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2023年10月26日

特捜最前線 登場人物コラム「特命課・船村警部補」

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今週は、ちょっとした小話を書きます。題して「登場人物コラム」。
登場するのは、おやっさんとして慕われている特命課の船村警部補です。

船村警部補は、番組のオープニングメンバーの一人で、当初から特命課のベテラン刑事という位置づけで登場しました。演ずるのは名優の大滝秀治さんです。

船村警部補は前後編の「裸の街」という作品で、いったん特命課から離れます。妻が末期がんで、最期をみとるために退職という道を選んだわけです。

この退場劇には裏事情があり、大滝さんが映画「影武者」に出演するため、番組との掛け持ちができなかったからでした。つまり、最初から復帰の可能性含みだったのです。

約1年後、船村警部補は「ビーフシチューを売る刑事」で再登場し、事件解決をきっかけに特命課に復帰します。正確には「復職」という感じだったのかもしれません。

その直後に放送された「乙種蹄状指紋の謎!」は、おやっさんの数多い作品のなかでも傑作の一つに挙げられます。作中での名セリフが強烈に印象に残っているからです。
私だけの特捜最前線→31「乙種蹄状指紋の謎!〜なぜ、おやっさんは特命課に復帰したのか?」

「能力においても、頭脳においても、議論でも腕力でも君らには負けるだろう。だが、心では決して負けない」。これこそが、船村警部補の「核心」であり、若手刑事がおやっさんを慕う原点となっていきます。

船村警部補というと、ドラマ中でも「長ゼリフ」のシーンがたびたび見られます。それも、よどみなく情感を込めて語っています。劇団民藝の看板俳優として、数多くの舞台を踏んできた大滝さんの真骨頂とも言えるでしょう。

また、心臓の持病を持っているという設定を生かした「老い」や「衰え」との対峙、さらには定年間近ということを踏まえた「人生観」もテーマに取り上げられています。

リアルタイムで見ていた頃は、10〜20代だったので全く実感がわきませんでしたが、自分がおやっさんと同世代になってみると、身に染みて同調できることがたくさんあります。だから余計に、船村警部補主演のドラマに思い入れが深くなるのでしょうね。

今回のコラムはここまでといたします。

★ブログ「私だけの特捜最前線」は、2023年11月より不定期掲載となります。

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2023年10月19日

私だけの特捜最前線→100「昭和60年夏・老刑事船村一平退職 ! 〜刑事生活30年のおやっさんが知ったこと」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線のドラマ解説の連載も今回がラストになりました。どの作品を最後に選ぼうかと考えましたが、この作品にしました。タイトルは「昭和60年夏・老刑事船村一平退職 !」です。

このドラマは、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)が退職を決断することが最大の見どころですが、船村刑事を描かせたら天下一品の脚本家・塙五郎さんらしい超激辛の幕引きドラマになっているのです。

おやっさんが初めて逮捕した男

学校の用務員、おでん屋のオヤジと、何者かによって相次いで殺され、現金を奪われる事件が起きました。二人は「城西暑の船村」と名乗る刑事と一緒だったことが分かり、船村刑事は自分との関連を疑います。

犯人の遺留品に東京都内の坂道を記したメモが見つかり、船村は犯人の行方を追って坂道をたどります。いくつもの坂道を歩き回り、ふとしたことからメモを書いた人物が分かったのです。

その人物は30年前に浮気相手の夫を殺したとして、船村が逮捕した男でした。船村が初めて手錠をかけた男であり、その後の男の人生は犯罪を繰り返し、刑務所暮らしが続いていたことも判明しました。

やがて、用務員殺しがあった学校の女性教諭(根岸季衣)が、男と不倫した女性の娘だと分かります。教諭は「男が実の父親だ」と話し、その男と自分の関係を知られたくなかったとして証拠隠滅を図ったと告白します。

さらに30年前の事件について、夫を殺したのは男ではなく自分の母だったと衝撃の事実を告げ、船村に対し「無実の人を捕まえて、それを手柄にしていた」と冷たく言い放ったのです。

自分の初手柄が誤認逮捕だったことを知った船村。それでも犯人を追わなければならない船村。男の身柄を確保した時、船村は「この男にしてやれることは、手錠を打つことだけです」と自分に言い聞かせたのでした。

ドクターストップがかかっていたおやっさん

ドラマのあらすじを書きましたが、おやっさん(船村)が辞めた理由は過去の誤認逮捕がきっかけではありません。持病の心臓の具合が悪く、ドクターストップがかかっていたためでした。

おやっさんは、初手柄を立てた坂道を見て「この坂を駆け上がれなくなった時が、自分が辞める時だと思っていた」と語ります。運命のいたずらか、男を逮捕したのも同じ坂道だったのです。

坂道に現れた男を特命課の刑事たちが追いかけます。おやっさんも必死で坂道を駆け上がりますが、途中で跪いてしまったのです。おそらくこの時、おやっさんは退職する決意を固めたのでしょう。

電話で退職届を出したことを娘の香子に報告するおやっさん。涙を流しながら「やめたくねえんだよ」と何度も何度も口にします。おやっさんの無念の思いが伝わってくるような辛いシーンです。

神代課長(二谷英明)とおやっさんが坂道を歩くラストシーン。神代は「坂は駆け上がることしか考えていなかった。でもこうしてゆっくり上がることもできるんだ」と語り掛けます。

おやっさんは無言で、その言葉をかみしめていたようでした。坂=人生に例えてみれば、おやっさんは第一線の刑事こそ辞めますが、次の人生はこれから始まるわけです。とてもいい言葉だと思いました。

30年の刑事生活でわかったこと

自分が初めて逮捕した男が、長い間刑務所暮らしを続けた挙句、凶悪犯として再び姿を現した時、おやっさんは「あの男にとって30年とは何だったのか」と、自身の刑事生活と重ね合わせながら思いめぐらせます。

30年の刑事生活でわかったこと・・・人間っていうのは、ずるくて、汚くて、あさましくて、いやしくて、嘘つきで、恐ろしくて・・・そして、弱くて、悲しいものだってことだ」。

人間の「裏」の部分ばかりを見てきたおやっさんらしい言葉だと思います。そして、弱くて悲しい存在だからこそ、どんな人間でも救う手立てはないかと常に考えていたおやっさん像を思い浮かべずにはいられません。

おやっさんこと船村刑事主演の脚本を多く手掛けてきた塙五郎さんは、この作品を最後に特捜最前線の脚本から退いています。おやっさん退場回を超激辛のストーリーで締めくくって・・・ですね(笑)

おやっさんが最初と最後に手錠をかけた犯人役は、ベテラン俳優の内田稔さんが、女性教諭役は実力派の根岸季衣さんが演じ、おやっさんのラストストーリーに花を添えてくれました。

もう一人、本当なら香子役の木村理恵さんにも出演してほしかったところですが・・・逆に香子が出てこなかったことで、おやっさんの孤独な悩みと苦しみの演出を引き立たせたのかもしれませんね。


コラム「私だけの特捜最前線」のドラマ解説は100回をもちまして、ひとまず終了させていただきます。

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2023年10月12日

私だけの特捜最前線→99「哀・弾丸・愛 7人の刑事たちT・U〜船村刑事の葛藤が見事に描かれた大傑作」

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※このコラムはネタバレがあります。かつ長文です。

特捜最前線のドラマ解説コラムも99本目となりました。今回は特捜最前線屈指の名作と言われている「哀・弾丸・愛 7人の刑事たち」を紹介します。おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)の代表作でもあります。

もともとこの作品は、番組初期に「愛・弾丸・哀」のタイトルで放送されたものをリメイクしたドラマです。船村が主役ではありますが、神代課長(二谷英明)や若手刑事たちの見せ場も用意しています。

銀行強盗を撃てなかった船村

強盗(中西良太)が銀行に立てこもった事件に出動した特命課。強盗からのコーヒー差し入れ要求に合わせて、強行突入に踏み切ることにし、船村刑事と叶刑事(夏夕介)は裏口に回ります。

強盗に足を撃たれた警備員(加藤武)がいたため、看護師を装ったカンコ(関谷ますみ)がコーヒーを持って行内に入っていました。強行突破に逆上した強盗は、カンコと人質の女子行員を撃ったのでした。

その時、船村は犯人を狙撃する姿勢を取りながら、なぜか拳銃を下ろしてしまいます。その結果、強盗を取り押さえはしたものの、撃たれた女子行員は死亡し、カンコも重傷を負ってしまったのです。

ところが事件は解決したわけではありません。銀行側から強盗が奪った金とは別に、3000万円が無くなっているとの通報があったのです。強盗は単独犯ではなかったのか・・・特命課の捜査が始まります。

コーヒーを用意した喫茶店は、強盗が働いていた店でした。マスターの証言で強盗には恋人(芦川よしみ)がいることが分かります。その恋人宅に送り主不明の1000万円が届けられたのです。

共犯者の存在が確定的になり、マスターが怪しいとにらんだ船村と叶。雨の中、逃亡をくわだてたマスターを必死で追う船村。しかし、心臓の発作が起きてしまい、マスターを取り逃がしてしまったのでした。

ミスが続いた船村が起死回生

ミスを犯した船村を心配する特命課のメンバーに対し、神代課長は休養を命じたと説明したうえで「捜査に戻れ」と命じます。そんな時、マスターが入水自殺したとみられる遺体で発見されたのです。

特命課が銀行で再度現場検証を行った結果、3000万円の現金を持ち出せる可能性のある人物として被害者の女子行員をマークします。そして、女子行員が年配の男と一緒にいたとの目撃情報を得たのです。

紅林刑事(横光克彦)らの捜査によって年配の男とは、足を撃たれた警備員だと分かりました。取調室で船村は強盗を厳しく詰問し、警備員が主犯であるとの自供を引き出し、行方を追って出動します。

ライフルを持った警備員が立て籠もっている貨物駅ターミナルに来たメンバー。船村は「心臓の具合が今一つ」だとして待機し、神代らは拳銃を携帯して倉庫へと突き進んでいきます。

警備員は隙をついて、近くにいた子供を人質にして逃走を図ります。それを追うメンバーの耳に、一発の銃声が鳴り響きます。駆け付けた先には、警備員を射殺し、仁王立ちになっていた船村の姿がありました。

刑事局長(御木本伸介)から栄転の名のもとに第一線からの引退を告げられ、一度は退職を決意した船村でしたが、事件解決の功績で刑事の職に踏みとどまります。が、その表情は決して晴れやかではなかったのでした。

退職の意を固めた船村と翻意を促す神代

ドラマの肝は、船村刑事の心の葛藤を描き切っていることに尽きます。第一線から退くよう勧告されていた船村が、刑事でありたいと執着してもがき苦しみ、退職届を出そうかというところまで追い込まれます。

事件関係者として接していた警備員は元刑事で、現職時代に自分と同じ境遇だったことが分かります。警備員は「栄転の話を断ってスッパリ辞めた」と語り、自分の夢を嬉々としてしゃべります。

警備員と意気投合した船村は「この仕事が好きだった。自信があった。紙切れ一枚で横っ面張られたようだった。負けるものかと思っていたらミスをしちまった」と愚痴をこぼし、退職へと傾いていくのです。

ところが紅林刑事の捜査により、警備員は警察を辞めた後、仕事を転々として不遇だったことが分かります。それでも船村は、一度決意した思いを振り切れず、退職届を提出しようと刑事局長の元に出向きました。

そこに神代が現れます。神代は、警備員の辞め方は鮮やか過ぎたとし、「一つの道を進んできた者が、そう簡単に他の道を歩めるものか。私にはできない。未練がましい男なんでね」と語ります。

そして「人間は年を取ることからは逃げられない。でも、年を取らなければできないことや分からないこともある」と諭し、船村に翻意を促します。それでも船村の心はまだ揺れたままでした。

強行突破の時の心境を語る船村

特命課は、行方をくらました警備員の潜伏先を探るため、逮捕した強盗を厳しく追及します。ですが、警備員に大恩がある強盗は口を割りません。そこに船村が戻ってきて、取り調べを申し出たのです。

船村は、強盗に対して「お前のような奴は古だぬきに騙されやすいんだぞ」と、警備員を悪しざまに言いつらいながら追い込んでいきます。この取り調べこそ、船村が真価を発揮した場面と言えるでしょう。

潜伏先に向かう前、船村は強行突破の時の心境を「(強盗を射殺することで)自分がまだやれることを証明したかった」と打ち明け、拳銃を構えた瞬間「(その考えに)ゾッとした」と吐露します。

直前で拳銃を下ろしてしまった船村に、神代は声を震わせながら「それでいいんだよ」と言います。でも船村は「私のためらいが人を殺した・・・それだけが事実なんです」と贖罪の思いを語るのでした。

ドラマには船村の娘である香子(木村理恵)も登場します。香子は、船村の栄転話を聞いて「よかったじゃない」と口にします。でも、心の中では「父さんは刑事を辞める気はないだろう」と思っていました。

船村が休養を申し渡された後、香子は母親の仏壇の引き出しにある退職届を見つけ、動揺します。船村が退職を撤回したと聞いて、一番安堵したのは香子だったのかもしれませんね。

若い刑事たちにもスポット

この作品のサブタイトルには「7人の刑事たち」と付いています。ドラマでは船村や神代課長だけでなく、叶、紅林、吉野といった若い刑事たちにもスポットを当てたシーンが描かれています。

叶刑事は船村とコンビを組むことが多く、体調に不安を抱える船村を常に気遣っていました。一方で、同情されたと思った船村が、叶を激しく叱り飛ばすシーンもありました。

船村が休養を命じられた時、叶は自宅を訪ねます。応対した香子に叶は「いつまでも現場にいてほしい。僕らはみんな、おやっさんを目標にしているんです」と思いのたけを打ち明けました。

警備員を主犯と断ずる紅林は、警備員を信じている船村が「俺の目は節穴だと思っているのか」と激高したのに対し、「この事件に関しては節穴です」と言い返し、その根拠を理路整然と報告します。

直後の車中で紅林は「生意気なことを言いました」と船村に謝り、さらに「(捜査のやり方は)みんなおやっさんに教わったことなんです。おやっさんが辞めるなら自分も辞めます」とまで言い切りました。

吉野刑事は船村との直接的な会話はありません。ドラマでは重傷を負ったカンコを勇気づける思いやりがクローズアップされ、カンコの元婚約者になりすまして病室に花を届けるという心憎いことをやっています。


このドラマは、特捜最前線7周年記念特別企画として放送され、脚本はおやっさんこと船村刑事主演作を書かせたらこの人しかいない、という塙五郎さんが手がけています。

ゲスト出演者も警備員役の加藤武さん、強盗役の中西良太さん、恋人役の芦川よしみさんと名役者ぞろいで、準レギュラーの御木本伸介さん(刑事局長役)、木村理恵さん(香子役)も登場するスペシャル版でした。

なお、このドラマについては、以前にコラムで書かせていただきました。私の個人的な思いについては、そちらのコラムをご覧いただければ幸いです。
→note連載前コラム(4)日曜雑感「おやっさんに重ね合わせて」

お知らせ
コラム「私だけの特捜最前線」は、次回の100タイトル目のドラマ紹介をもって一区切りさせていただきます。

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2023年10月05日

私だけの特捜最前線→98「人妻を愛した刑事!〜吉野刑事のほろ苦い恋の物語」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線は、放送8年半になったところで大きな転換期を迎えました。放送時間の変更とともに、長年のレギュラーだった大滝秀治さん(船村刑事)と誠直也さん(吉野刑事)が降板したのです。

吉野刑事は殉職という形で去ったわけですが、今回紹介する「人妻を愛した刑事!」は、殉職回前の吉野刑事最後の主演作とも言えるドラマで、個人的には最高傑作に挙げてもいいと思っています。

夫のアリバイを証明しようとした妻

人気カメラマンが自宅でモデルを殺したとされる事件を、独断で再捜査している吉野刑事(誠直也)。その理由は、「主人はアトリエに居た」というカメラマンの妻(新井春美)の証言を信じたからでした。

事件現場には当時、多くの芸能記者が詰めかけていました。その一部始終が映像に残されており、カメラマンの犯行は疑う余地がありません。それでも吉野はアリバイを立証しようと奔走していたのです。

妻は、夫のアトリエに出向いた際、入れ違いに出ていった女性がいたと証言しており、吉野は妻と一緒に女性の行方を捜します。モデルではないかと推理しますが、該当する女性は見つかりません。

ひょんなことから、女性がモデルではなく、仕出し弁当の出前持ちだったことが分かります。吉野と妻は女性の居場所を探し、ついにカメラマンのアリバイを証明できる第三者を見つけるのです。

一方、特命課も橘刑事(本郷功次郎)や桜井刑事(藤岡弘、)らがトリックを暴いていきます。そして、カメラマンの犯行に見せかけてモデル殺しができた人物を特定し、真犯人と断定しました。

真犯人は、アリバイを証言できる妻と女性を殺そうとしますが、吉野刑事が駆け付け、二人は難を逃れます。真犯人の逮捕によって、カメラマンの無実が確定したのです。

「好きだから信じる」吉野

ドラマでは、吉野刑事の揺れ動く恋心が丁寧に描かれています。冒頭から浮かれ気分の吉野の姿が紹介され、それが所轄署で解決済みとされた事件の関係者だったことから、特命課の面々は気をもむのです。

神代課長(二谷英明)から、なぜ捜査をするのかなど詰問されますが、吉野は「分かりません」を繰り返すばかり。そして「好きだからやる。好きだから信じる。それはいけないことですか」と主張します。

ここで平凡な上司だったら「勝手な行動は許さん」「捜査をやめろ」と頭ごなしに命令するでしょう。でも神代は「5日間だけやる」と吉野の一方的な言い分を聞き入れます。神代の懐の深さがうかがえるシーンです。

吉野は、妻のために懸命になって捜査を続行しますが、妻に恋心を抱く吉野にとっては、辛い捜査でもありました。カメラマンの無実を証明し無罪放免となれば、妻に二度と会うことができなくなるからです。

後輩の叶刑事(夏夕介)に向かって「俺は、あの人と別れるための捜査をしている。苦しいよ」と胸の内を明かし、その呪縛から解放されるには「あの人から嫌われるか、あの人を嫌いになるかしかない」と吐露します。

ただ、妻の方も吉野の一途さに対し、徐々に心が引き寄せられていきます。それは、常にモデルとのうわさが絶えなかった夫の行動や、アトリエから出てきた女性への猜疑心も重なった複雑な思いでもありました。

嫌う女を演じて去った妻

ところが特命課の捜査で、カメラマンのアトリエにある「誰にも立ち入らせない秘密の部屋」の存在が明らかになります。その部屋には、妻のパネル写真ばかりが飾られていたのです。

カメラマンの妻への愛情の深さを見た吉野は、叶に対し「あの夫婦には9年8カ月の歴史がある。どうしても勝てんのだよ」と打ち明けます。それは吉野の「敗北宣言」とも言える告白でした。

出会って間もないころ、妻から嫌いなタイプの女性を聞かれた吉野は「ガムをかむ女、人前で化粧を直す女、タバコを吸う女」と語ります。あたかも、妻とは正反対の女性像を示したかのようでもありました。

カメラマンの無実が証明され、事件が解決した後、吉野が待ち合わせ場所に行くと、妻はガムをかんで吐き捨て、吉野の前で口紅を引き、タバコをふかして見せたのです。

嫌いな女の姿を見せることで、自分を忘れてほしいという切ない女ごころ。踵を返して立ち去る妻の表情は固く、そこには事件が解決したり、夫が釈放されたりした喜びは感じられませんでした。

妻の帰るべきところは、夫と子供が待つ家庭だったのです。吉野もそれをわかっていたので黙って見送ります。ラストに「吉野さんの恋は終わった」という叶のナレーションがかぶさる名場面でした。

刑事ものと恋愛ものが両方楽しめるドラマ

このドラマの秀逸なところは、吉野刑事は「恋する妻を信じてアリバイを立証する」ためだけに動かし、事件の本筋である「真犯人探し」を他の刑事たちが担っていたという点にあります。

吉野と妻とのシーンは、冒頭はコメディチックに描かれながら、徐々に夫婦の愛情、吉野の葛藤、妻の心の揺れといったシリアスなタッチとなり、そしてラストの何とも言えない切ない別れで完結していきます。

「真犯人探し」では、橘刑事と桜井刑事が「カメラマンを殺人犯に仕立てあげるトリック」を解明し、それを船村刑事(大滝秀治)に説明したうえで、船村に真犯人は誰かを語らせるという展開にしています。

事件を追いかけるという刑事ドラマ本来の面白さを見せながら、同時に「吉野の恋」という最大のテーマをぼかさない・・・さすがはメインライターの長坂秀佳氏の脚本だけのことはあります。

さらに、吉野の心の内を語らせる相手に年代の近い叶刑事をもってきたのも秀逸です。叶も決して茶化したり、たしなめたりするのではなく、先輩の吉野を静かに見守り、おもんばかっています。

何といっても、妻役を演じた新井春美さんの演技あってのドラマであることは言うまでもありません。現在、新井さんは女優としてだけでなく、産業カウンセラーとしても活躍中とのことです。


ここからは余談&予告になります。

ブログ「私だけの特捜最前線」のドラマ解説は、100タイトルをもって一区切りさせていただきます。残り2作品は、おやっさんこと船村刑事主演作の紹介を予定しています。

DVD化されている特捜最前線は150作品ほどありますので、約50作品が未紹介という形になります。とくに転換期後の作品は、終幕3部作も含めて紹介することができません。

吉野刑事殉職編も紹介作品としてリストアップしましたが、殉職に特化したドラマという感じがしましたので、それに代わって今回、吉野の最高傑作である「人妻を愛した刑事!」を紹介させていただきました。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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