全国的に、秋サケの季節となっていますが、数ある日本の鮭の産地のうち、大きなドラマが生まれたのが
福島・楢葉町にある木戸川です。
2023年12月09日
震災を乗り越えて 福島・木戸川でサケの遡上がはじまるまで
木戸川には毎年サケの遡上があり、放流事業も盛んにおこなわれていました。同町のサケ漁は上流から下流に追い込み、網にかける独特の手法でも知られています。
その大自然と人間活動が生み出す偉大なエコサイクルを断絶してしまったのが2011年の東日本大震災に伴う津波と、福島第一原発事故です。
震災時は、毎春おこなう放流事業の最中で、稚魚約1千万匹のうち3割程度を放流した時点でふ化場が津波の被害にあいます。
その大自然と人間活動が生み出す偉大なエコサイクルを断絶してしまったのが2011年の東日本大震災に伴う津波と、福島第一原発事故です。
また楢葉町は町の大部分が、原発施設半径20km以内の警戒区域で、木戸川周辺も避難区域として指定されました。
域内の立ち入りができなくなったことで当然のことながら、サケ漁は中断されることになり、未来の漁業の存続が危ぶまれる事態となりました。
待ちに待ったサケ漁が再開されたのは2015年、震災から4年以上が経過していました。
鮭は、川で生まれてから、4年、5年で成魚となり、生殖・産卵のため戻ってきます。
そう、再開した漁で木戸川に戻ってきた鮭。その中には、震災時に放流した稚魚が含まれています。
震災の中海を渡った鮭は、確実に命をはぐくみ、生まれ育った川に帰ってきました。
なお稚魚の放流事業は、前年2014年春に再開し、近くの漁協から購入した稚魚計2万匹を放流しています。
それは大きな傷を負った楢葉町の復興にむけた大きな一歩でもあったのです
お勧めの一冊
さて、そんな木戸川のドラマを感動的に描き出す本を紹介しましょう
東日本大震災、福島第一原発事故からの復興への挑戦を描き出すノンフィクション。少年少女を対象とした本ですが、内容は実に示唆に富んでいます。著者は釣り師としても有名な東京海洋大学客員教授、奥山文弥さん。
物語は、孵化・放流事業が行ってきた漁協。物語の主人公となる若い職員、鈴木謙太郎さんが入るところからはじまります。魚、そして釣り好きの彼は、漁協の仕事に天職を感じ、仕事に打ち込みます。
本書では、ふ化事業の再開などへの活動、鮭を復興のシンボルとして街全体を立て直そうとする漁協の活動を、主人公の鈴木さんの成長を絡めて描き出しています。 サケに関する知識、ふ化、放流事業の重要性についても、新たな気付きを与えてくれる情報が随所にあります。ぜひおすすめ
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