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2021年07月28日
熱中症予防からペットボトル症候群ースポーツドリンクの飲み過ぎで「最悪の場合は死に至る」
熱中症予防からペットボトル症候群
スポーツドリンクの飲み過ぎで「最悪の場合は死に至る」
10〜30代の男性に多く発症
スポーツドリンクの飲み過ぎで「最悪の場合は死に至る」
10〜30代の男性に多く発症
熱中症対策として、水分補給は大切。
だが、スポーツドリンクの飲み過ぎが思わぬ事態を招くことがある。
急性の糖尿病の状態になる「ペットボトル症候群」が、それだ。
2020年8月は熱中症で搬送された人が2019年の約1.2倍に増加した(総務省「令和2年8月の熱中症による緊急搬送状況」)。
熱中症は毎年7月から8月に多く発生します。
熱中症対策が必要な時期を迎え、「こまめな水分補給を」「喉が渇く前に」と積極的に水分を取っている人も多いと思います。
そんなときに注意しなければいけないのが「ペットボトル症候群」です。
熱中症対策として、水分・塩分補給には経口補水液やスポーツドリンクが手軽です。
しかし、多量に摂取すればよいわけではなく、気を付けなければならないことがあります。
それがペットボトル症候群なのです。
症状としては、喉の渇き、尿量が多くなる、体重減少、倦怠感、イライラ感という兆候があります。それに加えて、目立った自覚症状もないのに、突然意識消失などを起こすこともあるのです。
ペットボトル症候群とは、スポーツドリンク、ジュースや甘い炭酸飲料水など糖が含まれる飲料を多量に飲んだことで起こる病気で、正式名称は「ソフトドリンクケトーシス」といいます。1992年に聖マリアンナ医科大学の研究グループが報告し、命名されました。
スポーツドリンク1本には20〜30gの糖が含まれている
甘い炭酸飲料水や清涼飲料水には一般的に500mlのペットボトルでおよそ30〜50gの糖が含まれてます。
スポーツドリンクでは20〜30g以上、コーラでは50g以上、
角砂糖に置き換えると約15個分にもなります(※各飲料の成分表示より換算)。
熱中症対策によいとされる経口補水液でも10g前後の糖が含まれると言われます。
経口補水液は先に挙げた飲料と比べると甘みをあまり感じないので、ご存知ない方も多いと思います。
体型にもよりますが、10%程度の糖分を含む清涼飲料水を、1日1.5L以上、また1カ月以上連続で飲むと、ペットボトル症候群のリスクが上がると言われています。
ペットボトル症候群がとても身近な疾病であることがお分かりいただけたでしょうか。
また、WHO(世界保健機関)では、糖の摂取量を1日の摂取カロリーの10%未満にするよう推奨しており、5%未満に保てば健康効果が増大すると発表しています。
糖の摂取量を1日の摂取カロリーの5%未満にした場合、砂糖にして約25gに相当します。
清涼飲料水のペットボトル500ml1本を飲むと、倍近くの糖50gを摂取することになってしまうので、ペットボトルでラッパ飲みがどれほど危険な行為か理解できると思います。
甘いドリンクを飲むほど喉が渇くという悪循環
喉が渇いたときにスポーツドリンクを多量に飲むと、スポーツドリンクに含まれる糖により血糖値が上昇。
実は、血糖値の上昇には喉の渇きを促進させる作用があり、そこで水代わりのようにスポーツドリンクを飲み続けると、さらに血糖値が上がり、喉が渇く、という悪循環を引き起こします。
通常であれば、血糖値が上がると膵臓からインスリンが出て血糖値を下げていきます。
インスリンには、食事などから摂取されたブトウ糖を細胞内に取り込み、エネルギーに変えるという働きがあり、そのため血糖値が下がるといった仕組みです。
しかしスポーツドリンクを飲み続けることで糖の摂取が止まらない場合、インスリンの働きが悪くなり、ブトウ糖からエネルギーを得られなくなります。
そうすると、ブドウ糖の代わりに身体に蓄えられていた脂肪がエネルギー源として使われることになり、ケトン体という物質が作られます。酸性の物質であるケトン体が大量に増えることで身体も酸性に傾いていきます。人の身体は酸性が強くなるとうまく機能できなくなってしまうため、これが意識障害を起こす原因となります。
10〜30代の男性に多く、糖尿病でなくても発症する
また、これまでの研究によると、ペットボトル症候群は、一般的に10〜30代の若い男性が多く、糖尿病などの既往がなくとも発症することが特徴。
万一発症してしまった場合、発症の初期にはインスリンの治療が必要となります。改善とともに食事療法のみでコントロールできるようになることが多いですが、一部では内服での治療も必要になることがあります。
運送業や肉体労働者、外出が多い仕事の人は特に注意が必要です。
ペットボトル症候群によって倦怠感を抱いているのに、熱中症と勘違いしてさらにスポーツドリンクを飲んで悪化させることもあります。
喉の渇きや倦怠感には脱水症以外にも糖尿病などの病気が潜んでいることもあるので、気になる症状がある場合には受診して検査を受けるようにしてください。
2〜3倍に薄めて飲むなどの工夫を
ただし、ペットボトル症候群を怖がって水分補給を控えてしまっては本末転倒です。
対策としては、お茶や水などの糖分を含まない飲み物を選んだり、清涼飲料水を飲む場合には2、3倍に薄めて飲んだり、ひと工夫してみることを勧めます。
飲み物を買う際には成分表示を確認する癖を
健康志向の人が増えたために、「糖質ゼロ」や「糖質控え目」などの表示がされている食品を多く見かけるようになりましたが、実際には全く糖が入っていないわけではありません。
消費者庁より定められている栄養強調表示では「糖質ゼロ」は100mlあたり0.5g未満、「糖質控え目」は100mlあたり2.5g未満であれば表示してよいとされています(消費者庁「栄養強調表示等について」)。
ペットボトル500mlに換算すると糖質オフでも最大2.5g、糖質控え目は最大12.5g糖分が含まれていることがあるのです。
「ペットボトル症候群」と聞くと、何だか重症ではないように感じてしまう方も多いでしょう。
しかしこれは急性の糖尿病の状態で、最悪の場合には死につながることもある病気です。
これからの時期、熱中症予防には水分摂取が大切ですが、ペットボトル症候群にも十分ご注意して、暑さを乗り切ってください。