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2019年03月23日

予防的に花粉飛散前からの服用を推奨されてたが、『症状が出てから服用しても遅くない』

スギ花粉症の減感作療法以外の通常の指導について、詳しく説明しています

予防的に花粉飛散前からの服用を推奨されましたが、『症状が出てから服用しても遅くない』結果が出ました!

第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、
あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】
公開日:2019/02/28 企画・制作 ケアネット

論文で探る服薬指導のエビデンス
世の中に数多ある臨床論文のなかには、日々薬局で行っている服薬指導に役立つエビデンスが隠れています。
このコラムでは、山崎 友樹氏が薬局業務に役立つ臨床論文をピックアップして根拠がよくわからない指導内容を裏打ちしてくれるエビデンス、服薬指導に厚みを与えるエビデンスなどを解説します。

 
インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、
花粉症が増える季節になりました。
症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。
今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。

アレルゲンを防ぐには?

アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。

花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後

晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日

雨上がりの翌日や気温の高い日が2〜3日続いた後は
外出を避けたり、マスクやメガネ、
なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。

それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。

この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。
1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。

ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。

ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。

症状を緩和する食材や栄養素は?

n-3系脂肪酸

大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。

ただし、急性の症状に対して『明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそう』です。

ビタミンE

ビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、
アレルギー性鼻炎患者63例を、
ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。
しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、『症状スコアにも血清IgEにも有意差無し』でした5)。

カゼイ菌

アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。
これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2〜5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。
187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。

通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52〜―0.10)日/年でした。
『鼻炎にわずかな効果が期待』できるかもしれませんが、
『喘息には有効ではない』との結果です6)。

薬物治療の効果は?

薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、
『抗ヒスタミン薬にフォーカス』して見ていきましょう。

比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、
眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。

種々の臨床試験から、
第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。
たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等で

『ビラスチン(ビラノアレジスタードマーク)は1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続』を示しています。

なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。

また、『眼のかゆみ』など症状が『ない』季節性のアレルギー性鼻炎であれば、
抗ヒスタミン薬よりも『ステロイド点鼻薬の有効性が高い』ことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、『点鼻薬を推奨』すべきとするレビューもあります9)。

『副作用』は?

抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。
インペアード・パフォーマンスは『集中力や生産性が低下』した状態ですが、『ほとんどの場合が無自覚』なので『運転を控える』ようにすることなどの指導が大切です。
フェキソフェナジン(アレグラレジスタードマーク)、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。

『口渇、乏尿、便秘』など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。
『頻度は少ない』ですが、第1世代、第2世代ともに『痙攣』の副作用がWHOで注意喚起されています11)。
万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。

予防的治療の効果は?

季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。

レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。

予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、『症状が出てから服用しても遅くない』と伝えると安心していただけるでしょう。

服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。

鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。

以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。

花粉症対策については『環境省の花粉症環境保健マニュアル』によくまとまっています。
また、同じく『環境省による花粉情報サイト』で各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。

参考文献
1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版
2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.
3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.
4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.
5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.
6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.
7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.
8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.
9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.
10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.
11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 2002
12)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.
13)「環境省 花粉情報サイト」

山崎 友樹 ( やまざき ゆうき ) 氏
株式会社カケハシ

[略歴]
水野薬局における勤務を経て、2017年に(株)カケハシへ参画。 同社では電子薬歴システムに搭載する薬剤関連コンテンツのレビューや、薬局向けのカスタマーサクセス業務に従事。 所属勉強会は、EBM-Tokyoなど。
KAKEHASHI
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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