しかし、内容としては、復興予算への批判や全国事業への予算の流用といった話題も織り交ぜてということであり、確たる解がある訳ではないし、それをかならずしも目指したということでもないようだ。
○はじめに
においても住宅復興の手当が不十分だというが、現実的には地震保険が既にある。
被災地においても地震保険で今回の津波で流出された家は津波で流されたのだから関係ないだろうという人もいるぐらいに認知度が低いのだが、それはこの本でも同様だ。
東北地方では宮城県沖地震が30年間隔で発生するということがあり、地震保険への加入率は高い。
従って、地震保険による保険金は早々と払われており、1件あたりの平均は1千万円にも届こうかというものだ。
もちろん被災者生活再建支援制度などは地震保険とは別だから、あわせると一千何百万円かの資金を被災者の多くは手にしているのである。
少なくともこうした地震保険の存在によって被災者の生活再建が確実に進んでいることは間違いない。
被災者への住宅支援が足りないという前に、既にある地震保険になぜ入らなかった人たちなのか、地震保険に入った人と、入っていない人がいるなか、地震保険に入っていた人を優遇すべきなのではないか?といった議論が本来は必要である。
塩崎賢明教授の復興予算問題の突きつけたもの、などにおいては、復興予算で全国防災の推進をするのはおかしいという。耐震改修は「地震が起きてみないと効果が分からないからという理由で」即効性がないから別の予算ですべきだと。住まいの復興を訴える割には妙な話を展開している。つくづく思うのは、建築の先生でも構造力学が分からないのに、建築の先生だというだけで、建物の耐震について効果がないんじゃないか、なんて簡単に発言する人が非常に多いことだ。
基本的に耐震改修はやったなりの効果は必ず、その改修を行った時点からある、ただし、暫く経つとその効果は確実に薄れるのだが。そうした細かい話があるため、構造専門の建築の先生もこれを言ったら効果がないという合唱が起きると思って触れないのだろうが、どの立場にしても無責任である。どちらがより悪いか、といえば、専門外の話に分からないのにケチを付ける塩崎氏のような多くの構造力学が理解できない先生たちだろう。
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間野博教授の「試されるプランニング技術」では、復興まちづくりなしに住宅再建なし、と今回の東日本大震災の現地での再建が困難なことからおこる課題について明確に述べられている。また、被災地の復興に際して、津波の高さより高くということで、多くの大規模盛り土造成がなされているが、その安全性について警告をしている部分は興味深い。また、命を守るのか、財産を守るのか、といった優先順位付けも重要である。基盤整備をしてもどれだけ人が戻ってくるか?こうした疑念を持ちながら復興計画について観ているというスタンスはなかなか語られないのだが、広く公で共有して、では、何をどうするか、ということにつなげて行かなければならないだろう。
安本典夫、森川憲二による「復興まちづくりと集団移転の事業制度」については、現地でおこっている問題をピックアップしている部分は面白い。しかし、二重ローンの回避については、一義的には地震保険の加入であったはずであり、ここにはやはり全く触れられていない。また、土地を最終的に所有できなければ復興とは言えないという枠組みを持っていることも、現実がそうであれ、実現叶わないことは明らかであることであるにも関わらず、工夫を考えないのは、結局、土地所有までしないとダメだと言う価値観を認めてしまっているからだろう。学者の立場からはもっと大胆な、また、住民や常識と言われるものの再考から、解決策を模索してもらいたいものである。
以上、いろいろと感じたところである。
現地の雰囲気は伝わってくるのは、この本のよいところだが、ブレークスルーがない、というままなのと、そこへのアプローチの貧困さということで、今の状況をよくも悪くも表している本である。
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