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2019年03月24日
【インフルエンザ総括】
【インフルエンザ総括】
1)インフルエンザ予防には、ワクチン!、
暴露しない!(流行したら人ごみの多いところに行かない!)
2)インフルエンザ診断に迅速診断キットは必需ではない!
(風邪では経験しない倦怠感!)
3)ゾフルーザは最後の切り札!
(10%の耐性株には効かない、むしろ治癒を遷延させる!)
4)拡散させない!(他人を巻き込まない!)
「発症した後5日を経過し、『かつ』、
解熱した後2日(幼児にあっては3日)
5)症状がなければ、余計な検査は受けない!
インフルエンザ診療で不要なこと:医師会の見解
提供元:ケアネット 公開日:2019/03/01
2019年2月27日、日本医師会の釜萢 敏氏(常任理事)が、
今季における季節性インフルエンザについて、
診断方法や治療薬の選択、“隠れインフルエンザ”への対応など、世間の話題も踏まえた見解を記者会見で発表した。
昨季に続き、今季もインフルエンザは大規模な流行となったが、患者数は2019年第4週(1月21〜27日)をピークに『収束』をみせている。
ピーク時の患者数は昨年を上回ったものの、累積の推計受診者数は、昨季の推計全罹患者数を下回る見通しだ(統計の出し方が変わったので、信用できない!)。
ワクチンの供給がより円滑に行われた結果とも考えられるが、最も需要が高かった11月の供給量は必ずしも十分でなかったという。
ワクチンについては、引き続き対策を講じていく必要があるだろう。
診断に、必ずしも迅速診断キットは必要でない
釜萢氏は、インフルエンザの診断に関して、「迅速診断検査は、必ずしも全例に実施する必要はない」と世間における認識の是正を求めた。
「検査はあくまでも補助なので、一番大事なのは患者さんの症状をしっかり把握すること。
周辺の流行状況や罹患者との接触の有無などを踏まえて、総合的に判断すべき」とコメントした。
迅速診断キットの判定について、
最近の傾向としては、急激な発熱などの発症から『約6時間』以降で検出される場合が多いという。
しかし、確実な判定が出るまでの時間については一概に言えない(個体差!)ため、最終的には医師の判断となる。
「処方薬は、『患者さんの希望にかかわらず』、
『医師』がきちんと『判断』し、『同意』を得たうえで処方するもの。
新たな作用機序を持つバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)については、まだ十分な知見が揃っていない。
『耐性ウイルスの出現』(約10%、値段が1桁違うのに10人に9人しか効かない!、症状、ウイルス排出期が遷延する!)など考慮すべき点もあるので、
従来の薬の使用も併せて検討すべき」と、
新規抗インフルエンザウイルス薬については『慎重』(逆に否定すべきでしょう!)な姿勢を示した。
治癒証明書は医師が書かなくてもよい
児童生徒などの出席停止期間については、
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」
と学校保健安全法施行規則によって定められている。
医師は、その基準を踏まえたうえで診断し、出席可能となる条件と日数を患者に伝えなければならない。
インフルエンザに関しては、治癒証明書のために再度受診させる必要はなく、自治体や学校が作成した証明書に保護者または本人が記入して、学校に提出すれば問題ない。
インフルエンザに罹患した場合の対応は『職場においても同様』で、『周りに感染を拡大させない』ことが重要である。
抗インフルエンザ薬の内服によって、症状が出る時間を短縮できるが、『症状がなくてもウイルスは排出される』ため、感染拡大を防止するには、『基準日数を厳守』したほうが確実だ。
“隠れインフルエンザ”から感染が拡大する可能性は低い
世間の話題として、特徴的な症状がみられないにもかかわらず、抗原検査をすると陽性判定の“隠れインフルエンザ”に対する不安が強まっている。
しかし、こういった症状は『流行地域でみられる』場合が多く、流行していない地域では少ないという。
原因としては、ウイルスと接触することで抗体が作られ、通常より症状が抑えられることなどが考えられる。
しかし、患者本人は元気でも、他人にうつしてしまう危険性を理解し、通常のインフルエンザと同様の対策が求められる(どっちつかず、多分ブースター機構が働いているので無視すればいい)。
■関連記事
過去最多のインフル患者数 昨シーズンとの比較
■参考
厚生労働省 学校保健安全法施行規則
(ケアネット 堀間 莉穂)
1)インフルエンザ予防には、ワクチン!、
暴露しない!(流行したら人ごみの多いところに行かない!)
2)インフルエンザ診断に迅速診断キットは必需ではない!
(風邪では経験しない倦怠感!)
3)ゾフルーザは最後の切り札!
(10%の耐性株には効かない、むしろ治癒を遷延させる!)
4)拡散させない!(他人を巻き込まない!)
「発症した後5日を経過し、『かつ』、
解熱した後2日(幼児にあっては3日)
5)症状がなければ、余計な検査は受けない!
インフルエンザ診療で不要なこと:医師会の見解
提供元:ケアネット 公開日:2019/03/01
2019年2月27日、日本医師会の釜萢 敏氏(常任理事)が、
今季における季節性インフルエンザについて、
診断方法や治療薬の選択、“隠れインフルエンザ”への対応など、世間の話題も踏まえた見解を記者会見で発表した。
昨季に続き、今季もインフルエンザは大規模な流行となったが、患者数は2019年第4週(1月21〜27日)をピークに『収束』をみせている。
ピーク時の患者数は昨年を上回ったものの、累積の推計受診者数は、昨季の推計全罹患者数を下回る見通しだ(統計の出し方が変わったので、信用できない!)。
ワクチンの供給がより円滑に行われた結果とも考えられるが、最も需要が高かった11月の供給量は必ずしも十分でなかったという。
ワクチンについては、引き続き対策を講じていく必要があるだろう。
診断に、必ずしも迅速診断キットは必要でない
釜萢氏は、インフルエンザの診断に関して、「迅速診断検査は、必ずしも全例に実施する必要はない」と世間における認識の是正を求めた。
「検査はあくまでも補助なので、一番大事なのは患者さんの症状をしっかり把握すること。
周辺の流行状況や罹患者との接触の有無などを踏まえて、総合的に判断すべき」とコメントした。
迅速診断キットの判定について、
最近の傾向としては、急激な発熱などの発症から『約6時間』以降で検出される場合が多いという。
しかし、確実な判定が出るまでの時間については一概に言えない(個体差!)ため、最終的には医師の判断となる。
「処方薬は、『患者さんの希望にかかわらず』、
『医師』がきちんと『判断』し、『同意』を得たうえで処方するもの。
新たな作用機序を持つバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)については、まだ十分な知見が揃っていない。
『耐性ウイルスの出現』(約10%、値段が1桁違うのに10人に9人しか効かない!、症状、ウイルス排出期が遷延する!)など考慮すべき点もあるので、
従来の薬の使用も併せて検討すべき」と、
新規抗インフルエンザウイルス薬については『慎重』(逆に否定すべきでしょう!)な姿勢を示した。
治癒証明書は医師が書かなくてもよい
児童生徒などの出席停止期間については、
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」
と学校保健安全法施行規則によって定められている。
医師は、その基準を踏まえたうえで診断し、出席可能となる条件と日数を患者に伝えなければならない。
インフルエンザに関しては、治癒証明書のために再度受診させる必要はなく、自治体や学校が作成した証明書に保護者または本人が記入して、学校に提出すれば問題ない。
インフルエンザに罹患した場合の対応は『職場においても同様』で、『周りに感染を拡大させない』ことが重要である。
抗インフルエンザ薬の内服によって、症状が出る時間を短縮できるが、『症状がなくてもウイルスは排出される』ため、感染拡大を防止するには、『基準日数を厳守』したほうが確実だ。
“隠れインフルエンザ”から感染が拡大する可能性は低い
世間の話題として、特徴的な症状がみられないにもかかわらず、抗原検査をすると陽性判定の“隠れインフルエンザ”に対する不安が強まっている。
しかし、こういった症状は『流行地域でみられる』場合が多く、流行していない地域では少ないという。
原因としては、ウイルスと接触することで抗体が作られ、通常より症状が抑えられることなどが考えられる。
しかし、患者本人は元気でも、他人にうつしてしまう危険性を理解し、通常のインフルエンザと同様の対策が求められる(どっちつかず、多分ブースター機構が働いているので無視すればいい)。
■関連記事
過去最多のインフル患者数 昨シーズンとの比較
■参考
厚生労働省 学校保健安全法施行規則
(ケアネット 堀間 莉穂)
2019年03月23日
予防的に花粉飛散前からの服用を推奨されてたが、『症状が出てから服用しても遅くない』
スギ花粉症の減感作療法以外の通常の指導について、詳しく説明しています
予防的に花粉飛散前からの服用を推奨されましたが、『症状が出てから服用しても遅くない』結果が出ました!
第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、
あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】
公開日:2019/02/28 企画・制作 ケアネット
論文で探る服薬指導のエビデンス
世の中に数多ある臨床論文のなかには、日々薬局で行っている服薬指導に役立つエビデンスが隠れています。
このコラムでは、山崎 友樹氏が薬局業務に役立つ臨床論文をピックアップして根拠がよくわからない指導内容を裏打ちしてくれるエビデンス、服薬指導に厚みを与えるエビデンスなどを解説します。
インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、
花粉症が増える季節になりました。
症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。
今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。
アレルゲンを防ぐには?
アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。
花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後、
晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、
雨上がりの翌日や気温の高い日が2〜3日続いた後は
外出を避けたり、マスクやメガネ、
なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。
それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。
この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。
1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。
ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。
ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。
症状を緩和する食材や栄養素は?
n-3系脂肪酸
大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。
ただし、急性の症状に対して『明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそう』です。
ビタミンE
ビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、
アレルギー性鼻炎患者63例を、
ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。
しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、『症状スコアにも血清IgEにも有意差無し』でした5)。
カゼイ菌
アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。
これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2〜5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。
187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。
通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52〜―0.10)日/年でした。
『鼻炎にわずかな効果が期待』できるかもしれませんが、
『喘息には有効ではない』との結果です6)。
薬物治療の効果は?
薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、
『抗ヒスタミン薬にフォーカス』して見ていきましょう。
比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、
眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。
種々の臨床試験から、
第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。
たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等で
『ビラスチン(ビラノア)は1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続』を示しています。
なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。
また、『眼のかゆみ』など症状が『ない』季節性のアレルギー性鼻炎であれば、
抗ヒスタミン薬よりも『ステロイド点鼻薬の有効性が高い』ことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、『点鼻薬を推奨』すべきとするレビューもあります9)。
『副作用』は?
抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。
インペアード・パフォーマンスは『集中力や生産性が低下』した状態ですが、『ほとんどの場合が無自覚』なので『運転を控える』ようにすることなどの指導が大切です。
フェキソフェナジン(アレグラ)、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。
『口渇、乏尿、便秘』など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。
『頻度は少ない』ですが、第1世代、第2世代ともに『痙攣』の副作用がWHOで注意喚起されています11)。
万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。
予防的治療の効果は?
季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。
レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。
予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、『症状が出てから服用しても遅くない』と伝えると安心していただけるでしょう。
服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。
鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。
以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。
花粉症対策については『環境省の花粉症環境保健マニュアル』によくまとまっています。
また、同じく『環境省による花粉情報サイト』で各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。
参考文献
1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版
2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.
3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.
4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.
5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.
6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.
7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.
8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.
9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.
10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.
11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 2002
12)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.
13)「環境省 花粉情報サイト」
山崎 友樹 ( やまざき ゆうき ) 氏
株式会社カケハシ
[略歴]
水野薬局における勤務を経て、2017年に(株)カケハシへ参画。 同社では電子薬歴システムに搭載する薬剤関連コンテンツのレビューや、薬局向けのカスタマーサクセス業務に従事。 所属勉強会は、EBM-Tokyoなど。
KAKEHASHI
予防的に花粉飛散前からの服用を推奨されましたが、『症状が出てから服用しても遅くない』結果が出ました!
第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、
あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】
公開日:2019/02/28 企画・制作 ケアネット
論文で探る服薬指導のエビデンス
世の中に数多ある臨床論文のなかには、日々薬局で行っている服薬指導に役立つエビデンスが隠れています。
このコラムでは、山崎 友樹氏が薬局業務に役立つ臨床論文をピックアップして根拠がよくわからない指導内容を裏打ちしてくれるエビデンス、服薬指導に厚みを与えるエビデンスなどを解説します。
インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、
花粉症が増える季節になりました。
症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。
今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。
アレルゲンを防ぐには?
アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。
花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後、
晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、
雨上がりの翌日や気温の高い日が2〜3日続いた後は
外出を避けたり、マスクやメガネ、
なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。
それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。
この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。
1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。
ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。
ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。
症状を緩和する食材や栄養素は?
n-3系脂肪酸
大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。
ただし、急性の症状に対して『明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそう』です。
ビタミンE
ビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、
アレルギー性鼻炎患者63例を、
ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。
しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、『症状スコアにも血清IgEにも有意差無し』でした5)。
カゼイ菌
アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。
これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2〜5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。
187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。
通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52〜―0.10)日/年でした。
『鼻炎にわずかな効果が期待』できるかもしれませんが、
『喘息には有効ではない』との結果です6)。
薬物治療の効果は?
薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、
『抗ヒスタミン薬にフォーカス』して見ていきましょう。
比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、
眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。
種々の臨床試験から、
第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。
たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等で
『ビラスチン(ビラノア)は1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続』を示しています。
なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。
また、『眼のかゆみ』など症状が『ない』季節性のアレルギー性鼻炎であれば、
抗ヒスタミン薬よりも『ステロイド点鼻薬の有効性が高い』ことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、『点鼻薬を推奨』すべきとするレビューもあります9)。
『副作用』は?
抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。
インペアード・パフォーマンスは『集中力や生産性が低下』した状態ですが、『ほとんどの場合が無自覚』なので『運転を控える』ようにすることなどの指導が大切です。
フェキソフェナジン(アレグラ)、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。
『口渇、乏尿、便秘』など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。
『頻度は少ない』ですが、第1世代、第2世代ともに『痙攣』の副作用がWHOで注意喚起されています11)。
万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。
予防的治療の効果は?
季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。
レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。
予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、『症状が出てから服用しても遅くない』と伝えると安心していただけるでしょう。
服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。
鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。
以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。
花粉症対策については『環境省の花粉症環境保健マニュアル』によくまとまっています。
また、同じく『環境省による花粉情報サイト』で各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。
参考文献
1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版
2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.
3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.
4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.
5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.
6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.
7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.
8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.
9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.
10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.
11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 2002
12)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.
13)「環境省 花粉情報サイト」
山崎 友樹 ( やまざき ゆうき ) 氏
株式会社カケハシ
[略歴]
水野薬局における勤務を経て、2017年に(株)カケハシへ参画。 同社では電子薬歴システムに搭載する薬剤関連コンテンツのレビューや、薬局向けのカスタマーサクセス業務に従事。 所属勉強会は、EBM-Tokyoなど。
KAKEHASHI
2019年03月22日
清潔すぎる環境は、健康へのリスクとなります
すずひろクリニックHPから転写(内科・リウマチ科・アレルギー科・皮膚科 さいたま市)
https://suzuhiro-clinic.com/index.html
アレルギー疾患
花粉、食べ物、ハウスダストなどの様々な特定の抗原が体内に侵入してくると、前触れなく、過敏な反応が出現するのがアレルギー疾患です。
アレルギー疾患に対して、一般的には、抗アレルギー薬が用いられます。
この薬剤により、一定の効果は得られます。花粉症の時期には、大切な薬です。
しかし、アレルギー反応が出やすい間は、薬剤を使用し続けなければならないというデメリットもあります。また、この薬剤は、対症療法薬であり、アレルギー体質そのものを改善する効果はありません。
アレルギー疾患の分野において、近年、「衛生仮説」という学説が注目されています。
第二次世界大戦後、衛生状態が急速に良くなって、
寄生虫やさまざまな感染症が身近から消えてしまったことが、
アレルギー疾患が増えた大きな要因であるという学説です。
本来は、寄生虫やダニなどの排除をするために働いて体を守ることに役立っていたIgEを主体とした免疫系の一部が、
バリア機能のない皮膚から入ってきた抗原を誤って敵として認識し、攻撃するようになったのがアレルギー疾患である、という考え方です。
これは、衛生環境の良い米国内で居住することが、アレルギー疾患を発症するリスクそのものになっていることを示しています。
日本も、衛生環境は米国同様良好ですので、「現代の日本国内で居住することは、アレルギー疾患を発症するリスクそのものである」と考えられます。すなわち、「きれいすぎる環境の中で生活すると、アレルギー疾患を発病する」、ということです。
実際、当院においても、本国(東アジアや東南アジア)に住んでいるときは、もともとアレルギー疾患はなかったのに、来日し、日本国内に在住するようになってから、アレルギー疾患を発病された症例を多数拝見しています。
日本では、アレルギー疾患が急激に増加しはじめた昭和30年代半ばより以前の環境、
すなわち、特定の感染症や寄生虫症が、広く蔓延していた環境(=一般的には劣悪と考えられている環境)、の中で生活していたことが、アレルギー疾患の発症の予防に極めて役に立っていたと考えられます。
2013欧州呼吸器学会においても、就学前に農村で暮らした子どもは学齢期のアレルギー性鼻炎が7割減ることが示されています。
清潔すぎない生活環境で暮らした子どもはアレルギー疾患にかかりにくいという「衛生仮説」を裏付ける成果の1つとして注目されます。
日本においては、花粉症発症の低年齢化、発症頻度の上昇が認められています。
現在、50歳以上の方は、ご自分が幼小児期のころと、現代では、生活環境の衛生度において、隔世の感を感じておられると思います。
清潔で快適な生活環境に慣れた現代の日本人は、50年以上前の日本の環境の中では、生活することはほぼ不可能です。
1960年以前の日本人の生活環境を想像する自体が、かなり困難です。
当時を撮影した記録映画、ドキュメンタリー、NHKアーカイブズなどを見て、実感するのがベストです。
未開の国かと思われること必須です。
1970年以降に日本の都市部に生まれた方は、
すでに生まれたときから、衛生環境が飛躍的に向上していました。
清潔な環境の中で生活することに慣れているため、
「その清潔すぎる環境は、健康へのリスクとなります」というメッセージを、実感を伴って理解されることは困難です。
『衛生仮説』は、もともと1989年にストラカン(英国の疫学者)が提唱した概念で「感染症が多い環境の方がアレルギーが少ない」という報告に端を発する(管理人註)
https://suzuhiro-clinic.com/index.html
アレルギー疾患
花粉、食べ物、ハウスダストなどの様々な特定の抗原が体内に侵入してくると、前触れなく、過敏な反応が出現するのがアレルギー疾患です。
アレルギー疾患に対して、一般的には、抗アレルギー薬が用いられます。
この薬剤により、一定の効果は得られます。花粉症の時期には、大切な薬です。
しかし、アレルギー反応が出やすい間は、薬剤を使用し続けなければならないというデメリットもあります。また、この薬剤は、対症療法薬であり、アレルギー体質そのものを改善する効果はありません。
アレルギー疾患の分野において、近年、「衛生仮説」という学説が注目されています。
第二次世界大戦後、衛生状態が急速に良くなって、
寄生虫やさまざまな感染症が身近から消えてしまったことが、
アレルギー疾患が増えた大きな要因であるという学説です。
本来は、寄生虫やダニなどの排除をするために働いて体を守ることに役立っていたIgEを主体とした免疫系の一部が、
バリア機能のない皮膚から入ってきた抗原を誤って敵として認識し、攻撃するようになったのがアレルギー疾患である、という考え方です。
これは、衛生環境の良い米国内で居住することが、アレルギー疾患を発症するリスクそのものになっていることを示しています。
日本も、衛生環境は米国同様良好ですので、「現代の日本国内で居住することは、アレルギー疾患を発症するリスクそのものである」と考えられます。すなわち、「きれいすぎる環境の中で生活すると、アレルギー疾患を発病する」、ということです。
実際、当院においても、本国(東アジアや東南アジア)に住んでいるときは、もともとアレルギー疾患はなかったのに、来日し、日本国内に在住するようになってから、アレルギー疾患を発病された症例を多数拝見しています。
日本では、アレルギー疾患が急激に増加しはじめた昭和30年代半ばより以前の環境、
すなわち、特定の感染症や寄生虫症が、広く蔓延していた環境(=一般的には劣悪と考えられている環境)、の中で生活していたことが、アレルギー疾患の発症の予防に極めて役に立っていたと考えられます。
2013欧州呼吸器学会においても、就学前に農村で暮らした子どもは学齢期のアレルギー性鼻炎が7割減ることが示されています。
清潔すぎない生活環境で暮らした子どもはアレルギー疾患にかかりにくいという「衛生仮説」を裏付ける成果の1つとして注目されます。
日本においては、花粉症発症の低年齢化、発症頻度の上昇が認められています。
現在、50歳以上の方は、ご自分が幼小児期のころと、現代では、生活環境の衛生度において、隔世の感を感じておられると思います。
清潔で快適な生活環境に慣れた現代の日本人は、50年以上前の日本の環境の中では、生活することはほぼ不可能です。
1960年以前の日本人の生活環境を想像する自体が、かなり困難です。
当時を撮影した記録映画、ドキュメンタリー、NHKアーカイブズなどを見て、実感するのがベストです。
未開の国かと思われること必須です。
1970年以降に日本の都市部に生まれた方は、
すでに生まれたときから、衛生環境が飛躍的に向上していました。
清潔な環境の中で生活することに慣れているため、
「その清潔すぎる環境は、健康へのリスクとなります」というメッセージを、実感を伴って理解されることは困難です。
『衛生仮説』は、もともと1989年にストラカン(英国の疫学者)が提唱した概念で「感染症が多い環境の方がアレルギーが少ない」という報告に端を発する(管理人註)
2019年03月21日
幼児期のペットはアレルギーにどう影響
意外な感じがしたが、小さい時から暴露されていれば、過剰に反応しないということか?
腹の中に、ギョウ虫や線虫などの寄生虫が当たり前にいた、終戦直後までは、喘息を含めて、アレルギーがあまりいなかったと、どこかの寄生虫学の教授が言ってたのを聞いたことがある
幼児期のペットはアレルギーにどう影響
提供元:ケアネット 公開日:2019/02/22
ここ数年、わが国では猫ブームが続いている。
2月22日は「猫の日」として認知され、全国で猫に関するイベント、グッズの販売などが行われている。
こうしたペットは、私たちの健康にどのような効果をもたらしてくれるのだろうか。
スウェーデン・イエーテボリ大学のBill Hesselmar氏らは、
幼児期からのペット飼育がその後のアレルギーリスクを軽減するか、
また、ペット数とどう関係するか検討を行った。
PLOS ONE誌2018年12月19日号の報告。
研究では2つのコホートとして、
MolndalおよびKirunaの7〜8歳の子供(『1,029例』)への横断的アンケートベース研究と、
小児科医から喘息についてアレルギーの臨床的評価がされたVastra Gotaland県の8〜9歳までの子供(『249例』)の出生コホートについて、
喘息とアレルギーに関する検証済みの質問により調査された。
主な結果は以下のとおり。
・生後1年の間に家庭内で猫や犬の飼育数が増えるにつれ、
アレルギー症状(喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹のいずれか)がより少なくなる、相関関係がみられた。
・横断的コホートでは、
ペットがいない子供の49%(前年32%[p=0.006])にアレルギーがあるのに対し、
5匹以上ペットがいる子供のアレルギー発症は0だった(p=0.038)。
・同じパターンが出生コホートでみられ、
花粉だけでなく動物への感作も、家庭内での動物数の増加とともに減少していた。
著者らは
「7〜9歳の小児におけるアレルギー性疾患の罹患率は、
生後1年の間に同居するペットの数が多いほど減少し、
猫と犬によってアレルギーの発生から保護される、
『ミニ農場』効果が示唆される」と述べている。(ケアネット 稲川 進)
原著論文はこちら
Hesselmar B,et al. PLoS One.2018;13:e0208472.
腹の中に、ギョウ虫や線虫などの寄生虫が当たり前にいた、終戦直後までは、喘息を含めて、アレルギーがあまりいなかったと、どこかの寄生虫学の教授が言ってたのを聞いたことがある
幼児期のペットはアレルギーにどう影響
提供元:ケアネット 公開日:2019/02/22
ここ数年、わが国では猫ブームが続いている。
2月22日は「猫の日」として認知され、全国で猫に関するイベント、グッズの販売などが行われている。
こうしたペットは、私たちの健康にどのような効果をもたらしてくれるのだろうか。
スウェーデン・イエーテボリ大学のBill Hesselmar氏らは、
幼児期からのペット飼育がその後のアレルギーリスクを軽減するか、
また、ペット数とどう関係するか検討を行った。
PLOS ONE誌2018年12月19日号の報告。
研究では2つのコホートとして、
MolndalおよびKirunaの7〜8歳の子供(『1,029例』)への横断的アンケートベース研究と、
小児科医から喘息についてアレルギーの臨床的評価がされたVastra Gotaland県の8〜9歳までの子供(『249例』)の出生コホートについて、
喘息とアレルギーに関する検証済みの質問により調査された。
主な結果は以下のとおり。
・生後1年の間に家庭内で猫や犬の飼育数が増えるにつれ、
アレルギー症状(喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹のいずれか)がより少なくなる、相関関係がみられた。
・横断的コホートでは、
ペットがいない子供の49%(前年32%[p=0.006])にアレルギーがあるのに対し、
5匹以上ペットがいる子供のアレルギー発症は0だった(p=0.038)。
・同じパターンが出生コホートでみられ、
花粉だけでなく動物への感作も、家庭内での動物数の増加とともに減少していた。
著者らは
「7〜9歳の小児におけるアレルギー性疾患の罹患率は、
生後1年の間に同居するペットの数が多いほど減少し、
猫と犬によってアレルギーの発生から保護される、
『ミニ農場』効果が示唆される」と述べている。(ケアネット 稲川 進)
原著論文はこちら
Hesselmar B,et al. PLoS One.2018;13:e0208472.
2019年03月20日
パルクール外傷の臨床的特徴
『パルクール』というスポーツ?
特別な道具を用いずに、街中を走り回ったり障害物を乗り越えたりする、海外では一部社会問題になっている。いきなり街中でやられたら迷惑極まりない!
【第134回】パルクール外傷の臨床的特徴
公開日:2019/03/01 企画・制作 ケアネット
パルクールというスポーツをご存じでしょうか。
特別な道具を用いずに、街中を走り回ったり障害物を乗り越えたりするスポーツです。
海外では一部社会問題になっている地域もあるようです。いきなり街中でやられたら迷惑極まりないですよね。
Rossheim ME, et al.
Parkour injuries presenting to United States emergency departments, 2009-2015.
Am J Emerg Med. 2017;35:1503-1505.
この研究は、パルクールによる外傷で救急部を受診した米国の患者を、あるサーベイランスシステムを用いて検索した結果を記したものです。
ほとんどのパルクール外傷は、着地あるいは衝突による外傷でした。
骨折、捻挫、挫創、裂創などさまざまな外傷がみられました。
受診した患者の半数以上(57.7%)は四肢に外傷を起こしていたことがわかりました。
このサーベイランスシステムでは過去7年間のデータが検証されたのですが、
年を経るごとに患者数は増えていったそうです。
最近テレビでもパルクールを取り上げることが増えていますし、世界的にブームになっています。
この論文では、わずか8歳の少年が『パルクール外傷』で受診したことを例に挙げ、このスポーツの『危険性』について警鐘を鳴らしています。
『ルール』があって、誰にも迷惑が掛からなければいいと思うのですが、いきなり街中に飛び出してケガをするようなことはあってほしくないですね。
なお、パルクール中に『脊髄損傷』を起こして一生を棒に振りかねない傷害を負った24歳の男性の症例報告もあります1)。
ビルの屋上を行き来しているパルクールプレイヤーもいるので、ホントにやめてほしいところ。
参考文献
1) Drakhshan N, et al. Chin J Traumatol. 2014;17:178-179.
倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏
近畿中央呼吸器センター
特別な道具を用いずに、街中を走り回ったり障害物を乗り越えたりする、海外では一部社会問題になっている。いきなり街中でやられたら迷惑極まりない!
【第134回】パルクール外傷の臨床的特徴
公開日:2019/03/01 企画・制作 ケアネット
パルクールというスポーツをご存じでしょうか。
特別な道具を用いずに、街中を走り回ったり障害物を乗り越えたりするスポーツです。
海外では一部社会問題になっている地域もあるようです。いきなり街中でやられたら迷惑極まりないですよね。
Rossheim ME, et al.
Parkour injuries presenting to United States emergency departments, 2009-2015.
Am J Emerg Med. 2017;35:1503-1505.
この研究は、パルクールによる外傷で救急部を受診した米国の患者を、あるサーベイランスシステムを用いて検索した結果を記したものです。
ほとんどのパルクール外傷は、着地あるいは衝突による外傷でした。
骨折、捻挫、挫創、裂創などさまざまな外傷がみられました。
受診した患者の半数以上(57.7%)は四肢に外傷を起こしていたことがわかりました。
このサーベイランスシステムでは過去7年間のデータが検証されたのですが、
年を経るごとに患者数は増えていったそうです。
最近テレビでもパルクールを取り上げることが増えていますし、世界的にブームになっています。
この論文では、わずか8歳の少年が『パルクール外傷』で受診したことを例に挙げ、このスポーツの『危険性』について警鐘を鳴らしています。
『ルール』があって、誰にも迷惑が掛からなければいいと思うのですが、いきなり街中に飛び出してケガをするようなことはあってほしくないですね。
なお、パルクール中に『脊髄損傷』を起こして一生を棒に振りかねない傷害を負った24歳の男性の症例報告もあります1)。
ビルの屋上を行き来しているパルクールプレイヤーもいるので、ホントにやめてほしいところ。
参考文献
1) Drakhshan N, et al. Chin J Traumatol. 2014;17:178-179.
倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏
近畿中央呼吸器センター
2019年03月19日
たった一晩の絶食が筋力低下のリスクに!!
たった一晩の絶食が筋力低下のリスクに!!
提供元:ケアネット 公開日:2019/02/20
入院時の夜間絶食は、患者の筋力にどの程度影響を及ぼすのか?
今回、ブラジル・Universidade Federal de Mato GrossoのWesley Santana Correa-Arruda氏らにより、成人患者を対象とした前向き臨床試験が行われた。
その結果、入院中の夜間絶食により、とくに低栄養、栄養失調および高齢の患者における筋肉機能が損なわれる可能性が示された。Einstein誌2019年1月14日号に掲載。
本試験は、2015年5月〜2017年6月にHospital Universitario Julio Muller(ブラジル、Mato Grosso)へ入院した『221例』の患者を対象に行われた。
平均年齢は56±16歳で、
60歳以上の高齢者は93例(42.1%)、
非高齢者は128例(57.9%)。
参加者のうち119例(53.8%)は男性で、28例(12.7%)はがん治療を受け、193例(87.3%)は臨床治療を受けていた。
栄養状態は、良好(SGA-A)が38例(17.2%)、中等度の栄養不良(SGA-B)が69例(31.2%)、そして高度の栄養不良(SGA-C)が114例(51.6%)だった。
主な結果は以下のとおり。
・夜間絶食後に評価された空腹時の平均握力(31.1±8.7kg)は、
朝食後の平均握力(31.6±8.8kg、p=0.01)、および
累積平均握力(31.7±8.8kg、p<0.001)と比較して
小さかった。
・夕食摂取時と夜間絶食時におけるそれぞれの空腹時の平均握力を比較すると、
夕食摂取量100%の患者(33.2±9.1kg vs.30.4±8.4kg;p=0.03)および50%超の患者(32.1±8.4kg vs.28.6±8.8kg;p=0.006)では、
夕食摂取時のほうが大きかった。
一方、夕食摂取量50%以下および摂取量0の患者では、空腹時の平均握力の変化は見られなかった。
・多変量解析の結果、
一晩の夜間絶食後において、
夕食摂取量50%以下ではオッズ比[OR]=2.17
(95%信頼区間[CI]:1.16〜4.06;p=0.018)、
高度な栄養不良ではOR=1.86
(95%CI:1.06〜3.26;p=0.028)、
高齢(60歳以上)では
OR=1.98
(95%CI:1.12〜3.50;p=0.019)であり、
それぞれの因子は、夜間絶食後における空腹時の有意な握力低下に対する独立した要因であることが示された。
以上の結果より、
たとえ一晩でも、夜間絶食は空腹時の筋力を低下させ、
栄養が不足している患者、とくに高齢者ではリスクが高いことが示された。
しかし、筋力は食事摂取後に回復する可能性がある。
これに対し、筆頭著者は「本研究では、夜間絶食が患者の筋力を低下させるリスクを示したが、
夜間のエネルギー消費が日中よりも低いことはよく知られている。
日中の絶食は、夜間絶食と比較して、より有害であることを意味する」とコメントしている。
(ケアネット 堀間 莉穂)
原著論文はこちら
Correa-Arruda WS, et al. Einstein (Sao Paulo). 2019 Jan 14;17:eAO4418.
提供元:ケアネット 公開日:2019/02/20
入院時の夜間絶食は、患者の筋力にどの程度影響を及ぼすのか?
今回、ブラジル・Universidade Federal de Mato GrossoのWesley Santana Correa-Arruda氏らにより、成人患者を対象とした前向き臨床試験が行われた。
その結果、入院中の夜間絶食により、とくに低栄養、栄養失調および高齢の患者における筋肉機能が損なわれる可能性が示された。Einstein誌2019年1月14日号に掲載。
本試験は、2015年5月〜2017年6月にHospital Universitario Julio Muller(ブラジル、Mato Grosso)へ入院した『221例』の患者を対象に行われた。
平均年齢は56±16歳で、
60歳以上の高齢者は93例(42.1%)、
非高齢者は128例(57.9%)。
参加者のうち119例(53.8%)は男性で、28例(12.7%)はがん治療を受け、193例(87.3%)は臨床治療を受けていた。
栄養状態は、良好(SGA-A)が38例(17.2%)、中等度の栄養不良(SGA-B)が69例(31.2%)、そして高度の栄養不良(SGA-C)が114例(51.6%)だった。
主な結果は以下のとおり。
・夜間絶食後に評価された空腹時の平均握力(31.1±8.7kg)は、
朝食後の平均握力(31.6±8.8kg、p=0.01)、および
累積平均握力(31.7±8.8kg、p<0.001)と比較して
小さかった。
・夕食摂取時と夜間絶食時におけるそれぞれの空腹時の平均握力を比較すると、
夕食摂取量100%の患者(33.2±9.1kg vs.30.4±8.4kg;p=0.03)および50%超の患者(32.1±8.4kg vs.28.6±8.8kg;p=0.006)では、
夕食摂取時のほうが大きかった。
一方、夕食摂取量50%以下および摂取量0の患者では、空腹時の平均握力の変化は見られなかった。
・多変量解析の結果、
一晩の夜間絶食後において、
夕食摂取量50%以下ではオッズ比[OR]=2.17
(95%信頼区間[CI]:1.16〜4.06;p=0.018)、
高度な栄養不良ではOR=1.86
(95%CI:1.06〜3.26;p=0.028)、
高齢(60歳以上)では
OR=1.98
(95%CI:1.12〜3.50;p=0.019)であり、
それぞれの因子は、夜間絶食後における空腹時の有意な握力低下に対する独立した要因であることが示された。
以上の結果より、
たとえ一晩でも、夜間絶食は空腹時の筋力を低下させ、
栄養が不足している患者、とくに高齢者ではリスクが高いことが示された。
しかし、筋力は食事摂取後に回復する可能性がある。
これに対し、筆頭著者は「本研究では、夜間絶食が患者の筋力を低下させるリスクを示したが、
夜間のエネルギー消費が日中よりも低いことはよく知られている。
日中の絶食は、夜間絶食と比較して、より有害であることを意味する」とコメントしている。
(ケアネット 堀間 莉穂)
原著論文はこちら
Correa-Arruda WS, et al. Einstein (Sao Paulo). 2019 Jan 14;17:eAO4418.
2019年03月18日
『タクティールケア』、『タッチケア』ご存知ですか?
『タクティールケア』、『タッチケア』ご存知ですか?
未熟児ICUの看護婦さんによって考案されました。
今、介護の世界にも導入されています。
BPSDを和らげるタクティールケア 認知症ねっとから
タクティールケアとは
タクティールケアは福祉大国である
スウェーデン発祥のタッチケアです。
1960年代に未熟児のケアを担当していた看護師によって考案されました。
その語源はラテン語の「タクティリス(Taktilis)」に由来し、『触れる』という意味を持ちます。
未熟児に毎日タッチケアを行うことで、
乳児の体温が安定し体重の増加が見られたという経験に基づいています。
これは背中や手足に優しく触れ体温を感じさせることで、
乳児に安心感を与え、
母親からの愛情と同様の効用をもたらす為です。
タクティールの考え方の根底にはタッチセラピーがあり、
優しく触れられたいという人間が本来持つ願望があるのです。
それらが満たされることにより、
乳児はもちろん、大人や高齢者にも下記の効用があります。
・精神的不安の解消
・痛覚を抑制することによる痛みの軽減
信頼を育てる癒やしホルモン「オキシトシン」
タクティールケアが安心感や痛みを軽減する背景には
「オキシトシン」の分泌による
ゲートコントロール(中枢神経から体性感覚神経への抑制ー管理人註)が見られます。
オキシトシンは愛情ホルモン、癒しホルモンとも呼ばれ、
脳の視床下部で産出され、下垂体後葉から分泌されます。
古くから出産時に陣痛を促す、
また母乳分泌も促すとされていましたが、
最近ではストレスや不安を軽減することが研究によって明らかにされています。
具体的には肌に触れられることで、
触覚が刺激を受け、オキシトシンが血液中にも分泌されます。それが体内に広がることでストレスや不安を和らげるのです。
また、脊髄にある痛みを脳に伝えるゲートを閉じる働きもあり、痛みを感じにくくさせることも分かっています。
(子供の頃、お腹が痛くて泣いていたのに、お母さんにお腹や背中をさすってもらっているとお腹の中の痛みが和らいだ経験ありませんか?
湿布剤が、直接浸透していく薬剤よりもスーッとした感覚を皮膚にもたらすことで、強い痛みに対する感覚を抑制してくれるなどがゲートコントロールの一部ですー管理人註)。
さらに、タクティールケアを施す側にもオキシトシンは分泌され、相手との相互の信頼感が生まれるという事例もあります。
導入している介護現場では
「受け手の不安な気持ちや表情が少しずつ和らいでいくのがわかると同時に、自分の気持ちもとても穏やかになる」
といった声が出ています。
中核症状、BPSD(行動・心理症状:周辺症状ー陽性症状(暴言、暴力、徘徊など)と陰性症状(無気力、無感動、無反応)ー管理人註)を和らげる
実際に、
手や足、背中などに、患者さんが楽な姿勢で5分〜20分程度のタクティールケアを行った結果データには一定の効果が見られます。
タクティールケアを受けた人は、
身体がポカポカし、深い呼吸に変わり、気分が落ち着き、かつ心地よい入眠に入ります。
タクティールケアにより体温があがることで、脳の活性化に働きかけることができ中核症状にも一定の効果を表します。
また、BPSDに関しても、「オキシトシン」による不安感の減少により、気持ちが安定し非言語的コミュニケーションをもたらすのです。
まずは小さくタクティールケアを取り入れてみる
タクティールケアをどう取り入れたらいいのかと悩む方もおられるでしょう。
また、認知症の方の中には抵抗を示す方もいます。
そこで、まずは何か会話をするときに相手の背中に優しく手を触れる、話を聞きながら背中をさするという所から始めましょう。
大切なのは触れるという行為のみではなく、相手の気持ちに寄り添うことです。
そこで、相手の辛さやもどかしさを感じ取ろうとする気持ちをもって行うことが何より大切です。
相手との距離感を図りながら、足や手に血流を上げてくという一環で、入浴介護の中に取り入れていくといいでしょう。
※参考:株式会社日本スウェーデン福祉研究所、日本における「タクティールケア」に関する文献
未熟児ICUの看護婦さんによって考案されました。
今、介護の世界にも導入されています。
BPSDを和らげるタクティールケア 認知症ねっとから
タクティールケアとは
タクティールケアは福祉大国である
スウェーデン発祥のタッチケアです。
1960年代に未熟児のケアを担当していた看護師によって考案されました。
その語源はラテン語の「タクティリス(Taktilis)」に由来し、『触れる』という意味を持ちます。
未熟児に毎日タッチケアを行うことで、
乳児の体温が安定し体重の増加が見られたという経験に基づいています。
これは背中や手足に優しく触れ体温を感じさせることで、
乳児に安心感を与え、
母親からの愛情と同様の効用をもたらす為です。
タクティールの考え方の根底にはタッチセラピーがあり、
優しく触れられたいという人間が本来持つ願望があるのです。
それらが満たされることにより、
乳児はもちろん、大人や高齢者にも下記の効用があります。
・精神的不安の解消
・痛覚を抑制することによる痛みの軽減
信頼を育てる癒やしホルモン「オキシトシン」
タクティールケアが安心感や痛みを軽減する背景には
「オキシトシン」の分泌による
ゲートコントロール(中枢神経から体性感覚神経への抑制ー管理人註)が見られます。
オキシトシンは愛情ホルモン、癒しホルモンとも呼ばれ、
脳の視床下部で産出され、下垂体後葉から分泌されます。
古くから出産時に陣痛を促す、
また母乳分泌も促すとされていましたが、
最近ではストレスや不安を軽減することが研究によって明らかにされています。
具体的には肌に触れられることで、
触覚が刺激を受け、オキシトシンが血液中にも分泌されます。それが体内に広がることでストレスや不安を和らげるのです。
また、脊髄にある痛みを脳に伝えるゲートを閉じる働きもあり、痛みを感じにくくさせることも分かっています。
(子供の頃、お腹が痛くて泣いていたのに、お母さんにお腹や背中をさすってもらっているとお腹の中の痛みが和らいだ経験ありませんか?
湿布剤が、直接浸透していく薬剤よりもスーッとした感覚を皮膚にもたらすことで、強い痛みに対する感覚を抑制してくれるなどがゲートコントロールの一部ですー管理人註)。
さらに、タクティールケアを施す側にもオキシトシンは分泌され、相手との相互の信頼感が生まれるという事例もあります。
導入している介護現場では
「受け手の不安な気持ちや表情が少しずつ和らいでいくのがわかると同時に、自分の気持ちもとても穏やかになる」
といった声が出ています。
中核症状、BPSD(行動・心理症状:周辺症状ー陽性症状(暴言、暴力、徘徊など)と陰性症状(無気力、無感動、無反応)ー管理人註)を和らげる
実際に、
手や足、背中などに、患者さんが楽な姿勢で5分〜20分程度のタクティールケアを行った結果データには一定の効果が見られます。
タクティールケアを受けた人は、
身体がポカポカし、深い呼吸に変わり、気分が落ち着き、かつ心地よい入眠に入ります。
タクティールケアにより体温があがることで、脳の活性化に働きかけることができ中核症状にも一定の効果を表します。
また、BPSDに関しても、「オキシトシン」による不安感の減少により、気持ちが安定し非言語的コミュニケーションをもたらすのです。
まずは小さくタクティールケアを取り入れてみる
タクティールケアをどう取り入れたらいいのかと悩む方もおられるでしょう。
また、認知症の方の中には抵抗を示す方もいます。
そこで、まずは何か会話をするときに相手の背中に優しく手を触れる、話を聞きながら背中をさするという所から始めましょう。
大切なのは触れるという行為のみではなく、相手の気持ちに寄り添うことです。
そこで、相手の辛さやもどかしさを感じ取ろうとする気持ちをもって行うことが何より大切です。
相手との距離感を図りながら、足や手に血流を上げてくという一環で、入浴介護の中に取り入れていくといいでしょう。
※参考:株式会社日本スウェーデン福祉研究所、日本における「タクティールケア」に関する文献
2019年03月17日
第一印象はほとんど見えてない状況でも!
第一印象はほとんど見えてない状況でも!
2014年08月31日(日) 11時16分44秒
テーマ:心理のはなし 生塩研一さんのブログから
プラスサイエンスhttps://ameblo.jp/plus-science/
さて、人は見た目が大事と言われます
逆に、人は見かけによらぬもの
とも言われますが、
一般的には見た目が大事であることは共通認識かと思います
見た目、つまり、視覚情報は第一印象で特に大事になります
誰かに初めて会うとき、数秒間ほど見ただけで、何となく
「こんな人かな?」
と思ってしまいますよね?
数秒とは言え、顔、髪型、服装、アクセサリ、しぐさなどを統合的に判断しているはずです
なので、ほんの一瞬、顔だけ見えても第一印象は形成されないだろう、
と思いますよね?
ところがところが、先日、発表された論文によりますと
ほんの一瞬(0.033 秒間)、顔を表示しただけで
しかも、見た本人が見えたかどうか分からない状態でも信頼性の判断がされている、
ということが分かったのです
Freeman JB, et al. (2014)
"Amygdala responsively to high-level social information from unseen faces"
Journal of Neuroscience 34(32): 10573-10581.
ここで言う、
見た本人が見えたかどうか分からない状態でも、というのはバックワードマスキング現象を使っています
ご説明しましょう
ある顔写真 A を例えば 0.033 秒という短時間だけ表示させると、注意していれば何となく分かります
しかし、
顔写真 A の直後に、それより何倍も長い 0.2 秒くらい別の顔写真 B を表示すると、、
なんと、顔写真 A が見えなくなります
これをバックワードマスキング現象と言います
時間的に遡って情報を隠すということですね
「見えなくなる」というは見えた気がしない、つまり、見えたことに気付いていない
というだけで、
視覚情報は脳でちゃんと処理されているということは別の研究で分かっています
もう一つの補足として、
信頼性が高い顔を見ると脳の深いところにある扁桃体の活動が強くなることが分かっています
で、
事前に、信頼性が高い、中程度、低い
という3つのレベルの顔を用意して
信頼性が高い顔を一瞬表示して直後に中程度の顔を長時間表示するバックワードマスキングをしたら
ちゃんと扁桃体が反応した、
つまり、信頼性の判断をしていた、ということがわかったのです
一瞬、顔が見えただけ、しかも見えたかどうかもあやふやでも、
信頼できる人かどうか判断されているのですね
人の脳って、スゴい。。
あなたが他人をそう判断するだけでなく他人もあなたをそう判断している、
ということですから、気を付けたいですね
(おしまい)文:生塩研一
2014年08月31日(日) 11時16分44秒
テーマ:心理のはなし 生塩研一さんのブログから
プラスサイエンスhttps://ameblo.jp/plus-science/
さて、人は見た目が大事と言われます
逆に、人は見かけによらぬもの
とも言われますが、
一般的には見た目が大事であることは共通認識かと思います
見た目、つまり、視覚情報は第一印象で特に大事になります
誰かに初めて会うとき、数秒間ほど見ただけで、何となく
「こんな人かな?」
と思ってしまいますよね?
数秒とは言え、顔、髪型、服装、アクセサリ、しぐさなどを統合的に判断しているはずです
なので、ほんの一瞬、顔だけ見えても第一印象は形成されないだろう、
と思いますよね?
ところがところが、先日、発表された論文によりますと
ほんの一瞬(0.033 秒間)、顔を表示しただけで
しかも、見た本人が見えたかどうか分からない状態でも信頼性の判断がされている、
ということが分かったのです
Freeman JB, et al. (2014)
"Amygdala responsively to high-level social information from unseen faces"
Journal of Neuroscience 34(32): 10573-10581.
ここで言う、
見た本人が見えたかどうか分からない状態でも、というのはバックワードマスキング現象を使っています
ご説明しましょう
ある顔写真 A を例えば 0.033 秒という短時間だけ表示させると、注意していれば何となく分かります
しかし、
顔写真 A の直後に、それより何倍も長い 0.2 秒くらい別の顔写真 B を表示すると、、
なんと、顔写真 A が見えなくなります
これをバックワードマスキング現象と言います
時間的に遡って情報を隠すということですね
「見えなくなる」というは見えた気がしない、つまり、見えたことに気付いていない
というだけで、
視覚情報は脳でちゃんと処理されているということは別の研究で分かっています
もう一つの補足として、
信頼性が高い顔を見ると脳の深いところにある扁桃体の活動が強くなることが分かっています
で、
事前に、信頼性が高い、中程度、低い
という3つのレベルの顔を用意して
信頼性が高い顔を一瞬表示して直後に中程度の顔を長時間表示するバックワードマスキングをしたら
ちゃんと扁桃体が反応した、
つまり、信頼性の判断をしていた、ということがわかったのです
一瞬、顔が見えただけ、しかも見えたかどうかもあやふやでも、
信頼できる人かどうか判断されているのですね
人の脳って、スゴい。。
あなたが他人をそう判断するだけでなく他人もあなたをそう判断している、
ということですから、気を付けたいですね
(おしまい)文:生塩研一
2019年03月16日
急性中耳炎にはどの抗生剤を使う?
2019年03月15日
2018年(平成30年)10月にアレルギー情報をまとめたポータルサイトが開設されました(https://allergyportal.jp/)
2018年(平成30年)10月にアレルギー情報をまとめたポータルサイトが開設されました(https://allergyportal.jp/)。
「何か体に異変を感じた際、とにかくまずはここにアクセスしてください、基本の情報をここで手に入れてください」との思いを込めて作成されています。
「食物アレルギーの対策が未熟だったと痛感」
【平成の医療史30年◆アレルギー疾患編】
アレルギー治療の変遷を西間三馨氏に聞く―Vol.2
アレルギー診療のガイドライン作成や吸入ステロイドの普及に努めた
国立病院機構福岡病院名誉院長である西間三馨氏に、平成を通じたアレルギー疾患の変遷を聞く企画。
第2回では、アレルギー診療にまつわる2つの事件が臨床現場にもたらした変化を振り返る。
アナフィラキシーショックに対する学校の体制は一気に変化した。
(聞き手・まとめ:m3.com編集部・宮内諭/2018年12月17日取材、全3回連載)
2018年、正しいアレルギー情報を届けるwebサイト開設
――平成の30年史で大きな転換点となった出来事はありますか?
アレルギー領域での大きな事件といえば、
2009年(平成21年)頃から表面化してきた「茶のしずく石けん事件」ですね。
ある商品を使った方に重篤なアレルギーが引き起こされたというものでしたが、結局、原因は石けんに含まれていた加水分解小麦でした。
被害者数は2000人以上にのぼりました。
この石けんを製造していた会社は福岡県にあるので、多くの患者が国立病院機構福岡病院に来院しました。
問診すると皆、「この石けんを使い始めてからアレルギーが出た」と言うのです。
確かに、小麦の多い職場で働く方がパウダーを大量に吸うことで喘息や鼻炎、アトピー性皮膚炎が引き起こされるという事例は報告されていましたが、
石けんを使用するだけでアナフィラキシーショックが引き起こされるとは信じられない、
と思っていました。
しかし、その後も同じような患者が立て続けに来院していると岸川禮子アレルギー科医長の報告でさすがにおかしいと感じ、全国の主な病院に問い合わせてみると、福岡、島根、神奈川の3カ所の病院で60例ほど見つかりました。
――事件はどのような経過をたどったのでしょうか?
販売会社は当初、自社の製品が原因だと認めようとしませんでしたが、
国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師(現・同院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室室長)は、見事に基礎的・臨床的に解析して加水分解小麦が原因であることを証明していきました。
最終的に会社も自主回収に応じ、和解金も支払いましたが、
『厚生労働省や消費者庁、そしてマスコミの動きは鈍く』、いたずらに被害者を増やしてしまいました。
今思い返すと、壮大な人体実験だったと言えるでしょうね。
食物アレルギーが皮膚の感作から発症し、それがアナフィラキシーショックまで引き起こすということが図らずも証明されてしまったのです。
この事件を通し、アレルギーの正しい知識を提供するサイトが必要だと痛感しました。
そこで、厚生労働省と日本アレルギー学会の協力の下、
2018年(平成30年)10月にアレルギー情報をまとめたポータルサイトが開設されました(https://allergyportal.jp/)。
「何か体に異変を感じた際、とにかくまずはここにアクセスしてください、基本の情報をここで手に入れてください」との思いを込めて作成されています。
1990年代のステロイドバッシング以降、
今もアトピー性皮膚炎や花粉症をターゲットとした怪しいビジネスが、
叩いても叩いても雨後の筍のように現れています。
このようなビジネスにだまされる人を一人でも減らすよう、更新を続けていかなければなりません。
また、皆がアクセスしやすいようにまだまだ工夫の余地は残されています。
しかし、公的な機関のバックアップの下、このようなサイトを公開できたというのは極めて大きいことだと感じています。
食物アレルギーに対する学校の体制が一気に変化
――その他にも転換点はありますか?
2012年(平成24年)、東京都調布市で、牛乳アレルギーを持った小学5年生の女子児童が給食に出たチーズ入りのチヂミを食べてしまい、アナフィラキシーショックで亡くなるという痛ましい事件がありました。
彼女はアドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)を持っていましたが、
学校の対処が十分ではなく、エピペンの打つタイミングも遅れたのです。
私は、この事件の原因を分析する文部科学省の有識者会議の座長を務め、
どのような状況で事件が起きたのか、
再発防止のためにはどのような体制を作ればよいか、
などを分析しました。
その結果の一部として、
日本小児アレルギー学会から、アナフィラキシーショックを疑うケースでエピペンを使用すべき13の兆候を発表しました。
「意識がもうろうとしている」、
「声がかすれる」などに
一つでも当てはまれば、そばにいる人は迷わずエピペンを打つというような、詳しい事故防止対策、緊急時の対処方法を定めたのです。
しかし、あれはつらい事件でした。
学校現場における食物アレルギーの対応策が未熟ではあったのですが、
私達医療者の責任も大きいと痛感しました。
事故後、学校の体制は一気に変わりましたね。
それまで、学校の中に医療は絶対持ち込ませない、
薬を飲ませるのだって抵抗する、
注射なんて論外、という風潮でしたが、
事故後は、エピペンがごく普通に学校で使われるようになったのです。
学校の抵抗をなくし、エピペンの使用を徹底するために文科省は尽力しました。
最近、文科省はしょっちゅう叩かれていますが、ちゃんとなすべきことも行っています。
給食についても、食物アレルギー疾患を持ったお子さんの家族から学校生活管理指導表(アレルギー疾患についての詳しい情報を主治医が記した用紙)が出されれば、きちんと対応を取るようになりましたからね。
今、食物アレルギー治療については、経口免疫療法の開発が進んでいます。
全く食べられなかったお子さんであっても、
少量であればもし誤食してもショック死しない程度までには治すことができるようになりつつあります。
しかし、まだ定量的、客観的なデータに沿った治療法は確立されていません。
ましてや治療薬も有望なものはありません。今後の研究開発に期待しています。
「何か体に異変を感じた際、とにかくまずはここにアクセスしてください、基本の情報をここで手に入れてください」との思いを込めて作成されています。
「食物アレルギーの対策が未熟だったと痛感」
【平成の医療史30年◆アレルギー疾患編】
アレルギー治療の変遷を西間三馨氏に聞く―Vol.2
アレルギー診療のガイドライン作成や吸入ステロイドの普及に努めた
国立病院機構福岡病院名誉院長である西間三馨氏に、平成を通じたアレルギー疾患の変遷を聞く企画。
第2回では、アレルギー診療にまつわる2つの事件が臨床現場にもたらした変化を振り返る。
アナフィラキシーショックに対する学校の体制は一気に変化した。
(聞き手・まとめ:m3.com編集部・宮内諭/2018年12月17日取材、全3回連載)
2018年、正しいアレルギー情報を届けるwebサイト開設
――平成の30年史で大きな転換点となった出来事はありますか?
アレルギー領域での大きな事件といえば、
2009年(平成21年)頃から表面化してきた「茶のしずく石けん事件」ですね。
ある商品を使った方に重篤なアレルギーが引き起こされたというものでしたが、結局、原因は石けんに含まれていた加水分解小麦でした。
被害者数は2000人以上にのぼりました。
この石けんを製造していた会社は福岡県にあるので、多くの患者が国立病院機構福岡病院に来院しました。
問診すると皆、「この石けんを使い始めてからアレルギーが出た」と言うのです。
確かに、小麦の多い職場で働く方がパウダーを大量に吸うことで喘息や鼻炎、アトピー性皮膚炎が引き起こされるという事例は報告されていましたが、
石けんを使用するだけでアナフィラキシーショックが引き起こされるとは信じられない、
と思っていました。
しかし、その後も同じような患者が立て続けに来院していると岸川禮子アレルギー科医長の報告でさすがにおかしいと感じ、全国の主な病院に問い合わせてみると、福岡、島根、神奈川の3カ所の病院で60例ほど見つかりました。
――事件はどのような経過をたどったのでしょうか?
販売会社は当初、自社の製品が原因だと認めようとしませんでしたが、
国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師(現・同院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室室長)は、見事に基礎的・臨床的に解析して加水分解小麦が原因であることを証明していきました。
最終的に会社も自主回収に応じ、和解金も支払いましたが、
『厚生労働省や消費者庁、そしてマスコミの動きは鈍く』、いたずらに被害者を増やしてしまいました。
今思い返すと、壮大な人体実験だったと言えるでしょうね。
食物アレルギーが皮膚の感作から発症し、それがアナフィラキシーショックまで引き起こすということが図らずも証明されてしまったのです。
この事件を通し、アレルギーの正しい知識を提供するサイトが必要だと痛感しました。
そこで、厚生労働省と日本アレルギー学会の協力の下、
2018年(平成30年)10月にアレルギー情報をまとめたポータルサイトが開設されました(https://allergyportal.jp/)。
「何か体に異変を感じた際、とにかくまずはここにアクセスしてください、基本の情報をここで手に入れてください」との思いを込めて作成されています。
1990年代のステロイドバッシング以降、
今もアトピー性皮膚炎や花粉症をターゲットとした怪しいビジネスが、
叩いても叩いても雨後の筍のように現れています。
このようなビジネスにだまされる人を一人でも減らすよう、更新を続けていかなければなりません。
また、皆がアクセスしやすいようにまだまだ工夫の余地は残されています。
しかし、公的な機関のバックアップの下、このようなサイトを公開できたというのは極めて大きいことだと感じています。
食物アレルギーに対する学校の体制が一気に変化
――その他にも転換点はありますか?
2012年(平成24年)、東京都調布市で、牛乳アレルギーを持った小学5年生の女子児童が給食に出たチーズ入りのチヂミを食べてしまい、アナフィラキシーショックで亡くなるという痛ましい事件がありました。
彼女はアドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)を持っていましたが、
学校の対処が十分ではなく、エピペンの打つタイミングも遅れたのです。
私は、この事件の原因を分析する文部科学省の有識者会議の座長を務め、
どのような状況で事件が起きたのか、
再発防止のためにはどのような体制を作ればよいか、
などを分析しました。
その結果の一部として、
日本小児アレルギー学会から、アナフィラキシーショックを疑うケースでエピペンを使用すべき13の兆候を発表しました。
「意識がもうろうとしている」、
「声がかすれる」などに
一つでも当てはまれば、そばにいる人は迷わずエピペンを打つというような、詳しい事故防止対策、緊急時の対処方法を定めたのです。
しかし、あれはつらい事件でした。
学校現場における食物アレルギーの対応策が未熟ではあったのですが、
私達医療者の責任も大きいと痛感しました。
事故後、学校の体制は一気に変わりましたね。
それまで、学校の中に医療は絶対持ち込ませない、
薬を飲ませるのだって抵抗する、
注射なんて論外、という風潮でしたが、
事故後は、エピペンがごく普通に学校で使われるようになったのです。
学校の抵抗をなくし、エピペンの使用を徹底するために文科省は尽力しました。
最近、文科省はしょっちゅう叩かれていますが、ちゃんとなすべきことも行っています。
給食についても、食物アレルギー疾患を持ったお子さんの家族から学校生活管理指導表(アレルギー疾患についての詳しい情報を主治医が記した用紙)が出されれば、きちんと対応を取るようになりましたからね。
今、食物アレルギー治療については、経口免疫療法の開発が進んでいます。
全く食べられなかったお子さんであっても、
少量であればもし誤食してもショック死しない程度までには治すことができるようになりつつあります。
しかし、まだ定量的、客観的なデータに沿った治療法は確立されていません。
ましてや治療薬も有望なものはありません。今後の研究開発に期待しています。