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2019年03月04日
「こころの個性」に関わる遺伝子を検出
「こころの個性」に関わる遺伝子を検出
東北大、SLC18A1遺伝子がヒトの精神機能に影響
人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出された
QLifePro 医療ニュース2018年8月27日 (月)配信
東北大学は8月21日、人間がもつ多様な「こころの個性(精神的個性)」に関わる遺伝子を特定する研究結果を発表した。
この研究は、同大大学院生命科学研究科の佐藤大気(博士後期課程学生)と河田雅圭教授によるもの。
研究結果は「Evolution Letters」に掲載されている。
精神疾患は遺伝率が高く、しばしば生物学的な適応度(生存や繁殖)に大きな影響を与える可能性がある。
その一方で、精神疾患という表現型は、ヒトが持つ「個性」の一部として捉えることもできる。
実際に、近年行われた多くの研究では、精神疾患と精神的個性の遺伝的背景には、かなりの重なりがあることが見出されている。
過去の理論研究は、これら個性にかかわる遺伝的変異は積極的に維持されうると提唱しているが、
実際に精神疾患および精神的個性に関わる遺伝的変異が、
自然選択によって積極的に維持されていることを明確に示す証拠は、これまで報告されていなかった。
今回の研究では、精神疾患の関連遺伝子に着目。
哺乳類15種のゲノム配列を用いて、人類の進化過程で加速的に進化した精神疾患関連遺伝子588個の進化速度を推定した。
また、約2,500人分の現代人の遺伝的多型データを用いて、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試みたという。
その結果、3つの遺伝子(CLSTN2、FAT1、SLC18A1)が人類の進化過程で自然選択を受け、加速的に進化してきたことが判明。
なかでも、人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、
ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出されたという。
さらに、ヒトの集団内で、この遺伝子は遺伝的多様性をもち、自然選択によって異なる遺伝子型が、集団中に積極的に維持されていることが示されたという。
今回の研究成果は、『ヒトのこころの多様性が進化的に積極的に保たれている可能性を進化遺伝学的手法により初めて示した』もの。
研究グループは、「本研究の進化学的な知見は、個性や精神・神経疾患の生物学的意義や治療の方向性について示唆を与えると期待される」と述べている。
東北大、SLC18A1遺伝子がヒトの精神機能に影響
人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出された
QLifePro 医療ニュース2018年8月27日 (月)配信
東北大学は8月21日、人間がもつ多様な「こころの個性(精神的個性)」に関わる遺伝子を特定する研究結果を発表した。
この研究は、同大大学院生命科学研究科の佐藤大気(博士後期課程学生)と河田雅圭教授によるもの。
研究結果は「Evolution Letters」に掲載されている。
精神疾患は遺伝率が高く、しばしば生物学的な適応度(生存や繁殖)に大きな影響を与える可能性がある。
その一方で、精神疾患という表現型は、ヒトが持つ「個性」の一部として捉えることもできる。
実際に、近年行われた多くの研究では、精神疾患と精神的個性の遺伝的背景には、かなりの重なりがあることが見出されている。
過去の理論研究は、これら個性にかかわる遺伝的変異は積極的に維持されうると提唱しているが、
実際に精神疾患および精神的個性に関わる遺伝的変異が、
自然選択によって積極的に維持されていることを明確に示す証拠は、これまで報告されていなかった。
今回の研究では、精神疾患の関連遺伝子に着目。
哺乳類15種のゲノム配列を用いて、人類の進化過程で加速的に進化した精神疾患関連遺伝子588個の進化速度を推定した。
また、約2,500人分の現代人の遺伝的多型データを用いて、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試みたという。
その結果、3つの遺伝子(CLSTN2、FAT1、SLC18A1)が人類の進化過程で自然選択を受け、加速的に進化してきたことが判明。
なかでも、人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、
ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出されたという。
さらに、ヒトの集団内で、この遺伝子は遺伝的多様性をもち、自然選択によって異なる遺伝子型が、集団中に積極的に維持されていることが示されたという。
今回の研究成果は、『ヒトのこころの多様性が進化的に積極的に保たれている可能性を進化遺伝学的手法により初めて示した』もの。
研究グループは、「本研究の進化学的な知見は、個性や精神・神経疾患の生物学的意義や治療の方向性について示唆を与えると期待される」と述べている。
2019年03月03日
「まずはビール」に二日酔い予防効果なし?
アルコールは純エタノール量を計算しましょう!
パーセンテージ×量、
《純アルコール量の目安》
ビール中びん1本(500ml)=20g、日本酒1合(180ml)=22g、ウイスキーダブル(60ml)=20g、焼酎(25度)1合(180ml)=36g、ワイン1杯(120ml)=12g
種類を変えれば、純エタノール総計は増え、悪酔い、二日酔いにつながるわけ!
「まずはビール」に二日酔い予防効果なし?
提供元:HealthDay News 公開日:2019/02/19
二日酔いを予防するには、ビールやワインなどの飲む順番が大切と考えている人は多いだろう。
しかし、ワインの前にビールを飲んでも二日酔いの予防効果はないことが、
ヴィッテン・ヘルデッケ大学(ドイツ)のJoran Kochling氏らの研究で明らかになった。
研究の詳細は「American Journal of Clinical Nutrition」2月8日号に発表された。
Kochling氏らは今回、19〜40歳のボランティア男女90人(平均年齢23.9歳)を対象に、
1)最初にビールを約1,420mL、続いてワインを大きめのグラスで4杯分飲む群(31人)、または
2)同じ分量でワインを先に飲む群(31人)、
3)ビールまたはワインのどちから一方だけを飲む群(対照群;28人)にランダムに割り付けて比較した。
その後、1週間以上空けてから、それぞれの群の参加者には再び、反対の順番で飲酒をしてもらった。
また、参加者には飲酒後の夜間に、飲酒レベルを0〜10のスケールで評価してもらった。
翌日のインタビューの後、のどの渇き、疲労感、頭痛、めまい、悪心、胃の痛み、心拍数の増加、食欲不振などに基づいて二日酔いスコアを評価した。
その結果、女性は男性よりわずかに二日酔いを感じる人の割合が高い傾向がみられた(基本アルコールを肝臓で分解する能力は女性は男性の半分しかありません。”乱れたところを見せない”という前頭葉の力;克己心ではありませんー管理人註)。
また、二日酔いの評価スコアには3群間で有意な差はみられず、アルコールの飲む順番は二日酔いの程度に影響しないことが明らかになった。
さらに、血液検査や尿検査、年齢、性、体重、飲酒習慣、二日酔いの頻度などの因子は、二日酔いの程度の予測には役立たないことも分かった。
一方、嘔吐と自分が酔っていると自覚することは、より重度の二日酔いと関連していた。
Kochling氏らは「白ワインとビールを用いた今回の実験で、ワインの前にビールを飲んでも、他の順番に比べて二日酔いが軽くなるというエビデンスは認められなかった」と結論づけている。
その上で、
「真実は、アルコールは飲み過ぎれば、二日酔いになる確率が高まるということだ。
どんな順番で飲んだとしても、飲み過ぎれば二日酔いになるだろう。
翌日どの程度の二日酔いになるかを予想するのに参考になるのは、
どのくらい酔っているのかと、体調が悪いかどうかだけだ」
と述べている。
また、論文著者の一人でケンブリッジ大学のKai Hensel氏は
「二日酔いは不愉快なものだが、自分の身体が発する警告でもあることを忘れないでほしい」
と述べている。
[2019年2月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
原著論文
Kochling J, et al. Am J Clin Nutr. 2019; 109: 345-352.
パーセンテージ×量、
《純アルコール量の目安》
ビール中びん1本(500ml)=20g、日本酒1合(180ml)=22g、ウイスキーダブル(60ml)=20g、焼酎(25度)1合(180ml)=36g、ワイン1杯(120ml)=12g
種類を変えれば、純エタノール総計は増え、悪酔い、二日酔いにつながるわけ!
「まずはビール」に二日酔い予防効果なし?
提供元:HealthDay News 公開日:2019/02/19
二日酔いを予防するには、ビールやワインなどの飲む順番が大切と考えている人は多いだろう。
しかし、ワインの前にビールを飲んでも二日酔いの予防効果はないことが、
ヴィッテン・ヘルデッケ大学(ドイツ)のJoran Kochling氏らの研究で明らかになった。
研究の詳細は「American Journal of Clinical Nutrition」2月8日号に発表された。
Kochling氏らは今回、19〜40歳のボランティア男女90人(平均年齢23.9歳)を対象に、
1)最初にビールを約1,420mL、続いてワインを大きめのグラスで4杯分飲む群(31人)、または
2)同じ分量でワインを先に飲む群(31人)、
3)ビールまたはワインのどちから一方だけを飲む群(対照群;28人)にランダムに割り付けて比較した。
その後、1週間以上空けてから、それぞれの群の参加者には再び、反対の順番で飲酒をしてもらった。
また、参加者には飲酒後の夜間に、飲酒レベルを0〜10のスケールで評価してもらった。
翌日のインタビューの後、のどの渇き、疲労感、頭痛、めまい、悪心、胃の痛み、心拍数の増加、食欲不振などに基づいて二日酔いスコアを評価した。
その結果、女性は男性よりわずかに二日酔いを感じる人の割合が高い傾向がみられた(基本アルコールを肝臓で分解する能力は女性は男性の半分しかありません。”乱れたところを見せない”という前頭葉の力;克己心ではありませんー管理人註)。
また、二日酔いの評価スコアには3群間で有意な差はみられず、アルコールの飲む順番は二日酔いの程度に影響しないことが明らかになった。
さらに、血液検査や尿検査、年齢、性、体重、飲酒習慣、二日酔いの頻度などの因子は、二日酔いの程度の予測には役立たないことも分かった。
一方、嘔吐と自分が酔っていると自覚することは、より重度の二日酔いと関連していた。
Kochling氏らは「白ワインとビールを用いた今回の実験で、ワインの前にビールを飲んでも、他の順番に比べて二日酔いが軽くなるというエビデンスは認められなかった」と結論づけている。
その上で、
「真実は、アルコールは飲み過ぎれば、二日酔いになる確率が高まるということだ。
どんな順番で飲んだとしても、飲み過ぎれば二日酔いになるだろう。
翌日どの程度の二日酔いになるかを予想するのに参考になるのは、
どのくらい酔っているのかと、体調が悪いかどうかだけだ」
と述べている。
また、論文著者の一人でケンブリッジ大学のKai Hensel氏は
「二日酔いは不愉快なものだが、自分の身体が発する警告でもあることを忘れないでほしい」
と述べている。
[2019年2月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
原著論文
Kochling J, et al. Am J Clin Nutr. 2019; 109: 345-352.
2019年03月02日
低線量CT検診、肺がん死亡リスクを51%低減
CTが出てきて、術前診断の精度が上がり、肺がんなどのスクリーニング、意識障害などの頭蓋内病変の除外など、医学の進歩に大きく貢献しています!
低線量CT検診、肺がん死亡リスクを51%低減
日立市コホート研究 2019年02月13日 15:30
第26回日本CT検診学会(2月8〜9日)で開かれた記者会見で、
大会長で日立製作所日立総合病院(茨城県)総合健診センタ長の名和健氏は、
茨城県日立市市民を対象に低線量CT肺がん検診受診者とX線検診受診者を追跡した後ろ向きコホート研究の結果を公表した。
X線検診に比べ、
低線量CT検診では肺がん死亡リスクが51%減少、
CT検診が肺がん死亡に効果があることが分かった。
肺がん罹患は23%増加
日立市では1998年に職域、2001年には地域と総合健診で低線量CT肺がん検診が導入されている。
今回の研究では、2006年までに1回以上低線量CT検診またはX線検診を受診した50〜74歳を2012年末まで追跡した。
症例数はCT検診群が1万7,395例、X線検診群が1万5,548例。
性、年齢、喫煙歴を調整した多変量解析の結果によると、
X線検診群に比べCT検診群では肺がん罹患リスクが23%増加
(ハザード比1.23、95%CI 1.00〜1.51、図)した一方、
肺がん死亡リスクは51%と大幅に減少した(同0.49、0.34〜0.70)。
また、CT検診群では全死因死亡も43%減少していた(同0.57、0.52〜0.62)。
肺がん罹患リスクがCT検診群で増加したことに関して、
名和氏は「観察開始から2年間で特に罹患が増えた。
CT検診の高い検出能力を示している。
過剰診断が含まれている可能性はあるが、他の研究と比べ過大とはいえない」と考察した。
非喫煙者、軽喫煙者にも有効
肺がん死亡に関して喫煙歴別のサブ解析を行っており、
CT検診群の非喫煙者と軽喫煙者(pack-yearが0超30未満)では
X線検診群と比べ肺がん死亡リスクがそれぞれ59%、79%減少していた。
(非喫煙者より軽喫煙者の肺がん死亡率が低いのは、喫煙者の方が肺がん発生率が高いからー管理人注)
非喫煙者や軽喫煙者へのCT検診の有効性が示唆されたことで、
CT検診の対象を考える上で役立つエビデンスとみられる。
今後、症例対照研究を行い、適切な検診対象や検診間隔について検討する予定にしている。
研究の詳細は、Jpn J Clin Oncol(2019; 49: 130-136)に掲載された(牧野勇紀)。
低線量CT検診、肺がん死亡リスクを51%低減
日立市コホート研究 2019年02月13日 15:30
第26回日本CT検診学会(2月8〜9日)で開かれた記者会見で、
大会長で日立製作所日立総合病院(茨城県)総合健診センタ長の名和健氏は、
茨城県日立市市民を対象に低線量CT肺がん検診受診者とX線検診受診者を追跡した後ろ向きコホート研究の結果を公表した。
X線検診に比べ、
低線量CT検診では肺がん死亡リスクが51%減少、
CT検診が肺がん死亡に効果があることが分かった。
肺がん罹患は23%増加
日立市では1998年に職域、2001年には地域と総合健診で低線量CT肺がん検診が導入されている。
今回の研究では、2006年までに1回以上低線量CT検診またはX線検診を受診した50〜74歳を2012年末まで追跡した。
症例数はCT検診群が1万7,395例、X線検診群が1万5,548例。
性、年齢、喫煙歴を調整した多変量解析の結果によると、
X線検診群に比べCT検診群では肺がん罹患リスクが23%増加
(ハザード比1.23、95%CI 1.00〜1.51、図)した一方、
肺がん死亡リスクは51%と大幅に減少した(同0.49、0.34〜0.70)。
また、CT検診群では全死因死亡も43%減少していた(同0.57、0.52〜0.62)。
肺がん罹患リスクがCT検診群で増加したことに関して、
名和氏は「観察開始から2年間で特に罹患が増えた。
CT検診の高い検出能力を示している。
過剰診断が含まれている可能性はあるが、他の研究と比べ過大とはいえない」と考察した。
非喫煙者、軽喫煙者にも有効
肺がん死亡に関して喫煙歴別のサブ解析を行っており、
CT検診群の非喫煙者と軽喫煙者(pack-yearが0超30未満)では
X線検診群と比べ肺がん死亡リスクがそれぞれ59%、79%減少していた。
(非喫煙者より軽喫煙者の肺がん死亡率が低いのは、喫煙者の方が肺がん発生率が高いからー管理人注)
非喫煙者や軽喫煙者へのCT検診の有効性が示唆されたことで、
CT検診の対象を考える上で役立つエビデンスとみられる。
今後、症例対照研究を行い、適切な検診対象や検診間隔について検討する予定にしている。
研究の詳細は、Jpn J Clin Oncol(2019; 49: 130-136)に掲載された(牧野勇紀)。
2019年03月01日
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんだけでなく、喉のがんの原因になります!
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
感染すると子宮頸(けい)がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを一定の確率で引き起こすことが知られているヒトパピロマウイルス(HPV)。
しかし、HPVの危険性はこれだけにとどまらない。
咽頭がんの一部の中咽頭部がん=用語説明=の患者の多くで患部にHPVの感染が報告され、
喫煙や過度の飲酒などと並んでHPV感染が発症リスクとして影響していることが分かってきた。
◇飲酒・喫煙原因と異なる治療効果
吉本世一・国立がん研究センター中央病院頭頸部外科科長
このHPVは子宮頸部(けいぶ)や中咽頭などの粘膜に付着して増殖し、
免疫などの攻撃を生き延びて長期間の継続感染に移行した場合、
確率は低いが細胞のがん化につながる、といわれている。
「中咽頭がんは、
HPVの影響を受けているものと
過度の飲酒や喫煙が主な原因と推定されるものに大別できる、
と言う方が正しい表現かもしれない。
なぜなら、治療効果も治療後の展開も大きく異なるからだ」。
国立がん研究センター中央病院の吉本世一頭頸部外科科長は、こう説明する。
吉本科長によると、
20年以上前から目立った飲酒や喫煙歴がないのに
へんとう腺に腫瘍が生じる中咽頭がんの患者が一定の割合がいて、
これらの患者では非常に『放射線治療の効果が高い』ことが臨床経験上分かっていた。
2000年を過ぎた頃から、これらの患者が患部にHPV感染が確認されるようになった。
検査を進めていくと、
欧米で中咽頭がん患者全体の70〜80%、
日本やアジアでも50%以上が
感染していることが明らかになった。
このため、同センターの一般向けのがん啓発サイトは「中咽頭がんの発生には、喫煙・飲酒との強い関連があります。
また、HPVが中咽頭がんの発生する危険性を高めることがわかっています」と記載し、
がんの進行状況や病期の評価を、
HPV感染の代用マーカーである特定のタンパク質(p16)に対する免疫染色の結果に応じて
2種類に分けて紹介している。
高橋渉・東京大学医学部付属病院放射線科医師
◇良い治療成績
このHPVの影響を受けた中咽頭がんの治療はどのようなものだろうか。
「中咽頭がんの治療としては、
放射線照射と抗がん剤などの化学療法を組み合わせたものと、手術がある。
HPVに起因する場合はどちらの治療成績も非常に良く、再発の有無などの予後も良好だ。
発病年齢も異なり、
HPV陰性(非感染)の中咽頭がんの患者は60〜70代の発病が多いのに対して、
HPV陽性(感染)の場合は50代が中心で、40代の患者も珍しくない」。
東京大学医学部付属病院放射線科で咽頭がんを専門とする高橋渉医師はこう話す。
「同じような腫瘍の大きさでも『HPV陽性では、より軽い進行度』に評価される。
また、以前はリンパ節に複数の転移があれば進行がんで深刻な状況であると診断していたが、
現在ではHPV陽性中咽頭がんではリンパ節転移があっても早期で根治が望める例が少なくないと考えられている。
診断当時は、リンパ節転移が複数あったことから『進行咽頭がん』で根治が難しいと判断されたHPV陽性の患者さんの中には、放射線治療がうまくいき、大きな副作用なく過ごしている方が多くいる」
このような経緯から、現在課題になっているのがHPV陽性中咽頭がんの患者に対する治療のあり方だ。
「多くの患者で治癒が望めるため、治療の副作用をより少なくし、
治療後の生活の質(QOL)を向上させるため、放射線の照射範囲を狭めたり、
化学療法を軽いものに変更したりできないか、世界中で研究が進んでいる。
治療現場でも患者の状況に応じて、より細かく治療法を調整している」と高橋医師は言う。
咽頭部の図解(国立がん研究センターがん情報サービスより)
◇HPV感染かを確認
喫煙や過度の飲酒の影響か、
HPVが原因かは、
治療に大きく影響する。
治療する側はもちろん、患者側も自身がHPVに持続感染しているか、少なくとも中咽頭がんと診断された段階では確認しておく必要がある。
前出の国立がん研究センター中央病院の吉本外科科長は「咽頭がんの治療を担当する専門医は重要性を熟知し、必ず検査を実施している。
患者からも積極的に説明を求めてほしい」と指摘する。
◇ワクチン摂種へ議論を
もう一つ問題なのが、HPV自体の感染予防のあり方だ。
中咽頭がんには有効な検診方法がなく、進行するまで自覚症状が出にくいため、早期発見のチャンスは高くない。
東京大学医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授は
「感染経路については議論があるかもしれないが、
HPVが多くの人に感染しており、感染自体を防ぐためには男女共に
幼少期のHPVワクチン接種が有効なのは確かだ」と話す。
HPVワクチンをめぐっては、副反応と疑われる健康被害が報告され、訴訟を含めた社会問題となっている。
それでも中川准教授は「世界保健機関(WHO)の報告!や厚生労働省の調査でもワクチン接種と健康被害の関連は否定されている!。
早急にワクチン摂種推進に向けた議論を始めるべきだ!」と力説する。
中咽頭部は、
鼻の奥から食道につながる咽頭の管の中間部分で、口上部の軟口蓋から舌の奥の付け根の舌根までが含まれる。
鼻や口から入った空気と、口からの飲食物の両方が通る。
中咽頭がん全体の発病率は10万人に1人といわれ、
『その約半数でHPVの感染が原因』とされる。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2019/02/17 06:05)
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
感染すると子宮頸(けい)がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを一定の確率で引き起こすことが知られているヒトパピロマウイルス(HPV)。
しかし、HPVの危険性はこれだけにとどまらない。
咽頭がんの一部の中咽頭部がん=用語説明=の患者の多くで患部にHPVの感染が報告され、
喫煙や過度の飲酒などと並んでHPV感染が発症リスクとして影響していることが分かってきた。
◇飲酒・喫煙原因と異なる治療効果
吉本世一・国立がん研究センター中央病院頭頸部外科科長
このHPVは子宮頸部(けいぶ)や中咽頭などの粘膜に付着して増殖し、
免疫などの攻撃を生き延びて長期間の継続感染に移行した場合、
確率は低いが細胞のがん化につながる、といわれている。
「中咽頭がんは、
HPVの影響を受けているものと
過度の飲酒や喫煙が主な原因と推定されるものに大別できる、
と言う方が正しい表現かもしれない。
なぜなら、治療効果も治療後の展開も大きく異なるからだ」。
国立がん研究センター中央病院の吉本世一頭頸部外科科長は、こう説明する。
吉本科長によると、
20年以上前から目立った飲酒や喫煙歴がないのに
へんとう腺に腫瘍が生じる中咽頭がんの患者が一定の割合がいて、
これらの患者では非常に『放射線治療の効果が高い』ことが臨床経験上分かっていた。
2000年を過ぎた頃から、これらの患者が患部にHPV感染が確認されるようになった。
検査を進めていくと、
欧米で中咽頭がん患者全体の70〜80%、
日本やアジアでも50%以上が
感染していることが明らかになった。
このため、同センターの一般向けのがん啓発サイトは「中咽頭がんの発生には、喫煙・飲酒との強い関連があります。
また、HPVが中咽頭がんの発生する危険性を高めることがわかっています」と記載し、
がんの進行状況や病期の評価を、
HPV感染の代用マーカーである特定のタンパク質(p16)に対する免疫染色の結果に応じて
2種類に分けて紹介している。
高橋渉・東京大学医学部付属病院放射線科医師
◇良い治療成績
このHPVの影響を受けた中咽頭がんの治療はどのようなものだろうか。
「中咽頭がんの治療としては、
放射線照射と抗がん剤などの化学療法を組み合わせたものと、手術がある。
HPVに起因する場合はどちらの治療成績も非常に良く、再発の有無などの予後も良好だ。
発病年齢も異なり、
HPV陰性(非感染)の中咽頭がんの患者は60〜70代の発病が多いのに対して、
HPV陽性(感染)の場合は50代が中心で、40代の患者も珍しくない」。
東京大学医学部付属病院放射線科で咽頭がんを専門とする高橋渉医師はこう話す。
「同じような腫瘍の大きさでも『HPV陽性では、より軽い進行度』に評価される。
また、以前はリンパ節に複数の転移があれば進行がんで深刻な状況であると診断していたが、
現在ではHPV陽性中咽頭がんではリンパ節転移があっても早期で根治が望める例が少なくないと考えられている。
診断当時は、リンパ節転移が複数あったことから『進行咽頭がん』で根治が難しいと判断されたHPV陽性の患者さんの中には、放射線治療がうまくいき、大きな副作用なく過ごしている方が多くいる」
このような経緯から、現在課題になっているのがHPV陽性中咽頭がんの患者に対する治療のあり方だ。
「多くの患者で治癒が望めるため、治療の副作用をより少なくし、
治療後の生活の質(QOL)を向上させるため、放射線の照射範囲を狭めたり、
化学療法を軽いものに変更したりできないか、世界中で研究が進んでいる。
治療現場でも患者の状況に応じて、より細かく治療法を調整している」と高橋医師は言う。
咽頭部の図解(国立がん研究センターがん情報サービスより)
◇HPV感染かを確認
喫煙や過度の飲酒の影響か、
HPVが原因かは、
治療に大きく影響する。
治療する側はもちろん、患者側も自身がHPVに持続感染しているか、少なくとも中咽頭がんと診断された段階では確認しておく必要がある。
前出の国立がん研究センター中央病院の吉本外科科長は「咽頭がんの治療を担当する専門医は重要性を熟知し、必ず検査を実施している。
患者からも積極的に説明を求めてほしい」と指摘する。
◇ワクチン摂種へ議論を
もう一つ問題なのが、HPV自体の感染予防のあり方だ。
中咽頭がんには有効な検診方法がなく、進行するまで自覚症状が出にくいため、早期発見のチャンスは高くない。
東京大学医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授は
「感染経路については議論があるかもしれないが、
HPVが多くの人に感染しており、感染自体を防ぐためには男女共に
幼少期のHPVワクチン接種が有効なのは確かだ」と話す。
HPVワクチンをめぐっては、副反応と疑われる健康被害が報告され、訴訟を含めた社会問題となっている。
それでも中川准教授は「世界保健機関(WHO)の報告!や厚生労働省の調査でもワクチン接種と健康被害の関連は否定されている!。
早急にワクチン摂種推進に向けた議論を始めるべきだ!」と力説する。
中咽頭部は、
鼻の奥から食道につながる咽頭の管の中間部分で、口上部の軟口蓋から舌の奥の付け根の舌根までが含まれる。
鼻や口から入った空気と、口からの飲食物の両方が通る。
中咽頭がん全体の発病率は10万人に1人といわれ、
『その約半数でHPVの感染が原因』とされる。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2019/02/17 06:05)
2019年02月28日
教育レベルは認知症に影響せず
教育レベルは認知症に影響せず
ー学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も
2019年02月14日 14:45
高いレベルの教育歴を有する人は
認知症に拮抗する能力"認知予備能"が高いため認知症になりにくい
と考えられていたが、この従来の定説を覆す結果が示された。
米・Rush University Medical CenterのRobert S. Wilson氏らは、
高齢者約3,000例の試験データを解析した結果、
教育レベルは認知症の発症年齢や進行速度と関連しないことが示されたとNeurology(2019年2月6日オンライン版)に発表した。
平均年齢78歳の約3,000例を8年追跡
解析対象は、
米国のカトリック聖職者が対象のReligious Orders Studyおよび
シカゴの高齢者が対象のRush Memory and Aging Projectの2試験の参加者計『2,899例』。
試験開始時平均年齢78歳、
平均教育年数16.3年(0〜30年)、
『平均追跡期間8年』。
全例が年1回の認知機能検査を受け、死後の脳剖検(10種の神経変性、脳血管マーカーを検出)に同意した。
試験期間中に696例が認知症を発症、752例が死亡、405例が認知症を発症後に死亡した。
全体では、教育レベルが高い参加者ほど試験開始時(正規の教育が終了してから数十年後)の思考・記憶能力が高かったが、
『教育レベルと認知機能低下速度との関連は認められなかった』。
認知症発症群では、認知症診断の『平均1.8年前から認知機能低下』が進行していたものの、
教育レベルと認知機能低下の開始年齢および進行速度に関連は認められなかった。
死亡群では、死亡の平均3.4年前から認知機能低下が進行していたが、やはり教育レベルと進行速度との関連は認められなかった。
また、教育レベルが高い参加者ほど脳全体および顕微鏡で検出できる梗塞発症率が低かったものの、
その他の神経病理学的マーカーと教育レベルとの関連は認められなかった。
『学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も』
従来の研究では、
高学歴の人は低学歴の人に比べていったん認知機能低下が始まると進行が速いことや、
脳内のアルツハイマー病マーカー値が高い高学歴の人はマーカー値が同程度で低学歴の人ほど認知機能低下が急速ではないことが示されていた。
しかし、今回の解析では同様の結果は認められなかった。
Wilson氏は「教育は認知機能の発達や脳構造の変化に影響するという認識からすれば、
『今回の解析では認知予備能に対する教育の寄与がほとんど見られなかった』
のは驚きだ」と述べている。
ただし、参加者が正規の教育を修了したのは数十年前であったことから
「その後の思考・記憶能力が関与する活動、
例えば外国語の習得や社会活動、
高い知的能力を要する仕事、
人生の目的を持つことなども
認知予備能の維持に重要な役割を果たしている可能性があり、
それらは以前の学校教育より関連が強いのかもしれない」との見解を示している。
さらに「もちろん、認知機能低下が同じ速度で進行するならば、
やはり進行開始時点の認知予備能は高い方がよい」と付言している。(太田敦子)
ー学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も
2019年02月14日 14:45
高いレベルの教育歴を有する人は
認知症に拮抗する能力"認知予備能"が高いため認知症になりにくい
と考えられていたが、この従来の定説を覆す結果が示された。
米・Rush University Medical CenterのRobert S. Wilson氏らは、
高齢者約3,000例の試験データを解析した結果、
教育レベルは認知症の発症年齢や進行速度と関連しないことが示されたとNeurology(2019年2月6日オンライン版)に発表した。
平均年齢78歳の約3,000例を8年追跡
解析対象は、
米国のカトリック聖職者が対象のReligious Orders Studyおよび
シカゴの高齢者が対象のRush Memory and Aging Projectの2試験の参加者計『2,899例』。
試験開始時平均年齢78歳、
平均教育年数16.3年(0〜30年)、
『平均追跡期間8年』。
全例が年1回の認知機能検査を受け、死後の脳剖検(10種の神経変性、脳血管マーカーを検出)に同意した。
試験期間中に696例が認知症を発症、752例が死亡、405例が認知症を発症後に死亡した。
全体では、教育レベルが高い参加者ほど試験開始時(正規の教育が終了してから数十年後)の思考・記憶能力が高かったが、
『教育レベルと認知機能低下速度との関連は認められなかった』。
認知症発症群では、認知症診断の『平均1.8年前から認知機能低下』が進行していたものの、
教育レベルと認知機能低下の開始年齢および進行速度に関連は認められなかった。
死亡群では、死亡の平均3.4年前から認知機能低下が進行していたが、やはり教育レベルと進行速度との関連は認められなかった。
また、教育レベルが高い参加者ほど脳全体および顕微鏡で検出できる梗塞発症率が低かったものの、
その他の神経病理学的マーカーと教育レベルとの関連は認められなかった。
『学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も』
従来の研究では、
高学歴の人は低学歴の人に比べていったん認知機能低下が始まると進行が速いことや、
脳内のアルツハイマー病マーカー値が高い高学歴の人はマーカー値が同程度で低学歴の人ほど認知機能低下が急速ではないことが示されていた。
しかし、今回の解析では同様の結果は認められなかった。
Wilson氏は「教育は認知機能の発達や脳構造の変化に影響するという認識からすれば、
『今回の解析では認知予備能に対する教育の寄与がほとんど見られなかった』
のは驚きだ」と述べている。
ただし、参加者が正規の教育を修了したのは数十年前であったことから
「その後の思考・記憶能力が関与する活動、
例えば外国語の習得や社会活動、
高い知的能力を要する仕事、
人生の目的を持つことなども
認知予備能の維持に重要な役割を果たしている可能性があり、
それらは以前の学校教育より関連が強いのかもしれない」との見解を示している。
さらに「もちろん、認知機能低下が同じ速度で進行するならば、
やはり進行開始時点の認知予備能は高い方がよい」と付言している。(太田敦子)
2019年02月27日
HCV撲滅間近? 肝臓専門医の今後は
非A非B型肝炎と言われ、治療方法がないおそるべき肝炎、C型肝炎と言われていたのに、飲み薬で撲滅できる時代になりました。隔世の感がします!
HCV撲滅間近? 肝臓専門医の今後は【平成の医療史30年◆C型肝炎編】
武蔵野赤十字病院・泉並木氏に聞く―Vol. 2
平成の医療史30年2019年2月14日 (木)配信 消化器疾患
泉並木氏
平成の30年間で大きく変わったC型肝炎の歴史。
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場によって患者数は大幅に減少し、C型肝炎撲滅が間近に迫ってきたが、
専門家の見通しは……?
引き続き、武蔵野赤十字病院院長の泉並木氏の話を紹介する。
(聞き手・まとめ:m3.com編集部・河野祐子/2018年11月29日取材、全2回連載)
IFNフリー治療、ガイドライン委員会でもめた理由
――インターフェロン(IFN)フリー治療の登場によって、流れが一変しました。
IFNフリー治療は、C型肝炎治療の歴史の中でも最も大きな出来事と言えるでしょう。
2014年(平成26年)に最初のIFNフリー治療薬、ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)、アスナプレビル(商品名:スンベプラ)が出て、経口薬を半年間飲むだけで、90%という高いSVR率(ウイルス学的著効率)が得られるようになりました。
この時、東京医科歯科大学(当時)の榎本信幸先生(現山梨大学教授)らとC型肝炎ウイルス(HCV)の耐性変異というものを調べていたのですが、両剤とも薬剤耐性変異があると効かないということが分かりました。
そのため、治療前に薬剤耐性変異があるかないかを調べて、効かないと分かった患者さんには投与すべきではないと主張しました。
すると、日本肝臓学会の治療ガイドライン委員会でも議論になりました。
IFNがなくても効く薬なら制限しないでどんどん使ってあげたらいいのではないかという意見と、
効かない人に投与したら耐性変異が残って後々大変なのではないかという意見に割れたのです。
私たちには、薬剤耐性がある人に使ったら効かないし、
抗ウイルス薬はHCVを殺す薬ですから、いったん投与したら、これを逃れるために
さらに新たな耐性変異ができて治療が難しくなる
のではないかという考えがありました。
ガイドライン委員会で投票を募った結果、耐性変異を調べて効果があると分かった人に使いましょうということになりました。
まず、発癌リスクを見極めた上で、IFNで治療できる人なら、シメプレビル(商品名:ソブリアード)+Peg-IFN+リバビリンを選択するようにしました。
しかし、大もめでしたね。というのも、欧米ではアスナプレビルが認可されなかったので、世界の中で例がなくて、日本独自で指標を作らなくてはいけなかったからなんです。
ウイルス発見から30年で「治る病気」に
日本では世界に1年遅れて、2015年にレジパスビル・ソホスフビル(商品名:『ハーボニー』)が使えるようになりました。
国内の治験結果では、ウイルス学的著効(SVR)率がなんと『100%』でしたから、一気に進歩したというわけです。
1錠8万円、3カ月で670万円という価格も話題になりましたけれども、肝癌に進行する患者が減ったことを考えれば、それだけの価値があったという評価になります。
そこから先もさまざまな薬剤が出ましたが、やはりハーボニーのインパクトは大きかったですね。
IFNなしで、『3カ月薬を飲むだけで』ほとんどの人が『治る』というのは、まさにターニングポイントでした。
その後、ダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法での治療失敗例に複雑な薬剤耐性変異ができて、
ハーボニーも奏効しないという症例が発生しました。
現状でも治癒に至らない方がいるという問題が残っています。
そこで、現在AMEDと厚生労働省の研究班で、全国の都道府県の肝疾患拠点病院から依頼を受けた症例についてHCVの薬剤耐性変異を調べて、結果をお返ししています。
この結果を参考にして、2回目の治療前に薬剤耐性変異を測定して、適切な薬剤を選択するという制度が行われています。
現在は、ほとんどの方がグレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:『マヴィレット』)で治っています。
特にP32の欠損がなければ治癒率が高い。
この薬剤で再治療を実施するか否かについては、
P32欠損の有無を測定した結果を参考に決定しているので、
問題はほとんど解決されてきています。
ウイルス発見からわずか30年で治るようになったということになります。
私は、検査法の進歩と普及、新薬の治験など、この30年間で全部体験しました。
C型肝炎治療の歴史が自分の医師としてのキャリアに重なっているのです。
医師にとって、これほど面白い時代はなかったのではないかと思っています。
C型肝炎撲滅が見えてきたが…
――30年後、C型肝炎はなくなっていると思いますか。
国内の感染者は限りなくゼロに近づいていくでしょう。
でも、完全制圧というのは難しいかもしれません。
世界保健機関(WHO)は2030年までの撲滅を目標に掲げていますが。
覚醒剤の回し打ち、入れ墨などによる再感染があるんですね。
いまだに透析施設、歯科クリニックで感染する危険性もゼロではありません。
近年は海外に行く日本人、日本を訪れる外国人が多くなりましたから、今まで国内で見られなかったゲノタイプ3、4も見られます。
潜在的キャリアの問題も残っています。
検診施設、かかりつけ医では、肝機能が悪い患者さんにはC型肝炎、B型肝炎の検査を当たり前のように実施しています。
問題は、症状がなく普通の生活を送っている方。
まだたくさんいると思いますね。
肝臓専門医の未来は?
――では、肝臓専門医の今後は?
C型肝炎が治せる時代になったおかげで患者さんの数が減り、肝臓専門医も減りました。
ただ、専門医の数が減ったせいか、私どもの病院に紹介されてくる肝臓癌の症例が減ったという実感はありません。
『最近、肝臓癌で紹介』されてくる方は、HCVもB型肝炎ウイルスも持っておらず、『脂肪肝、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)から癌に進行した症例』が多い。
脂肪肝で癌になる危険性の高い人をどうやって見分けるか、
肝癌への進行をどうやって防いでいくかということが大きな課題になっています。
30年たって、またスタート地点に?
現在、NASHには治療薬がありません。
診断しても、せいぜいビタミンEの投与くらい。
患者さんには「運動して食事制限してください」としか言えないのです。
私たち肝臓専門医からすると、現在の状況は、C型肝炎が「非A非B型肝炎」と呼ばれ、原因が分からず肝庇護剤を投与していた時代に似ているんですね。
30年たって、スタート地点に戻ったような感じがしています。今後、NASHの機序が解明されたり、治療薬が登場したりすれば、また状況も一気に変わってくるでしょう。(了)
HCV撲滅間近? 肝臓専門医の今後は【平成の医療史30年◆C型肝炎編】
武蔵野赤十字病院・泉並木氏に聞く―Vol. 2
平成の医療史30年2019年2月14日 (木)配信 消化器疾患
泉並木氏
平成の30年間で大きく変わったC型肝炎の歴史。
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場によって患者数は大幅に減少し、C型肝炎撲滅が間近に迫ってきたが、
専門家の見通しは……?
引き続き、武蔵野赤十字病院院長の泉並木氏の話を紹介する。
(聞き手・まとめ:m3.com編集部・河野祐子/2018年11月29日取材、全2回連載)
IFNフリー治療、ガイドライン委員会でもめた理由
――インターフェロン(IFN)フリー治療の登場によって、流れが一変しました。
IFNフリー治療は、C型肝炎治療の歴史の中でも最も大きな出来事と言えるでしょう。
2014年(平成26年)に最初のIFNフリー治療薬、ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)、アスナプレビル(商品名:スンベプラ)が出て、経口薬を半年間飲むだけで、90%という高いSVR率(ウイルス学的著効率)が得られるようになりました。
この時、東京医科歯科大学(当時)の榎本信幸先生(現山梨大学教授)らとC型肝炎ウイルス(HCV)の耐性変異というものを調べていたのですが、両剤とも薬剤耐性変異があると効かないということが分かりました。
そのため、治療前に薬剤耐性変異があるかないかを調べて、効かないと分かった患者さんには投与すべきではないと主張しました。
すると、日本肝臓学会の治療ガイドライン委員会でも議論になりました。
IFNがなくても効く薬なら制限しないでどんどん使ってあげたらいいのではないかという意見と、
効かない人に投与したら耐性変異が残って後々大変なのではないかという意見に割れたのです。
私たちには、薬剤耐性がある人に使ったら効かないし、
抗ウイルス薬はHCVを殺す薬ですから、いったん投与したら、これを逃れるために
さらに新たな耐性変異ができて治療が難しくなる
のではないかという考えがありました。
ガイドライン委員会で投票を募った結果、耐性変異を調べて効果があると分かった人に使いましょうということになりました。
まず、発癌リスクを見極めた上で、IFNで治療できる人なら、シメプレビル(商品名:ソブリアード)+Peg-IFN+リバビリンを選択するようにしました。
しかし、大もめでしたね。というのも、欧米ではアスナプレビルが認可されなかったので、世界の中で例がなくて、日本独自で指標を作らなくてはいけなかったからなんです。
ウイルス発見から30年で「治る病気」に
日本では世界に1年遅れて、2015年にレジパスビル・ソホスフビル(商品名:『ハーボニー』)が使えるようになりました。
国内の治験結果では、ウイルス学的著効(SVR)率がなんと『100%』でしたから、一気に進歩したというわけです。
1錠8万円、3カ月で670万円という価格も話題になりましたけれども、肝癌に進行する患者が減ったことを考えれば、それだけの価値があったという評価になります。
そこから先もさまざまな薬剤が出ましたが、やはりハーボニーのインパクトは大きかったですね。
IFNなしで、『3カ月薬を飲むだけで』ほとんどの人が『治る』というのは、まさにターニングポイントでした。
その後、ダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法での治療失敗例に複雑な薬剤耐性変異ができて、
ハーボニーも奏効しないという症例が発生しました。
現状でも治癒に至らない方がいるという問題が残っています。
そこで、現在AMEDと厚生労働省の研究班で、全国の都道府県の肝疾患拠点病院から依頼を受けた症例についてHCVの薬剤耐性変異を調べて、結果をお返ししています。
この結果を参考にして、2回目の治療前に薬剤耐性変異を測定して、適切な薬剤を選択するという制度が行われています。
現在は、ほとんどの方がグレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:『マヴィレット』)で治っています。
特にP32の欠損がなければ治癒率が高い。
この薬剤で再治療を実施するか否かについては、
P32欠損の有無を測定した結果を参考に決定しているので、
問題はほとんど解決されてきています。
ウイルス発見からわずか30年で治るようになったということになります。
私は、検査法の進歩と普及、新薬の治験など、この30年間で全部体験しました。
C型肝炎治療の歴史が自分の医師としてのキャリアに重なっているのです。
医師にとって、これほど面白い時代はなかったのではないかと思っています。
C型肝炎撲滅が見えてきたが…
――30年後、C型肝炎はなくなっていると思いますか。
国内の感染者は限りなくゼロに近づいていくでしょう。
でも、完全制圧というのは難しいかもしれません。
世界保健機関(WHO)は2030年までの撲滅を目標に掲げていますが。
覚醒剤の回し打ち、入れ墨などによる再感染があるんですね。
いまだに透析施設、歯科クリニックで感染する危険性もゼロではありません。
近年は海外に行く日本人、日本を訪れる外国人が多くなりましたから、今まで国内で見られなかったゲノタイプ3、4も見られます。
潜在的キャリアの問題も残っています。
検診施設、かかりつけ医では、肝機能が悪い患者さんにはC型肝炎、B型肝炎の検査を当たり前のように実施しています。
問題は、症状がなく普通の生活を送っている方。
まだたくさんいると思いますね。
肝臓専門医の未来は?
――では、肝臓専門医の今後は?
C型肝炎が治せる時代になったおかげで患者さんの数が減り、肝臓専門医も減りました。
ただ、専門医の数が減ったせいか、私どもの病院に紹介されてくる肝臓癌の症例が減ったという実感はありません。
『最近、肝臓癌で紹介』されてくる方は、HCVもB型肝炎ウイルスも持っておらず、『脂肪肝、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)から癌に進行した症例』が多い。
脂肪肝で癌になる危険性の高い人をどうやって見分けるか、
肝癌への進行をどうやって防いでいくかということが大きな課題になっています。
30年たって、またスタート地点に?
現在、NASHには治療薬がありません。
診断しても、せいぜいビタミンEの投与くらい。
患者さんには「運動して食事制限してください」としか言えないのです。
私たち肝臓専門医からすると、現在の状況は、C型肝炎が「非A非B型肝炎」と呼ばれ、原因が分からず肝庇護剤を投与していた時代に似ているんですね。
30年たって、スタート地点に戻ったような感じがしています。今後、NASHの機序が解明されたり、治療薬が登場したりすれば、また状況も一気に変わってくるでしょう。(了)
2019年02月26日
減塩に味ぽんを薦めています!
減塩に味ぽんを薦めています!
酢とだしが効いているので、減塩醤油よりも少ない量でいけるはずです!
■診察室での会話
医師 どんな風に減塩をされていますか?
患者 しょう油をなるべく使わないようにしています。
医師 それはいいですね。味付けは、どうされていますか?
(味付けの確認)
患者 ポン酢を使うようにしています。
医師 そうですか。どんなポン酢ですか?
(ポン酢の種類も確認)
患者 普通に売っている、○○というポン酢を使っています。
医師 なるほど。じつはポン酢は大きく分けると3種類あるんですが。
種類によって含まれている塩分量が全然違うんです。
患者 えっ、そうなんですか!(驚きの声)
医師 Aさんが使っている味付けポン酢は、薄口醤油より塩分量は
少ないのですが、減塩醤油と同じくらいの塩分量です
(大さじ1杯で1.4g)。
患者 ポン酢は酢だから、塩分はないと思っていました。
これからは気を付けます。
●ポイント
ポン酢には3種類ある。そして、味付けポン酢だからといって、使いすぎないようにアドバイス
●資料
大さじ1杯の塩分量
薄口しょうゆ 2.9g
濃口しょうゆ 2.6g
減塩しょうゆ 1.4g
味付けポン酢 1.4g
ポン酢 0g
ポン酢の種類
(1)ポン酢(かんきつ果汁に醸造酢を加えたもの)
(2)味付けポン酢(かんきつ果汁に醸造酢としょう油を加えたもの)
(3)ダシ入り味付けぽん酢(かんきつ果汁に醸造酢としょう油、昆布や鰹のだしを加えたもの)
講師紹介
坂根 直樹 ( さかね なおき ) 氏
京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長
酢とだしが効いているので、減塩醤油よりも少ない量でいけるはずです!
■診察室での会話
医師 どんな風に減塩をされていますか?
患者 しょう油をなるべく使わないようにしています。
医師 それはいいですね。味付けは、どうされていますか?
(味付けの確認)
患者 ポン酢を使うようにしています。
医師 そうですか。どんなポン酢ですか?
(ポン酢の種類も確認)
患者 普通に売っている、○○というポン酢を使っています。
医師 なるほど。じつはポン酢は大きく分けると3種類あるんですが。
種類によって含まれている塩分量が全然違うんです。
患者 えっ、そうなんですか!(驚きの声)
医師 Aさんが使っている味付けポン酢は、薄口醤油より塩分量は
少ないのですが、減塩醤油と同じくらいの塩分量です
(大さじ1杯で1.4g)。
患者 ポン酢は酢だから、塩分はないと思っていました。
これからは気を付けます。
●ポイント
ポン酢には3種類ある。そして、味付けポン酢だからといって、使いすぎないようにアドバイス
●資料
大さじ1杯の塩分量
薄口しょうゆ 2.9g
濃口しょうゆ 2.6g
減塩しょうゆ 1.4g
味付けポン酢 1.4g
ポン酢 0g
ポン酢の種類
(1)ポン酢(かんきつ果汁に醸造酢を加えたもの)
(2)味付けポン酢(かんきつ果汁に醸造酢としょう油を加えたもの)
(3)ダシ入り味付けぽん酢(かんきつ果汁に醸造酢としょう油、昆布や鰹のだしを加えたもの)
講師紹介
坂根 直樹 ( さかね なおき ) 氏
京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長
2019年02月25日
突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード
船員の外傷、疾病を見たことがありますが、通関の職員の方がついてきてくれたのと、勤務医ですので、支払いのことまで気が回りませんでした。
突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード
公開日:2017/10/13 企画・制作 ケアネット
訪日外国人の増加に伴い、医療機関でも外国人患者さんへ対応する機会が増えることが予想されています。
しかし言語や文化の違いから、思わぬ事態に発展することも珍しくありません。
本コラムでは、医療機関での体制作りの参考としていただくために、全国の医療機関に医療通訳サービスを提供する一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチの澤田 真弓氏に実際にあった事例を紹介していただきます。
第7回 訪日外国人患者の医療費で未収を発生させないために
<Case7>
高齢の中国人夫婦が来院。妻が骨折と診断され手術が必要となり、すぐに入院することになりました。
医事課職員が概算医療費(※約300万円)の提示と支払い方法の確認をしたところ、夫婦が持っているカードは中国国内で主にデビットカードとして発行されている「銀聯(ぎんれん)カード」のみでした。
病院の会計では銀聯カードの決済対応はしておらず…。
※日本国民は、通常3割負担なので、自己負担額は、90万。
65歳以上が60万、75歳以上で30万円、
所得により、上限10万円、20万円までの負担なので、それ以上は後日還付されます(入院する前に市役所で手続を取っておけば、3ヶ月を待たずに、最初から上限額でOKになります)管理人注。
対談相手
市立千歳市民病院
事務局次長 貫田 雅寿 氏
事務局総務課調整係 係長 黒田 尚樹 氏
事務局医事課医事係 主任 菊地 真一 氏
JIGH:今回は、北海道千歳市の市立千歳市民病院事務局の貫田さん、黒田さん、菊地さんにお話を伺います。このご夫婦の支払いはどうなったのでしょうか。
菊地:支払い方法について相談した結果、コンビニATMで引き出し限度額を毎日引き出してもらうことで、何とか退院日までに全額をお支払いいただくことができました。
JIGH:北海道では訪日外国人数が右肩上がりで増加しており、「外国人患者さんの受け入れ」は注目度の高いトピックだと伺っています。この事例では、会計時の支払いについての課題が浮き彫りになっていますね。
菊地:私たちの病院は空港のすぐ近くにあるので、患者さんが空港から運ばれてきたり、帰国直前の患者さんが来院したりすることがあります。
そういった方々は手元に現金(日本円)がなかったり、この事例のように利用できるクレジットカードを持っていなかったりして、医療費の未払いが発生するリスクがどうしてもあります。
JIGH:医療費の未払い防止のため、何か対策は取られているのでしょうか。
貫田:今回紹介した事例を受け、銀聯カード決済の導入を決定しました。
北海道にはアジア圏からの観光客が多く、実際に銀聯カードしか持っていないという方も多くいらっしゃいます。
銀聯カードの決済手数料は少し高いのですが、患者さんに対するサービス向上という側面のほかに、高額となる医療費の未払いリスクを回避するという点でメリットの方が勝るという判断で、導入しました。
JIGH:先進的な取り組みですね。導入後の利用状況はいかがですか。
黒田:これまで実際に銀聯カードで決済をされた患者さんは、1名です。
ただ、この患者さんは脳神経外科での手術が必要で、医療費は700万円と高額でした。
利用実績は少ないものの、今後もいつ発生するか分からない高額医療費の未収を防ぐための、体制整備という意味合いが大きいですね。
JIGH:銀聯カードへの対応のほか、未収金発生防止のために取り組まれていることがあれば教えてください。
菊地:外国人患者さんが受診されたら、
まず医事課職員が医療費の概算を事前に提示し、支払い方法について確認します。
保険に加入されている外国人患者さんは、肌感覚では4割程度という印象です。
ただしほとんどの場合、いったんは患者さんが医療機関に医療費を支払う保険内容になっているので、どうしても患者さんに支払い義務が発生します。
そのため事前のオペレーションを徹底し、患者さんに納得していただくことで、未払いリスクを回避するようにしています。
JIGH:やはり体制整備が重要ということですね。本日はありがとうございました。
<本事例からの学び>
訪日外国人患者さんの医療費未払い防止には、多様な支払い方法への対応と、事前の概算確認が重要!
澤田 真弓 ( さわだ まゆみ ) 氏
一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ / mediPhone 理事 CEO
[略歴]
東京外国語大学 外国語学部 欧米第一課程 英語専攻卒業。北京大学漢語進修プログラム修了後、インペリアルカレッジロンドンにて経営学修士号取得。帰国後、グーグル株式会社を経て、JIGHに参画。2014年、電話医療通訳のmediPhone(メディフォン)を立ち上げ、全国の医療機関に予約なしで、電話1本でつながる医療通訳サービスを提供する。利用施設数は300以上(2017年2月時点)。10言語に対応(英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ヒンディー語・タイ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語)。
突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード
公開日:2017/10/13 企画・制作 ケアネット
訪日外国人の増加に伴い、医療機関でも外国人患者さんへ対応する機会が増えることが予想されています。
しかし言語や文化の違いから、思わぬ事態に発展することも珍しくありません。
本コラムでは、医療機関での体制作りの参考としていただくために、全国の医療機関に医療通訳サービスを提供する一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチの澤田 真弓氏に実際にあった事例を紹介していただきます。
第7回 訪日外国人患者の医療費で未収を発生させないために
<Case7>
高齢の中国人夫婦が来院。妻が骨折と診断され手術が必要となり、すぐに入院することになりました。
医事課職員が概算医療費(※約300万円)の提示と支払い方法の確認をしたところ、夫婦が持っているカードは中国国内で主にデビットカードとして発行されている「銀聯(ぎんれん)カード」のみでした。
病院の会計では銀聯カードの決済対応はしておらず…。
※日本国民は、通常3割負担なので、自己負担額は、90万。
65歳以上が60万、75歳以上で30万円、
所得により、上限10万円、20万円までの負担なので、それ以上は後日還付されます(入院する前に市役所で手続を取っておけば、3ヶ月を待たずに、最初から上限額でOKになります)管理人注。
対談相手
市立千歳市民病院
事務局次長 貫田 雅寿 氏
事務局総務課調整係 係長 黒田 尚樹 氏
事務局医事課医事係 主任 菊地 真一 氏
JIGH:今回は、北海道千歳市の市立千歳市民病院事務局の貫田さん、黒田さん、菊地さんにお話を伺います。このご夫婦の支払いはどうなったのでしょうか。
菊地:支払い方法について相談した結果、コンビニATMで引き出し限度額を毎日引き出してもらうことで、何とか退院日までに全額をお支払いいただくことができました。
JIGH:北海道では訪日外国人数が右肩上がりで増加しており、「外国人患者さんの受け入れ」は注目度の高いトピックだと伺っています。この事例では、会計時の支払いについての課題が浮き彫りになっていますね。
菊地:私たちの病院は空港のすぐ近くにあるので、患者さんが空港から運ばれてきたり、帰国直前の患者さんが来院したりすることがあります。
そういった方々は手元に現金(日本円)がなかったり、この事例のように利用できるクレジットカードを持っていなかったりして、医療費の未払いが発生するリスクがどうしてもあります。
JIGH:医療費の未払い防止のため、何か対策は取られているのでしょうか。
貫田:今回紹介した事例を受け、銀聯カード決済の導入を決定しました。
北海道にはアジア圏からの観光客が多く、実際に銀聯カードしか持っていないという方も多くいらっしゃいます。
銀聯カードの決済手数料は少し高いのですが、患者さんに対するサービス向上という側面のほかに、高額となる医療費の未払いリスクを回避するという点でメリットの方が勝るという判断で、導入しました。
JIGH:先進的な取り組みですね。導入後の利用状況はいかがですか。
黒田:これまで実際に銀聯カードで決済をされた患者さんは、1名です。
ただ、この患者さんは脳神経外科での手術が必要で、医療費は700万円と高額でした。
利用実績は少ないものの、今後もいつ発生するか分からない高額医療費の未収を防ぐための、体制整備という意味合いが大きいですね。
JIGH:銀聯カードへの対応のほか、未収金発生防止のために取り組まれていることがあれば教えてください。
菊地:外国人患者さんが受診されたら、
まず医事課職員が医療費の概算を事前に提示し、支払い方法について確認します。
保険に加入されている外国人患者さんは、肌感覚では4割程度という印象です。
ただしほとんどの場合、いったんは患者さんが医療機関に医療費を支払う保険内容になっているので、どうしても患者さんに支払い義務が発生します。
そのため事前のオペレーションを徹底し、患者さんに納得していただくことで、未払いリスクを回避するようにしています。
JIGH:やはり体制整備が重要ということですね。本日はありがとうございました。
<本事例からの学び>
訪日外国人患者さんの医療費未払い防止には、多様な支払い方法への対応と、事前の概算確認が重要!
澤田 真弓 ( さわだ まゆみ ) 氏
一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ / mediPhone 理事 CEO
[略歴]
東京外国語大学 外国語学部 欧米第一課程 英語専攻卒業。北京大学漢語進修プログラム修了後、インペリアルカレッジロンドンにて経営学修士号取得。帰国後、グーグル株式会社を経て、JIGHに参画。2014年、電話医療通訳のmediPhone(メディフォン)を立ち上げ、全国の医療機関に予約なしで、電話1本でつながる医療通訳サービスを提供する。利用施設数は300以上(2017年2月時点)。10言語に対応(英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ヒンディー語・タイ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語)。
2019年02月24日
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
嗜好品、飲み物として、お砂糖の入ったものは、からだによくないようです!
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
2019年02月07日 06:15
さまざまな飲料の摂取と『腎疾患リスク』との関連性を明らかにする研究の結果が示された。
米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのCasey Rebholz氏らが実施した研究によると、
コーラなどの炭酸飲料や
砂糖などの糖分を加えた果汁飲料、
さらに水を飲む量が多い人は、
慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高いことが明らかになったという。
詳細はClin J Am Soc Nephrol(2019 ;14:49-56)に掲載された。
炭酸飲料+加糖した果汁飲料+水の摂取増でリスク1.6倍
Rebholz氏によると、これまでさまざまな種類の飲料が腎疾患に与える影響については、包括的な情報がなかった。
そこで同氏らは、Jackson Heart Studyに参加した腎機能が正常な米国の黒人の男女3,003例を対象に、複数の飲料の摂取とCKDリスクの関連について検討した。
この研究では、研究開始時(2000〜04年)に実施された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査のデータに基づき飲料の摂取状況を調べ、2009〜13年(最高13年)まで追跡した。
その結果、中央値で8年の追跡期間中に185例(『6%』)がCKDを発症した。
ロジスティック回帰モデルを用いてカロリー摂取量や年齢、性、教育レベル、BMI、喫煙状況、身体活動状況、高血圧、糖尿病、脂質値、心血管疾患の罹患歴、ベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)に関する条件を調整して解析した結果、
炭酸飲料と加糖された果汁飲料、水の摂取量が多い人ではCKDリスクが有意に上昇していた。
これらの摂取量が最高三分位の群では、最低三分位の群に比べてCKDリスクが61%高かった(オッズ比1.61、95%CI 1.07〜2.41)。
「水」にはフレーバー付きや加糖された飲料水が含まれる可能性も
なお今回の研究では、CKDリスクの上昇に関与していた飲料に水が含まれていた。
Rebholz氏らは、この事実に驚きを示し「研究参加者はフレーバーや糖分が添加された水なども"水"として報告していた可能性がある」と推測している。
ただ、Jackson Heart Studyでは摂取したボトル入り飲料水の具体的なブランド名や種類に関する情報は収集していなかった。
米・Loyola University ChicagoのHolly Kramer氏らは、同誌の付随論評(2019 ;14:4-6)で、米国の一部の地域では加糖飲料への課税が導入されたものの、ほとんどの自治体が加糖飲料の消費量を削減する取り組みをしていないと指摘。
「喫煙による健康への影響に関する米国公衆衛生総監報告書が発表された1960年代にも、喫煙は社会的選択であり、医学的あるいは社会的な健康上の問題とはならないとの考えから禁煙に対し文化的な抵抗が見られた」と振り返り、現在の加糖飲料への課税に対する抵抗も同様の種類のものであると述べている
(岬りり子)
加糖飲料の飲み過ぎでCKD(慢性腎臓病)リスク上昇
2019年02月07日 06:15
さまざまな飲料の摂取と『腎疾患リスク』との関連性を明らかにする研究の結果が示された。
米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのCasey Rebholz氏らが実施した研究によると、
コーラなどの炭酸飲料や
砂糖などの糖分を加えた果汁飲料、
さらに水を飲む量が多い人は、
慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高いことが明らかになったという。
詳細はClin J Am Soc Nephrol(2019 ;14:49-56)に掲載された。
炭酸飲料+加糖した果汁飲料+水の摂取増でリスク1.6倍
Rebholz氏によると、これまでさまざまな種類の飲料が腎疾患に与える影響については、包括的な情報がなかった。
そこで同氏らは、Jackson Heart Studyに参加した腎機能が正常な米国の黒人の男女3,003例を対象に、複数の飲料の摂取とCKDリスクの関連について検討した。
この研究では、研究開始時(2000〜04年)に実施された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査のデータに基づき飲料の摂取状況を調べ、2009〜13年(最高13年)まで追跡した。
その結果、中央値で8年の追跡期間中に185例(『6%』)がCKDを発症した。
ロジスティック回帰モデルを用いてカロリー摂取量や年齢、性、教育レベル、BMI、喫煙状況、身体活動状況、高血圧、糖尿病、脂質値、心血管疾患の罹患歴、ベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)に関する条件を調整して解析した結果、
炭酸飲料と加糖された果汁飲料、水の摂取量が多い人ではCKDリスクが有意に上昇していた。
これらの摂取量が最高三分位の群では、最低三分位の群に比べてCKDリスクが61%高かった(オッズ比1.61、95%CI 1.07〜2.41)。
「水」にはフレーバー付きや加糖された飲料水が含まれる可能性も
なお今回の研究では、CKDリスクの上昇に関与していた飲料に水が含まれていた。
Rebholz氏らは、この事実に驚きを示し「研究参加者はフレーバーや糖分が添加された水なども"水"として報告していた可能性がある」と推測している。
ただ、Jackson Heart Studyでは摂取したボトル入り飲料水の具体的なブランド名や種類に関する情報は収集していなかった。
米・Loyola University ChicagoのHolly Kramer氏らは、同誌の付随論評(2019 ;14:4-6)で、米国の一部の地域では加糖飲料への課税が導入されたものの、ほとんどの自治体が加糖飲料の消費量を削減する取り組みをしていないと指摘。
「喫煙による健康への影響に関する米国公衆衛生総監報告書が発表された1960年代にも、喫煙は社会的選択であり、医学的あるいは社会的な健康上の問題とはならないとの考えから禁煙に対し文化的な抵抗が見られた」と振り返り、現在の加糖飲料への課税に対する抵抗も同様の種類のものであると述べている
(岬りり子)
2019年02月23日
便秘が、全死亡・心血管イベントリスクと関連
便秘が、全死亡・心血管イベントリスクと関連
提供元:ケアネット 公開日:2019/01/30
便秘は日常診療で最も遭遇する症状の1つであり、アテローム性動脈硬化症の発症と関連している(腸内微生物叢の変化による可能性)が、心血管イベント発症との関連についてはほとんど知られていない。
今回、米国退役軍人コホートにおける研究から、
便秘であることと便秘薬の使用が
それぞれ独立して、
全死因死亡、
CHD(冠動脈疾患)発症、
虚血性脳卒中発症
のリスクと関連していたことを、
米国テネシー大学/虎の門病院の住田 圭一氏らが報告した。Atherosclerosis誌オンライン版2018年12月23日号に掲載。
2004年10月1日〜2006年9月30日(ベースライン期間)に、
推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上であった米国退役軍人335万9,653例において、
2013年まで(最長10年)追跡し、
便秘の有無(診断コードと便秘薬の使用により定義)・
便秘薬の使用(なし、1種類、2種類以上)と、
全死因死亡率・冠動脈疾患(CHD)発症・虚血性脳卒中発症との関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・335万9,653例のうち、23万7,855例(7.1%)が便秘と同定された。
・人口統計、一般的な併存症、薬物治療、社会経済的地位に関する多変量調整後、
便秘の患者は、便秘ではない患者と比べて
全死因死亡率が『12%』高く
(ハザード比[HR]:1.12、95%CI:1.11〜1.13)、
CHD(狭心症、心筋梗塞)発症率が『11%』
(HR:1.11、95%CI:1.08〜1.14)、
虚血性脳卒中(脳梗塞、脳塞栓)発症率が『19%』高かった
(HR:1.19、95%CI:1.15〜1.22)。
・便秘薬使用なしの患者に比べ、
1種類および2種類以上の便秘薬使用患者のHR(95%CI)はそれぞれ、
全死因死亡率で1.15(1.13〜1.16)および1.14(1.12〜1.15)、
CHD発症率で1.11(1.07〜1.15)および1.10(1.05〜1.15)、
虚血性脳卒中発症率で1.19(1.14〜1.23)および1.21(1.16〜1.26)であった。
(便秘薬服用患者の方が、死亡率、発症率は高いものの、下剤の種類が1種類か2種類以上かには差は見られなかった。管理人追記)
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Sumida K, et al. Atherosclerosis.2018 Dec 23;281;114-120.
提供元:ケアネット 公開日:2019/01/30
便秘は日常診療で最も遭遇する症状の1つであり、アテローム性動脈硬化症の発症と関連している(腸内微生物叢の変化による可能性)が、心血管イベント発症との関連についてはほとんど知られていない。
今回、米国退役軍人コホートにおける研究から、
便秘であることと便秘薬の使用が
それぞれ独立して、
全死因死亡、
CHD(冠動脈疾患)発症、
虚血性脳卒中発症
のリスクと関連していたことを、
米国テネシー大学/虎の門病院の住田 圭一氏らが報告した。Atherosclerosis誌オンライン版2018年12月23日号に掲載。
2004年10月1日〜2006年9月30日(ベースライン期間)に、
推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上であった米国退役軍人335万9,653例において、
2013年まで(最長10年)追跡し、
便秘の有無(診断コードと便秘薬の使用により定義)・
便秘薬の使用(なし、1種類、2種類以上)と、
全死因死亡率・冠動脈疾患(CHD)発症・虚血性脳卒中発症との関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・335万9,653例のうち、23万7,855例(7.1%)が便秘と同定された。
・人口統計、一般的な併存症、薬物治療、社会経済的地位に関する多変量調整後、
便秘の患者は、便秘ではない患者と比べて
全死因死亡率が『12%』高く
(ハザード比[HR]:1.12、95%CI:1.11〜1.13)、
CHD(狭心症、心筋梗塞)発症率が『11%』
(HR:1.11、95%CI:1.08〜1.14)、
虚血性脳卒中(脳梗塞、脳塞栓)発症率が『19%』高かった
(HR:1.19、95%CI:1.15〜1.22)。
・便秘薬使用なしの患者に比べ、
1種類および2種類以上の便秘薬使用患者のHR(95%CI)はそれぞれ、
全死因死亡率で1.15(1.13〜1.16)および1.14(1.12〜1.15)、
CHD発症率で1.11(1.07〜1.15)および1.10(1.05〜1.15)、
虚血性脳卒中発症率で1.19(1.14〜1.23)および1.21(1.16〜1.26)であった。
(便秘薬服用患者の方が、死亡率、発症率は高いものの、下剤の種類が1種類か2種類以上かには差は見られなかった。管理人追記)
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Sumida K, et al. Atherosclerosis.2018 Dec 23;281;114-120.