Émile Zola
−Nana−
ナナ(19)−−−−−−−−−【19】−−−−−−−−−−−−−−−−−
Dans la clarté crue du gaz, sur la nudité
blafarde de cette salle dont une maigre dé-
coration Empire faisait un péristyle de temple
en carton, de hautes affiches jaunes s'étalaient
violemment, avec le nom de Nana en grosses
lettres noires.
..−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ガス燈のどぎつい光の中で、帝政時代のお粗末な飾りが
まるで書割に描かれた寺院の柱廊のようになっているホ
ールの青白くて何もない壁に、黒い大きな文字で書かれ
たナナという名前のある高い位置の黄色いポスターが無
造作に伸び広がっていた.
..−−−−−−−−−⦅語句⦆−−−−−−−−−−−−−−−
la clarté crue du gaz:ガス燈の生々しい光(訳本)
le gaz:辞書に「照明用ガス」とありますので、これで
「ガス燈」になるのだと思います.
cru(e):[クリュ](形) (食べ物が)生の、未加工の
(色や光が)どぎつい、はっきりした
clarté:(f) 明るさ、明り、光
nudité:(f) ❶裸、露出部分;❷飾りのなさ、むき出し;
ここでは「壁」「何もない壁」「絵もない壁」
「飾るものも何もない壁」「愛想のない壁」
blafard(e):(形) (光・顔などが)青白い、
sur la nudité blafarde de cette salle:青白い飾り気のない
ホールの壁に
maigre:(形) やせた、(名詞の前)乏しい、わずかな、
貧弱な
décoration:(f) 装飾、装飾品
empire:[アンピール](m) 帝国、歴史上の固有名詞を指す
場合Empire と大文字で用いるようです.
本文は「帝政時代」、ただし形容詞用法となって
いる.この帝政時代というのはおそらく第一帝政
(ナポレオン治世時代)のことだと思います.
une maigre décoration Empire:帝政時代のお粗末な飾り
faisait:(3単半過去) < faire
gros, grosse:(形) 大きな、太い、厚い
péristyle:[ペリスティル](m) [建築] 列柱回廊
建物や中庭の外周として造営する
temple:[タンプル](m) ❶神殿、聖堂、寺院;
❷(プロテスタントの)教会堂
carton:(m) ボール紙、
assiette en carton / 紙皿
en carton:ボール紙で
haut(e):(形) 高い、
affiche:(f) ポスター、張り紙
jaune:[ジョーヌ](形) 黄色い
s'étalaient:(3複半過去) < s'étaler (pr) 広がる、
のびる;Le vin renversé s'est étalé sur la table./ こぼ
れたワインはテーブルの上に広がった.
violemment:[ヴィヨールマン](副) 荒々しく、乱暴に、
−−−−−−−−−≪構造≫−−−−−−−−−−−−−−−
長い文ですがこれひとつだけの文です.主語部分は
de hautes affiches jaunes / 高い黄色いポスター.
de は des が複数名詞の前に形容詞があるためde に
変化たもの.高い位置にある黄色い何枚ものポスター.
述語動詞の部分はs'étalaient 伸びていた、広がっていた.
再帰動詞ですから「自分自身を広げていた」ということ
です.ですので文の骨格は:「高い位置にある黄色い何
枚ものポスターが伸びていた.
これをピザ生地だとすれば、これにいろいろトッピング
していったものが本文です.文型は S + V