣きわめき、あたふたした迷惑行為者が立ち去ると、「ナーンチャッテ」という意図でベロを出しながら、両手で丸印を作るという中年おじさん。

ある事件の捜査で中年おじさんを探すことになった高杉刑事(西田敏行)。事件は、迷惑行為をしていた3人組を注意した男性が、帰り道に撲殺されるというもので、残された子供のためにと高杉は奮起します。

中年おじさんと出会い、事情を聞くことができた高杉。おじさんの行為は単に正義感だけではなく、同じような事件で殺された息子へのノスタルジーや犯人への復讐という強い意志が込められていたのです。

しかし、おじさんは犯人に返り討ちに遭って殺されてしまいます。高杉はおじさんの遺志を継ぎ、迷惑行為者への「ベロ出し」を実行していき、ついに犯人にたどり着くのです。そして犯人逮捕に導きました。

ストーリー自体も非常に激辛で、遺児もおじさんも全く救われません。それに加え、ドラマの中で「見て見ぬふり」をし、犯行時の状況すら語りたがらない一般大衆の姿も赤裸々に描かれています。

高杉や正義感の強い吉野刑事(誠直也)は憤りを感じますが、紅林刑事(横光克彦)は「武器を持たぬ者に戦えという権利はない」と反論します。捜査の過程で意見をぶつけ合うのも特捜の特徴的なシーンといえます。

この作品では、なんといっても西田敏行氏の素晴らしい演技が光ります。コミカルさが持ち味ですが、人情味あふれたり、感情を爆発させたりと、非常に表情が豊か。短期間で降板してしまったのが残念です。

もう一人、中年おじさん役の今福正雄氏の熱演もドラマを引き立たせてくれました。深い悲しみを胸に秘めながら、表面上は極めて陽気にふるまうおじさんの姿には胸を打たれます。名優あってのドラマですね!

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私だけの特捜最前線→7「兇弾、凶弾U〜神代課長の娘とその死」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線には、「辛口」と称されるドラマが時々あります。救いようのない結末や取り返しのつかない結果でドラマが終わると、見ている方もなんとも言えない気分になってしまい、それが辛口とされる所以です。

神代課長(二谷英明)の娘が事件に巻き込まれ、犯人によって射殺されてしまうという衝撃のドラマが「兇弾・神代夏子死す!」と「凶弾U・面影に手錠が光る!」の前後編で制作されました。

「太陽にほえろ」の刑事殉職編のように、本人がいなくなってしまうのとは異なり、刑事が最愛の肉親を奪われてしまうというドラマは、非常にキツイものがあります。とくに神代の場合は娘ですので余計に・・・

前編の「兇弾」と後編の「凶弾」と、違う文字を使っています。神代の娘は前編のラストで射殺されてしまいました。それも、神代が見ている前での出来事で、神代の慟哭ぶりが「兇」の文字に表されているようです。

後編の「凶弾U・面影に手錠が光る!」では、神代がなりふり構わぬ単独捜査で相手を追いつめていきます。上層部が神代の指揮権剥奪まで考えてしまうほど、鬼気迫るような暴走ぶりを見せるのです。

後編で神代は一言もセリフを言いません。口にするのは娘の生涯を回想する時だけ。目など表情だけで怒りも悲しみも表現する二谷英明さんの迫真の演技は、とても素晴らしく、見る人をひきつけていきます。

犯人を逮捕しても、犯罪被害者となった神代の心が晴れるわけではありません。娘は二度と戻って来ないからです。辛口作品が多い特捜最前線の中でも、一、二を争う「激辛」と言える前後編だと思います。

ちなみに、このドラマの脚本はメインライターの長坂秀佳氏で、銃口を向けられた人質が、いつも無事に解放されるわけではないということを表したのだと言われています。それにしてもエグイ脚本だなあ(涙)

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私だけの特捜最前線→6「爆破60秒前の女〜定番となる爆弾もの」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線のメインライターである長坂秀佳氏の脚本では、誘拐と爆弾の事件が多く登場します。初シナリオの第7話「愛の刑事魂」では誘拐を取り上げましたが、次の第17話「爆破60秒前の女」は爆弾の話です。

特命課に届いたラジコンカー。それは遠隔装置で爆破できる爆弾で、過激派が送り込んだものでした。課内を監視され、身動きが取れない神代課長(二谷英明)と桜井刑事(藤岡弘、)にリーダーがある命令を下す・・・

作品の見どころは、神代が桜井以外の部下にどうやって爆弾の存在を知らせるか、という点にあります。桜井が部屋を出た後、徹夜の捜査を終えた船村刑事(大滝秀治)ら部下たちが課に戻ってきます。

神代は、つっけんどんに帰るよう命じました。高飛車な物言いに高杉刑事(西田敏行)ら若手は不満げでしたが、長い付き合いのある船村だけは神代の態度に不審を抱き、異変を感じ取るのです。

船村は、神代の身に何が起こっているのかを探るため、電話機に「ある仕掛け」をします。が、神代はリーダーに悟られないようにするため、その仕掛けを外すのです。その神代の意図を見抜こうと、船村は推理します。

「爆弾が仕掛けられ、どこかで監視している」という状況を神代がどうやって知らせるか、そして船村たちがどうやってキャッチするのか。スリリングな展開には思わず惹きつけられてしまいます。

一方で、サブリーダーである女性の描写の仕方には、男女差別が際立っていた昭和の時代を感じさせられます。過激派に身柄をコントロールされた桜井刑事は、局面打破のため、女性を挑発することを考えました。

桜井は「女のくせに」などと蔑む言葉を投げかけるだけでなく、上着を引き裂きブラをさらけ出させる暴挙にまで出ます。女性は、過激派仲間からも「女はいざという時にダメだ」という見方をされてしまうのです。

ジェンダーレスの現代ではありえないような場面が続き、40年前の番組ということを忘れ、「苦情や抗議が制作スタッフに殺到するだろうな」とハラハラしながら見てしまいました(苦笑)

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2022年08月19日

私だけの特捜最前線→5「羽田発・犯罪専用便329!〜殉職ではない交代劇」

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※このコラムはネタバレがあります。

前回のコラム「背番号のない刑事!〜橘刑事初登場のドラマ」で少し触れましたが、この一つ前の第52話が「羽田発・犯罪専用便329!」で、桜井刑事役の藤岡弘、さんが降板した回となります。

ドラマでは、出演者の都合で降板を余儀なくされることがあります。刑事ドラマでの降板といえば、「太陽にほえろ」が採用した「殉職」というイメージがあります。しかし、特捜最前線は違っていました。

第52話は、アメリカからの麻薬密売ルートを捜査するというストーリーで、国外逃亡した人物を追うために、桜井刑事には「大使館付」で特別な任務が与えられ、アメリカに渡ることになったのです。

特命課を去る桜井に対し、神代課長(二谷英明)はこんな言葉を掛けています。「特命課での君の席はいつでも空けているからね」。つまり、桜井は転勤というよりも、長期の出向という形だったと解釈できるのです。

殉職は非常にドラマチックですが、非現実的と言わざるを得ません。特捜でも殉職者がいますが、一方で転勤や退職という降板も多いです。番組的にも、その方が復帰や再登場の道が残されるので好都合でしょう。

この回では、外事課の紅林甚一刑事(横光克彦)が共同捜査に加わっており、そのまま桜井の後任として特命課に配属となったのです。紅林は、初登場とは思えないほど、最初からメンバーに溶け込んでいました。

良くも悪くも目立たず、地味な印象を与えた紅林。ただ、高杉刑事(西田敏行)に下の名前を茶化された時、「両親が付けた名前だ」と生真面目に言い返すところだけは、個性が露わになっていましたね(笑)

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私だけの特捜最前線→4「背番号のない刑事!〜橘刑事初登場のドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

番組放送開始から約1年、特捜最前線は新メンバーを迎えます。第52話で桜井刑事(藤岡弘、)がアメリカ行きという形で離れ、後任に共同捜査をしていた紅林刑事(横光克彦)が着任していました。

続く第53話で登場したのが橘刑事(本郷功次郎)でした。橘は長崎県警で派出所に勤務している警官で、友人の息子がプロ野球デビューするため、休暇を取って東京に来ていたのです。

友人は容疑者として特命課に追われる人物だったため、橘も捜査に巻き込まれる形になります。橘は、髪はボサボサ、無精ひげを生やし、風呂にもろくに入っていない風采の上がらない男に見えますが・・・

実は長崎県警では超エリート刑事だったそうで、柔道も射撃もトップクラスの腕前。ところが、ある事件で友人を逮捕したことをきっかけに、自ら離島の派出所勤務を申し出て現在に至っているといいます。

事件解決後、橘は長崎県警に辞表を提出しました。ところが、実力を見込んだ神代課長(二谷英明)が手を回し、特命課への配属を決めてしまいます。しかも警部に昇格させ、ナンバー2のポジションに据えたのです。

橘の信条は「粘り強さ」と「決して諦めない」ことにあります。証拠を一つずつ丹念に拾い集めていく捜査手法で、この後も難事件を解決に導いていくのです。また、子供に優しいのも彼の特徴といえます。

派手で華やかな雰囲気だった桜井刑事と比べ、橘刑事は地味でオーソドックスなタイプと言えます。特捜最前線が、社会派ドラマと呼ばれる重厚な路線に移っていったのも、橘の存在が大きかったのではないでしょうか。

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私だけの特捜最前線→3「愛・弾丸・哀〜おやっさんのキャラ」

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※このコラムはネタバレがあります。

第13回「愛・弾丸・哀」は、初期の特捜最前線の中でも名作の一つに数えられている作品です。主役は津上刑事(荒木しげる)ですが、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)のキャラクターが際立っています。

立てこもり事件で突入した津上刑事は、犯人を前に拳銃を発射せず、後方から撃った桜井刑事(藤岡弘、)が犯人を射殺しました。津上は「撃たなくても逮捕できた」と、桜井を激しく非難したのです。

津上は、冷徹そうに見える桜井よりも、日頃温厚な船村刑事に刑事の理想像を見いだそうとしますが、船村は「私はそんな人間ではない」と否定します。その最中、津上の妹が事件に巻き込まれてしまうのです。

この後のストーリーは省略しますが、作品では主役の津上よりもおやっさんのインパクトが強烈に残りました。そのキャラが最も出たのが、取調室での一癖ある容疑者への取り調べのシーンです。

のらりくらりと話す容疑者に対し、堪忍袋の緒が切れた船村は「俺だって刑事生活30年、伊達や酔狂で頭ハゲらかしてるワケじゃねぇんだ」と啖呵を切り、容疑者に迫りながら矢継ぎ早に言葉を吐きます。

「飯も食わさない、眠らさない、クソもションベンもそこでやれ!」と脅され、迫力満点のおやっさんに容疑者はとうとう陥落し、自供させられます。流れるようなセリフ回しは大滝秀治さんの真骨頂です。

取り調べ担当はベテランの役割、というのが刑事ドラマのセオリーですが、「太陽にほえろ」のヤマさん(山村刑事)とは違ったタイプのおやっさんの取り調べは、この後の特捜で何度も登場してくることになります。

ちなみに「愛・弾丸・哀」は、「哀・弾丸・愛」のタイトルで第359、360回でリメイクされます。こちらの作品の主役はおやっさんで、特捜史上でも一、二を争う名作と言われています。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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