2023年04月10日
サケをご神体とする嘉麻市の「鮭神社」とは? 2022年は鮭が還ってきた?
鮭は川で生まれ、大海にわたり大きく成長。生まれ育った川を忘れずに還り、産卵、そして生を終えます
その神秘的かつロマンチックな生涯は、私たちに、どこか敬虔な気持ちを呼び起こしてくれます
そのためか、太古の昔から日本では、鮭を豊穣のシンボルとしてまつる文化がありました
北海道や北陸など、サケが遡上する川の河口には、豊漁を祈り、神社が建てられていることは少なくありません
そして、今回紹介するのは、鮭そのものをご神体としている神社
福岡県嘉麻市の「鮭神社」です
鮭を祀る神社が、鮭が地域の食文化としっかりと結びついている北海道や東北ではなく、暖かい九州にあるのが興味深いですよね
その理由は簡単
実は、この地域、遠賀川水域は、日本で鮭の遡上が確認できる日本最南端なのです
同地に鮭が遡上していたことは、1000年以上前の文献から確認されており、それが鮭を奉る慣習につながったものと考えられます。
鮭は、海の神の使いとされてれおり、とくに遠賀川上流までさかのぼってきた場合、五穀豊穣のしるしとされ大切にされていました。
なんと、昔は地元の方々は鮭を食べるのを禁じられていたとか。
境内にある碑文には、明和元年(1764)に、鮭が奉納されたことが記されています。
現在、鮭神社では毎年12月13日、献鮭(けんけい)祭が行われ、その年に獲れた鮭を、境内にある「鮭塚」に奉納しています
さて実は、遠賀川水系では、鮭の遡上は長く、ほとんど絶えてしまっていました。
要因としては気候の変化、また明治から昭和初期にかけ隆盛を極めた周辺の炭鉱の操業により、水質が悪化したことなどが考えられています
サケの捕獲がない場合は、献鮭祭では代わりとして、目や尾ひれなどの飾りを付けた大根が祭壇に供えられます。
しかし、長らく続いたその様相が変化したのが昭和53年、大正15年以来、記録上50年ぶりにサケの遡上が確認され、本物の鮭による奉納が行われました
以来、伝統を復活させようという機運が高まり、昭和60年に放流事業が開始されました
現在、地元の「遠賀川源流サケの会」が20年以上前から放流を実施。
その結果、毎年ではないものの、遡上が確認できるようになりました。
最近では2017年、2020、2021年と生息が確認
2022年は残念ながら鮭の遡上は確認できず、同年の献鮭祭では、大根のお供えがされています
九州に根付く鮭文化が、今後も続いてくれることを願うばかりです
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