2021年04月12日
こんな怖い病気がありましたー「天然痘」
こんな怖い病気がありましたー「天然痘」
感染経路:飛沫感染によりヒトからヒトへと感染する。
潜伏期間:およそ12日間
感染期間:病初期(ことに5日前後)に感染力は最も強く、発病前は感染力はないが、全ての発疹がカサブタと
なり、これが完全に脱落するまでは感染の可能性がある。
症状:前駆期 急激な発熱(39℃前後)、頭痛、四肢関節、腰痛などで始まり、発熱は2〜3日で40℃に達する
第3〜4病日には、一時解熱するが、再び高熱になる。
発疹期:発疹は、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→結痂(カサブタがつく)→落屑(カサブタが剥がれ落ちる)
天然痘は根絶されている(アメリカなどの細菌ウイルス研究所に保存されている可能性あり)ところから、
日本では、平成11年から感染症法で、対象疾患から削除された。
国立感染症研究所ウイルス1部外来ウイルス室ではPCRによる迅速診断が可能である。
天然痘(痘瘡)の背景
天然痘は,紀元前より感染力が非常に強く、死に至る疫病として人々から恐れられていた.
また治癒した場合でも顔面に醜い瘢痕が残るため,忌み嫌われていたとの記録がある.
天然痘ワクチンすなわち種痘の普及によってその発生数は減少し,
WHO は,1980 年5 月天然痘の世界根絶宣言を行った.
以降,これまでに世界中で天然痘の患者の発生はない.
■ 疫学状況
天然痘の感染力,罹患率,致死率の高さは古くからよく知られていた.
1663 年米国で人口およそ4 万のインディアン部落での流行は数百人の生存者を残したのみ
であったこと,
1770 年のインドの流行では300万人が死亡したなどの記録がある.
Jenner (ジェンナー)による天然痘の予防法として種痘が発表された当時(1796 年),
英国では4 万5,000人が天然痘のために死亡したといわれる.
わが国では明治年間に2 万〜7 万人(死亡者5,000〜2 万人)規模の流行が6 回発生している.
第二次大戦後の1946 年には18,000 人近い流行がみられ約3,000 人が死亡しているが,
緊急接種などが行われ沈静化,1956 年以降は国内での発生はみられていない.
1958 年,世界天然痘根絶計画がWHO 総会に提案され,可決された.
当時,世界33 か国に天然痘は常在し,発生数は約2,000 万人,死亡数は400 万人と推計されていた.
「患者を見つけだし,患者周辺に種痘を行う」
という,サーベイランスと封じ込め(surveillanceand containment)作戦が精力的に進められ,
1977 年ソマリアにおける患者発生を最後に,地球上から天然痘は消え去った.
1980 年5 月,WHO は天然痘の世界根絶宣言を行った.
現在までに天然痘患者の発生はなく,
天然痘ウイルスはアメリカとロシアのクラス4施設で厳重に保管されている.
■ 病原体
天然痘ウイルス(pox virus variola)は,200〜300 nm,
エンベロープを有するDNA ウイルスで,
牛痘ウイルス,ワクチニアウイルス,エクトロメリアウイルスなどともに,
オルソポックスウイルスに分類される.
■ 鑑別診断
発熱を伴う水疱性疾患.水疱疹は水痘に類似しているが,
水痘のように各時期の発疹が同時にみられるのではなく,
発疹期に見られる発疹はすべて同一であることが特徴である.
水疱には,臍窩がみられるのも水痘の相違点であり,
かつて「ヘソがあるのは天然痘,ヘソのないのは水ぼうそう」と伝えられた.
■ 治療
治療は対症療法が中心となる.
■ 予防(種痘)
英国の開業医Edward Jenner が,天然痘(痘瘡)の予防法として1796 年, 種痘(vaccine)を発明した.
英国ではそのころ乳牛に牛痘(cow pox)がときどき流行し,
これに感染した乳搾りの女たちは天然痘に感染しないことが知られていた.
そこでJenner は,乳搾りの女性から牛痘の発疹内容液をとり,
8 歳の少年の腕に傷をつけてこれを接種,
その6 週後に少年に天然痘の膿を接種しても何も起こらなかった,というものである.
その後牛痘ワクチンはヒトからヒトへと植え継がれ,種痘は広がっていった.
種痘が普及した国々では次第に天然痘の発生は収まっていったが,
インド亜大陸,インドネシア,ブラジル,アフリカ中南部,エチオピアなどは常在地であった.
わが国にこの牛痘苗がもたらされたのは1848 年である.
1885(明治18)年には内務省告示として種痘施術心得書が出されている.
種痘接種後には脳炎が10 万〜50 万人接種当たり1 人の割合で発生し,
その致死率は40%と高い.
その他にも全身性種痘疹,湿疹性種痘疹,接触性種痘疹などの副反応が知られている.
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